「大阪都」住民投票の結果分析

「大阪都」住民投票の結果分析2015年5月17日に実施された大阪市の特別区設置住民投票の結果を分析します:

渡辺 輝人 氏のまとめ(辛坊治郎氏に贈る大阪市の住民投票結果の分析(渡辺輝人))から、
  賛成多数の区では、2・30代人口が65歳以上人口よりも多く
  反対多数の区では、2・30代人口が65歳以上人口よりも少ない
ことが言えます(例外は、天王寺区のみ)。

大阪市全体の出口調査の結果として、70代以上の反対比率が他の年代に比べて高かったです。

また、賛成多数の区が北部・中央部・東部に、反対多数の区が湾岸部・南部にきれいに分布しました。

以上を起点として調べた結果、以下が相関を持っていたことが分かりました:

(0) 反対率が高い区
(1) 特別区設置によって直接の経済的恩恵を受けない区
(2) 高齢者人口の割合が高い区
(3) 生活保護受給率が高い区

(1) 特別区設置によって直接の経済的恩恵を受けない区とは、例えば、主な開発対象になる都心(新大阪・キタ・ミナミ)から遠い区を指します。

(2)高齢者人口の割合が高い区とは、65歳以上人口が2,30歳代人口に比べて大きい区を指すとしました。資料: 辛坊治郎氏に贈る大阪市の住民投票結果の分析(渡辺輝人)

なお、辛坊治郎氏に贈る大阪市の住民投票結果の分析(渡辺輝人) (賛成率と高齢者率)では、区毎における賛成率と高齢者率の決定係数(相関係数Rの2乗値)は R^2=0.472 だったとしています。よって、反対率と高齢者率の相関係数Rは0.687 です。Rが0.7を超えると「強い相関」だと言われるので、反対率と高齢者率の間には、およそ強い相関があると言えます。

(3)生活保護受給率が高い区とは、生活保護受給率が40‰以上である区を指すとしました。資料: http://osharebantyoh.blog.fc2.com/img/20121022205703860.jpg/ *1

例外は、以下の4区だけです。

天王寺区: 
(2) 65歳以上人口が2,30歳代人口の0.67倍であり高齢者人口の割合が低く、
(3) 生活保護率20~40‰であり生活保護受給率が低いですが、
反対率 53.2%で反対多数でした。

浪速区:
(3) 生活保護率100~120‰であり生活保護受給率が高いですが、
反対率 47.3%で賛成多数でした。
(なお、賛成多数と相関がある(2) 65歳以上人口が2,30歳代人口の0.48倍であり高齢者人口の割合が低いという性質を浪速区はもっています。)

東淀川区:
(3) 生活保護率60~80‰であり生活保護受給率が高いですが、
反対率 48.8%で賛成多数でした。
(なお、賛成多数と相関がある(2) 65歳以上人口が2,30歳代人口の0.79倍であり高齢者人口の割合が低いという性質を東淀川区はもっています。)

西成区:
(1) 豊かな中央特別区の一員となり、中央特別区の行政中心となることにより、特別区設置により直接の経済的恩恵を受けますが、
反対率 53.25%で反対多数でした。
(なお、反対多数と相関がある(2) 65歳以上人口が2,30歳代人口の2.06倍であり高齢者人口の割合が高いという性質、(3) 生活保護率 220~240‰であり生活保護受給率が高いという性質を西成区はもっています。)

ここで、天王寺区と西成区に焦点を当てます。

天王寺区

前述の相関関係から2項目外れた天王寺区において反対多数であった理由として、私見ですが、文教地区である天王寺区の区民が、他の区よりも強い自尊心を持っており、中央特別区として他の中央特別区を構成することになる区と一体視されることに反対したのではないか、と考えます。天王寺区に投票率は、71.8%で、24区中2位でした。なお、投票率 1位は、天王寺区の隣の阿倍野区で、74.0%でした。商業エリアとしては、天王寺と阿倍野は一体的に捉えられますが、天王寺区は中央特別区、阿倍野区は南特別区に分かれていたことも、反対理由になったのかも知れません。

