燃料電池ワールド (2005/02/09 10:00)

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□燃料電池ワールド
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■Vol.176 2005/02/09発行

                   ◆燃料電池NPO法人PEM−DREAM

                        ◇http://www.pem-dream.com/

■お知らせ
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☆2月の燃料電池市民講座
『燃料電池自動車の試乗会』
ゲスト=トヨタFCHV

 燃料電池自動車も2002年12月の限定発売開始から2年が経過し、関連イベントでは試乗会が盛んに行われるようになっています。すでに乗られた方もおられるでしょうが、まだまだ少数です。今回の市民講座は、岩谷産業株式会社の協力で、トヨタの燃料電池車FCHVを使った試乗会を行います。乗ってみて初めて分かる燃料電池車の性能を満喫できるように、PEM−DREAMならではの試乗会にする企画です。

○日 時 3月5日(土)午後2時から
○場 所 有明水素ステーション集合(東京ビッグサイトから徒歩約7分、地図をお送りします)
○参加費 2000円(PEM−DREAM会員は無料)
○申し込み方法 メールまたはFAXにて、「2月の燃料電池市民講座」と明記の上、氏名、勤務先、連絡先、電話番号をご記入の上、お送り下さい。
 メール info@pem-dream.com 

☆愛知万博「燃料電池どっぷりツアー」

 3月25日に開幕する愛知万博は、燃料電池や水素に関するいろいろな出展が予定されています。PEM−DREAMでは、それらを集中的に視察し、加えて名古屋周辺の燃料電池関連企業への訪問や、宿泊は燃料電池を使っている名古屋栄ワシントンホテルプラザに泊まり、燃料電池を語り合う「燃料電池どっぷりツアー」を企画しています。大まかな骨子は以下のように決まりました。参加者の募集を始めるとともに、訪問先などの具体案は参加者の声を基に調整していこうと考えています。

○期日 7月7日(木)〜9日(土)
○集合 名古屋(解散も)
○主催 名鉄観光新霞が関支店
○企画 燃料電池NPO法人PEM−DREAM
○日程 
7月7日(木)昼頃名古屋集合。専用バスで名古屋周辺の燃料電池関連企業などを訪問。夜はウェルカムパーティ
7月8日(金)朝から万博会場視察。夜は自由行動
7月9日(土)朝から万博会場視察。自由解散
○宿泊 名古屋栄ワシントンホテルプラザ(シングルルーム使用)2泊。燃料電池の見学も予定。
○費用 一人5万5000円(上記費用一式。万博入場券は1日1枚のため2枚。名古屋までの交通費は自己負担)
○人数 15名程度
○申し込み・問い合わせは、メール info@pem-dream.comまで。

☆『図解入門 よくわかる最新燃料電池の基本と動向』発売!
◇発行:秀和システム ◇体裁:A5版、2色刷、232頁 ◇価格:1680円(本体価格+税)
◇書店またはインターネットの本のサイトから入手できます。

■燃料電池関連イベント
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☆水素エネルギー協会「第114回定例研究会」
◇日 時:2月18日(金)13:30〜15:50( 受付12:50〜)
◇場 所:学士会館2階210号室(千代田区神田錦町3-28、TEL03-3292-5931)
◇講演内容
・13:35〜14:35
 演題:「SOFC開発の最近の動向と基礎科学的話題(仮題)」

 講師:東北大学多元物質科学研究所融合システム部門教授 水崎純一郎氏
・14:45〜15:45

 演題:「固体高分子電解質を用いた電気化学プロセスの行方(仮題)」

 講師:(独)産業技術総合研究所関西センター所長代理 竹中啓恭氏
◇参加費:HESS会員無料、非会員3000円(資料代含む)
◇申込方法:FAXもしくはE-mailでお申込下さい。
◇締切り:2月15日(火)
◇問合せ先:水素エネルギー協会事務局・谷生、米富
 〒240-8501 横浜市保土ヶ谷区常盤台79-2
  横浜国立大学教育人間科学部 TEL/FAX 045-339-3996
  E-mail secretary@hess.jp Web  http://www.hess.jp/

■PEM−DREAMニュース
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☆「1月の燃料電池市民講座」と「日本水素エネルギー産業会議旗揚げセミナー」報告(下)

