大熊 康之「戦略・ドクトリン統合防衛革命―マハンからセブロウスキーまで米軍事革命思想家のアプローチに学ぶ」

     

評価・状態: 得られるものが秀逸・多量な本★★★



購入: 2011/ 7/26
読了: 2014/ 1 [3]

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この本からの引用、または非常に関連する記事

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納期短縮というソリューションの領域

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客先の判断のスピードが速くなるにつれ、短い納期が要求されるようになる。

このとき、納期短縮の一連の解決法(ソリューション)は、客先納入までの一過性のものであるにも関わらず、大きな意味を持つ。そして、このソリューションは、メーカー中心の、すなわち、メーカーが主導権を握るソリューションである。

関連:
大熊 康之 : 戦略・ドクトリン統合防衛革命―マハンからセブロウスキーまで米軍事革命思想家のアプローチに学ぶ (かや書房, 2011) p.222.

彼[:John Boyd 空軍大佐(退役)]はこのことから「敵よりも迅速なテンポ又はリズムで作戦する我の能力は、敵を敵自身のシステムに封じ込め、外部で展開中の事象に適応するこを許さず、混乱と無秩序に陥らせる」ことになり、これによって、敵対者に対する新しい戦略を構築することができる、とした。



 

米中首脳会談に想起する、覇権条項と海洋の管制

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遠い米中「新時代」 首脳会談、協調の裏で駆け引き:日本経済新聞 (2013/6/9 0:45)

7日のオバマ米大統領と中国の習近平国家主席による初の米中首脳会談では、今後数年間をにらんで新たな協調を目指すことで一致した。
(中略)
 「大国同士の新たな関係のモデルをつくるべきだ」。習主席は7日の首脳会談でこのせりふを何度も繰り返した。

私は、2つのことを想起した。(1)覇権条項と、(2)海洋の管制である。

(1) 覇権条項

「覇権条項」とは、日中共同声明(1972)の七項、あるいは日中平和友好条約(1978)の第二条を指す。

日中共同声明
七 日中両国間の国交正常化は、第三国に対するものではない。両国のいずれも、アジア・太平洋地域において覇権を求めるべきではなく、このような覇権を確立しようとする他のいかなる国あるいは国の集団による試みにも反対する。

日中平和友好条約
第二条 両締約国は、そのいずれも、アジア・太平洋地域においても又は他のいずれの地域においても覇権を求めるべきではなく、また、このような覇権を確立しようとする他のいかなる国又は国の集団による試みにも反対することを表明する。

なお、ここにいう「覇権を確立しようとする」国としては、当時、ソビエト連邦が想定されていた。

(2) 海洋の管制
――「海洋の管制」(Control of the Sea) あるいは、その発展として「公共財の管制」(Command of the Commons)

「海洋の管制」とは、
「(所要の重要)海洋を(必ずしも長期持続的ではないが)自ら望む時に自ら望む方法で自由に利用(Assured Access)し、同時に敵にはそれを許さない(Area Denial)」 (* p.74.)
ことである。

「海洋の管制」の概念は、『海上権力史論』で知られるマハン(Alfred Thayer Mahan)が、その創案者だと言われる(* p.74.)。マハンは、自叙伝に「海洋の管制」は「20年間私の全著作の核心となった」(* p.73.)と記している。

 * : 大熊 康之 : 戦略・ドクトリン統合防衛革命―マハンからセブロウスキーまで米軍事革命思想家のアプローチに学ぶ (かや書房, 2011)

マサチューセッツ工科大学(MIT)の政治学教授 ポーザン(Barry Posen) は、2003年に発表した論文「Command of the Commons」において、
[「管制」とは、] 米国が、海洋、宇宙及び空中[:「公共財」]から他国よりも圧倒的に強力な軍事的利用を行い、一旦緩急ある場合、他国に対してそれらの利用拒否の脅迫を高い信頼度をもって行うことを可能とし、そして仮に他国が米国の意志を拒否すれば、その国は公共財の軍事的争奪に(極めて長期にわたって再挑戦が不可能となる形で)敗北する、ことを意味する (* p.82.)
旨を記した。


 

選択肢の減少の捉え方

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以下の2つの考え方は、選択肢をなるべく多く確保しようとする私にとって衝撃であった:

「意思決定の選択肢を減少する=良き戦術を連結する」 *1
「たくさんの可能性のなかから一つを選択する方が、...後悔しやすい」 *2


*1: 大熊 康之 : 戦略・ドクトリン統合防衛革命―マハンからセブロウスキーまで米軍事革命思想家のアプローチに学ぶ (かや書房, 2011) p.24.

