アメリカと中国

春秋. 日本経済新聞, 2024/11/29, 朝刊, 1面.

国にはその振る舞いを規定する独自の思想が何らかの形である。米国の場合、19世紀後半に登場したプラグマティズムがそれに当たるだろう。実用主義や道具主義などと訳される哲学だ。その創始者の一人、ジョン・デューイが100年あまり前に北京の学校を訪れた。

▼米国への留学を準備するための教育機関としてスタートした学校だ。設立は米国の意向で、親米派を増やすことが狙いだった。戦略的思考がそこにある。いまの清華大学の前身だ。かたや現代の中国もリアリズムの国。鄧小平の「黒猫・白猫論」はその象徴といえる。成果が出るなら、手法は選ばなくていいという発想だ。

▼ともに実利を重んじる両大国の間で緊張が高まりつつある。

争臣七人

春秋. 日本経済新聞, 2024/11/27, 朝刊, 1面.

中国の古典に「争臣七人」という言葉がある。争臣は君主に耳の痛い意見を言える臣下のこと。でたらめな王様も、争臣が7人いれば天下を失うことはない。この話を聞いた唐の太宗は政務に必ず諫(いさ)め役を加えることにした。その治世は、中国に空前の安定をもたらす。