移動体とは、重量と機関出力のトレードオフを高度に解決した製品である。特に、乗り物は、さらに安全性の問題も解決した製品である。
さて、電気自動車などモータを機関とする自動車は、インバーターとモーターとの組み合わせによって、機関自身に物理的なトレードオフを抱えない…と、まで書いたら言い過ぎかもしれないが、熱機関であるエンジンよりは機関自身に物理的なトレードオフをもっていない。
自動車メーカーがモータを機関とする自動車の生産に主軸を移した時に、自動車メーカーが、ガソリン自動車メーカー時代と同じ高度さの、部品(ある機能を持った部品の集合体を意味するコンポーネントをも含む)がもつトレードオフを見据える「分析の目」を持ち続けることは困難だろう。モーターやバッテリーの能力と重量のみを考える、分析的でない視力しか持たなくなるかもしれない。
たとえ、自動車部品から、部品がもつトレードオフがなくなったとしても、自動車関連の機械には、そのトレードオフが内在する。自動車メーカーが、関連する機械がもつそのような性質を理解できるか、これが将来における自動車メーカーの社会における地位を決めるひとつの要素になると考える。