人間とは自然とテクノロジーの複合体である

〈テクノ新世〉AIは「異星人の知性」 マルクス・ガブリエル氏に聞く. 日本経済新聞, 2023/ 7/14, 朝刊, 7面.

マルクス・ガブリエル (Markus Gabriel):

『人間とは自然とテクノロジーの複合体である』という命題を整理しておく必要がある。我々は環境の中で生きる生物学的存在であるだけでなく、環境そのものを自ら生み出す存在でもある。テクノロジーを使って人間がおこなっているのは環境を造り替えることだ

技術哲学

〈テクノ新世〉AIは「異星人の知性」 マルクス・ガブリエル氏に聞く. 日本経済新聞, 2023/ 7/14, 朝刊, 7面.

テクノロジーは哲学の重要なテーマであり続けている

ルネ・デカルト (1596~1650年)

「近代哲学の父」と称されるフランスの哲学 ・数学者。物体と精神をそれぞれ別のものととらえる「心身二元論」を唱え、近代科学・合理主義の基本となる思想を打ち立てた。「AI(人工知能) に心は宿るのか」という議論は、この心身二元論を踏まえているといえる

イマヌエル・カント (1724~1804年)

ドイツの哲学者。 理性を使って道徳や真理を探究し、自律して生きることに人間の尊厳があると説く一方、「科学に客観的根拠はあるか」「科学が万物を説明するなら人間の価値や自由はどこにあるか」と思索した。主著 「純粋理性批判」 は人間が知りうるものの範囲などを明らかにしようとする内容で、現代に至る哲学に道を開いた

マルティン・ハイデガー (1889~1976年)

ドイツの哲学者。 冷戦時代、原子力を軸にテクノロジーについて考察した。 原子力は 現代を象徴する技術であり、 最も支配的な脅威だと喝破したうえで、性急に利便性や効率だけを追求するのではなく、 テクノロジーと人間の関係を根底から問い直していくことが必要だと主張した

ハンナ・アーレント (1906~75年)

ドイツ出身の米国の政治思想家。ハイデガーの教えを受けた。 戦後に活用が始まった原子力を 「宇宙の力」と呼び、 自然の中に本来存在しないものを導入することで起こりうる問題を考察した。戦争や事故による生命の危機だけでなく、その脅威が公共性を破壊し、人間の自由を奪うと警鐘を鳴らした

ハンス・ヨナス (1903~93年)

ドイツの哲学者。いま生きている人間はこれから生まれてくる人間に対する責任を負うという「未来倫理学」の論者のひとり。 もし目の前に乳飲み子が一人でいたらそれが他人の子であっても保護するように、まだ存在しない未来の人間を守るのは当然の務めだとし、未知の領域が広がる科学技術についての倫理の確立を主張した

ポール・K・ファイヤアーベント (1924~94年)

オーストリア出身の科学哲学者。主著「方法への挑戦」では 「科学は常に空隙や矛盾に満ちており、宗教や神話と同列のものだ」と断じるなど、過激な科学批判を展開した。アナキズム的な哲学者だが、偏見や先入観に陥りやすい科学の弱点を鋭く突いた思索は、現代の科学信仰を揺るがす視点を含んでいる

ユルゲン・ハーバーマス (1929年~)

ドイツの哲学者・社会学者。クローン技術について鋭い批判を展開している。本来偶然によって誕生する生命が科学技術でつくり出せるようになると、私たちが考えてきた 「自然」と「技術」との境目が曖昧になること危険視。人間が自らの肉体に対して持つ尊厳が失われてしまうと説く

