マーチン・ファン クレフェルト「補給戦―何が勝敗を決定するのか」

     

評価・状態: 得られるものがあった本★★☆

マーチン・ファン・クレフェルト=著, 佐藤 佐三郎=訳 : 補給戦――何が勝敗を決定するのか (中公文庫, 2006)

購入: 2008/ 4/ 8
読了: 2008/ 5/20

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2008年度の読書記録 --- 戦術 1冊

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志ある者が知っておくべきこと――高度の平凡性 --- 戦争では単純さのみが勝つ

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志ある者が知っておくべきこと――高度の平凡性 --- ノルマンディー上陸作戦は、計画が無視されて成功した

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ランチェスターの法則「べからず集」 --- *2 戦力の集中

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給養方式が戦争を規定する

記事ページ 発行: 2008年07月21日

クラウゼヴィッツ=著 篠田英雄=訳: 戦争論 (中) (岩波書店, 1968) p.233.

>戦争が給養方式を規定するのか、それとも給養が戦争を規定するのか、という問題である。この問題に対する解答はこうである。―― 戦争の遂行に必要な自余いっさいの条件が許す限り、先ず給養方式が戦争を規定するだろう、しかしこれらの条件が従来の給養方式に反対し始め、もはやその存続を許さないようになると、逆に戦争が給養方式を規定するのである、と。

はじめてこの文章に出会ったとき、「給養方式が戦争を規定する」の意味がわからなかった。

しかし、マーチン・ファン クレフェルト「補給戦―何が勝敗を決定するのか」を読んで、意味がわかった。

  「腹が減っては戦はできぬ」。だから、「腹が減らないように戦をする」、

ということなのだ。

具体的には、次の2点があたる。
  • 現地徴発が成功するように、豊かな穀倉地帯を進軍する。
  • 食糧を求めるために頻繁に移動する。*1

*   *   *

マーチン・ファン・クレフェルト=著, 佐藤 佐三郎=訳 : 補給戦――何が勝敗を決定するのか (中公文庫, 2006) p.31.

>結論は再び兵站上の考慮が戦略より優先されることになった。


*1: これは、第一次大戦以後、補給物資の主が、食糧から弾薬に変わることによって、解消された。さらに、今度は、頻繁な移動が、かえって不可能になった。

マーチン・ファン・クレフェルト=著, 佐藤 佐三郎=訳 : 補給戦――何が勝敗を決定するのか (中公文庫, 2006) p.387.

>新しい必要物質[:弾薬]は、基地からの絶え間ない補充でまかなうしかなかった。そのために、今や停止中の軍隊を維持するのは比較的容易になり、急速に移動中の軍隊を維持するほうがほとんど不可能になった。


関連:
補給艦は楽しい
http://mkynet.hp.infoseek.co.jp/webcic/lib/inw2/wm-c_0409240.html#2

 

インフラの国際標準化に対する軍事的解釈

記事ページ 発行: 2008年07月20日

国際標準化されたインフラは、敵軍の侵攻を容易にさせる。

マーチン・ファン・クレフェルト=著, 佐藤 佐三郎=訳 : 補給戦――何が勝敗を決定するのか (中公文庫, 2006) p.268.

 装甲前進部隊がロシアの奥地深く突っ込むにつれ、その背後にいる鉄道部隊は、鉄道を修理しドイツ式軌間に変更するために必死で作業していた。

マーチン・ファン・クレフェルト=著, 佐藤 佐三郎=訳 : 補給戦――何が勝敗を決定するのか (中公文庫, 2006) p.269.

鹵獲貨車もろともロシアのレールを利用することになっていたが、ドイツの列車からロシアの列車への乗り換え地点が、全兵站組織の隘路になっていることが間もなく明らかになった。... 鉄道乗り換え地点シャウレンの状況は「破滅的」と言われた。



 

砲弾量の戦いになったのは第一次世界大戦以降

記事ページ 発行: 2008年07月22日

砲弾量の戦いになったのは第一次世界大戦以降である。

第一次世界大戦をほとんど戦わなかった日本軍に、第二次世界大戦に表われた砲弾量の戦いは想像しがたいものであった。

マーチン・ファン・クレフェルト=著, 佐藤 佐三郎=訳 : 補給戦――何が勝敗を決定するのか (中公文庫, 2006) p.65.

>食糧供給に比べて弾薬の補給は、はるか後年の一八七〇年の普仏戦争後まで、たいしたことではなかった。*1


普仏戦争:
マーチン・ファン・クレフェルト=著, 佐藤 佐三郎=訳 : 補給戦――何が勝敗を決定するのか (中公文庫, 2006)p.174.

>例えば五ヶ月間の作戦行動の間、平均五六発が兵士一人によって発射されたにすぎなかった。


そして、第一次世界大戦に状況は一変した。

マーチン・ファン・クレフェルト=著, 佐藤 佐三郎=訳 : 補給戦――何が勝敗を決定するのか (中公文庫, 2006) p.188.

>一八七〇〜七一年ではドイツの大砲は一門当たり平均一九九発を発射したに過ぎなかったが、一九一四年ではドイツ陸軍省によって保有されていた各砲約一〇〇〇発の弾丸が、戦争開始後一ヵ月半以内にほとんどなくなっていた。

マーチン・ファン・クレフェルト=著, 佐藤 佐三郎=訳 : 補給戦――何が勝敗を決定するのか (中公文庫, 2006)p.387.