 世の中であり得ないと思われていたことが実際に起きて、進行している。ひとつは、大型コンピュータからパソコンへの転換、今ひとつは固定電話から携帯電話への変化である。それらと同じ事がエネルギーの世界でも起きようとしている。それは、大規模集中型から分散型への流れである。その背景には、日本のエネルギー事情の大きな変化がある。今後はエネルギー需要は伸びなくなる、という予測である。

 金田氏は今回の市民講座のキーワードとして、セキュリティとパラダイムシフトを強調した。パラダイムシフトとは一体なんだろうか。何となく分かる気がするのだが、すぐに日本語で理解できない。例によって辞書に頼ってみると、パラダイム=一時代に支配的なものの見方のこと。特に科学上の問題を取り扱う前提となるべき、時代に共通の思考の枠組み。天動説や地動説。シフト=移動。移行。転換。なるほど、自己流に解釈してみると、石油に頼ってきたエネルギーは水素に変わるだろう、電力生産も大規模集中ではなく分散型が普及するだろう、動力源も熱ではなく電気に変わるだろう、というようなことではないだろうか。どうもカタカナ語は・・・。

 とにかく大きな変化がやってくるということである。その一つの実例として、八戸市で進めている日本で最初のマイクログリッドによる実験を紹介した。要は、東北電力の電源系統からあるエリアを切り離して、そのエリアの電気は自分で発電する、というものだ。こんな事は普通はできない。電気事業法によって、電気を供給する電気事業は経済産業大臣の許可を受けた者でなければできないからだ。自分で発電できても他人に供給することができない。この枠組みを変えようとしているのが電力自由化の流れだ。それはまだ道半ばであるから、八戸市が自分で発電して、役所の施設に電気を供給することは不可能なのだ。電気はあくまでも東北電力から買わなければならない。それが特区制度によって可能になった。青森県と八戸市が申請し認定された「マイクログリッドによる八戸地域再生計画」である。NEDOの「八戸市新エネルギー等地域集中実証研究事業(水の流れを電気で返すプロジェクト)」として2004年度に4億2600万円の予算がつけられている。

 地域にあるエネルギー資源を使って発電しようとすれば、自然エネルギーやバイオマス資源などの未利用エネルギー資源に嫌でも着目することになるだろう。今は自然エネルギーが流行の季節となって、地域では太陽光や風力発電設備の設置が進められている。それはCO2の削減とともに地域のエネルギー資源を利用することだから大切なことであり、分散発電の橋頭堡が築かれている。その先には地域のエネルギー計画がなければならないと思うが、地方自治体にその地域のエネルギーデータはなく、そういう問題意識も希薄なのが現状だろう。制度的な制約がきつく、考えても実現不可能なことだといえばそれまでだが、パラダイムシフトが起きつつあるという認識を持てば、少なくても地域のエネルギーの実情把握くらいは今から準備することが必要だと思う。京都議定書の発効による政策誘導はその強烈な後押しになりつつある。

 いろいろな資源から作れる水素と、それを使い電気と熱を作る燃料電池は、地域のエネルギー自立にとっても核となる技術だ。国全体を水素経済にするということも、地域のエネルギーの視点と組み合わさって展望できることだと思う。そして、地域分散のエネルギー構造ができることは、エネルギーに関するお金が地域に落ちるということであり、地域経済の活性化を促すポイントだということを金田氏は強調された。FC EXPOで会ったイギリス人のへストン君は、「日本にはケイレツというおかしなシステムがある」といっていたが、大きなグループ企業群はグループ内部にお金を落とすことに腐心している。多分経済的に意味があるからそうしているのだろう。企業群を地域に置き換えても同じことがいえないだろうか。

 話の本筋からは外れるが、水素は何次エネルギーか? 昨年のいろいろなセミナーでは、講師の方は2次エネルギーだと言っていた。水素を2次エネルギーというのは、新エネルギーの概念と同じに分かりにくい分類だ。『図解入門 よくわかる最新燃料電池の基本と動向』でも書いたことだが、なかなか納得できないことで、1.5次エネルギーというくらいが理解しやすいと思っていた。それと同じ事を金田氏が言った。エネルギー源は1次エネルギー、使う側のエネルギーは2次エネルギー、水素はエネルギー媒体だから1.5次エネルギーと表現された。初めて専門家からその表現を聞いてうれしかったことを記しておきたい。

