権力が奉仕する何かの目的がなければならない

春秋. 日本経済新聞, 2023/10/29, 1面.

独特の語り口から「アーウー宰相」と呼ばれた大平正芳元首相は、東西の思想に通じた政界屈指の知性派でもあった。彼は1971年3月、「新権力論」と題した文章を本紙に寄稿した。ルネサンス期の政治思想家のマキャベリを下敷きに、権謀術数の意味を考察した。

▼その中にこんな一文がある。「(権力は)それ自体孤立してあるものではなく、権力が奉仕する何かの目的がなければならない」。それは権力と比べて「より高次のもの」であるべきだとした。

大平は「むずかしいのは何が目的かということである」とした。

大平正芳 : 新権力論 (公益財団法人大平正芳記念財団)