「メロス島対話」の冒頭

春秋. 日本経済新聞, 2025/ 4/18, 朝刊, 1面.

ウクライナのゼレンスキー大統領がホワイトハウスで「あなたにはカードがない」と、米国の正副大統領から威嚇されたのは2月末。以来何かにつけ古代ギリシャの歴史家ツキディデスの「戦史」第5巻、古来、有名な「メロス島対話」の冒頭場面が頭に浮かんでくる。

▼スパルタとのペロポネソス戦争のさなか、島の征服に乗り出した強者アテナイが交渉の糸口を探るメロス人に言い放つ。「正義か否かは彼我の勢力伯仲のとき定めがつくもの。強者と弱者の間では、強きがいかに大をなし得、弱きがいかに小なる譲歩をもって脱し得るか、その可能性しか問題となり得ない」(久保正彰訳)

疾走は、第三者的感覚では、不快適感を持つ

疾走は、第三者的感覚では、不快適感を持つ。

スキーでアイスバーンの雪路を攻めるのは、快感である。

しかし、スキー板がビビり、脚に伝わる振動は、第三者的には不快適である。しかし、雪路を攻める一人称は、快を感じるのである。

理屈の辻褄が合っていても、非常識はいかん

春秋. 日本経済新聞, 2025/3/26, 朝刊, 1面.

西武グループの創業者、堤康次郎氏は不動産業などで莫大な富を築いた。しかし死後、払うべき相続税がほぼゼロだとわかる。資産の多くが法人名義などになっていたためだ。遺族が納得する中、これでいいのかと疑問を覚えたのが康次郎氏の子の一人、清二氏だった。

▼辻井喬の筆名で記した回顧録「叙情と闘争」で振り返っている。故人と親しかった池田勇人首相に相談すると、言下に答えが返ってきた。「清二君、それは無理だよ、いくら理屈の辻褄(つじつま)が合っていても、非常識はいかん」。そのため相続税の対象となる個人資産をあえて作り、億単位の税金を納めるように提案したそうだ。

八徳

八徳(はっとく)。儒教における八種の

: 人を思いやること。

: 利欲にとらわれず、なすべきことをすること。

礼: 人間関係を円滑にすすめ社会秩序を維持するための道徳的な規範。「仁」を具体的な行動として表したもの。

・智: 道理をよく知り得ている人。知識豊富な人。

信: 友情に厚く、人をあざむかないこと、誠実なこと

ここまで、五常、または五徳。

忠: 主君に対して裏表の無い態度

孝: 子供が自身の親を敬い支えるべしと説く道徳的概念

悌: 兄や年長者によく従うこと

1995年年始までの平時

春秋. 日本経済新聞, 2025/ 1/18, 朝刊, 1面.

不思議な「空白」が、日本の現代史に横たわっている。戦後の1948年6月に起きた福井地震を最後に、震度6を感じる揺れは72年まで発生せず、80年代にかけても総じて穏やかな歳月が続いたのだ。高度経済成長は、そんな奇跡的な平穏のたまものだったといえる。

▼科学技術の力で被害は食い止められるという「神話」が、昭和後期には独り歩きした――。政治学者の御厨貴さんはこう語っている(「中央公論」2020年3月号)。その油断や楽観に痛烈な一撃を加えたのが、30年前に起きた阪神大震災だった。「阪神・淡路まで、危機から縁遠い『平時』の状況が続いていたのです」