〈若年層が老後に備えて貯蓄を増やしていく、その貯蓄を銀行などが投資する、これが経済発展の一要因である〉という考え方が一般的なのだけれど、近年は、若年層の消費額減少による経済停滞が問題視されるようだ。
若年層は、貯め且つ消費する役割を期待され、そしてそのように駆動されようとするのであるが、そうは叶わぬ。
なぜ「そうは叶わぬ」なのか。若年層が搾取されているから、という理由は間違いではないが、事の本質に戻れば、逆説的に〈搾取する側〉の老年層の貯蓄・消費によって、経済発展すれば良いのだ。しかし、全年代を総合しても、貯蓄率は著しく低下している(*)。そうは叶わぬのである。
ここまで考えて、少し視点を変えて、結論を導いた。すなわち、:
全年代総合の未来が、先んじて若年層の現在に表れているのだ。
なぜならば、若年層は、浮き沈みが激しい。これは、経験的・人脈的・物的・金銭的な蓄えが少ないことによる重みのなさ(軽妙さ)、創造性・積極性に富むことによる敏感さに、起因する。
この結論は、座して待つための知識ではなく、観測のための知識である。若年層の観測を評価手法として、問題の原因を解決し、美点の源を栄えさせ、全年代総合の発展を図ることができる。
註:
* 加藤 久和 : 人口経済学 (日経文庫, 2007) pp.134-135.
わが国は過去において高い貯蓄率を誇っていた国として国際的にも有名でした。統計データの接続などの関係で直接は比較できないものの、国民経済計算における家計貯蓄率をみると、1975年度では23.1%、また1985年度では15.8%でしたが、2005年度では3.1%にまで低下しています(1975、1985年度は68SNA、2005年度は93SNAの基準によります)。