アジェンダ

話題(アジェンダの上位)にすることが大事である。

消費行動モデル AIDMA、AIDCA、AIDA、AISAS、AISA の「AI」(Attention と Interest)は、これで生起される。そして、これら消費行動モデルは、消費行動に留まらず、あらゆる行動に適用可能である。

話題になることで、その事柄に関する検討が仔細になり、定量化される。その事柄を実現できるか、到底実現できないのかが判明する(実現に要する時間と各方面の分担コスト、及び実現状態を維持できる期間と、要する各方面の分担コストが、判明する)。

影響力が強い人・機関(例えば、政府)の社会を動かす力の源泉のひとつは、人々の話題を誘導する力である。つまり、火をつける力である。

何を話題にするかを決める行為が、メディアにおける、上流の「編集」である (ここに、メディアとは、情報の発信行為を主な生業(なりわい)とする

人・機関に留まらず、情報の発信をするあらゆる人・機関を指す言葉として適用可能である)。

インターネットがもたらした人類的効用

私見:

インターネット、及びそのアプリケーションの発達は、どのようにして現代の人類の発達につながっているのか。

(1) 情報源の利用・人々間の通信のための時間消費低減と、大規模な仕事の可能化

インターネットによって、人類は意思疎通・情報入手・情報発信にかかる時間の消費から解放された。

これは、忘れないうちに他者に頼んだ仕事の成果が帰ってくること、及び、大人数の他者に複雑な情報伝達ができることをもたらした。

これらによって、大規模集団による仕事が可能になり、広い範囲に影響を与える大規模な仕事が可能になった。

(2) 超巨大商圏の出現

インターネットは、(裕福な)あらゆる人口を結び、超巨大商圏をつくった。

第3次産業の発展は、その商圏における人口の多さによる。よって、インターネットによる超巨大商圏は、未だかつて無いほどに肥沃な第3次産業の土壌である。

市川 宏雄 : リニアが日本を改造する本当の理由 (メディアファクトリー新書, 2013) p.150.

サービス業を主体とする第三次産業は、都市のスケールが大きくなればなるほど、爆発的に発展する。

(3) 一般に使える知能増幅器の出現

インターネット端末は、知能増幅器(IA)として機能する。

西垣 通 : 集合知とは何か – ネット時代の「知」のゆくえ (中公新書, 2013) pp.69-70.

二一世紀にかけてIT業界では何が起こったのだろうか。

 端的にいうと、それは「AI (Artificial Intelligence)から IA (Intelligence Amplifer)への転換」である。コンピュータに問題解決を丸投げするのではなく、コンピュータの能力を上手につかって人間の知力を高め、問題を解決するという方向にほかならない。コンピュータは、人間のような知能をもつかわりに、人間の知能を増幅(amplify)する役目をおびるのである。

 そこ[:IA]には二種類の対話概念が出現している。第一は、一人の人間がコンピュータとリアルタイムで対話しながら思考するということ。そして第二は、多数の人間同士が、通信回線で相互接続されたコンピュータ群を介してつながり、情報を共有してたがいに対話しながら、問題を解決するということである。…

 …真の新世代コンピュータとは、八〇年代に日本が苦労して開発した第五世代コンピュータではなく、パソコンとネットだったのである。

「Web 2.0」(人々によって意識的に発信された情報の、計算機を通じた利用)によって、IA が成立した。

「ビッグデータ」(人々によって無意識に発信された情報、及び機械によって発信された情報の、計算機を通じた利用)によって、IA がさらに発展する。

計算機の発達がもたらした人類的効用

私見:

計算機の高度化(経験的にムーアの法則に従う)と多用化は、どのようにして、先の大戦後の経済成長(が意味する人類の発達)につながったのか。

(1) 知的生産・知的高度化・説得・判断の速度向上と高度化・多用化

(仕事(ミッション)において、共通基盤部分における計算機の適用による効用である。)

計算機の普及によって、人類は、単純な、或いは、複雑な計算作業から解放されたと同時に、計算ミスが撲滅された(信頼性の究極的向上)。

複雑な計算は、知的生産・知的高度化・説得(:説得に用いる内容とそれを分かりやすく読む人に伝える資料の作成)をもたらし得る。これらの速度が向上した。また、知的生産・知的高度化・説得に必要なコストが低下することによって、より高度なこれらを多くの人が手にすることになった。そして、判断が高度化すると共に、判断の速度が向上した。

(2) 不可能の可能化

(ある仕事(ミッション)において、行使部分における計算機の適用による効用である。)

