生産・使用と、思想・表現・言論の自由

私は、国産にかかる政治コストにおいて、法規が新たな製品の国内生産を可能にする柔軟性を持っていなければならないことを述べた。

より根本的には、思想・表現・言論の自由である。新たな思想・表現・言論が可能でなければ、新たなあらゆる事柄を、国内で生産・使用することはできない。

多人数での思想共有に大きな障害が発生するリスクがあるからだ。現代では、生産・使用を多人数で行い、コストを下げなければならないのだ。

なお、
ヨーロッパ諸国のたいていの国において、国民の思想・表現・言論の自由が保障されているものの、キリスト教が一部自由を(潜在的に)制限している。

たとえば、ホンダは、ASIMO 開発の途中でローマ教皇庁に人間型ロボットを作ることの是非について意見を求め、問題がないことを承認してもらった。

国産にかかる政治コスト

国産とは、技術力(生産設備、生産者の知識・教養・技能・管理能力など)だけによって実現されるものではない。

その国の法規が国内生産を可能として、はじめて実現する。

すなわち、法規が、

 ・新たな製品の国内生産を可能にする柔軟性

 ・安全・環境保全の確保

を両立していなければならない。

そのためには、法規の内容が、技術の本質と乖離していないことが必要であるが、新たに生産しようとする製品に関する技術は日進月歩である。

故に、

 ・適切な法規に改訂する政治コスト

が継続的に払われていなければならない。

世に役立つこととは、良きことを再現することである

世の中に役立つこととは、良きことを再現することである。

「組み合わせ」は、その強力な手法である。

様々な組み合わせを試行し、良い結果をもたらす組み合わせを選び出し、以降はこの組み合わせを実施する。良い結果は、高い確率で再現される。

「つなぎ」まで考慮しているか

自分の責任範囲を超えて「つなぎ」まで考慮しているかどうかが、総合したときの成否を分ける。

W・ブライアン・アーサー=著, 有賀 裕二=監修, 日暮 雅通=訳 : テクノロジーとイノベーション―― 進化/生成の理論 (みすず書房, 2011) p.107.

 ここには一般的教訓がある。コストは、活動がひとつの世界を離れて別の世界に入るときに積み上げられる。… “つなぎ技術”は、たいていはドメインで最も扱いにくい一面だ。

世に出された技術は、人に新たな視点を、人を導く者にカードを与える

世に出された技術は、人に新たな視点を、人を導く者にカードを与える (初出:2011/10/11 8:54am)。

これが、技術決定論、すなわち「技術が社会を変える」を理由づける。すなわち、

 世に出された技術は、人に新たな視点を、人を導く者にカードを与える。故に、技術が社会を変える。

「技術」、「視点」(が新たに生み出させる「認識」)、「カード」(それ自身あるいはその集合体としての「政策」)は、クックパッド株式会社 創業者・代表執行役社長 佐野 陽光 氏 の『世の中を動かす三要素』に相当する。

上阪 徹 : 600万人の女性に支持されるクックパッドというビジネス (角川SSC新書, 2009) p.37.

「いろいろ考えて、世の中を動かす要素って、三つじゃないか、と思ったんですね。ひとつはテクノロジー。例えば電話ができた、車ができた、テレビができた、と。そしてもうひとつは、個人の認識が変わること。みんながこうだ、と思ったら、そっちの方向に変わっていくでしょう。そしてもうひとつが、政策、だと思ったんです。道の幅はこれにしましょう、右側通行にしましょう、と決めた瞬間に世の中は変わる」

発想の元:

● 視点

最相 葉月, 瀬名 秀明 : 未来への周遊券 (ミシマ社, 2010) p.45.
瀬名 秀明 氏による

 科学は一編の論文によって私たちの世界観を変え、技術は人の視点を変える。…
 サン=テグジュペリの『人間の大地』にこうある。「飛行機は一個の機械にはちがいないが、しかしなんという分析の道具だろう!」「飛行機とともに、わたしたちは直線を知った」

ジョブズもいってた、日本メーカーがAppleに負けっ放しの理由 | More Access,More Fun!

