夏目漱石 『行人』 「そりゃひどい。僕はとにかく、お父さんまで…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『行人』

現代語化

「まじひどすぎ。俺はさ、お父さんまでチャラ男扱いするのは嫌なんだよ。兄貴は引きこもってばっかだから、変な目線で見てるだけなんだよ」
「んじゃ、具体例出してよ」
「この前、謡の客来たとき、お父さんが盲目の女の話してたじゃん。お父さんは立派に代表して行ったくせに、その女が何十年も悩んでたこと一言でごまかしてた。俺はあのとき、その女が可哀想で泣きたくなった。女のことは知らないからそこまでじゃなかったけど、お父さんの薄っぺらさには泣いた……情けなかった……」
「女々しく解釈すれば、何でも薄っぺらく見えるよな……」
「そこがさ、お父さんの悪いとこ受け継いでる証拠なんだよ。俺は直接頼んで、報告待ってんのに。お前はいつもはぐらかして、のらりくらりしてる……」
「はぐらかしてるなんて、かわいそうじゃん。話す機会もなかったし、話す必要もなかったし」
「機会は毎日あるだろ。必要は俺にあるから、わざわざ頼んだんだよ」

原文 (会話文抽出)

「そりゃひどい。僕はとにかく、お父さんまで世間の軽薄ものといっしょに見做すのは。兄さんは独りぼっちで書斎にばかり籠っているから、それでそういう僻んだ観察ばかりなさるんですよ」
「じゃ例を挙げて見せようか」
「この間謡の客のあった時に、盲女の話をお父さんがしたろう。あのときお父さんは何とかいう人を立派に代表して行きながら、その女が二十何年も解らずに煩悶していた事を、ただ一口にごまかしている。おれはあの時、その女のために腹の中で泣いた。女は知らない女だからそれほど同情は起らなかったけれども、実をいうとお父さんの軽薄なのに泣いたのだ。本当に情ないと思った。……」
「そう女みたように解釈すれば、何だって軽薄に見えるでしょうけれども……」
「そんな事を云うところが、つまりお父さんの悪いところを受け継いでいる証拠になるだけさ。おれは直の事をお前に頼んで、その報告をいつまでも待っていた。ところがお前はいつまでも言葉を左右に託して、空恍けている……」
「空恍けてると云われちゃちっと可哀そうですね。話す機会もなし、また話す必要がないんですもの」
「機会は毎日ある。必要はお前になくてもおれの方にあるから、わざわざ頼んだのだ」


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