[正]が(正しい言葉と正しい知識が)、世界の混沌とした知識を整理し、体系付けし、それらを総活用できるようになり、次の世界を造るのだと考えていた。
しかし、[俗]が、世界を生かし、その残滓が正なのだ。
ああ、ミネルヴァのフクロウは、夕暮れに飛び立つのだ。
[正]は、それに従うものではない。[正]は生み出され、後につづく者に残すものなのだ。先端の領域に身をおけば、特にそうである。
真・善・美 という重要な3概念がある。
[正]と[俗]という指標で見ると、
[正] 真・善・美・〈俗の良いもの〉 [俗]
という並びになる。
〈俗の良いもの〉がもつ特徴のひとつは、歩み寄りの概念である。
たとえば、コミュニケーションである。
稲見 昌彦 : スーパーヒューマン誕生! 人間はSFを超える (NHK出版新書, 2016 〈底本はNHK出版新書(2016)〉) 位置No. 1071/2390.
コミュニケーションも言語や身体動作を介して、双方の知識をシンクするための行動と捉えることができる。
[正]から[俗]に向かう流れは、評論家の流れである。
反対に、[俗]から[正]に向かう流れは、当事者・担当者の流れである。
[俗]には、〈俗の良いもの〉と〈俗の悪いもの〉があるので、それに向き合うには知的な緊張感を持ち続けなければならない。