静安定緩和

静安定緩和
制御形態機体 (CCV)

W・ブライアン・アーサー=著, 有賀 裕二=監修, 日暮 雅通=訳 : テクノロジーとイノベーション―― 進化/生成の理論 (みすず書房, 2011) p.94.

技術用語では「静安定緩和」〔運動性を高めるために機体の安定性を意図的に劣化させたうえで、機体の制御にコンピュータの補助を加えること〕と言う

佐貫 亦男 : 不安定からの発想 (講談社学術文庫, 2010) p.157.

機体形態の挑戦としては CCV がある。これは制御形態機体(Control Configured Vehicle)の略字で、制御を条件として決定した形態の機体をいう。

かたちあるもの

「かたちあるもの」ばかりである。

そして、「かたちあるもの」は、組織の構造、組織要素の形状・大きさ(:スケール効果を生む)に由来する性質を持っている。

流れは流線によって描かれる構造を持つ[*1]。

 *1: 例えば、高温の伝熱面上の流体が旋回すると、伝熱面から熱を受け取った流体が旋回するだけで流れ去らないために、低い対流熱伝達性能になる。

材料は組織をもち、組織要素の方向の揃い方[*2]・絡まり方[*3]、組織要素の形(針状・球状など[*4])・大きさ[*5]によって性質が異なる。

 *2: 組織要素間の隙間の大小に関わる。隙間が大きいと、他の物質を取り込んだり、透過させたりできる。

 *3: 強度、粘性・弾性などに関わる。

 *4: 例えば、ねずみ鋳鉄は、組織中のグラファイト(黒鉛)の形状が針状であり、そこに応力集中が発生しやすくて脆い。ダクタイル鋳鉄は、組織中のグラファイト(黒鉛)の形状が球状であり、そこに応力集中が発生しにくく強靱である(強くて粘い((ねばい)))。

 *5: 例えば、Hall-Petchの法則、すなわち、金属材料の強度は結晶粒径の1/2乗に反比例して上昇する(結晶粒径が小さいほど、強度が高い)。

世に出された技術は、人に新たな視点を、人を導く者にカードを与える

世に出された技術は、人に新たな視点を、人を導く者にカードを与える (初出:2011/10/11 8:54am)。

これが、技術決定論、すなわち「技術が社会を変える」を理由づける。すなわち、

 世に出された技術は、人に新たな視点を、人を導く者にカードを与える。故に、技術が社会を変える。

「技術」、「視点」(が新たに生み出させる「認識」)、「カード」(それ自身あるいはその集合体としての「政策」)は、クックパッド株式会社 創業者・代表執行役社長 佐野 陽光 氏 の『世の中を動かす三要素』に相当する。

上阪 徹 : 600万人の女性に支持されるクックパッドというビジネス (角川SSC新書, 2009) p.37.

「いろいろ考えて、世の中を動かす要素って、三つじゃないか、と思ったんですね。ひとつはテクノロジー。例えば電話ができた、車ができた、テレビができた、と。そしてもうひとつは、個人の認識が変わること。みんながこうだ、と思ったら、そっちの方向に変わっていくでしょう。そしてもうひとつが、政策、だと思ったんです。道の幅はこれにしましょう、右側通行にしましょう、と決めた瞬間に世の中は変わる」

発想の元:

● 視点

最相 葉月, 瀬名 秀明 : 未来への周遊券 (ミシマ社, 2010) p.45.
瀬名 秀明 氏による

 科学は一編の論文によって私たちの世界観を変え、技術は人の視点を変える。…
 サン=テグジュペリの『人間の大地』にこうある。「飛行機は一個の機械にはちがいないが、しかしなんという分析の道具だろう!」「飛行機とともに、わたしたちは直線を知った」

ジョブズもいってた、日本メーカーがAppleに負けっ放しの理由 | More Access,More Fun!

ジョブズの語録より

◆消費者に、何が欲しいかを聞いてそれを与えるだけではいけない。

◆製品をデザインするのはとても難しい。多くの場合、人は形にして見せて貰うまで自分は何が欲しいのかわからないものだ

…つまり、

素人 = ノーアイデア

なのである。

真の発見とは、新しい見方を獲得することである

● カード

量産能力(量産コスト推移)と、需給収支は予測できる

事業を数字で表せれば、事業は意志決定者のカードになる

量産能力(量産コスト推移)と、需給収支は予測できる

量産能力(量産コスト推移)と、需給収支は予測できる。

槌屋 治紀 : 燃料電池と水素エネルギー 次世代エネルギーの本命に迫る (サイエンス・アイ新書, 2007) pp.145-146.

過去の多くの工業製品に関する実測結果から、以下のような学習曲線の原理が導き出されています
「累積生産量が2倍になるとき、生産コストや生産に関する時間が一定割合で低下する」

… この一定の割合は「進歩指数」と呼ばれていて、次のように定義されています。
 進歩指数は普通「F」で表わされ、これは累積生産量が2倍になるときのコスト低下の割合を示します。

例えば、進歩指数 F=0.8 のとき、生産 5千台目のコストを @100円として、生産1万台目のコストは @80円、生産2万台目のコストは @64円 だと予測される。

関連:
鎌池 和馬 : とある魔術の禁書目録 9 (電撃文庫, 2009) p.106.

実際に勝てるかどうかではなく、勝てるかもしれない、と錯覚させただけで、戦争ってのは起こっちまうのさ。

工業における数値流体力学のアウトプット

数値流体力学では、ミクロ(瞬間・局所)の状態をアウトプットできる。

しかし、一般に求められることは、マクロの改善に供することである。

工業的には、ものの破壊につながるような現象が局所的に生じない限り *、ミクロだけを知る実利はない。

マクロにあたる熱輸送総量・化学反応による生成物総量などのアウトプットにつなげることが必要である。

  * 気象分野では、ものの破壊につながるような現象が局所的に起こりやすい(局所的な暴風・豪雨)ため、ミクロを知ることの需要が高い。

ミクロがマクロ現象を代表しているかどうか

マクロ現象を知るためにミクロ(瞬間・局所)を測定する場合、そのミクロがマクロ現象を代表しているかどうかが問題になる。

部品間に隙間をもった機械の場合、d2y/dt2 の符号反転時には、接触していた隙間が離れ、部品(局所)が無負荷で隙間幅を移動できるようになるため、ミクロ測定から推測されるマクロ値の信頼度は低い。

設計図の誕生

橋本 毅彦 : 描かれた技術 科学のかたち―サイエンス・イコノロジーの世界 (東京大学出版会, 2008) p.61.

設計図、部品の寸法と形状をすべて確定し、製造の現場では設計の判断はもはやなされないような設計図面は、一八世紀のフランスの軍事技術者の間で生み出されるようになる。精密に描かれた設計図が作図され、それに正確に合致するような部品を作ることが製造現場に求められる。正確に図面通りにすることで、同一モデルの二つの製品に対応する部品は互換性をもち、交換できるようになる。

なお、大型機械の最終工程に仕上(除去加工を伴う)が不要になり、最終工程が組立だけになったのは、20世紀後半になってからである。