燃料電池ワールド (2004/08/25 13:30)

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□燃料電池ワールド
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■Vol.153 2004/08/25発行

                   ◆燃料電池NPO法人PEM−DREAM

                        ◇http://www.pem-dream.com/

■お知らせ
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☆8月の燃料電池市民講座
『水素立国を目指すアイスランド――2004年6月の現地報告』
ゲスト=番場健司氏(グリーン・エナジー・アドベンチャー代表)

 1999年、アイスランド共和国は化石燃料を排し、水素エネルギー社会への転換を目指すことを宣言した。その実施計画がECTOS(Ecological City TransportSystem、環境保全都市交通システム)プロジェクトである。第1段階の「水素燃料電池バスの導入」は、首都レイキャビクのシェルガソリンスタンドに水素ステーションが併設され、ダイムラークライスラーの燃料電池バス「シターロ」が3台導入されて、実証試験が始められている。

 来年、同国へ「サステイナブル・エネルギー」を計画している番場健司氏が、このほど事前調査に行ってきた。ECTOSプロジェクトを進めている「アイスランデック・ニュー・ エナジー社」の正式な協賛を得て、ツアー計画も一歩前進した。

 市民講座再開第1弾は、番場氏をお迎えして、北辺の島国アイスランドの魅力とECTOSプロジェクトの最新の現状、そして「サステイナ ブル・エネルギー」について語っていただきます。

○日 時 8月28日(土)午後2時から
○場 所 岩谷産業株式会社本社会議室(新橋駅から徒歩約10分、地図をお送りします)
○参加費 2000円(PEM−DREAM会員は無料)
○申し込み方法 メールまたはFAXにて、「8月の燃料電池市民講座」と明記の上、氏名、連絡先、電話番号をご記入の上、お送り下さい。
 メール info@pem-dream.com 

☆『燃料電池パワー』Vol.53の内容
【今週の燃料電池関連画像】著作権フリー/添付ファイル 
◇第15回世界水素エネルギー会議」より その7
TUFFSHELL社の高圧水素タンク
1.700Barの水素タンク
2.水素タンクの断面と内部
【沼崎英夫/技術レポート】              
◇FC視点のマガジン・ウォッチング
船瀬俊介「疾れ!電気自動車」(築地書館)
※このメールマガジンは、より専門的な情報をPEM−DREAM会員に提供しています。サンプルは、http://www.pem-dream.com/conts.html

■燃料電池関連イベント
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●SSKセミナー
☆「新エネルギー産業の重点施策とバイオマス実用化の採算性と技術」
◇講師等:
<1>自立した持続可能な新エネルギー産業の発展に向けて
高橋 和也氏(経済産業省資源エネルギー庁省エネルギー新エネルギー部新エネルギー対策課係長)
<2>これからのバイオマスガス化技術と実用化への展開
坂井 正康氏(長崎総合科学大学人間環境学部教授 工学博士)
<3>山口県における実証試験事業を踏まえたバイオマス技術開発動向山口 英男氏(中外炉工業(株)バイオマス発電プロジェクト営業担当課長)
◇日 時:8月27日(金) 午後1時〜5時
◇会 場:明治記念館(東京都港区元赤坂2−2−23)
◇受講料:29,800円(消費税込)

◇主 催:株式会社 新社会システム総合研究所
http://www.ssk21.co.jp/seminar/S_C6_search1.html
◇問い合わせ・申し込み:
株式会社 新社会システム総合研究所
TEL 03−5532−8850
申込受付FAX 03−5532−8851
E-mail  info@ssk21.co.jp
または、上記HPから申し込みができます。

●JPI水素・燃料電池セミナー
☆第7965回
都市ガス事業者が考える“水素社会”とそこまでの道程・・・水素社会は到来するのか?「東京ガス株式会社
水素社会へのハードルと「水素インフラ」整備の取り組み−天然ガスの役割、水素ステーション建設、新たな水素製造技術開発、鉄道用水素ステーション等−」
◇講師:
前田賢二氏(東京ガス株式会社R&D本部水素ビジネスプロジェクトグループ企画チーム主幹)
◇日 時:8月30日(月) 午前10時〜12時
◇会 場:JPIカンファレンススクエア(千代田区有楽町)
◇受講料:24,630円(消費税込み)

