燃料電池ワールド Vol.2124 (2016/06/06 08:56)

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□燃料電池ワールド Vol.2124
■2016年06月06日発行

                    ◆燃料電池NPO pemdream

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■世界のヘッドライン(04月22日)
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2016/04/22 ブラック&ビーチ社、最初の水素燃料ステーションのため設計・調達・建設を行うEPC契約者としてファーストエレメント・フュエル社をパートナーとする〈PT〉

〔訳注〕この記事は、2014年8月11日付け(Vol.1715 2014/09/03発行)の「ファーストエレメント・フュエル社、アメリカの史上初の水素燃料供給ステーション・ネットワークのEPC契約者としてブラック・アンド・ビーチ社を選ぶ」の再論がほとんどの内容だが、2015年12月にカリフォルニア州コーリンガ(Coalinga)とロングビーチ(Long Beach)間に最初の水素燃料補給ステーションを完成し、コーリンガ・ステーションの完成4カ月後には、別の6つの「ツルー・ゼロ・ステーション(True Zero stations)」が完成したという情報が加えられている。

2016/04/22  渓谷で唯一の水素燃料ステーションがハリス・ランチ牧場に開設〈PT〉

〔訳注〕カリフォルニア州大気資源委員会とエネルギー委員会当局は4月20日(水)、水素燃料電池自動車のための州の初期システムの新しい場所でリボン・カットするためにコーリンガ(Coalinga)に集まった。料理店のハリス・ランチ・イン&レストラン(Harris Ranch Inn and Restaurant)で「ツルー・ゼロ(True Zero)」水素ステーションは、州内で商用として開設する15の小売りステーションのうちの1つで、サン・ホアキン渓谷(San Joaquin Valley)で唯一となる。このステーションは、数カ月間運営されている。

2016/04/22 NEL社:グロムフョルドで大規模水素製造の再建を発表

〔訳注〕オスロ(OSLO、ノルウェー)発:NEL社(NEL ASA)は子会社を通じて本日、ノルウェーのメロイ(Mel〓y)のグロムフョルド工業団地(Glomfjord Industrial Park)で大規模、低コストの水素製造工場を発展させるグロムフョルド水素社(Glomfjord Hydrogen AS)を設立するために、メロイ・エナジー社(Mel〓y Energi AS)およびメロイN〓ringsutvikling社(Mel〓y N〓ringsutvikling AS)と覚え書きを交わした、と発表した。この施設では1日あたり6000kgの水素を生産する能力がある。

2016/04/22 ホンダ、ホンダ・クラリティ・シリーズで大胆な一歩〈PT〉

〔訳注〕デトロイト(DETROIT、ミシガン州)発:ホンダ(Honda)は本日、近く公開する燃料電池自動車「クラリティ・フュエル・セル(Clarity Fuel Cell)」は、クラリティ電気自動車(Clarity Electric)とクラリティ・プラグイン・ハイブリッド車(Clarity Plug-in Hybrid)の2種類を加えて、2017年にアメリカで立ち上げられる、と発表した。

■2016年06月03〜05日のWEB LINK NEWS
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2016/06/03 燃料電池車、普及の可能性見えず(Business Journal)
●市場は、笛吹けども踊らず

 こうして、トヨタとホンダから商品が出揃ったFCV市場。これからドンドン盛り上がるかと思いきや、どうもそうした雰囲気が感じられない。これは一般ユーザーのみならず、自動車産業界全体として、いまだにFCVに対して懐疑的な見方が強い。実際、日本の自動車技術の総本山である自動車技術会の春季大会(5月25?27日:パシフィコ横浜)を取材しても、業界関係者の多くが「FCVの未来は、まだまだ先読みできない」と本音を漏らす。

 ここで課題となるのが、インフラだ。プリウスのようなハイブリッド車(HV)の場合、新規のインフラ整備は必要なく、ガソリン車と同じ利用環境で対応できる。また、PHVやEVでも、直流急速充電や交流240Vのインフラがなくても、一般家庭や業務施設に交流100V電源は常設されているため、必要最低限のインフラはすでに整備されているといえる。

 一方、FCVの場合、燃料は水素であり、水素専用のステーションと、水素の精製し物流させる事業システムの構築が必要だ。国としては、水素ステーションの整備を進めており、2015年度に80カ所だが、20年には160カ所、25年度には320カ所という整備目標を公表している。