米国最高の海軍戦術家ヒューズ(Wayne Hughes)は、ドクトリンについて次のように解説している。すなわち、ドクトリンは、良きリーダーの常備の作戦命令であり、戦闘の混沌の中でリーダーの意思決定の選択肢を減少(良き戦術を連結)する。そして、上級指揮官には、新たに自らの指揮下に入る艦/機が既に所要の戦闘技量を保有することを保証し、また艦/機長には、自らが所掌する人員・武器が、戦闘において新編成部隊の戦闘手順に速やかに適応し得ることを保証するものである。ドクトリンは、死活的に重要なものではあるが、実戦に当たっては決して教条主義に陥ることなく、リーダーに自由裁量の余地を残すものでなければならない、としている。

*2: 羽生 善治 : 大局観 自分と闘って負けない心 (角川oneテーマ21, 2012) p.24.
「多くの可能性から一つを選択するのと、少ない可能性から一つを選択するのとでは、あとになってどちらが後悔しやすいか?」
 答えは、前者である。
 たくさんの可能性のなかから一つを選択する方が、少ない可能性から一つを選択するより後悔しやすい、という傾向がある。





 

模倣できれば、優でもあり、良でもあり、可でもあり、だよ

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自分の行動は、神話やその頽落した形式である物語によってすでに語られていることの拙劣な模倣に過ぎない。――セネカ

大熊 康之 : 戦略・ドクトリン統合防衛革命―マハンからセブロウスキーまで米軍事革命思想家のアプローチに学ぶ (かや書房, 2011) p.12.

 我々は、近代生活の全ての領域で、物事を“組織的”にであれ、“歴史的”にであれ、又は“哲学的”にであれ、根源まで突き詰めるときはいつでも、古代〔ギリシア〕及びキリスト教内で成立した精神的構造に突き当たるはずである。

[:ハイゼンベルク(Werner Heisenberg, ドイツ, 1932年ノーベル物理学賞)『現代物理学の自然像』から引用。“強調”は、大熊氏による]





 

計算機の発達がもたらした人類的効用

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私見:

計算機の高度化(経験的にムーアの法則に従う)と多用化は、どのようにして、先の大戦後の経済成長(が意味する人類の発達)につながったのか。

(1) 知的生産・知的高度化・説得・判断の速度向上と高度化・多用化

(仕事(ミッション)において、共通基盤部分における計算機の適用による効用である。)

計算機の普及によって、人類は、単純な、或いは、複雑な計算作業から解放されたと同時に、計算ミスが撲滅された(信頼性の究極的向上)。

複雑な計算は、知的生産・知的高度化・説得(:説得に用いる内容とそれを分かりやすく読む人に伝える資料の作成)をもたらし得る。これらの速度が向上した。また、知的生産・知的高度化・説得に必要なコストが低下することによって、より高度なこれらを多くの人が手にすることになった。そして、判断が高度化すると共に、判断の速度が向上した。


(2) 不可能の可能化

(ある仕事(ミッション)において、行使部分における計算機の適用による効用である。)

計算機の使用によって、人の操作では追いつかない、或いは、人の情報処理系では条件を考慮しきれない機械の制御が可能になった。これにより、不可能が可能化された。

機械が生産機械であれば、いままで不可能だった製品を出現させた。機械が移動機械やサービスを提供する機械であれば、いままで不可能だった状況を実現させた。

産業用・業務用機械では、前記の意味において不可能が可能になるだけではなく、極度の緊張の連続から労働者を解放するという労働安全的動機と、ヒューマンエラーやサボタージュに影響されない安定した操業が可能になる(リスクの低減)という経営的動機が、その導入を促すとともに、労使間の協調関係を作りだし、不可能を可能にできる組織の形成に寄与した。

民生用機械では、(特殊技能を持たない人)×(機械)という組み合わせが可能になった。そして、複雑な制御を要する機械の一般への普及を社会が受け入れること(:不可能だとされたこと)を可能にした。


(3) 世界のさらなる発見

大熊 康之 : 戦略・ドクトリン統合防衛革命―マハンからセブロウスキーまで米軍事革命思想家のアプローチに学ぶ (かや書房, 2011) pp.41-42.

