理屈の辻褄が合っていても、非常識はいかん

春秋. 日本経済新聞, 2025/3/26, 1面.

西武グループの創業者、堤康次郎氏は不動産業などで莫大な富を築いた。しかし死後、払うべき相続税がほぼゼロだとわかる。資産の多くが法人名義などになっていたためだ。遺族が納得する中、これでいいのかと疑問を覚えたのが康次郎氏の子の一人、清二氏だった。

▼辻井喬の筆名で記した回顧録「叙情と闘争」で振り返っている。故人と親しかった池田勇人首相に相談すると、言下に答えが返ってきた。「清二君、それは無理だよ、いくら理屈の辻褄(つじつま)が合っていても、非常識はいかん」。そのため相続税の対象となる個人資産をあえて作り、億単位の税金を納めるように提案したそうだ。