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2015/10/06
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「失敗の本質」を克服した台湾
一方、近年の学生運動のなかで王丹の法則を克服できたレアケースも紹介しておきたい。それは台湾のヒマワリ学運だ。すなわち、昨年3月23日、現地の馬英九政権が進めていた対中貿易協定(服貿協定)の批准に反対する学生団体が立法院(国会議事堂)を占拠し、同月30日には市内で数十万人規模のデモを組織。最終的に服貿協定を凍結状態に追い込むことに成功した事件である。
以下、その特徴を見ていこう。
1:思想的基礎(主張内容の整理と明確化)
あいまいな目標を掲げたり複数の論点を出したりせず、主張を誰にでもわかりやすい服貿協定の撤回だけに絞った。リーダーたちは緑陣営(民進党系、台湾自立派)に近い立場にもかかわらず、「台湾独立」「馬英九退陣」「新自由主義反対」といった他のイデオロギーをほとんど持ち出さなかった。
2:組織的基礎(運動の分裂傾向の克服)
林飛帆・陳為廷の2人が絶対的なリーダーとして君臨し、指導部が分裂しなかった。また、既存政党や政治団体(過激な台湾独立派団体も含む)、NGOなどの協力を受け入れつつも、運動を乗っ取られることなく、指導部が最後まで全体の決定権を保持し続けた。
3:大衆的基礎(内輪だけの盛り上がりの克服)
過激だったりイデオロギー色が強かったりする言葉や、支持者にしか理解できない飛躍した論理をほとんど使わなかった。結果、与党支持層の一部を含む、世論の過半数の支持を獲得するに至った。当時、私が取材したリーダーの陳為廷は、「(過激な表現は)『イヤな感じ』がするよね」「穏健な主張をした方が、一般の人々が支持してくれることを体験的に知っているんだ」と話している。
4:戦略と戦術(「学生運動の“純粋性”」の克服)
リーダーたちは与党・国民党それ自体の批判はおこなわず、むしろ水面下で与党側としたたかに交渉した。結果、国民党内の反主流派で馬英九総統の政敵である大物政治家・王金平の協力を得ることに成功。服貿協定の事実上の凍結を与党政治家に宣言させることで、デモの政治目的を達成した。
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岩田氏:
川上さんからはどう見えてます? 傍から見ると,任天堂って結構謎だったりしませんか?
川上氏:
いやあ,分からないです。分からないんですけど,少なくとも岩田さんは「調整型」には見えません。それに「論理の人」っていうのは,あの,僕は「調整能力が低い人間」だと思うんですよ(笑)
岩田氏:
あはは。
川上氏:
だって,自分で考え抜いた結果が一番正しいって信じているわけですからね。だから,「結果的に独裁になっているんじゃないか?」っていうのが僕の予想なんですけど。
岩田氏:
あの,なんていうかな。会社の中……というより,人間の集団の中って,「この人とこの人とこの人が味方に付いてくれたら,みんなの意見はある程度揃うよね」みたいなところってあるじゃないですか。あるいは逆に,100人が100人,共通の未来を信じるなんてことは,その未来と現状とのギャップがあるほど,難しいですよね。
川上氏:
はい。
岩田氏:
例えば,「これからはこうだと思うんだよ,俺はこうするぞ!」って言ったら,100人の人がいたら,20人ぐらいは「その通りだ!」と思ってすぐに立ち上がって走り出す人がいて。まあ,20人ぐらい,「社長はああ言ってるけど,うまくいかないんじゃないの?」と言う人がいて。
川上氏:
いますよね。
岩田氏:
どんな組織でもね,多少の差はあるんですけど,だいたいそんな配分だと思うんですね。問題は残りの6割の人で。この人たちはどちらにも強い思いはないんだけど,彼らがどこまで動くかで,物事が一気に進むかどうかが決まると思うんです。
4Gamer:
それは,何か閾値みたいなものってあるんですか?
岩田氏:
そこはね。ある程度,私が経験則で感じている部分があって,ときどき社内でも喋るんですよ。
4Gamer:
お聞きしてみたいです。
岩田氏:
例えば,何か新しい挑戦をしようとするじゃないですか。さっきもお話しましたけど,最初に賛成するのは2割,反対するのも2割くらいなんですね。で,頑張って努力していると,残りの6割の中で,ちょっとずつ賛成派が増えていくんですよ。
そして,その人数が,全体の1/3くらいになった瞬間が臨界点で,一気にムードが変わって,残りの6割だった人がほとんど賛成派になる。極端な時は,反対派の人たちの中にも「俺は最初からそう思ってた」みたいなことを言い出す人が現れます。
川上氏:
ああ,言いますよねぇ。
岩田氏:
逆に,新しい試みの多くが失敗する理由は,その2割が33%になるまでの時間がない,待てないからなんです。
4Gamer:
なるほど。
岩田氏:
待てずにあきらめてしまうんですよ。新しいことをやるには時間が要るし,どうしても重たいものを引っ張らざるをえないんですけど,そこを耐えるのがね,やっぱり大変なんですね。
川上氏:
結果が出せない時期はとくに苦しいですしね。
岩田氏:
はい。だから,まずは小さな結果を見てもらうことが大事なんですよ。そうすると,「あ,本当なんだ!」って信じてくれる人が増えて,それが一定数を超えたときに,ものすごい力を生むんです。
私は,過去にいろいろなことを「変えなきゃ!」と思ってやってきましたが,33%を超えたら物事が進むっていうのは,全部そうだったんですね。
だから,途中からは結構意識的に,「今回は33%を超えるまでにこのくらい時間がかかるだろう」とか「この人達を説得できれば,33%を超えるな」みたいな動き方をするようにしています。
川上氏:
なるほど。
岩田氏:
まぁ,この私のやり方が外からどう見えるのかは分からないんですが,単純な独裁とは違う気がするし,2割を33%にしていく過程で,いろいろな人の意見は聞くようにもしています。まぁただ,環境が変わらない限りは,一度向いた方向を変えることは少ないかもしれませんね。そこは, 2割が33%に増えるまで「粘れば勝ちだ」と思っているからかもしれません。