燃料電池ワールド (2006/07/02 16:42)

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□燃料電池ワールド
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■Vol.240 2006/07/02発行

                   ◆燃料電池NPO法人PEM−DREAM

                        ◇http://www.pem-dream.com/

■燃料電池関連イベント
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☆「携帯電話用マイクロ燃料電池の開発動向と課題
   −最新試作事例と導入にあたっての商品性・安全性−」
◇講 師:
(株)NTTドコモ 研究開発本部移動機開発部移動機技術推進担当課長

   NEDO「携帯情報機器用燃料電池技術開発」研究評価委員会委員
   工学博士 竹野和彦氏
◇日 時:7月7日(金)午後3時〜午後5時
◇会 場:明治記念館(東京都港区元赤坂2−2−23)
◇受講料:29,800円(昼食代・消費税込)
◇主 催:株式会社新社会システム総合研究所
  http://www.ssk21.co.jp/seminar/S_06174.html
◇問い合わせ・申し込み:株式会社 新社会システム総合研究所
  TEL 03−5532−8850
  申込受付FAX 03−5532−8851
  E-mail:info@ssk21.co.jp
または、上記HPから申し込みができます。

■PEM−DREAMニュース
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☆ピーク・オイル・その2

 枝廣淳子さんが発行するメルマガ『Enviro-News from Junko Edahiro』に最近、デニス・メドウズ氏とレスター・ブラウン氏のピーク・オイルに関する記事が載りました。枝廣さんの許可を得て、4回にわたって転載します。なお、『Enviro-News fromJunko Edahiro』には質の高い最新の環境情報が載っています。関心のある方は下記からどうぞ。
※『Enviro-News from Junko Edahiro』への登録/登録解消、バックナンバーの取り出しはhttp://www.es-inc.jp/lib/mailnews/index.html
※枝廣淳子HP http://www.es-inc.jp

○「ピーク・オイル」―デニス・メドウズ氏に聞く(2)

 前回に引き続き、ピーク・オイルに関するデニス・メドウズ氏の知見をレポートします。ピーク・オイルとは、原油生産量がピークに達することです。その時期については2005年とも、2035年ともいわれていますが、ほとんどの産油国での生産の減少や、新たな油田発見の減速、発見・生産コストの上昇といった最近の状況から、もっと間近に迫っているとの見方が有力となりつつあります。

 ピークを過ぎるということは、原油の生産量が減り始めるということです。一方で、原油の消費量はこれまで年率3.5%で増え続けており、今後もなお経済の成長に従って、エネルギー消費量は大きく増大すると見込まれています。

 ピーク・オイル後の需給バランスの崩れは、エネルギーやさまざまな商品の供給不足、価格の高騰、経済成長の減速にはじまり、債務国の債務増大、貧困層の食糧不足など、世界の政治、経済、そして人々の暮らしにも多大な影響を与えることは想像に難くありません。

 これほど重大な事態がなぜ今まで看過されてきたのでしょうか。メドウズ氏は、システム・ダイナミクスのモデルを使い、以下のように説明しています。(図3)

図3:石油の生産に関するシステム思考モデル
http://change-agent.jp/news/peak_oil_chart_3.gif
(デニス・メドウズ氏作成)

 まず、もっとも大きな混乱の要因となっているのは、「埋蔵量」と「可採年数」の定義です。石油業界や産油国は、原油の確認埋蔵量を公表しています。確認埋蔵量を直近の年間生産量で割ったものが「可採年数」です。

 1970年末時点での可採年数は、32年でした。2004年末時点では40年となっています。生産量もこの35年間増えていますので、確認埋蔵量自体が増えているということです。しかし、果たして原油は増えるものなのでしょうか?

 残念ながら、もともと地球に存在している原油の埋蔵量は増えることはありません。原油が生成されるまでには、数千万年から数億年の時間がかかるので、数千年の人類の歴史から見れば有意に増えることはない再生不可能な資源なのです。

 つまり、産油国や石油業界の公表する「確認埋蔵量」は増えることはあっても、それに未だ発見されていない原油である「原油の未発見埋蔵量」を足し合わせた“真の埋蔵量”は、確実に減っているのです。にもかかわらず、数字として計算しやすい「原油の確認埋蔵量」のみをもって可採年数を測っているため、多くの人が埋蔵量を誤解して捉えています。

 しかも、産油国の公表する埋蔵量は、誰のチェックも受けない自己申告の数字です。したがって、業界団体や専門誌の報告する数字は、それぞれの国の自己報告の集計となるのですが、この数字の信憑性の問題が指摘されています。産油国にとって、埋蔵量を多く報告することは、他の産油国との競走や生産の割り当て上、有利になることが多いためです。

 今年になって、クウェートの確認埋蔵量が、報告されていた量の半分しかないことがわかりました。クウェートは世界の確認埋蔵量の10%をもつ国ですから、世界全体の確認埋蔵量が一夜にして5%も減ってしまいました!

