知識の整理の仕方には、2種類があります。
一つは、ピラミッド型の整理、
もう一つは、ネットワーク型の整理です。
前者をツリー型、後者をリゾーム型と呼ぶこともできます。
(なお、個々の知識は、適切な土台の上に、適切な方法で成り立っているものとします。)
これからの時代は、下記の理由で、ネットワーク型の整理が、発展していくと考えられます。
その前に、ネットワーク型の整理の発展による効用を説明します:
ネットワーク型の整理の発展による効用
ピラミッド型の整理では埋もれやすい知識を、ネットワーク型の整理では位置付けることができ、それらに光があたります(すなわち、多数の人々の関心の対象になり得ます)。
また、これが、知の世界の豊穣さを明らかに見せます。
合わせて、それぞれの知識に関心がある人と人が繋がることによって、多様な人々からなる社会の連携度合いが高まります。
それでは、ネットワーク型の整理が これから発展していく理由です:
ネットワーク型の整理が発展する理由1: 技術的な理由。ワールド・ワイド・ウェブ(WWW)の存在
WWW は、Googleクローム、Internet Explorer や Safari などのブラウザのなかで閲覧できる、いわゆる「インターネット」のことです。正確には、インターネット上で提供されているハイパーテキストシステムです。
1991年に公開され、現在は当たり前のものにまで発展・普及しました。
WWW のリンク機能によって ネットワーク型の整理を万人が表現でき、またインターネット上にあることで その整理を万人が閲覧できるようになりました。
ネットワーク型の整理を社会で共有することが可能になったのです。
ネットワーク型の整理が発展する理由2: 経済的な理由。「限界費用ゼロ社会」の到来
限界費用ゼロ社会とは、限界費用がゼロの社会のことを指しますが、限界費用とは生産量を小さく一単位だけ増加させたとき、総費用がどれだけ増加するかを考えたときの、その増加分です。
全くのゼロになることは考えにくいですが、限界費用が低くなってきているのは感じられます。消費者から見れば、定額制サービスは限界費用ゼロです。
ピラミッド型の整理の利点のひとつは、一定程度の網羅性を保証していることにあります。したがって、状況に対して見落としが少なく、リスクを一定以下にまで低減できます。よって、低減リスクぶんのコストを、整理の元になる知識の獲得に充てることができます。
対して、ネットワーク型の整理では、網羅性の保証はありません。よって、リスクが一定以下にまで低減される保証はなく、整理の元になる知識の獲得に充てられるコストが限られます。しかし、知識獲得の限界費用が低減されていれば、そのコスト負担は許容できます。
ネットワーク型の整理を発展させる経済的状況が生じているのです。
補足1:
上記は、ピラミッド型の整理を優、ネットワーク型の整理を劣だと読めるかもしれませんが、そのような意図はありません。
ピラミッド型の整理の集積と、ネットワーク型の整理の集積の比較は、困難です。しかし、ネットワーク型の整理の発展は、ロングテールの考え方を再認識させるものになると思います。
補足2:
知識獲得の限界費用の低減を妨げる可能性として、個々の知識の提供者が、知識提供にリスクがある場合があります。
例えば、複数の主張がある中で、それぞれを主張する団体や個人が、自分の主張に反する知識の提供中止を、知識の提供者に迫る状況です。
これが実施されてしまうと、知識の提供者にとって知識提供にリスクが生じて、知識獲得の限界費用が上がり、ネットワーク型の整理が妨げられます。
そのようなことが起きないために、「理性と自由を軸にしよう。理性に従い、自らを拘束せず、そして他者の自由を認めよう」という心持ち・行動様式が、正しいものとして社会に根付いている必要があります。