計算機の使用によって、人の操作では追いつかない、或いは、人の情報処理系では条件を考慮しきれない機械の制御が可能になった。これにより、不可能が可能化された。

機械が生産機械であれば、いままで不可能だった製品を出現させた。機械が移動機械やサービスを提供する機械であれば、いままで不可能だった状況を実現させた。

産業用・業務用機械では、前記の意味において不可能が可能になるだけではなく、極度の緊張の連続から労働者を解放するという労働安全的動機と、ヒューマンエラーやサボタージュに影響されない安定した操業が可能になる(リスクの低減)という経営的動機が、その導入を促すとともに、労使間の協調関係を作りだし、不可能を可能にできる組織の形成に寄与した。

民生用機械では、(特殊技能を持たない人)×(機械)という組み合わせが可能になった。そして、複雑な制御を要する機械の一般への普及を社会が受け入れること(:不可能だとされたこと)を可能にした。

(3) 世界のさらなる発見

大熊 康之 : 戦略・ドクトリン統合防衛革命―マハンからセブロウスキーまで米軍事革命思想家のアプローチに学ぶ (かや書房, 2011) pp.41-42.

ルース[:Stephen Bleecker Luce, 米海軍 Naval War College の創始者であり、初代校長]は、…次のように考えた。すなわち、教育は各個人が自らを取り巻く世界を自分のために発見してゆくプロセスである。

以上の文章は「各個人」について書いているが、これを人類全体に置き換えることは可能である。すなわち、人類は、人類を取り巻く世界を発見していくのである。

人類は、世界の性質を記述した法則も知りたいけれど、本当に知りたいことは、実際的な世界、即ち、具体的で動的な(=時間軸をもった)答えとそれが描き出す動的な絵姿である。高速計算機による大規模で正確な数値シミュレーションが、人類がもつ多くの知見を総合した具体的で動的な答えを得ることを可能にする (さらに、ビジュアライゼーションによって、分かりやすい画像でそれを表現することもできる)。

なお、大規模で正確な数値シミュレーションには、いろいろな法則を予め入力しておくことが必要である。個々の法則を発見するひとつの手段として、高速計算機による小規模で精密な数値シミュレーションが用いられている。

サービスの利用者を俯瞰すれば

サービスの利用者を俯瞰して見れば、利用者一人当たりの負担額の逆数の関数として、その利用人口がある(正確には、総人口に対する利用人口の割合)。

事業の評価手法として、

  便益/コスト

があるが、前記の視点に立てば、

  一人当たりの便益×利用人口. 利用人口=f(1/利用者一人当たりの負担額) .

なのである。

模倣できれば、優でもあり、良でもあり、可でもあり、だよ

自分の行動は、神話やその頽落した形式である物語によってすでに語られていることの拙劣な模倣に過ぎない。――セネカ

大熊 康之 : 戦略・ドクトリン統合防衛革命―マハンからセブロウスキーまで米軍事革命思想家のアプローチに学ぶ (かや書房, 2011) p.12.

 我々は、近代生活の全ての領域で、物事を“組織的”にであれ、“歴史的”にであれ、又は“哲学的”にであれ、根源まで突き詰めるときはいつでも、古代〔ギリシア〕及びキリスト教内で成立した精神的構造に突き当たるはずである。

[:ハイゼンベルク(Werner Heisenberg, ドイツ, 1932年ノーベル物理学賞)『現代物理学の自然像』から引用。“強調”は、大熊氏による]

選択肢の減少の捉え方

以下の2つの考え方は、選択肢をなるべく多く確保しようとする私にとって衝撃であった:

「意思決定の選択肢を減少する=良き戦術を連結する」 *1
「たくさんの可能性のなかから一つを選択する方が、…後悔しやすい」 *2

*1: 大熊 康之 : 戦略・ドクトリン統合防衛革命―マハンからセブロウスキーまで米軍事革命思想家のアプローチに学ぶ (かや書房, 2011) p.24.

米国最高の海軍戦術家ヒューズ(Wayne Hughes)は、ドクトリンについて次のように解説している。すなわち、ドクトリンは、良きリーダーの常備の作戦命令であり、戦闘の混沌の中でリーダーの意思決定の選択肢を減少(良き戦術を連結)する。そして、上級指揮官には、新たに自らの指揮下に入る艦/機が既に所要の戦闘技量を保有することを保証し、また艦/機長には、自らが所掌する人員・武器が、戦闘において新編成部隊の戦闘手順に速やかに適応し得ることを保証するものである。ドクトリンは、死活的に重要なものではあるが、実戦に当たっては決して教条主義に陥ることなく、リーダーに自由裁量の余地を残すものでなければならない、としている。

*2: 羽生 善治 : 大局観 自分と闘って負けない心 (角川oneテーマ21, 2012) p.24.

「多くの可能性から一つを選択するのと、少ない可能性から一つを選択するのとでは、あとになってどちらが後悔しやすいか?」
 答えは、前者である。
 たくさんの可能性のなかから一つを選択する方が、少ない可能性から一つを選択するより後悔しやすい、という傾向がある。