1-1. 大阪都は西日本を引っ張る都市を志向している
1-2. 超大型プロジェクトは、大阪都でも実現できる
1-3. 超大型プロジェクトは、大阪都の方がうまく実現できる
・1-3-1. 他と連携し、リーダーであるために、一本化された大阪都
・1-3-2. 直接的な成果も動機にしながら、都域全体にわたり行動する大阪都
1-1. 大阪都は西日本を引っ張る都市を志向している
「大阪都構想が日本を破壊する」を著した藤井 聡氏(以下、筆者と記す)は、大阪都構想を「大阪が、関西の核(コア)となり、西日本の中心都市になる具体的戦略もありません」(同書 位置No. 1829/2368.)と評します。しかし、橋下市長は、大阪都を西日本を引っ張る都市にすること、日本を東京と大阪のダブルエンジンにすることを、繰り返し主張されています。
ダブルエンジンについては、例えば、2015年 5月 1日のテレビ大阪「ニュースリアルKANSAI」、同日のNHK大阪放送局「かんさい熱視線」の両番組でそれぞれ行われた討論において、橋下市長が言及しています。
また、橋下 徹・堺屋 太一=著「体制維新――大阪都」(文春新書,2011) pp.200-201. には、橋下氏による、以下の記述があります:
東京以外にもう一発の大エンジンをなるべく早く配置しなければなりません。これは日本のためです。それが大阪です。大阪は、ヨーロッパ各国で見られる自活型の中・小型エンジンではダメなのです。他地域・地方部までも面倒を見る大型エンジンでなければなりません。…
…僕は関西を、いや西日本を大阪が引っ張らなければならないという認識です。
…僕は、大阪府全域で大阪という都市を考えるのです。
1-2. 超大型プロジェクトは、大阪都でも実現できる
筆者は同書の最終章において、大大阪(だいおおさか)構想と銘打った超大型プロジェクト構想を披露しています。
中央リニア新幹線の名古屋・大阪同時開業、北陸-大阪-関空-四国を結ぶ新幹線の開業、紀淡海峡の友が島での防潮堤建設(南海地震による津波対策、兼 四国新幹線の路盤)、新大阪・「うめきた」再開発などが内容です。採算性への疑問はありますが、魅力的な提案だと思います。
筆者は、大阪市中心部での土地収用を含む超大型プロジェクトは、大阪都にはできない、と主張しています。
筆者が掲げるその理由は、以下の2点です。
(1) 郊外の土地収用をしてきた大阪府に、都心の土地収用をするノウハウはない。そのようなノウハウは、大阪市がもっており、大阪市が失われるとノウハウも失われる。
(2) 大阪都への移行に労力を投じるため、行政能力が大阪都初期に縮減し、超大型プロジェクトを実施できない。
理由(1)を、私は理解しがたいです。大阪市の土地収用部隊を、大阪都が持てばよいのです。大阪都構想は、広域行政を大阪都に集約するのですから、広域行政に関わる土地収用の機能と能力を大阪市から大阪都に移管することは、当然のことだと考えます。
理由(2)は理解できますが、だからこそなるべく早く改革に着手するべきだと考えます。
1-3. 超大型プロジェクトは、大阪都の方がうまく実現できる
私は、大阪都の方が超大型プロジェクトを実施する体制として優れていると考えます。
1-3-1. 他と連携し、リーダーであるために、一本化された大阪都
筆者の大大阪構想の前提は、「大阪がリーダーとなって、周辺都市(京神・関西)、周辺地域(四国、北陸、山陽、山陰)、そして、中央政府・国会と徹底的に連携」することです(同書 位置No. 1824/2368.)。ここでの〈大阪〉として、筆者は、大阪府と大阪市の両者を考えているのでしょうが、これが大阪都に一本化されている方が、他県・他地域・中央と連携する上で望ましいことは明らかです。さらにこれらの連携の中で〈大阪〉がリーダーであるためには、大阪都に一本化されていることが必須だと考えます。
1-3-2. 直接的な成果も動機にしながら、都域全体にわたり行動する大阪都
リニアや新幹線の場合に特に顕著ですが、超大型プロジェクトの直接的成果は大阪市域に生じ、且つ市域外の大阪府域に負担設備が必要です。
大阪府域に、リニアの駅は、大阪市域の新大阪にしか作られないし、新幹線の駅も、新大阪・大阪都心部・堺・(岸和田)・関空にしか作られないでしょう。政令市の市域外では(岸和田)・関空だけであり、つまり、政令市域外の大阪府域は素通りです。
大阪市域に手を出しにくい大阪府は、超大型プロジェクトの直接の成果を得られません。大阪市域外の大阪府民も便利になるのですが、大阪府の成果は間接的になります。例えば、府議会議員にとって、間接的な成果のための行動には限界があるでしょう。
大阪都になって、大阪市域に関する権限と責任を持った大阪都は、超大型プロジェクトの直接の成果を得られます。成果は、駅の利便性の高さ、駅周辺設備の整備によって、大きくなります。したがって、大阪市域に建設される駅や駅周辺整備に、大阪都は十分な投資をするでしょう。
また、同じく大阪都が、駅以外の路線部に携わります。路線部の完成も直接的な成果を手にするための必須条件です。大阪府と大阪市の調整が不要になるだけでなく、直接的な成果という動機をもつ大阪都によって、路線部の最適化が早く実施され、建設が早く進むことが考えられます。
註:
この文章の中で、大阪都構想は、今回の住民投票の焦点である、特別区設置協定書に基づく大阪都構想を指し、大阪都は、同大阪都構想の実現後の大阪府(維新の党は、大阪都への名称変更法案を国会に提出するとしている)を指します。