ジョブズの語録より

◆消費者に、何が欲しいかを聞いてそれを与えるだけではいけない。

◆製品をデザインするのはとても難しい。多くの場合、人は形にして見せて貰うまで自分は何が欲しいのかわからないものだ

…つまり、

素人 = ノーアイデア

なのである。

真の発見とは、新しい見方を獲得することである

● カード

量産能力(量産コスト推移)と、需給収支は予測できる

事業を数字で表せれば、事業は意志決定者のカードになる

有人宇宙船

有人宇宙船において、目的地につくまで、乗組員は制御器にすぎない。宇宙船は巨大なエネルギーを持ち、エネルギーを制御できなくなった時、乗組員は確実に死ぬ。

有人宇宙船の実現に求められることは、

 安全性 と 説明性

である。

後者は、

・乗組員の人権を侵したと批難されず、
・事業を主導する政権の政治的リスクを極小化する

ほどに「手を尽くした」と大多数の人に認知されるだけの説明性である。

哲学と現実、科学と技術

類型がみられる。

弁証法 – Wikipedia [2011年7月8日 (金) 20:39 の版]

「ミネルヴァの梟(ふくろう)」の例えで有名な、『法の哲学』の序文でも端的に述べられているように、ヘーゲルに言わせれば、哲学は、常に現実を後追いしているに過ぎない。現実の歴史がその形成過程を終えてから、ようやくそれを反映するように観念的な知的王国としての哲学が築かれる(「ミネルヴァの梟は黄昏に飛び立つ」)のであって、「哲学の到来はいつも遅すぎる」し、決して「あるべき世界」を教えてくれるようなものでもない。

ヘンリー・ペトロスキー=著, 中島 秀人・綾野 博之=訳 : 橋はなぜ落ちたのか―設計の失敗学 (朝日選書, 2001) p.110.

 数学者や科学者達が必ずしも思い出したがらない事実だが、技術の相当数はまず成功した後にその理論的理解が生まれたのである。もちろん古典的な例は蒸気機関であり、熱力学の工学が成立するはるか以前にそれは発明され、高度の信頼性にまで発展した。実際、動く蒸気機関という人工物自体が、その動作についての理論を呼び起こしたのである。

製品の技術思想

「製品の技術思想」とは、その製品に関して「こうである」と自信を持って断定できる思想 * である。

技術思想は、その製品において最大限に重視されている。対して、技術思想に反する思想は、その製品において否定・軽視・無視されている。

技術思想は、その製品の長所とどうしようもならない短所を示唆する。

その製品の開発者でない人にとって、製品そのものから技術思想を知ることは、逆解析作業であり、困難を伴う。

* 「自信を持って断定できる思想」として、たとえば、以下を挙げることができる。
  ・コンセプト
  ・ターゲットとする市場
  ・「AでBする」という簡単な主語述語関係
  ・「AとBを組み合わせる」という簡単な組み合わせ構成

押さえておきたい文章「100年前の技術から現代への教訓を学ぶ」

新技術の普及について。

100年前の技術から現代への教訓を学ぶ(15.365 Disruptive Technology) – My Life After MIT Sloan

1) 技術力だけでは勝てない。業界や消費者の動き方を変えないのは新技術普及の鍵

このように、消費者やサプライヤーなど、バリューチェーンの自分以外のプレーヤーの動き方を変えない工夫を凝らす、というのは技術を普及させる上で重要なポイントだ。

新技術によって、バリューチェーンの他のプレーヤーの負荷が出来るだけ少ないことは、技術普及に非常に大切な要素なのだ。

2)既存技術は新技術が出てきたとき、大幅に性能アップする

新規プレーヤーは常に、この旧技術のあがきを覚悟しておく必要がある、と言う話。

3) 技術以外の要素が大切。最終的には技術でなく、システム・アーキテクチャ管理力で勝つ。

人々はそういう技術力より、「GEにお願いすれば全て整う」という理由でGEを選んだのだ。要素技術ではなく、アーキテクチャを支配し、システム全体を提供する力が重要、というのは現代のどの技術にも言える。