 こうした水素ステーション整備での課題は、「高い整備費と運営費」だ。現在、一カ所あたりの整備費は約4億円で、欧米の2倍以上の高額だ。その原因は、高圧ガス保安法を主体とした各種の規制緩和が遅れているからだ。同法は本来、自動車を対象としておらず、FCVの登場によって、新たなる解釈と一部法改正が必要なのだ。国は15年を「水素元年」と呼び、こうした規制を関係省庁に横串をさして、積極的に緩和すると明言した。確かに、規制緩和が実行されてはいるが、水素事業の関係者に直接話を聞くと、その多くが「当初に期待していたほどのスピード感ではない」と語る。
●普及への期待は、海外の規制頼みか

 こうして、日本国内では先行き不透明なFCV。では、視点を世界市場に移すと普及の可能性が見えてくるのだろうか。

 結論を言えば、答えはNOだ。現在、具体的なFCVに関する法整備や普及補助金があるのは、米カリフォルニア州のみ。全米でみると、FCVに対する一般消費者市民からの認知度はまだ低く、具体的な普及策を打ち出そうとしている州は少ない。

 また、欧州ではドイツを中心とした欧州では、風力発電や太陽光発電によって水を電気分解して水素をつくり、二酸化炭素を触媒反応させてメタンを合成する実験が進んでいる。こうした過程で、FCVの普及が連動する可能性があるが、その事業規模はけっして大きいとはいえない。

 このように、普及について未知数なFCVだが、唯一の可能性は「規制」による普及の後押しだ。この規制とは、アメリカ、欧州、中国でのCAFE(企業別平均燃費)、アメリカのZEV規制法(ゼロ・エミッション・ヴィークル規制法)、中国のNEV(ニュー・エネルギー・ヴィークル)関連の規制、そして地球温暖化対策についての「パリ協定」だ。

 皮肉なことだが、FCVの普及には、技術的な規制緩和に加えて世界各地の規制が後押しとなる。つまり、日本国内でFCVの普及を確実に進めるには、日本版のCAFEやZEV規制法など、国から自動車メーカーに対する強制力を発動するしかない。
(文=桃田健史/ジャーナリスト)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160603-00010004-bjournal-bus_all

2016/06/03 アップルも進出する「神奈川の街」にパナソニックのBツーB戦略が見えてくる(ニュースイッチ)

 パナソニックが主導する「ツナシマサスティナブル・スマートタウン(ツナシマSST)」の開発が横浜市港北区で進んでいる。2015年に計画が明らかになった当初は、米アップルの進出が話題となった。パナソニックが16年3月に全体像を公表すると、先進的なエネルギーインフラも見えてきた。

 JXエネルギーが水素ステーションも設置する。パナソニックが水素関連事業に取り組む姿勢を示そうと導入を決めており、学生寮の燃料電池への水素供給を検討している。

 フジサワSST、ツナシマSSTとも建設地はパナソニックの工場跡地だ。遊休地活用による財務価値、新しいビジネスを生み出す事業価値、雇用に代わる地域貢献の三つのメリットから開発を始めた。

 ツナシマSSTでは場所や生活に応じたエネルギーインフラを検討できた。フジサワSSTでも住民が街の運営に携わる管理モデルができ、街づくりのソフト面のノウハウも習得できた。開発事業者とは違う「メーカーらしいイノベーションができている」と自信を深める。

 現在、遊休地を抱える他社からの相談が寄せられているという。他社の土地で、しかも地方となると採算は厳しくなるが「難しいところを突破してみたい」と水平展開への意欲をみせる。
《解説》

 パナソニックの太陽光、HEMS、蓄電池を標準装備したパナホームの住宅街(三井不動産系の住宅も)、つまりオール・パナソニックのイメージがフジサワにある。ツナシマはパナソニックブランドの露出は少なめ。ただし、野村不動産、ユニー、アップル、慶応大学(学生寮)、東ガス、JX、横浜市などと一度に接点を持っている。普通、一つの製品なら一度の接点は1社だろう。街づくりは1度にたくさんの顧客にリーチできる。宮原氏が言うには、そこがパナソニックのBツーB戦略に生きてくる。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160603-00010004-newswitch-ind

2016/06/03 低燃費技術を競う日本車──クラリティ・フューエルセルに感心(GQ JAPAN)

 本田技研工業が、水素を燃料に電気モーターを駆動して走る燃料電池(フューエルセル)車、ホンダ・クラリティ・フューエルセルを先頃発売した。3分ぐらいで満タン(充填)して航続距離は750キロだと発表されている。燃費をガソリン車に置き換えてみようとしたが、「クラリティはガソリン車とは異なるため、 弊社としては、これに相当する表記はプレスキットにあるとおりの「一充填走行距離約750km」が統一しており、これ以外の公開はしておりません」(本田技研広報担当者)とのことだった。