 私たちの経済が拠ってたつ市場メカニズムも、本来働くべき方向には機能していません。これほど不確実な数字にもかかわらず、市場はこの確認埋蔵量をもとにして、原油の価格を設定します。原油の未発見埋蔵量は考慮に入れていないのです。

 原油価格を決める大きな要因の一つは、需給のバランス、とりわけ確認埋蔵量の平均消費量に対する比率です。しかし、この比率も、上述のとおり真の埋蔵量とはまったく無関係です。確実に埋蔵量が減少しているにもかかわらず、その事実は市場にはまったくフィードバックされないままに、市場での価格が決定されているのです。

 しかも、原油の価格は、多くの補助金によって現実以上に低く抑えられており、また産油国間の国際競争によって、資源の現状とはまったく関係なく価格が設定されるため、つい最近まではきわめて安価に取引をされていました。さらに、その資源をめぐる戦争や軍事、人体や環境への悪影響など、さまざまな外部コストがかかっているにもかかわらず、石油は実際のコストよりも大幅に安いコストで供給されています。安価な原油の大量消費は、世界の経済成長の推進力となっているのです。

 技術に関してはどうでしょうか? 最近特に進歩したのは、深海での原油探査技術や4Dサイスミックと呼ばれる最新の原油探査システムなどの探査に関する技術です。しかし、めざましい技術の進歩にもかかわらず、発見される原油の量は増えておらず、現在新たに発見される原油量は、原油の消費量の4分の1に過ぎません。有力な地質学者たちは、すでに地球上の原油の90−95%が発見され、ほとんど新たな発見の余地は残っていないと考えています。

 図3のモデルの左側の部分は、未発見の原油埋蔵量が減れば減るほど、発見のコストがどんどんと上昇するフィードバックを表しています。石油会社は、原油の売上から得られる利益の一部を新たな原油の発見のために再投資します。同じ投資金額で発見できる原油の量は今後ますます減っていきます。

 石油会社は、原油価格が高騰し、史上最高の利益を上げているにもかかわらず、探査の予算は増やしておらず、むしろ自社株の大量の買戻しをしています。価格の上昇局面にもかかわらずキャッシュを株の買戻しにあてるということは、探査プロジェクトの採算見通しが悪いと石油会社が判断しているということであり、いかに原油の発見が困難になっているかを如実にあらわしています。

 これらの限界にもかかわらず、経済は依然として成長を続け、安いエネルギーを湯水のごとく使い続けています。世界のエネルギー消費量は1950年から2000年までに約3倍、年率3.5%増加しました。国際エネルギー機関(IEA)は2030年には50〜67%の増加(年率1.6〜1.9%)を予測しています。デンマークのエネルギー省の推定では、2050年には現在の6倍のエネルギーが必要とも言われています。

 ピーク・オイルが訪れると、生産量は減少傾向に、消費量は増加傾向に向かうことで需給のバランスは大きくシフトすることになります。当然、原油の価格は大幅に上昇するでしょう。

 こうして、需給バランスの変化が現れると、市場はようやく調整を始めます。経済ではよく、「価格が上がれば、その商品を生産するためのコストをよりかけられるようになり、それによって供給を増やすことができる」と言われます。しかし、そう簡単にはいきません。上述のように、原油の未発見埋蔵量が減れば減るほど、埋蔵の可能性のある場所へのアクセスはますます難しくなり、発見にかかるコストは急増していくからです。

 たとえ、投資が増えても年々の発見量は増加せず、確認埋蔵量が減少してさらに価格を押し上げる状況になります。もし私たちが今後も、これまでと同じように石油を消費し続けると、価格はますます上昇し、さらに多くの投資が原油の発見と生産のための設備投資に向かうことでしょう。

 このような原油の価格が上昇し、原油への設備投資も増加していくスパイラル状況の問題点は、多くの設備投資が石油資源のために割かれるために、他の生産活動のための設備投資が圧迫されることです。しかも、得られる石油という意味での投資対効果はどんどん縮小していきます。経済の各分野での生産設備投資が減速すれば、経済成長そのものにブレーキがかかることは避けられないでしょう。