テクノロジーは われわれがそれをどう使うかだと思います


Sony Japan | Stories | サイバースペースを創造した作家とそれを現実にする男 ソニーコンピュータサイエンス研究所

SF小説『ニューロマンサー』の著者ウィリアム・ギブスン氏と、ソニーコンピュータサイエンス研究所の暦本純一氏の対談。

5:57~

[ギブスン氏:]
すべてのテクノロジーは 人間が関与して
それを使うまでは 道徳的に中立だと思うのです

テクノロジーは われわれがそれをどう使うかだと思います

設計と意匠

設計と意匠を、英語にすると、ともにデザイン(design)である。

この繋がりは、設計と意匠の意味をお互いに補完し、豊かに、実・身のあるものにする。

設計は、計を設けること。予測行為である。予測と計測・確認である。定量的である。

意匠は、匠の意。意思に合うように導くことである。意匠は、芸術ではない

対象は、機械であり、人であり、組織間の関係であり、社会である。

諸元とは

「諸元」という言葉がよく分かっていなかったのだが、

『初弾命中。同一諸元。効力射!』

という用法で理解した。

諸元とは、ある一定(以上)の結果(=パフォーマンス)をもたらす「諸」々の「元」なのだ。

『初弾命中。同一諸元。効力射!』でなら、結果とは、目標への射撃の命中(あるいは、目標の打撃)であり、これをもたらす諸々の元が、射撃諸元なのである。

重要な視点は、諸元は、結果でないことである。機械の製造者は、機械の諸元を結果だと捉えてしまいがちであるが、その機械を使って成し遂げられることが結果なのである。

初出:
Facebook 2017/ 7/ 9

物は、いかにして社会を変えるか

○ 物が、人に新たな視点・(物によって実現された)有利な行動様式をもたらす

新たな投資先、活動、所作ふるまい

モノの抜群の機能により、現実が影響を受けて変化する

世に出された技術は、人に新たな視点を、人を導く者にカードを与える

メディア=技術=身体の拡張=感覚の拡張

グリーン車とWebサービス――モノによって人を動かす

○ 物が、生産力に関する新たな状況(現状を満たした上で、さらに余地)をつくる

水素エネルギーとハーバー・ボッシュ法、技術決定論と唯物史観

生産力に関する新たな状況は、唯物史観によれば、経済のみならず、文化などを含む社会全体の改革を引き起こす。

・物的な生産力 (エネルギーに関する)

・知的な生産力 (情報に関する) 例えば、コンピュータ、インターネット、高速鉄道 (新幹線は情報産業である)

○ 物が、人に社会(不特定の他者)への関心を増させる

生産体験と作られた物が社会を変える

物の生産を体験した人は特に、あらゆる作られた物から、それの生産に携わった他者・事への関心(好奇心)が生起させられる。

これがその人の他者とのやりとりを変え、それが積み重なって、ボトムアップに社会全体が変わる。

技術とは、再現の方法である

技術とは、再現の方法である。

失敗の再現の方法も、技術である。

品質工学の考え方は、ばらつきを減らしてから平均を変化させる、すなわち

(1) 品質をまず管理して、= 再現できるようにして、
(2) それから向上させる = 成功を再現できるようにする

である。

アプローチとしての汎用品の商品開発

汎用品の商品開発には2つの果実がある。

上記の文について私の思いを正確に伝えるために表現を改めると、以下の2つの果実を得る手段(アプローチ)として、汎用品の商品開発があるのである。

ひとつは、高度な者に(安価な)手段を与えることである。即ち、CAN。

そのためには、商品の原価低減は必須である。原価低減をさらに一段と実現する(不可能だと思えるような原価低減を実現する)ためには、商品が量産されなければならない。そのためにはそれが一般な者にも購入されなければならない。一般な者は、高度な機能を必要としないから、一般な者に対する宣伝は上手になされなければならない。

もうひとつは、一般な者を変化させることである。即ち、CHANGE。

一般な者は商品の高度な機能を使いこなせないが、商品から新たな環境を取得する(新たな環境に没入する)。それは、商品の新たな使用環境(小型軽量商品の屋外・移動中の使用など)、新たな使用感(複数機能の同時使用、新たなインターフェイス、新たなアーキテクチャ((使用制約)) )、新たに提供される体験(商品を通じて、商品の機能を活かして提供される、作られた体験)である。これらが、商品を使用する一般な者を変化させる。

ここで、振り返ると、重要なことは、商品の原価低減、一般な者に対する宣伝、一般な者への新たな環境の提供である。