☆第8010 回
水素経済の実現に向けて大規模な投資を続ける「ゼネラルモーターズGMにおける燃料電池ビジネスへの取り組みと今後の展開」
◇講 師:
ジョージ ハンセン(George P. Hansen)氏(ゼネラルモーターズ・アジア・パシフィック・ジャパン株式会社燃料電池事業本部(FCA)日本支部部長)
◇日 時:9月8日(水) 午前10時〜12時
◇会 場:JPIカンファレンススクエア(千代田区有楽町)
◇受講料:24,890円(消費税込み)

☆第8019回
「シェルグループ水素エネルギー事業の展開と供給インフラ整備への取り組み−シェルグループの水素事業開発会社<Shell Hydrogen>の動向を踏まえて詳説−」
◇講師:
Shell Hydrogen(Business Development Advisor)
吉田克巳氏(昭和シェル石油株式会社研究開発部水素プロジェクト課課長) 
◇日 時:9月15日(水) 午前10時〜12時
◇会 場:JPIカンファレンススクエア(千代田区有楽町)
◇受講料:24,800円(消費税込み)

☆第8013回
2007年度までに搭載車を実用化すべく、神奈川県に専用施設を設け、今後5年間に500億円以上を投資する「日産自動車株式会社燃料電池自動車の実用化へ向けた取り組みと普及の課題」
◇講師:
宮坂浩行氏(日産自動車株式会社先行車両開発本部FCV開発部企画・渉外グループ主担(兼)総合研究所第二技術研究所総括グループ主担)
◇開催日:9月15日(水) 午後2時〜4時
◇会 場:JPIカンファレンススクエア(千代田区有楽町)
◇受講料:24,860円(消費税込み)

◇以上の詳細情報
http://www.jpi.co.jp/semi-enrg/20040915_8013.html
◇主 催:株式会社 日本計画研究所
◇問い合わせ・申し込み:
株式会社 日本計画研究所(エネルギー担当:千島)
TEL:03−3508−9070 
上記HPから申し込みができます

●燃料電池・水素エネルギー技術展 in 九州
西日本地域では初めての燃料電池及び水素技術に関する見本市
◇日 時 10月27日(水)〜29日(金)10時〜17時
◇会 場 西日本総合展示場本館
     (北九州市小倉北区浅野3丁目8-1) 
      tel.093-511-6848 fax.093-521-8845
◇主 催 経済産業省九州経済産業局/NEDO/九州大学/九州燃料電池研究会/財団法人西日本産業貿易見本市協会
◇主要参加団体 九州大学/NEDO/JHFC/JARI/NEF/エンジニアリング振興協会/トヨタ/ホンダ/日産/GM/ダイムラークライスラー/岩谷/日立/出光興産/東陽テクニカ/コフロック/マイクロパワーエナジー/カナダ/新日本製鐵/MHI/IHI/富士電機/インフラテック/等 約50社  
◇問い合わせ 財団法人西日本産業貿易見本市協会(担当:有田・古賀) 

        北九州市小倉北区浅野3−8−1 tel.093-511-6848
◇詳細は、http://www.eco-t.net/douji/fuel_cell/fuel_cell.htm

■PEM−DREAMニュース
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◇世界初の水素社会を目指すアイスランド(2)
「地熱の恵み:熱水/水蒸気発電と硫化水素の活用」

 50年後に水素社会を実現するというアイスランドの挑戦を裏付けるために、社会/経済的な影響が探求されている。インフラ技術、環境、社会のコスト対利益について評価がなされた。現在のアイスランドの燃料インフラと計画される水素インフラの比較である「GAP」分析、新しい水素インフラについてさらに踏み込んだ「SWOT」分析が行われた。EUの支援を受けたプロジェクトで将来の異なる水素インフラシナリオが比較された。異なる観点からシナリオ別の現代社会へのインパクトが図化された。このインフラ変換に要する基礎的なコストは1000万euroと算出された。フルスケールの移行には50億euroが必要とされるが、未知の技術である舶用機関への水素の利用に関連して研究を要する。運輸と漁業を全面的に水素に転換するのに必要な電気エネルギーは4.8テラ・ワット時で水素に換算すると9万1000トンである。全面転換による水素の需要のシェアは、世界有数の漁業国だけあって漁船が60%であるのに対して陸上輸送は40%である。これは1台(隻)当りの水素消費の原単位が違う上に、1稼動当りの走行(航行)時間・距離が違うことに起因する。

