発展とは、エネルギーの有効な利用量の増加である。即ち、負のエントロピー供給量の増加である。
Jeremy Rifkin=著, 柴田 裕之=訳 : 水素エコノミー―エネルギー・ウェブの時代 (NHK出版, 2003) p.58.
ホワイトはこれらの要因を考えあわせ、「ひとり当たりの年間エネルギー利用量が増えるにつれて、あるいはエネルギーに仕事をさせる道具の効率が上がるにつれて、文化は発展する」と結論づけている〔9〕。
9 White, Leslie A. The Science of Culture: A Study of Man and Civilization. New York: Farrar, Straus, and Company, 1949. pp.368-369.
■ 生物個体や社会の本質
生物個体や社会の本質は、内部のエントロピーを低くする(、それと同時に外部のエントロピーを増大させる)ことである。
Jeremy Rifkin=著, 柴田 裕之=訳 : 水素エコノミー―エネルギー・ウェブの時代 (NHK出版, 2003) p.67.
生体は秩序ある存在として安定した状態を保っているが、そのために、利用可能なエネルギーを糧としており、環境の総体的なエントロピーを増やしている。「生体の形成に見られる少量のエントロピーの局所的な減少は、宇宙全体のエントロピーのはるかに大きな増加と抱き合わせになっている」とブラムは言う〔19〕。
19 Blum, Harold F. Time’s Arrow and Evolution. Princeton, NJ: Princeton University Press, 1968. p.94. (ハロルド・ブラム著「自然の進化」みすず書房)
エネルギーの有効な利用量が、エントロピーを低くできる影響範囲を決める。利用量が少なければ、生物個体自身しかエントロピーを低くし続けられないが、利用量が多くなるほど、より広い範囲のエントロピーを低くし続けられる。
■ エネルギーと情報
(エネルギーの視点で捉えると、)情報は、低エントロピーなエネルギーを利用する〈方法=技術〉と〈権利=金銭〉である。
技術は、情報によって表現され、保存される。技術進歩の内容は、
- エネルギーの新たな利用法 (新たな《エネルギーを利用した結果生じるもの》)
- より多くのエネルギーの利用法
- エネルギー効率の上昇
である。
なお、情報を保持する媒体のエントロピーは低い。紙・DVD・LSI などは、エネルギーを利用して、低エントロピーに生産される。脳や神経は、エネルギーを利用して、低エントロピーに保たれている。情報をもつ社会は、エネルギーを利用して、低エントロピーに保たれ、また、情報の送受信には、エネルギーが必要である。
■ 経済
経済は、エネルギーと情報の用水路である。
《〈自然の恵み〉と〈それを変換した財・サービス〉》(低エントロピーなエネルギー)と、それらを利用するための情報を、行き渡らせる。
Jeremy Rifkin=著, 柴田 裕之=訳 : 水素エコノミー―エネルギー・ウェブの時代 (NHK出版, 2003) pp.74-75.
経済活動とは、エントロピーの低いエネルギーを環境から借りて、価値のある製品やサービスに一時的に変えることにすぎない。その過程では、生産された物やサービスに込められるよりも多くのエネルギーが費やされて環境へと失われる。
経済成長は、以下から構成されている。
加藤 久和 : 人口経済学 (日経文庫, 2007) p.139.
経済成長率=技術進歩の上昇率+資本分配率×資本ストック増加率+労働分配率×就業者増加率
註:「資本ストック」とは、生産活動に使用される設備のこと。 (参考 同書 p.131.)
技術は、情報である。資本ストックと就業者は、情報をもとにエネルギーの変換する装置である。