ルース[:Stephen Bleecker Luce, 米海軍 Naval War College の創始者であり、初代校長]は、...次のように考えた。すなわち、教育は各個人が自らを取り巻く世界を自分のために発見してゆくプロセスである。
以上の文章は「各個人」について書いているが、これを人類全体に置き換えることは可能である。すなわち、人類は、人類を取り巻く世界を発見していくのである。

人類は、世界の性質を記述した法則も知りたいけれど、本当に知りたいことは、実際的な世界、即ち、具体的で動的な(=時間軸をもった)答えとそれが描き出す動的な絵姿である。高速計算機による大規模で正確な数値シミュレーションが、人類がもつ多くの知見を総合した具体的で動的な答えを得ることを可能にする (さらに、ビジュアライゼーションによって、分かりやすい画像でそれを表現することもできる)。

なお、大規模で正確な数値シミュレーションには、いろいろな法則を予め入力しておくことが必要である。個々の法則を発見するひとつの手段として、高速計算機による小規模で精密な数値シミュレーションが用いられている。


 

「歴史」を学ぶ小・中・高校生が知っておいたほうがよいこと

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要約:
歴史の知識は、その一般化と問題解決への活用によって益になる。歴史を学ぶということは、将来、問題解決を担わなければならないということだ。



歴史の知識は、過去情報の復元・読み解き・体系化によって作られ、一般化と問題解決への活用によって益になる(効用・便益が現出する)。

このことは、高校課程以下の教科としての「歴史」(「社会」・「歴史」・「日本史」・「世界史」)において、そのどれもが扱われていないので、分かりにくい。

高校課程以下の教科としての「歴史」は

  ・生徒が後に、新しい歴史的情報を得た際に、その読み解き・体系化の助けになるように、
  ・生徒が後に、問題がある状況に接した際に、問題解決の助けになる〈歴史知識の一般化〉を実施できるように、

体系的だが一般化前の知識をもった、脳を大量生産している。

即ち、歴史を頼みとできる(、歴史知識を「知らなかった」という言い訳を許されない高い立場を持った)人々を大量生産し、それらの人々が意見交換でき、一個の人より強力な人間集団により問題解決できる状況を生産する。

つまり、スタートラインまで連れてこられる。しかし、そこから走り出すことを教えられないのである。

走ることを予め知った上で、スタートラインに向かう方がよい。すなわち、

「歴史」を学ぶ小・中・高校生は、

  歴史の知識は、その一般化と問題解決への活用によって益になる。歴史を学ぶということは、将来、問題解決を担わなければならないということだ

ということを知った上で、「歴史」の勉強に取り組もう。


関連する引用:
大熊 康之 : 戦略・ドクトリン統合防衛革命―マハンからセブロウスキーまで米軍事革命思想家のアプローチに学ぶ (かや書房, 2011) p.42.
 ルース[:Stephen Bleecker Luce, 米海軍 Naval War College の創始者であり、初代校長] のものの見方及び考え方のバックボーンは歴史であった。彼は、マコーレー(Thomas Macaulay, 19世紀のイギリスの歴史家)の「いかなる過去の出来事も(それ自体としては)重要ではない。その知識は、未来のための算段に導いてくれる場合にのみ価値がある」と、ボリンブローク(Viscount Bolingbroke, 17〜18世紀のイギリスの政治家・哲学者)の「歴史は実例によって教える哲学である」との2つの見解に共鳴した。そしてルースは、「歴史研究の要訣は、特定の実例の〔特定の〕範囲内での扱いとそれらからの一般化へのプロセスに関する各人の考察にある」と結論している。



 

複雑性という指標

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大熊 康之 : 戦略・ドクトリン統合防衛革命―マハンからセブロウスキーまで米軍事革命思想家のアプローチに学ぶ (かや書房, 2011) pp.343-344.

