ウクライナのゼレンスキー大統領がホワイトハウスで「あなたにはカードがない」と、米国の正副大統領から威嚇されたのは2月末。以来何かにつけ古代ギリシャの歴史家ツキディデスの「戦史」第5巻、古来、有名な「メロス島対話」の冒頭場面が頭に浮かんでくる。
▼スパルタとのペロポネソス戦争のさなか、島の征服に乗り出した強者アテナイが交渉の糸口を探るメロス人に言い放つ。「正義か否かは彼我の勢力伯仲のとき定めがつくもの。強者と弱者の間では、強きがいかに大をなし得、弱きがいかに小なる譲歩をもって脱し得るか、その可能性しか問題となり得ない」(久保正彰訳)