 では、ピーク・オイルを迎えた後、私たちの生活やビジネスにはどのような影響が生じ、どのように変わってくるのでしょうか? そして私たちはどのような対応ができるのでしょうか? 次回のメルマガで詳しく見てみましょう。

■WEB LINK NEWS
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06/06/26 サムテック、35メガパスカル水素貯蔵用タンクで認可取得(日刊工業新聞)

 サムテック(大阪府柏原市、阪口鉄兵社長、0729・77・8851)は、高圧ガス保安法の容器保安規則に沿った35メガパスカル水素貯蔵用タンクに関する認可を高圧ガス保安協会(KHK)から取得した。おおさかFCV(燃料電池自動車)推進会議に第1号製品を納めた。今後、燃料電池を研究する自動車メーカーや研究機関などへ、サンプル供給していく。検査会社は米国アローヘッド(カリフォルニア州)。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060626-00000002-nkn-ind

06/06/26 「株式」 加地テック(6391)−個別銘柄ショートコメント(フィスコ)

 急騰。先週末のCSの燃料電池レポートが材料視されている。注目企業として8社をピックアップしているが、水素ステーション向け1100気圧の超高圧水素ガス圧縮機に強みとして、同社もリストアップしている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060626-00000040-fis-biz

06/06/27 JARIなど、第2期燃料電池プロを実施―フリート走行など柱(日刊工業新聞)

 日本自動車研究所(JARI)とエンジニアリング振興協会(ENAA)は26日、燃料電池車などの実用化に向けたプロジェクト「水素・燃料電池実証試験」第2期を、06年度から10年度まで実施すると発表した。実証試験地域を拡大するほか、第三者による燃料電池車のフリート走行試験などを行う計画。

 同プロジェクトは経済産業省の「燃料電池システム等実証研究補助事業」として実施されるJARI「燃料電池自動車等実証研究」と、ENAA「水素インフラ等実証研究」を合わせたもの。自動車メーカーは国内外から8社が参加し、今期からマツダが加わっている。水素ステーションは従来の首都圏と愛知県に加え、大阪府にも2カ所に新設する計画。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060627-00000012-nkn-ind

06/06/29 ナノテク 日仏交流シンポ 九大と現地大で共催 福岡市の姉妹都市・ボルドー(西日本新聞)

 【ボルドー28日井手季彦】姉妹都市である福岡市をメーンゲストにしたワイン祭がフランスのボルドー市で29日から開催されるのを前に、ボルドー第1大学で28日、同大学と九州大学の共同科学シンポジウムが行われた。

 両大学は姉妹都市縁組より1年前の1981年に提携協定を結び、研究者の交流などを進めているが、大規模な共同シンポは初めて。研究交流が活発で、高いレベルを誇る「分子・材料科学」がテーマに選ばれた。世界各国がしのぎを削るナノテクノロジー開発の基礎的分野でもある。

 学生ら約100人を前に両大学の教授ら8人が、有機、無機材料の合成手法から燃料電池などへの応用まで、最新の研究成果を発表した。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060629-00000035-nnp-kyu

06/06/30 山梨大:ワインと環境の2分野、学部と大学院で一貫教育−−来年度から
 /山梨(毎日新聞)

 山梨大(貫井英明学長)は07年度から、地場産業のワインと環境への負荷を軽減するクリーンエネルギーの2分野で、学部と大学院(修士)を通じ一貫教育を行う特別教育コースをそれぞれ新設する。同大によると、専攻を絞った6年間の一貫教育は全国の国公私立大学で初めて。世界に通用する人材の育成を目指す。

 クリーンエネルギーコースは、燃料電池や太陽電池の製造方法やこれらの電池に関する最先端の研究内容を学び、大学や研究所の研究者が想定されるという。両コースとも来春の入試から一般入試で毎年5人ずつ募集する。高校卒業資格があれば、受験に必要な特別な資格はない。学部卒業時には学士論文を免除され、面接のみで大学院の修士課程に進学できる。

 また、ワインコースは生命科学科、クリーンエネルギーコースは応用化学科を第2志望として志願できる。両コースの入学者には入学時に奨学金(金額未定)を支給する方針。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060630-00000019-mailo-l19

■海外ニュース(6月ー3)
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<ポータブル/バックアップ電源>
●プロトネクスが空軍に発電システムを納品(2006/05/03)

