GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 夏目漱石 『行人』
現代語化
「お前は女の気持ちってわかるかい?」
「僕の気持ちが兄さんにはわからないんですか?」
「お前のはわかってるよ」
「じゃそれでいいじゃないですか」
「いや、お前じゃなくて女の気持ちなんだ」
「女の気持ちだって男の気持ちだって」
「お前は幸せだな。そんなことを考える必要が出てこなかったんだろう」
「それは兄さんのような学者じゃないから……」
「ばか言うな」
「本の勉強とか心理学の説明とか、そんな回りくどい研究じゃなくて、目の前にいて一番近くにいるはずの人間の気持ちを考えないといけないってことに出会ったことがあるのかって聞いてるんだ」
「兄さんは考えすぎてるんじゃないですか?勉強した結果。もう少しばかになったらいいですよ」
「向こうでわざと考えさせるように仕向けてくるんだ。俺の頭のいいのを逆に利用して。どうしてもばかにさせてくれないんだ」
原文 (会話文抽出)
「兄さん、今日は頭がどうかしているんですよ。そんな下らない事はもうこれぎりにしてそろそろ帰ろうじゃありませんか」
「御前他の心が解るかい」
「僕の心が兄さんには分らないんですか」
「御前の心はおれによく解っている」
「じゃそれで好いじゃありませんか」
「いや御前の心じゃない。女の心の事を云ってるんだ」
「女の心だって男の心だって」
「御前は幸福な男だ。おそらくそんな事をまだ研究する必要が出て来なかったんだろう」
「そりゃ兄さんのような学者じゃないから……」
「馬鹿云え」
「書物の研究とか心理学の説明とか、そんな廻り遠い研究を指すのじゃない。現在自分の眼前にいて、最も親しかるべきはずの人、その人の心を研究しなければ、いても立ってもいられないというような必要に出逢った事があるかと聞いてるんだ」
「兄さんはあんまり考え過ぎるんじゃありませんか、学問をした結果。もう少し馬鹿になったら好いでしょう」
「向うでわざと考えさせるように仕向けて来るんだ。おれの考え慣れた頭を逆に利用して。どうしても馬鹿にさせてくれないんだ」