財務省の看板

武藤敏郎(元財務次官) 私の履歴書(20)大蔵次官 – 日本経済新聞

01年1月の中央省庁再編のスタートが迫ってきた。省名が「財務省」に変わるので、正門に掲げる新しい看板を揮毫(きごう)していただきたい、と宮沢大臣にお願いした。当時の「大蔵省」の看板は同省出身の池田勇人首相が在任中に書かれたもので、私には入省以来ずっと見慣れた字だった。

宮沢大臣は「池田さんのような立派な字は書けないので遠慮する」と言われた。私はどうしても、とさらに2度、お願いしたが、頑としてお受けいただけなかった。宮沢大臣は大蔵省の名称を財務省に変える方針にはご不満だ、と私はかねて感じていたこともあり、それ以上はお願いできなかった。困ってCG(コンピューターグラフィックス)の活用を考えた。

具体案をいくつか宮沢大臣にお見せすると「これにしよう」と一つを選ばれた。ただ、ある一画だけは「ここはこう直してください」とこだわられた。書への見識は並々ならぬものを感じた。

なお、今の財務省の看板は、麻生太郎自民党副総裁が財務大臣の時に書かれたものだ。

武藤 敏郎: 私の履歴書(20) 大蔵次官. 日本経済新聞, 2024/ 1/21, 朝刊, 28面.

武藤敏郎 – Wikipedia