西成区

西成区は、
(2) 高齢者人口の割合が高い区 (65歳以上人口が2,30歳代人口の2.06倍 ((前掲))。全人口に占める65歳以上人口の割合(高齢者率)は24区中最高の 34.5%、資料:平成22年 国勢調査<人口等基本集計結果(大阪市> (表2-4 年齢3区分別人口の割合(平成 17 年、平成 22 年) のうち、平成22年[:2010年]))
(3) 生活保護受給率が高い区 (24区中最高の220~240‰ ((前掲)) )
でした。

しかし、(1) 西成区地域は、中央特別区の行政中心として整備される計画でした。中央特別区の当面の区庁舎は、現・西成区庁舎が使用され、将来的に西成区と浪速区の境界にある新今宮周辺の再開発に合わせ、当該地域に区庁舎を建設する構想でした。

中央特別区を構成する5区の、1人あたりの税収入は、中央区が24区中1位、西区 3位、浪速区 4位、天王寺区 5位です(なお、西成区は24位です)。資料: http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/9799/00056953/shiryou06_05_zeishu.pdf (平成20年度 大阪市区役所ごとの税収及び1人当たり税収の状況)

1人あたりの税収入の24区中トップ5区のうちの4区を含む中央特別区は、24位の西成区を含んでも、1人あたりの税収入が、東特別区、南特別区、湾岸特別区のおよそ3倍です。資料: 【大阪都否決】橋下市長はなぜ、敗れたのか(木村正人)(5つの特別区1人当たりの税収)

単独では最も貧しいにも関わらず、最も豊かな特別区の一員となり、行政中心としての投資がされる西成区は、都構想によって大きな実利を得ることになるのです。

しかし、西成区での投票結果は、反対率 53.25%で、反対多数でした。実利は、大阪市下で最も高い高齢者率、最も高い生活保護受給率に相関する強い反対支持傾向に、勝てませんでした。

まとめ

大阪市特別区設置住民投票の結果において、以下は相関を持っていました。

(0) 反対率が高い区
(1) 特別区設置によって直接の経済的恩恵を受けない区
(2) 高齢者人口の割合が高い区
(3) 生活保護受給率が高い区

これらは、相関関係を持っていただけで、因果関係(原因・結果の関係)を持っているとはいえません。しかし、今後の日本各地で行われる住民投票において、(1)(2)(3)を意識した、支持の訴え方を考えることには意味があると考えます。

補足:
*1 生活保護受給率が高いからといって、貧しい区であるとは限りません。

浪速区は、生活保護率100~120‰であり生活保護受給率が高いのですが、区民1人当たり税収は、24区中 4位であり、区全体で平均すると豊かな区であることが分かります。資料: 大阪市24区における税収状況など(平成20年度 大阪市区役所ごとの税収及び1人当たり税収の状況)

なお、区民1人当たり税収で整理した、住民投票の賛否多数の分布は、以下になります。先頭のアルファベットは、Sが住民投票での賛成多数、Hが反対多数を表します:

大阪市24区における税収状況など

平成20年度 大阪市区役所ごとの税収及び1人当たり税収の状況

1人当たり税収

S 中央区 2,477 千円/人
S 北区 1,195
S 西区 537
S 浪速区 313
H 天王寺区 300
S 淀川区 252
S 福島区 228
H 此花区 206
H 住之江区 201
H 西淀川区 189
H 阿倍野区 156
S 東成区 153
H 港区 140
H 大正区 138
S 都島区 128
H 生野区 127
H 旭区 119
H 東住吉区 109
S 東淀川区 108
H 鶴見区 107
S 城東区 102
H 住吉区 102
H 平野区 99
H 西成区 91

生活保護受給率で整理するよりも、傾向から外れる区の数が増えます。理由として、区民1人当たり税収は、少数の多額納税者の納税額が区民平均に与える影響が大きいため、1人1票の住民投票の結果と外れやすいこと考えられます。【大阪都否決】橋下市長はなぜ、敗れたのか(木村正人) (賛成率と1人あたりの税収)では、区毎における賛成率と区民1人当たりの税収の決定係数(相関係数Rの2乗値)は R^2=0.309 だったとしています(R=0.555)。

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