 さて、市民講座から1週間ちょっと経った1月31日に「日本水素エネルギー産業会議旗揚げセミナー」があった。金田氏が設立準備事務局長をされている。地域社会で、地域に保存するエネルギーを地域で使っていこう、というテーマでこの会議の設立を進めている。当日の顔ぶれは以下のようだった。発言順に記すと、平沼赳夫氏(衆議院議員・燃料電池を推進する議員連盟会長)
柏木孝夫氏(東京農工大学大学院教授)
三村伸吾氏(青森県知事)
村木茂氏(東京ガス株式会社常務執行役員)
古屋圭司氏(衆議院議員・燃料電池を推進する議員連盟幹事長)
吉田克巳氏(昭和シェル石油株式会社研究開発部水素プロジェクト課長)高石龍夫氏(三菱重工業株式会社長崎研究所主幹研究員)
アレクサンダー・ボーデ氏(ハイドロジェニックスコーポレーション日本事務所所長)最首公司氏(エネルギー環境アドバイザー)
堀雅夫氏(原子力水素研究会代表)
金田武司氏(株式会社ユニバーサルエネルギー研究所代表取締役)

 3時間の間にこれだけの方々が話をするのはなかなか大変なことだが、100名くらいの人が参加した。話の筋は市民講座で金田氏が話したことを、それぞれの立場で語っていた。古屋氏は、愛知万博の日本政府館のエネルギー源を、当初新エネルギーは半分くらいしか使わない計画だったものを、それではいかん、すべて新エネルギーでまかなうようにさせた、とエピソードを語った。その話が特に印象に残っているのは、鶴の一声と雀のさえずりの違いを知らされたからかもしれない。セミナーの終了後、金田氏と「草の根からやっていきましょう」とエールを交わした。日本水素エネルギー産業会議は6月に設立総会を迎える。

■WEB LINK NEWS
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05/02/02 三輪カート:燃料電池が動力、1人乗りのカート製作−−明和町・館林商工高 /群馬(毎日新聞)

 明和町南大島の県立館林商工高(三浦岳俊校長、生徒592人)の生産システム科機械コースで学ぶ男子生徒6人が、燃料電池を動力として、人間を乗せて走る三輪カートの製作に成功した。同校は03年10月に燃料電池自転車を開発しており、そのノウハウを生かした三輪カートだ。同高は「燃料電池を使って動くカート(の製作)は、高校生のレベルでは全国で初めてだと思う」と快挙の達成を喜んでいる。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050202-00000146-mailo-l10

05/02/07 要人先導の燃料電池車公開 トヨタ、ダイムラーが提供(共同通信)

 公開されたのはトヨタ自動車の中型スポーツタイプ多目的車「FCHV」と、ドイツのダイムラークライスラーの小型車「F−Cell」(エフ・セル)。「環境重視の万博にふさわしい」とする協会の呼び掛けに、この両社が2台ずつの提供を申し出た。万博では、参加各国の記念式典を開く「ナショナルデー」を100日以上設けており、両社の車は来場する多数の要人を乗せた車の先導役を交代で務める。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050207-00000090-kyodo-bus_all

05/02/07 燃料電池車を共同開発へ 三菱自と三菱重工業(共同通信)

 三菱自動車と三菱重工業は7日、環境問題に対応するため、燃料電池車の共同開発を検討していることを明らかにした。燃料電池の開発に力を入れている三菱重工の技術を活用することで、先行する他の自動車メーカーを追い上げる。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050207-00000154-kyodo-bus_all

■海外ニュース(中国)
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●燃料電池自動車、今年下半期に北京・上海でモデル走行

 燃料電池自動車のモデル走行が2005年下半期に北京市と上海市で同時に行われる。これにより国内外の燃料電池車が市場に参入し、競争を繰り広げることになる。

 「中国燃料電池商業化モデルプロジェクト」は中国政府、地球環境ファシリティ(GEF)、国連開発計画(UNDP)が支援し、中国科学技術省、北京市、上海市が共同で組織、実施する。プロジェクトは2003年から正式に始まり、総経費は3236万ドルに上る。北京、上海でそれぞれ燃料電池バス6台を調達し、12台で160万キロの運行が目標。

 2004年同プロジェクトで、独ダイムラークライスラー社が北京の燃料電池バス3台を落札した。今秋にも同社の大型燃料電池バス3台が市内を往復する見通し。(05/2/2 日中グローバル経済通信)

