2022年12月27日、阪急阪神ホールディングスの 嶋田泰夫 副社長(当時。2023年3月から同社社長)が、産経新聞のインタビューにて、阪急新大阪連絡線(新大阪-十三)、及び なにわ筋連絡線(十三-うめきた)の2031年開業方針を明らかにしました。
私が、これら新線計画の全体像をはじめて知ったのは、1995年ごろに 川島令三 : どうなる新線鉄道計画 西日本編 (産調出版, 1994/10/25) pp.123-125. を読んだ時です。関西空港の開港(1994年9月)とほぼ同時期に、同書は発行されました。
この記事では、同書を読み直して、30年前である1994年時点の阪急新大阪連絡線・なにわ筋連絡線 計画と、現在の計画を比較します。
なお、1989年(平成元年)の運輸政策審議会答申第10号「大阪圏における高速鉄道を中心とする交通網の整備に関する基本計画について」に「平成17年(2005年)までに整備に着手することが適当である区間」として挙げられている区間は、阪急新大阪連絡線(淡路-新大阪-十三)・なにわ筋連絡線(十三-うめきた※)であるため、1994年時点の阪急新大阪連絡線・なにわ筋連絡線 計画では、新大阪連絡線は、淡路駅まで建設され、京都線・千里線に接続しているとします。
また、川島氏の著書では、阪急神戸線と接続する神崎川-新大阪間の阪急免許線の同時開業が記載されていますが、運輸政策審議会答申第10号に含まれないため、神崎川-新大阪駅間に関する記述は除きました。
1994年と2023年の 阪急新大阪連絡線・なにわ筋連絡線 計画には、下記の違いがあります:
1994年時点では、
運行上の目的: 阪急各線の運行の高度化 (自由度向上)。
なにわ筋線方面には、うめきた駅で、阪急 3本線の一部列車と1回で乗り換え。
2023年では、
運行上の目的: なにわ筋線の運行の高度化 (自由度向上)。
なにわ筋線方面には、十三駅で、阪急 3本線の全列車と1回で乗り換え。
以降では、個別の項目について記載します。
軌間
1994年時点:
標準軌 (1435 mm、阪急各線と同じ)
2023年:
狭軌 (1067 mm、なにわ筋線(JR・南海)と同じ)
阪急 新大阪駅の運用
1994年時点:
阪急京都線の中間駅
2023年:
なにわ筋線(南海系統)の終着駅 (運行本数増に貢献)
阪急 うめきた駅の運用
1994年時点:
なにわ筋線への乗換駅
阪急線の大阪梅田方の終着駅 (運行本数増に貢献)※※
2023年:
なにわ筋線に乗り入れ (阪急独自のホームは無し)
補足:
※ 梅田貨物駅跡地に建設される駅を、運輸政策審議会答申第10号や川島氏の著書では「梅田北駅」と表現されているが、本記事では「うめきた駅」(実現されたのは、JR大阪駅うめきた地下ホーム)と表現する。
※※ 川島氏の著書では、(1)阪急3本線の特急の うめきた駅発着と、(2)新大阪駅経由列車のみの うめきた駅発着 の2案が併記されている。
今となっては(1)は夢物語に思えるが、なにわ筋連絡線と阪急既存線との直通有無での整備費用が比較されたのは、2007年の西梅田・十三連絡線検討 (地下鉄四つ橋線の十三延伸構想、2004年の近畿地方交通審議会による「中長期的に望まれる鉄道ネットワークを構成する新たな路線」に含まれる。大阪市は阪急神戸線への直通を構想し、整備費用検討では十三どまり案と十三以北で阪急宝塚線などに乗り入れる案が検討された) の際だとされ(西梅田・十三連絡線構想、阪急やJR西など事業化へ詰めの協議 – MSN産経ニュース (2007/10/13))、1994年時点では(1)の可能性も十分にあったと考える。なにわ筋連絡線・新大阪連絡線の直通を前提に考えたとき、新大阪連絡線と宝塚線には並走区間があり、宝塚線との連絡線の整備距離は短い (また、前述のように、1994年時点での計画では新大阪連絡線は淡路駅に達し、京都線・千里線と直通する)。
ただし、現在では、「そもそも十三駅北側の線路用地は転売されているため、宝塚本線との合流案の実現は容易ではない」(阪急・JR西日本・南海「なにわ筋連絡線」「新大阪連絡線」検討へ – 鉄道ニュース週報(197) | マイナビニュース (2019/11/ 3)) )。