新製品普及のための5つの条件

槌屋 治紀 : 燃料電池と水素エネルギー 次世代エネルギーの本命に迫る (サイエンス・アイ新書, 2007) p.141.

新製品普及のための5つの条件([米国ニューメキシコ大学教授] ロジャーズ)

(1) 相対的優位性 (リラティブ・アドバンテージ)
 既存のものに比較して有利であること

(2) 互換性 (コンパティビリティ)
 現状から無理なく乗り替えられること

(3) 複雑性 (コンプレキシティ)
 複雑でないこと

(4) 試行可能性 (トライアビリティ)
 すぐに試してみることができること

(5) 視認性 (オブザーバビリティ)
 ほかの人にもその効果が見えること

安全と安定の両立

原発事故をうけて、「安全と安定の両立」という文言が新聞紙上に表れている。

『「安全と安定を両立」しなければならない』ことが顕在化されたことは喜ばしい。

しかし、『いかにして「安全と安定を両立」するのか』。この解を得ることが非常に難しいという認識がもたれなければならないだろう。

安全と安定はトレードオフの関係にある。トレードオフの解決が、両立を可能にする。

しかも、コストに関わる問題であるため、最良の解答が要求される。

複雑なトレードオフ問題を解く手法は、シミュレーションが一般的だが、それにはシミュレーション対象に通じた優秀な頭脳をある程度の期間、投じる必要がある。

対数グラフ

● 普通のグラフ( y-x )

グラフ上の直線は、y=ax+b, dy/dx = a (一定) を表わす。

● 片対数グラフ( log(y)-x )

グラフ上の直線は、y= exp(ax+b), dy/dx = ay を表わす。

dy/dx = ay の性質は、x を時間(t)にとる場合によく見られる。

無限に分裂する細胞を考え、 y をある時刻における細胞の個数として、a を単位時間にその細胞が分裂して新たに生まれる細胞の数だとすると、

 dy/dt = ay, y= exp(at+b)

を満たす。a が負の値をとる場合の例は、大気圧力 p と高度 z の関係(山の上では大気圧が低い)、

 dp/dz = (- g/R/T) p, g: 重力加速度、R: 空気の気体定数、T: 温度

や、崩壊によって減少していく放射性核種の数 y と時間 t の関係を表現できる。

y方向に極端に範囲の広いデータを扱える。

● 両対数グラフ( log(y)-log(x) )

グラフ上の直線は、冪関数(べきかんすう) y= x^a, dy/dx = a*x^(a-1) を表わす。

グラフ上の傾きが、a を表わす。

x,y 両方向に極端に範囲の広いデータを扱える。

自動車メーカーの未来

移動体とは、重量と機関出力のトレードオフを高度に解決した製品である。特に、乗り物は、さらに安全性の問題も解決した製品である。

さて、電気自動車などモータを機関とする自動車は、インバーターとモーターとの組み合わせによって、機関自身に物理的なトレードオフを抱えない…と、まで書いたら言い過ぎかもしれないが、熱機関であるエンジンよりは機関自身に物理的なトレードオフをもっていない。

自動車メーカーがモータを機関とする自動車の生産に主軸を移した時に、自動車メーカーが、ガソリン自動車メーカー時代と同じ高度さの、部品(ある機能を持った部品の集合体を意味するコンポーネントをも含む)がもつトレードオフを見据える「分析の目」を持ち続けることは困難だろう。モーターやバッテリーの能力と重量のみを考える、分析的でない視力しか持たなくなるかもしれない。

たとえ、自動車部品から、部品がもつトレードオフがなくなったとしても、自動車関連の機械には、そのトレードオフが内在する。自動車メーカーが、関連する機械がもつそのような性質を理解できるか、これが将来における自動車メーカーの社会における地位を決めるひとつの要素になると考える。

例外の地位

新しい日本へ 第3部 世界が見つめる (4) 原発維持 フクシマの教訓 安全性強化への期待高く. 日本経済新聞, 2011/ 6/ 5, 朝刊, 1面.

 米英仏中ロの五大国に核兵器保有を限定する核拡散防止条約(NPT)。その枠内で国際社会は原発燃料の製造から再処理までの核燃料サイクル技術の確立を、被爆国日本に例外的に認め、日本は原発部品供給などで主導的な役割を果たしてきた。

B2爆撃機の音

「心神」飛翔への道 国産戦闘機とFX選定 (4) 異色の技術屋 開発最前線に コードネーム決定. 日本経済新聞, 2008/12/ 4, 夕刊, 3面.

「あの方角からステルス爆撃機 B2 が飛んできます」。米国防総省担当者の説明を受け、目を凝らして見ているとカラスの群れの中からいきなり一つだけが大きな黒い塊、すなわち B2 となって現れた。その、耳にしたのはジェット戦闘機に付き物の爆音とは無縁の「ヒュルン、ヒュルン」という乾いた高音だけだった。