人による人の絶滅、インディアスの破壊についての簡潔な報告

ラス・カサス=著, 染田 秀藤=訳 : インディアスの破壊についての簡潔な報告 (岩谷文庫, 1976)

西インド諸島(イスパニョーラ島、キューバ島、ジャマイカ島など)・南米・北米フロリダ・ユカタン半島の原住民とその社会が、スペインの入植者によって絶滅させられた状況を、スペイン(当時、カスティーリャ王国)王太子に上奏する書簡です。1542年に書かれました。

広域の住民およびその社会を絶滅可能であるという、歴史を教えます。国家の危機に臨んで、読んでおくべき書籍であると考えます。

入植者の行為は、絶滅というよりも「収穫」に思えました。

入植者は、最初は原住民から食糧を取り上げました (あるいは、殺戮しました)。

そして、金(きん)を取り上げました。「黄金の国」と呼ばれた日本も、ヨーロッパに近ければ、大いに危険であったと考えます。

その後、原住民に過酷な労働を課しました。労働を課せられた原住民は衰弱して死んでいきました。

残りの原住民は、奴隷として売り払われました。ヒトの労働ではなく、ヒトそのものが経済的に流通したのです。奴隷制度はヒトを効率的に財に変換する経済的手段であり、経済的原理によって力強く駆動されるのです。

関連する引用:
内田 樹 : 街場のメディア論 (光文社新書, 2010) p.116.

制度を可変的なものにするための方法は経験的には二つしか知られていない。それはまさに宇沢弘文先生が「社会的共通資本に適用してはならない」と言った当の二つのもの、すなわち政治イデオロギーと市場です。 

そんな制度でも、政治イデオロギーと市場の支配に委ねれば、めまぐるしく変化する。間違いなく変化する。