二重行政は、切れ目を生じさせる

2015年5月17日に実施された大阪市の特別区設置住民投票において、特別区設置のひとつのメリットは、「府市あわせ」と言われた二重行政の解消でした。

二重行政は、

 ・同じ高さのビルを府市で1棟づつ、合わせて 2棟つくるなどの、二重投資(による無駄)

 ・意見対立した場合、決定権の優劣がないことによる決定遅延(による機会損失)

を生むとされました。

しかし、武雄市長を務めた樋渡 啓祐氏の2015年5月9日の投稿は、二重行政のもうひとつの負の面を示しました:

自分自身、総務省から高槻市役所に出向していた時に、近隣自治体との連携事業で、大阪府庁に持っていったら、大阪市役所へ行け!と言われ、市役所に持っていったら、府庁と相談してくれ!と何度か言われましたけど。

二重行政は、行政に切れ目も生じさせます。

学者の社会に向けた主張は現状維持的になりがちである

2015年5月17日に実施された大阪市の特別区設置住民投票では、京都大学の 藤井 聡 氏を中心に学者による主張がなされました。これまでに、およそ無かったことなので、学者の社会的な主張にはどのような傾向があり、どう受入れるべきか、有権者に経験がなかったと考えられます。

 「大阪都構想の危険性」に関する学者所見|藤井 聡

ここで、私が以前書いた、「天理」・「地理」・「人理」を紹介します:

学問は、「天理」・「地理」・「人理」を行き来する行為です。

学者たちが目指すのは「天理=普遍的な理論」ですが、そのためには「地理=特定条件における一般性質」を見つけていく必要があります。革新的なアイデアは、学者の発想(不明推測法((アブダクション))の起点)に依存します――これは「人理」です。

● 学者は、将来に関して「地理」・「人理」に重きを置けず、現状を変えるリスクを過大評価し、その社会的な意見は現状維持的になりがちである

学者が将来に関する 社会に向けた主張を表明するときに、現状を変えるリスクを過大評価する傾向があると考えられます。

現状を変えるリスクは、「天理」の前に、リスクのまま解決されず、悪いもののままです。リスクをプロフィット(利益、良いもの)に変換するのは、「地理」・「人理」の作用ですが、将来に関して、「地理」・「人理」に学者は重きを置けません。

なぜならば、「地理」・「人理」は、将来に関して、間違えずに説明しにくいからです(対して、過去・現状に関して、それらは歴史・実証として、間違えずに説明できます)。

結果、現状を変えるリスクが解決されないものとして残存し、過大評価されます。

したがって、学者の将来に関する 社会に向けた主張は、現状維持的になる傾向にある、と考えられます。

マルクス=エンゲルス共著の『ドイツ・イデオロギー』(1845~46)は次のように締めくくられている。「哲学者たちは世界をたださまざまに解釈してきただけである。しかし肝腎なのはそれを変えることである」(真下信一訳) ―― 梶井厚志 : 戦略的思考の技術 (中公新書, 2002) p.93.

● 政治・統治は、「人理」「地理」において行われる

人と人との間のあらゆる調整、すなわち広い意味での政治は、「人理」です。

議会・政府・選挙などを手段とした統治のための知的行為、すなわち狭い意味での政治は、「人理」を知的行為の中心として、「地理」をその出力とします。

鈴木商店倒産と若槻内閣総辞職

第1次若槻内閣の総辞職(1927/ 4/20)は、台湾銀行救済の緊急勅令案が枢密院にて否決されたことによるものです。台湾銀行の業績悪化は、深く結びついていた鈴木商店の業績悪化によるものでした。

台湾銀行は、第一次大戦終戦後に業績が悪化した鈴木商店への貸付が不良債権化していました。

1927年、片岡大蔵大臣の〈東京渡辺銀行の破綻〉発言に端を発した昭和金融恐慌が起こる中、帝国議会において、可決された震災手形関係二法に「台湾銀行の整理」という付帯決議がつけられました。

これを受け台湾銀行への不安が広がり、台湾銀行は鈴木商店との絶縁を宣言しますが、これが台湾銀行への不安を濃くさせ、台湾銀行に取り付け騒ぎが発生します。

鈴木商店は休業(1927/4/5)し、これが各行に台湾銀行の早期の破綻を予見させます。台湾銀行は融資引き揚げ・債権回収を受け、台湾銀行は政府に救済を要請するに至りました。

参考文献:
昭和金融恐慌 – Wikipedia [2015年5月31日 (日) 17:21 の版]

初出:
Facebook 2015/ 6/ 6