 価格で考えると、クラリティ・フューエルセルの2つある水素タンクの合計容量は141リッター。これをいっぱいにするには5キログラムの水素が必要となる。現在の水素の価格は約1000円なので、750キロ走るのに燃料費は5000円。レギュラーガソリンが1リッター100円としてリッター15キロのクルマと同じだ。クラリティ・フューエルセルは、しかもエアコンを使用したりすると500キロ程度に落ちるというので、そうなると分が悪くなる。

 水素を作る(いろいろなやり方がある)ところから、液化するなどして燃料として運んでステーションまで運んで、燃料電池車に圧縮充填し、最終的に燃料電池として発電する。一連の過程を専門用語で「ウェル・トゥ・ホイール」という。ウェルとは通常油井のことで、今回は水素を作る源のことをいう。どれだけエネルギーを失わないでいられるか。逆にいうとエネルギー効率をどれだけガソリンに近づけられるか。それが燃料電池車の当面の課題だ。そこで納得できれば、クラリティ・フューエルセルは日常的に乗りたいと思わせる出来だった。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160603-00010001-gqjapan-life

2016/06/03 <米国>原発離れが加速 「シェール革命」で押され… (毎日新聞)
◇建設構想、半数は頓挫

 【ワシントン清水憲司】米国の電力業界で、原子力離れの動きが続いている。電力大手エクセロンは2日、赤字に陥った原子力発電所を閉鎖し、原子炉3基を廃炉にすると発表した。「シェール革命」で安価になったガス火力発電や再生可能エネルギーに価格面で押されているためで、米原子力業界によると、政府支援の強化がなければ今後10年以内に15?20基が廃炉になる可能性があるという。
「長期的には原発は明るい未来がある。しかし、今後5?10年間で15?20基が廃炉になるリスクがある」。米原子力エネルギー協会のファーテル理事長は5月、ワシントンでの講演で訴えた。原発の廃炉に歯止めをかけるため、温暖化対策の柱に原発を位置づけ、従来の債務保証に加え、補助金や優遇税制など再生可能エネルギーと同等の支援を求めている。ただ、米原子力規制委員会(NRC)のヤツコ前委員長は「政府支援が必要ということは、米国では原発にあまり将来性がないことを示唆している」とみている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160603-00000115-mai-bus_all

2016/06/04 ホンダ『CLARITY FUEL CELL』に乗ってわかった燃料電池車の可能性と課題(@DIM)
■『機械として優れているか』★★★★(★5つが満点)

 実際に乗ってみても、窮屈さは一切感じない。謳い文句通りに5人で乗っても不自由はないだろう。荷室も十分に広い。荷室についてカタログでも「9.5型のゴルフバッグが3つ搭載できる十分なトランク容量を確保しています」と書いてある。 

 余談になってしまうけれども、クルマの荷室の広さを表現するのにゴルフバッグを基準にするのはそろそろ止めにした方がいいのではないか? 乗用車が希少だった昭和の頃ならまだしも、クルマは普及し、所有していなくてもレンタカーやカーシェアリングを使えば、1台にメンバー全員が乗っていくことなど稀だからだ。

 加速や減速などはスムーズそのものだ。BMW『i3』や日産『リーフ』などのEV(電気自動車)と較べても遜色ない。原理としては、EVもFCV(燃料電池車)も、電気でモーターを回し、クルマを加速させることに変わりはない。EVもFCVも、モーターによるスムーズな加速は、エンジンによる加速よりも次元が異なるほどで、オーナーは病みつきになるだろう。
■『商品として魅力的か』★★★(★5つが満点)
「ホンダは1980年代後半から燃料電池車の研究と開発を行なってきました。携帯電話に喩えると、1998年に完成したオデッセイベースの実験車『VO』が大きな箱を肩から掛けていたものだとすれば、このクラリティはガラケーぐらいまでに進化させることができたと自負しています」(本田技術研究所主任研究員・藤本二朗氏)

 ホンダ開発陣の狙い通りに『クラリティ』が仕上がっていると、僕も思う。では、なぜ、今回、★を5つではなく3つしかつけなかったのかというと、まず、まだこの『クラリティ』が個人では購入できないということ。地方自治体や企業などへのリースに限られている。個人に販売されているトヨタ『ミライ』とは対照的だ。

