人間・人類による宇宙の見方は、言語によって共有される。この共有によって累積性を発揮する仕組みが、「科学」という仕組みである。
言葉は、宇宙の〈姿〉即ち〈ある見方による写像〉に合わせ、定義され分割されるべきである。それが達せられるように言葉の定義は修正されるべきだが、それが成っている範囲において、累積性のために言葉の定義は同一であるべきである。
であれば言葉は定義だけで存在するのか。科学が単独に存在するのであれば、そうであろう。
しかし、科学は、知の全てではない。ミネルヴァの梟は、夕暮れに飛び立つ。宇宙の実際的課題に取り組む最前線は、厳密な科学の領域ではない。そこにおいて仮説を立てる過程は、従来知からの類推、あるいは従来知を足の一つにした帰納である(その際に、科学が要求する厳密さは省かれる)。それを可能にする手段のひとつが、科学用語における適切な言葉選びである。知全体における、メタ知識同士の整合性である。