 プロトネクス・テクノロジー社(Protonex Technology Corporation)は、評価のために、米国空軍へP2兵士用発電システムの最新の試作品を納品した。この納品は、2003年4月に空軍からプロトネクス社が落札した2年間の軍民両用化学技術(Dual Use Science and Technology ;DUST)プログラムの成功終了を意味している。加えて、空軍調査研究所(Air Force Research Laboratory ;AFRL)は、プロトネクス社とそのパートナーであるミレニアム・セル社(Millennium Cell Inc.)に、P2の性能向上と製造容易化、性能と信頼性をテストする追加システムの調達を内容とした102万ドルの追加プログラムを発注する意向を伝えた。最大で50Wを連続して発電できるP2システムは、ミレニアム・セル社が特許を持つ技術を基礎とした化学水素化物燃料のサブシステムとともにプロトネクス社の燃料電池技術が結合している。
http://www.protonex.com/05-03-06%20P2%20Delivery.pdf

●MTIマイクロはサムソンと協定を結ぶ

 MTIマイクロ・フュエルセル社(MTI MicroFuel Cells Inc. ;MTI Micro)はサムソン・エレクトロニクス社(Samsung Electronics Co.)と、サムソン社の携帯電話ビジネスのための次世代燃料電池試作品を開発するために排他的協定を結んだ。MTIマイクロ社が特許を持つダイレクトメタノール燃料電池(DMFC)技術であるモビオン(Mobionィ)は、サムソン社の携帯電話と携帯電話アクセサリーのために設計された試作品を動かすために選ばれた。
http://www.mtimicrofuelcells.com/news/article.asp?id=247

<燃料/改質器/貯蔵>
●ミレニアム・セル社が2つのSBIR契約を獲得

 ミレニアム・セル社(Millennium Cell Inc.)は、空軍調査研究所による第1期中小企業革新研究プログラム(Small Business Innovation Research Program ;SBIR)契約を獲得した。それは、水素化ホウ素ナトリウムの予混合解法、またはその代案として、戦士が利用可能な付随水(field water)か体液(bodily fluids)と結合できる固体燃料パケットの、どちらもすぐに使える(ready-to-use)操作の柔軟性を備えた燃料カートリッジデザインを基礎とした水素化ホウ素ナトリウムの開発である。ミレニアム・セル社はまた、ホウ素化ナトリウムを含んだ固体燃料混合物を基礎とした水素貯蔵技術の開発で、全米科学財団(National Science Foundation ;NSF)による第1期中小企業革新研究プログラム資金を獲得した。この技術がもし開発されれば、我々の目標市場である携帯機器に使用するために、新しい水準での安全で信頼できて、高エネルギー高密度の水素バッテリーを可能にする。

●PCIが海軍から契約を獲得(2006/05/11)

 プレシジョン・コンバスション社(Precision Combustion, Inc. ;PCI)は、海軍の兵站燃料を使える燃料電池システムのために、斬新な超小型で高効率な触媒による水蒸気改質法を開発するために、米国海軍海上システムコマンド(U.S. Navy SeaSystems Command)から第1期中小企業革新研究(Small Business InnovationResearch Program ;SBIR)契約を獲得した。水蒸気改質器は、PCI社の特許と商標登録の「マイクロリス(Microlithィ)」技術を基礎とする。この技術は、後続プログラムで開発される燃料処理システムの試作製品のために第1期プログラムでモデル化され、開発される。
http://www.precision-combustion.com/news20060511.html

<報告書/市場調査>
●燃料電池ジャーナル

 「燃料電池ーー基本からシステムまで(Fuel Cells - From Fundamentals toSystems)」は、同領域の専門家たちの意見による独創的な専門新聞で、燃料電池のすべての情報と分子の基礎からシステムの製品までを範囲としている。

<その他>
●コロラド燃料電池センターが開設(2006/05/06)

 コロラド州知事のエネルギー管理保全局(Office of Energy Management andConservation ;OEMC)は、パートナーであるガス技術研究所(Gas TechnologyInstitute)、マイネス・コロラド大学(Colorado School of Mines)、バーサ・パワーシステムズ社(Versa Power Systems)、米国エネルギー省の国立再生可能エネルギー研究所(National Renewable Energy Laboratory ;NREL)とともに、州で最初の燃料電池センターの開所式を発表した。マイネス・コロラド大学に置かれたコロラド燃料電池センター(Colorado Fuel Cell Center)は、電気化学の技術、材料、燃料処理の領域での研究に焦点をあてた世界的な専門家とプロジェクトの本拠地となる。
http://www.mines.edu/all_about/public/spotlight/fuelcellopening.shtml

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 □編集・発行:燃料電池NPO法人PEM−DREAM 

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