>第一次世界大戦の最初の数ヵ月で弾薬対他の補給品の比率は逆転、第二次世界大戦では食糧は全補給物資の八ないし一二パーセントを占めるにすぎなかった。


第二次世界大戦において、米軍は日本軍に、日本軍にとって想定外であったろう砲弾量を浴びせた。

堀 栄三 : 大本営参謀の情報戦記―情報なき国家の悲劇 (文春文庫, 1996) p.125.

> 巡洋艦と駆逐艦では大砲の大きさが違うが、平均して一発は八〇キロと仮定する。前述の艦砲射撃三百六十トンは四千五百発となる。米軍の上陸正面約千五百メートル(...)に四千五百発が撃ち込まれたことになり、日本軍の正面一メートルに三発、一発の有効破壊半径は百メートルあるから、まったく地獄絵そのものという以外にない。

堀 栄三 : 大本営参謀の情報戦記―情報なき国家の悲劇 (文春文庫, 1996) p.238.

>五百隻を超える大艦隊の集団から、一斉に機関砲の弾幕が撃ち出された。リンガエン湾の空は一瞬にして真っ黒な雷雲に包まれたようになって、...
... 机の上では絶対に理解出来ない何十万発の弾量であった。


*1: 17世紀に関しては マーチン・ファン・クレフェルト=著, 佐藤 佐三郎=訳 : 補給戦――何が勝敗を決定するのか (中公文庫, 2006) p.65 に、18世紀に関しては 同書 p.101 に記述がある。

 

第二次世界大戦、世界の軍隊は自動車化されていなかった

記事ページ 発行: 2008年07月26日

マーチン・ファン・クレフェルト=著, 佐藤 佐三郎=訳 : 補給戦――何が勝敗を決定するのか (中公文庫, 2006) p.246.

>自動車台数の急減に直面した OKH [:ドイツ国防軍陸軍総司令部]は、一九四〇年一月に各歩兵師団の自動車補給部隊の数を半分に減らし、後の半分を馬車に置き換えざるをえなくなった。

マーチン・ファン・クレフェルト=著, 佐藤 佐三郎=訳 : 補給戦――何が勝敗を決定するのか (中公文庫, 2006) p.296.

>第二次大戦の全期間を通じて完全に自動車化された軍隊の創設に手を染めることができたのは、交戦国中たった一ヵ国しか存在しなかった――アメリカ合衆国である。



 

上陸の前に小島を確保する

記事ページ 発行: 2008年08月10日

堀 栄三 : 大本営参謀の情報戦記―情報なき国家の悲劇 (文春文庫, 1996) pp.149-150.

大屋 角造中佐(大本営陸軍部 第2部第6課 米国班長)翻訳『米軍野外教令・上陸作戦 (極秘)』内

>「一連の小島嶼(...)は上陸地として有利なるものにして、主力の上陸に先行して、一、二の小島を占領するは有利にして、且つ必要なり。通常この種の作戦は他の上陸に比較して困難ならず」


マーチン・ファン・クレフェルト=著, 佐藤 佐三郎=訳 : 補給戦――何が勝敗を決定するのか (中公文庫, 2006) p.346.

ノルマンディー上陸作戦(「オーバーロード」作戦)を計画した人々による、連合国軍によるヨーロッパ侵攻を成功させるための最も重要な要因だと判断された事柄のひとつ:

>(c) 海浜から適当な距離のところに、かなりの能力を持つ停泊地があること(...)。そのような港湾があって初めて連合国軍の大陸拠点を長期確保できるとみなされた。



 

戦争は、消費速度の大きなものが勝つ

記事ページ 発行: 2008年08月10日

戦争は、消費速度の大きなものが勝つ。

マーチン・ファン・クレフェルト=著, 佐藤 佐三郎=訳 : 補給戦――何が勝敗を決定するのか (中公文庫, 2006) p.345.

> 「オーバーロード」作戦を計画した人々は、連合国軍によるヨーロッパ侵攻が最終的に成功するかどうかは、敵を上回る速度で、兵力と資材を投入できるか否かにかかっていることをよく承知していた。



 

志ある者が知っておくべきこと――高度の平凡性

記事ページ 発行: 2008年09月03日

この進んだ現代に、志ある者は、背伸びして成功をつかもうと思うことだろう。

しかし、成功は背伸びではなく、誰もが行う歩みによって得られる。

つまり、成功は、あなたが持つ突出したものではなく、平凡なものによってなされる。

戸部 良一, 寺本 義也, 鎌田 伸一, 杉之尾 孝生, 村井 友秀, 野中 郁次郎 : 失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫, 1991) p.220.

>巨大で複雑な、組織化された現代戦の作戦で成功を勝ち取るのに必要不可欠な「高度の平凡性」(フィールド『レイテ湾の日本艦隊』)

志ある者にとって、背伸びしてはならないとは、何たる不条理であろうか。恨むならば、現代の複雑さ *1 を恨め。

以下に分けて示す。


脚注:

*1: マーチン・ファン・クレフェルト=著, 佐藤 佐三郎=訳 : 補給戦――何が勝敗を決定するのか (中公文庫, 2006) p.390.

>機構中の摩擦――人間であれ機械であれ――は、その部品が多くなればなるほど増すからである――これは収益逓減の法則の代表例だ。


 

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