 また、ホンダが開発した水素充填器「SHS」も、コンプレッサーを使わずに水素を充填できる画期的なものだが、これも同じように個人が購入して家庭に設置することができない。燃料となる水素を充填できるのは、まだ限られた場所でしかできず、電気自動車の充電器のように急速に普及する見通しもまだ未知数である点も、クルマに罪はないのだが購入の二の足を踏ませている。

 水素の取り扱いを巡っては様々な規制や法律が古い時代のまま残されてしまっている。水素は扱い方を間違えると爆発してしまう危険物だけれども、時代にフィットしたものが望まれる。燃料電池車を購入して日常的に乗りこなすのは、まだまだ電気自動車よりもハードルが高い。そこが前進しなければ、★を増やすことはできない。『クラリティ』は「ガラケーぐらい」なのかもしれないけれども、取り巻く状況がまだ「黒い固定電話」並みなのが現実だ。状況の前進を望むばかりだ。
文/金子浩久
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160604-00010003-dime-bus_all

2016/06/04 相馬の工場タンク破裂 水素ガス、圧力上昇が原因か(福島民友新聞)

 3日午後4時5分ごろ、相馬市、太陽光発電関連部品製造のエム・セテック相馬工場で「爆発音がする」と、通行人から相馬消防署に通報があった。相馬署によると、工場にある樹脂製タンク一つが破裂した。けが人はおらず、周辺での健康被害の報告もないという。同署は、タンクの圧力が上昇して破裂したとみて調べている。

 相馬地方消防本部によると、タンクは工場で出た排水を処理する施設の一部で、排水にカセイソーダを混ぜて中和する工程で出た水素ガスがタンクの破裂につながったとみられる。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160604-00010000-minyu-l07

2016/06/04 人工の葉っぱとバクテリアで、太陽光から液体燃料を生み出す技術(ニューズウィーク日本版)

 ハーバード大学のDaniel Nocera教授が発表して話題を呼んでいるのは、人工葉とバクテリアを組み合わせた方法だ。

 人工葉には特殊な光触媒が使われており、太陽光を当てることで水を水素と酸素に分解する。ラルストニア・ユートロファというバクテリアが水素と二酸化炭素と結合させ、アルコール燃料を合成するという仕組みだ。

 この研究を実用化するのは難しいと言われていたが、Nocera教授はラルストニア・ユートロファの遺伝子を操作することで、変換効率6.4%でアルコール燃料を生成することに成功した。

 既存の発電システムに比べてエネルギー効率が高いわけではないが、ポイントはアルコールという形でエネルギーを貯蔵できることだろう。人工葉は太陽光さえあれば、汚水や尿などからも水素を取り出すことができる。Nocera教授は、発送電インフラの整っていないインドで、この人工光合成システムを展開したいと考えている。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160604-00171159-newsweek-int

2016/06/04 <FCV>水素ステーション 仙台で着工(河北新報)
 水素をエネルギー源に走る燃料電池車(FCV)の普及に向け、産業ガス大手の岩谷産業が整備する東北初の商用水素ステーション起工式が3日、仙台市宮城野区であった。同社の牧野明次会長や村井嘉浩宮城県知事ら約30人が出席し、工事の安全を祈った。

 ステーションは宮城野区幸町4丁目の県有地約2000平方メートルに整備し、関東から輸送する液化水素の貯槽や水素圧縮機などを備える。1時間でFCV6台に水素の充填(じゅうてん)が可能。来年2月の完成を目指す。

 県は整備費用の一部3億8000万円を補助する。村井知事は「ステーションが県内にあれば、関東からもFCV利用者を呼び込むことができる。環境、観光面で意義ある施設になる」と強調した。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160604-00000008-khks-bus_all

2016/06/05 水素水ビジネスにのめり込む 伊藤園、パナソニックの「品格」(Wedge)

 きっかけは、著者である日本医科大学の太田成男教授が2007年、有名科学雑誌「ネイチャー・メディシン」に発表した1本の論文だ。水素分子が、生物がエネルギーを作る時に生じるヒドロキシルラジカル等の有害な活性酸素を消去し、スーパーオキシドラジカルなどの有用な活性酸素は消去しないことが培養細胞にて確認されたというものだ。伊藤園の付加価値は“消費者の勝手な期待感“

