GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 夏目漱石 『行人』
現代語化
「兄さん、ほかとは違ってこれは倫理上の大問題ですよ……」
「当たり前だ」
「兄さん、いくら兄弟の仲だって僕はそんな残酷なことはしたくないです」
「いや、向こうの方が俺に対して残酷なんだ」
「それは改めてまた聞きますけど、とにかく今の依頼だけは勘弁してください。僕には僕の名誉がありますから。いくら兄さんのためだって、名誉まで犠牲にはできません」
「名誉?」
「もちろん名誉です。人から頼まれて人を試すなんて、――ほかだって嫌です。ましてそんな……探偵じゃないんだから……」
「二郎、俺はそんな下等な行為をお前から向けてやれって頼んでるんじゃない。ただ嫂として、弟として一緒にどこかへ行って、一緒に泊まってくれって言ってるんだ。不名誉でも何でもないじゃないか」
「兄さんは僕を疑っているんでしょう。そんな無理なことを言うのは」
「いや、信じてるから頼むんだ」
「口では信じていて、心では疑ってる」
「ばかだな」
原文 (会話文抽出)
「兄さん」
「兄さん、ほかの事とは違ってこれは倫理上の大問題ですよ……」
「当り前さ」
「兄さん、いくら兄弟の仲だって僕はそんな残酷な事はしたくないです」
「いや向うの方がおれに対して残酷なんだ」
「そりゃ改めてまた伺いますが、何しろ今の御依頼だけは御免蒙ります。僕には僕の名誉がありますから。いくら兄さんのためだって、名誉まで犠牲にはできません」
「名誉?」
「無論名誉です。人から頼まれて他を試験するなんて、――ほかの事だって厭でさあ。ましてそんな……探偵じゃあるまいし……」
「二郎、おれはそんな下等な行為をお前から向うへ仕かけてくれと頼んでいるのじゃない。単に嫂としまた弟として一つ所へ行って一つ宿へ泊ってくれというのだ。不名誉でも何でもないじゃないか」
「兄さんは僕を疑ぐっていらっしゃるんでしょう。そんな無理をおっしゃるのは」
「いや信じているから頼むのだ」
「口で信じていて、腹では疑ぐっていらっしゃる」
「馬鹿な」