GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 夏目漱石 『行人』
現代語化
「いや」
「じゃあどうするの?」
「どっちみち俺の勝手だ。貸してくれたらそれでいいんだよ」
「怒らないでよ」
「隠すわけじゃないんだ。お前には関係ないことを、わざと自慢げに喋ってるみたいに見えるのが嫌だから、黙っておこうと思っただけだよ」
「じゃあ言うけど」
「俺はまだあの女を見舞いに行ってない。向こうもそんなことは期待してないだろうし、俺も必ず見舞いにいかなくちゃいけないほどの義理はない。でも、俺はなんかあの女の病気を悪化させた張本人だっていう自覚がどうしても消えない。それでどっちが先に退院するにしても、その直前に一度会っておきたいと思ってた。見舞いじゃなくて、謝りに行くためにさ。気の毒なことをしたって、一言謝ればいいんだ。でもただ謝りに行くわけにもいかないから、それで君に頼んでみたんだ。でもお前の都合が悪いんだったら無理しなくていいよ。家に電報でも打っとけば」
原文 (会話文抽出)
「じゃただ用心のために持って行こうと云うんだね」
「いや」
「じゃどうするんだ」
「どうしても僕の勝手だ。ただ借りてくれさえすれば好いんだ」
「怒っちゃいけない」
「隠すんじゃない、君に関係のない事を、わざと吹聴するように見えるのが厭だから、知らせずにおこうと思っただけだから」
「そんなら話すがね」
「僕はまだあの女を見舞ってやらない。向でもそんな事は待ち受けてやしないだろうし、僕も必ず見舞に行かなければならないほどの義理はない。が、僕は何だかあの女の病気を危険にした本人だという自覚がどうしても退かない。それでどっちが先へ退院するにしても、その間際に一度会っておきたいと始終思っていた。見舞じゃない、詫まるためにだよ。気の毒な事をしたと一口詫まればそれで好いんだ。けれどもただ詫まる訳にも行かないから、それで君に頼んで見たのだ。しかし君の方の都合が悪ければ強いてそうして貰わないでもどうかなるだろう。宅へ電報でもかけたら」