 しかし、水素水を販売している飲料大手、伊藤園の広報担当者によれば、「水素水はあくまでも清涼飲料水。体に良いとは言っていません」

 体に良いとは言っていないとしながらも、伊藤園の謳い文句は、「業界トップクラスの高濃度」。水素が抜けにくいアルミパウチを使い、特許を取った「水素封入方式」で充填しているため、水の中に水素が長時間存在するというが、効果効能を尋ねると「水分補給です」。水素と関係ない水分補給が効果効能なのであれば、なぜ水素の濃度や抜けにくさを強調するのだろう。

 しかも、パウチ入りは1本200ミリリットルで278円(税別)と普通のミネラルウォーターと比べれば高額だ。パウチのパッケージが高いためと説明するが、新しいアルミ缶商品も185円(同)と普通のアルミ缶入り清涼飲料水より高く、トクホ(消費者庁が許可する特定保健用食品)飲料並みである。再度理由を問うと、「お客様に価値を見出してもらいたいから」。

 茶カテキンなどの研究所をもつ伊藤園自らが、水素についての研究を行い、トクホを取るなどの予定はなく、太田氏ら外部の研究者が論文を出してくれるのを期待しているという。

 水素水市場は前年比3割増、市場規模は150億円とも200億円とも言われ、水素水生成器大手、日本トリムの株価上昇、中京医薬品の水素水売り上げ好調を理由とした経常利益上方修正のニュースも出る中、効果は謳わず、研究はせずとも、「消費者の勝手な期待感」を付加価値として「コストはかけずに水を高く売る」というのが伊藤園の戦略のようだ。悪びれないパナソニック
「ええ、できあがった水素水はアルカリイオン水と同じですよ」

 そう答えるのは、水道の蛇口に取り付ける水素水生成器を発売しているパナソニックのマーケティング担当者だ。パナソニックは1980年頃から「アルカリイオン整水器」を発売しているが、水を電解してアルカリ水を作る過程で、水素も発生することは以前から認識していた。

 水素水は身体に良いという話が広まると、13年10月「還元水素水生成器」の販売を開始。それまでは、アルカリイオン整水器のカタログに「水素も含む」という表記をするにとどめていたが、いよいよ“水素水“というラベルで売り出した。

 当初は「パナソニックのお店」と呼ばれる系列店での取り扱いだったが、15年秋に家電量販店での販売を開始。同年12月に三宅裕司氏がMCを務めるTBSテレビ「健康カプセル! ゲンキの時間」で取り上げられると、パナソニックのウェブサイトにある水素水コーナーのページビューが700倍に。発売中の3機種が一時品切れに陥るほどで、現在も供給が追い付かなくなってきていると言う。

 構造・原理は同じでも、価格の方は全く異なる。アルカリイオン整水器は、普及帯は電極3枚で3万円代、電極7枚の最上位機種は水素チャージボタンがないだけで実売8万円を切るのに、水素水生成器は同じ電極7枚で、上位機種17万円、初代機種も12万円と極めて高額(いずれも価格比較サイト「価格ドットコム」の平均価格)。水素水生成器の売れ行き(台数ベース)は、15年度が13年度の約4倍と好調だ。

 15年現在、350の論文が発表されているという水素水。濃度はさておき、科学的にはどの程度の効果が確認されているものなのか。

 太田氏の著書によれば、水素ガス、水素水、水素風呂など様々な形で水素を体に取り入れることが病気の治療や予防に効果を持つことが分かっており、再現性実験や大規模治験などの検証を待つまでもない。太田氏が最も効果を実感するのは水素風呂だといい、太田氏の次男、太田史暁氏の経営する企業は水素入り化粧品「Auter(オーター)」を販売する。中国へはばたく水素水ビジネス

 しかし、論文として発表されているデータは細胞実験や動物実験と、母数の少ない試験的な臨床試験のみ。治験が始まっているとも聞くが、実用レベルでの効果や安全性はまだ確認されていない。テレビやファッション誌で息子の販売する化粧品を推奨するなど“盛りすぎ感”が否めない科学者としての態度や、それに便乗する大手メーカーは、改めて品性が問われる。

 水素分子の研究開発を続けてきたというMiZ(ミズ)株式会社(神奈川県鎌倉市)は最近、新聞に全面広告を出し、水素の効果効能を調べた337の英語論文を一覧で紹介した。日本以外の論文で、欧米の大学・研究所によるものは34に過ぎない。一方中国は196を数え、近年存在感を増している。水素水ビジネスは、水への不安感が強く、日本とは許認可体制が異なる中国へと拠点を移し始めている。
村中璃子 (医師・ジャーナリスト)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160605-00010002-wedge-bus_all

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