■海外ニュース(1月―4)
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<輸送>
●バラードが自動車パートナーから5500万カナダドルを調達

 バラード・パワーシステムズ社は、自動車の提携パートナーであるダイムラークライスラー社とフォード・モータース社から5500万カナダドルの資金を得る権利を行使した。ダイムラークライスラー社はバラード社の240万以上の普通株を購入し、フォード社は200万株以上を調達するだろう。
http://www.ballard.com/be_informed/about_ballard/news/2004/12/17/DCFordInvest121704#

<ポータブル/バックアップ電源>
●新しいマイクロ燃料電池規格を開発するCSAとUL

 CSAアメリカとアンダーライターズ・ラボラトリーズ社(UL)は、マイクロ燃料電池システムとそれに使う燃料カートリッジの必要条件を定める新規格を共同開発し、発行する計画を発表した。燃料容器付きの携帯用・可搬型燃料電池ユニットに与えられる新規格は、米国標準規格として開発され、提案される。そして、国際標準化活動につなげられる。2005年12月までに完成予定のこの規格は、パッケージされたマイクロ燃料電池システムとそれに対応する燃料カートリッジの最低限安全な燃料、設計、安全性能、取り付け、廃棄についての要件を設定する。
http://www.csagroup.org/news/releases/default.asp?articleID=8303&language=English
※アンダーライターズ・ラボラトリーズ社の「サブジェクト2265A:OEMメーカー用情報技術機器の使い捨てメタノール燃料カートリッジ付き携帯用・可般型燃料電池ユニット」のアウトラインオブインベスティゲーションは、COM2000のウェブサイト( http://www.comm-2000.com )を通じて購入することができる。

<燃料/改質器/貯蔵>
●ハイドロジェン・ソーラーがデモンストレーションのために40万ドルを獲得

 ハイドロジェン・ソーラー社は、タンデム型電池(Tandem Cellsェ)による太陽光を使って水から水素を直接取り出す数年間の実証プロジェクトの初年度として、ネバダ大学ラスベガス研究財団から40万ドルを与えられた。このプロジェクトは、ネバダ州ラスベガスにある燃料補給所で共同研究開発が行われる。
http://www.hydrogensolar.com/
※タンデム型電池(Tandem Cellsェ)についての詳しい情報は、
http://slashdot.jp/science/04/12/11/2356237.shtml?topic=70
ハイドロジェン・ソーラー社は、アメリカのネヴァダ州レノにあるアルテア・ナノテクノロジー(Altair Nanotechnologies)社と英国のハイドロジェン・ソラー・プロダクション(株)(Hydrogen Solar Production Company Ltd)のジョイント・ベンチャー企業で、ローザンヌ連邦工科大学のミヒャエル・グレツェル教授の発明した「タンデム型電池」(Tandem Cell)技術を独占的に使用する権利を取得している。

●ナノミックスが水素貯蔵の向上に2つの米国特許を取得

 ナノミックス社は、水素貯蔵技術に関する2つの米国特許を公表した。新しいナノ材料を使ったナノミックス水素貯蔵システムは、自動車と携帯用電気機器を対象にしている。
http://www.nano.com/nr-pr-h2storage.html

<燃料電池コンポーネント>
●試験装置をケタリングに提供するアドバンスド・メジャーメンツ

 アドバンスド・メジャーメンツ社は、ケタリング大学の燃料電池システムと自動車を統合する新しいセンターへ固体酸化物型燃料電池試験装置を配備するために、ケタリング大学から契約を受け取った。
http://www.advmeas.com/
※アドバンスド・メジャーメンツ社(カナダ・アルバータ州カルガリー)

<報告書/市場調査>
●燃料電池産業評価レポート

 ヒューストン先進研究センターは、燃料電池産業評価レポートを発表した。このレポートは、主要な燃料電池技術開発者とシステムメーカーの活動と技術的アプローチの概観を要約している。それは、成長する燃料電池市場と産業のキープレイヤーの動向を要約して、検索するのに役立つ。
http://www.harc.edu/harc/Projects/FuelCell/Reports/eCommerce/ShowDocument.aspx?documentID=2

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■燃料電池ワールド
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 □編集・発行:燃料電池NPO法人PEM−DREAM 

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