夏目漱石 『行人』 「世の中の事が自分の思うようにばかりならな…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『行人』

現代語化

「世の中が自分の思う通りにならないってことは、自分以外の誰かが関係してんだろ」
「認めてるよ」
「その誰かってのは、お前のよりずっと偉いんじゃね?」
「偉いかもしんないけど、負けてるから。普通は俺より悪くて醜くて嘘ばっか。俺が負けるわけねぇのに負けるんだ。だから腹立つんだよ」
「それはお前ら人間同士のケンカの話だろ。俺のは違うんだ、もっとスゴいヤツのことだ」
「そんな曖昧なもんがあるわけねぇだろ」
「なければお前を救えないだけの話だ」
「じゃ、とりあえずあるってことにしようか……」
「全てあいつに任せちまえばいいんだよ。お願いしますよろしくって。お前、人力車に乗ったら、転ばないように車夫が引っ張ってくれるから、安心して寝られるだろ」
「俺は車夫ほど信用できる神様を知らないよ。お前だってそうだろう。お前の話は、俺のために作った説教で、お前自身が実践してるもんじゃないだろう」
「そうじゃない」
「じゃあお前は完全に諦めてるんだな」
「まあな」
「死んでも生きても、神様が勝手にやってくれると思って安心してるんか」
「まあな」

原文 (会話文抽出)

「世の中の事が自分の思うようにばかりならない以上、そこに自分以外の意志が働いているという事実を認めなくてはなるまい」
「認めている」
「そうしてその意志は君のよりも遥に偉大じゃないか」
「偉大かも知れない、僕が負けるんだから。けれども大概は僕のよりも不善で不美で不真だ。僕は彼らに負かされる訳がないのに負かされる。だから腹が立つのだ」
「それは御互に弱い人間同志の競合を云うんだろう。僕のはそうじゃない、もっと大きなものを指すのだ」
「そんな瞹眛なものがどこにある」
「なければ君を救う事ができないだけの話だ」
「じゃしばらくあると仮定して……」
「万事そっちへ委任してしまうのさ。何分宜しく御頼み申しますって。君、俥に乗ったら、落ことさないように車夫が引いてくれるだろうと安心して、俥の上で寝る事はできないか」
「僕は車夫ほど信用できる神を知らないのだ。君だってそうだろう。君のいう事は、全く僕のために拵えた説教で、君自身に実行する経典じゃないのだろう」
「そうじゃない」
「じゃ君は全く我を投げ出しているね」
「まあそうだ」
「死のうが生きようが、神の方で好いように取計ってくれると思って安心しているね」
「まあそうだ」


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