 セブロウスキー[:Arthur K. Cebrowski (1942〜2005)。海軍中将。海軍戦争大学校長。2001年、退役後、兵力大変革事務局長(米国防総省長官直属)。]は、「戦いの原則再考」を論ずる既述の選書[: Anthony Mac Ivor 博士=編: "Rethinking the Principles of War" (2005)]の巻頭言において、「ヨーロッパの秩序に大変革をもたらしたナポレオン戦争を解明したクラウゼヴィッツが『戦争論』を著わしたのと同様に、我々が新しい戦争を解明し将来に対応すべき時機が熟している」として、米軍の「兵力の構築及び運用」のあり方に関する新しい評価尺度として次の3点をあげている。

(1) 選択肢の創造と維持:変化の加速と曖昧性の支配を特質とする情報時代の作戦環境における競争力は柔軟な適応性であり、その基盤は選択肢である。選択肢は、ネットワーク化された組織における情勢認識の共有が創出する。創出され、維持された豊富な選択肢は、作戦においてタイムリーに発動されて、複雑性を創出し我の生存を確保するとともに敵の能力発揮を封殺する。

(2) 高度の「業務処理及び学習」速度の構築:情報時代の特筆である戦闘の複雑性への対応の鍵は、テンポ、すなわち“戦闘という業務”の処理速度、の優劣である。高度の業務処理速度は、部分的な視点に立てば単に相互作用の数の大きさとみなされるが、より全体的な視点からは、行動者の数並びに競争及び環境の相互作用の数が決定要因となり、時間の経過につれてこれらの相互作用の質が学習と成功を決定する。“既知”に満足し組織として停滞する敵が業務速度に漸進的に順応している間に、我は、官僚制が準備したものではなく、新しい時代が提供する有利性を全体的な組織としての学習速度によって生み出す“ドクトリン”の業務処理速度で作戦するのである。これが、大変革が“国防のマネジメントの大変革”を要求する理由である。

(3) 大規模・圧倒的な複雑性の構築:複雑性の本質は、実在物の数、実在物の変化、そしてそれらの間の関係である。我が部隊の能力が頑健であればある程、我々はより複雑な兵力に対し、より複雑な地勢において、より多様な選択肢を保有し得る。敵は重圧がかかると、外洋から陸上、開けた陸上から都市、ジャングル、そして最後には複雑な社会・政治の領域、すなわち、常により複雑な地勢へと後退する。一般に、より複雑性大なる兵力は、複雑性小なる兵力に優る。今、戦闘空間で新しく興っている最も大なる複雑性は、サイバースペースという(触れる、聴く、嗅ぐ、ことのできない)無次元の要素である。我々は、既述の現実的な複雑性に加えて、このサイバースペースという21世紀の複雑な「共有領域」へアクセスし、これを管制し得る柔軟性と積極性(圧倒的な複雑性の選択肢)を確保しなければならない。



 

不安な状況は、新たな管制者を呼ぶ

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鉄血ペディア 第3回【アリアドネ(第6話より)】 | V-STORAGE

機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」のアリアドネから想起されることは、GPS(Global Positioning System)と「海洋の管制」(そして、その発展概念である「公共財の管制」)である:

「海洋の管制」とは、「(所要の重要)海洋を(必ずしも長期持続的ではないが)自ら望む時に自ら望む方法で自由に利用(Assured Access)し、同時に敵にはそれを許さない(Area Denial)」 (大熊 康之 : 戦略・ドクトリン統合防衛革命―マハンからセブロウスキーまで米軍事革命思想家のアプローチに学ぶ (かや書房, 2011) p.74.)ことである。

通常、海洋をはじめとする公共財として挙げられるのは、海洋、空中、宇宙、サイバースペースである。

しかし、GPSが作り出した構造は、比較的 私有財において管制する。

GPSを利用したナビゲーションシステムは、地上においても使用できる。ナビがあれば、見知らぬ土地であっても、安心して移動ができる。

逆に、GPS が使えなくなれば、見知った土地であっても、我々の生活は大打撃をうける。なぜならば、物流において運転手が土地勘がない地域において物を運ぶということがあり、またGPS を利用した機械に我々は囲まれているからだ。

米国は、GPS という公共財を通じて、公共財である海洋だけでなく、比較的 私有財である各国の国土を管制できる。

管制されるにも関わらず、人間は、どうしてGPSを必要とするのか。

それは、土地というものが複雑性をもつからだ。ここで、複雑性を、以下のように定義する:

複雑性
=初心者に大きな不安を与え得るものがもつ性質
=〈制御・観測できない損失源との接触頻度〉×〈損失の大きさ〉が大きいものがもつ性質。

  関連: 解釈: 複雑性という指標――今日の闘争における鍵

ここから考えられるのは、不安な状況は、新たな管制者を呼ぶ、ということである。

初出:
Facebook 2016/ 4/ 8


 

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