 現在想定されているデモンストレーション用の水素駆動漁船は、容積100トン、500kWの水素エンジンと燃料電池を装備、1000kgの水素を搭載して4〜5日間の航海を行う。

 昨年設置されたシェル・ハイドロジェンの水素ステーションはレイキャビック市の街はずれにあるが、将来は市の中心部と港町の5か所が予定されている。現在の給油所は2か所の港町に密集しており、漁業に伴う海上、陸上の石油需要を反映している。EUの支援による「New-H-Ship」プロジェクトが今春立ち上がった。ECTOSの事業会社であるアイスランディック・ニューエナジー社(INE)がECTOSの第2ステージとして企画した水素駆動乗用車の詳細についても詰めが行われている。ECTOSのシンクタンクであり、コア技術の開発を担っているアイスランド大学は、水素物理に基づく水素の吸着/脱着の挙動の解明、水素貯蔵のためのナノテクノロジーの活用、地熱の高温を利用した水電解と噴気ガスからの水素の製造、熱を利用した水素化物による水素貯蔵の4分野で教授とポストドクターと卒業生による研究チームを設けている。他の研究機関との連携も行っている。

 豊富な地熱の利用はアイスランドの水素計画の大きな特色である。アイスランドは北米プレートとユーラシアプレートの境界上にあり、地殻内の温度勾配が急で、地表の高温域が方国内各所にある。地熱水蒸気によるタービン発電機の発電量はアイスランドの発電量の相当部分を占めている。地熱水蒸気の高温を利用して水の電解を行うプロジェクトがフランスの研究機関とアイスランド大学の共同研究で進められている。スチーム・アイロンのように地層の間から噴気した水素化合物は国内のあちこちで見られるが、北部のKrafla地区は最も著名で、噴気孔の中には年間50トンもの水素を噴出するものもある。

 噴気ガス、特に硫化水素(H2S)から水素を分離するプロジェクトが進行中である。これには硫化水素の水素と硫黄の結合を解離する閉サイクルの化学プロセスと高度の膜技術が含まれている。

 地熱の高温利用と共に低温利用も重要で、水の沸点前後と沸点以下の低品位の地熱利用が大きな部分を占めている。この分野ではアイスランドは2つの技術を持っている。一つはサーモ・エレクトリック技術に直結した技術であり、他は水素吸蔵合金の熱管理に低温地熱を利用する技術で、共にVarmaraf社が実施している。同社は日本の日本製鋼所、IFE、ノルウェーのエネルギー研究所と提携しており、この技術を地熱利用の水素の製造や排熱利用の新しい分野に提案しようとしている。

 アイスランド大学とINEは提携して、アイスランドの水素プロジェクトの全てをカバーした海外の学卒者向けの夏休み中の1週間のセミナーとシンポジウムや一般のビジター向けの視察旅行を行っている。

 このような独自の立地条件と技術的背景のもとに水素社会の実現を指向しているアイスランドは小国ながら国際的に注目されており、2003年11月に米国エネルギー省の提唱で設立された「水素経済のための国際パートナーシップ」(IPHE)には、構成国15か国(世界人口の3/4を占める)の一つに招かれた。

※資料
(1)The Hydrogen Projects in Iceland and Possible Lessons learned(Thorsteinn I..Sigfusson、アイスランド大学、第15回世界水素エネルギー会議、2004.6.横浜市、論文HYDROGEN2004.28A-03)
(2)「ECTOSおよびアイスランドにおける水素社会」(トルスティンI.シグフッソン、アイスランディック・ニューエナジー社チェアマン、国土交通省第3回燃料電池自動車国際シンポジウム、2003.3.東京)
(3)Renewable Hydrogen Energy Systems(T.Nakken et al,Norsk Hydro ASA、第15回世界水素エネルギー会議、論文HYDROGEN2004.30G-05)

 ノルウェーの電力会社であるNorsk Hydroは電力を利用した金属精錬や水素製造の装置のメーカーでもあり、水素社会の創成にコミットするという企業戦略からEU支援のECTOS、CUTE、DaimlerCrysler、Ford、GM/Opel、BMWと共同のプロジェクトCEP-Berlin(Clean Energy Partnership-Berlin)の水素ステーション、燃料電池推進船舶の国際共同開発プロジェクトなどに関わっている。この発表はレイキャビックの水素ステーションと、ノルウェーのUtsiraにデンマークの大手風力発電装置メーカーEnerconと建設中の発電容量600kWのハイブリッド発電ステーションのレポート。後者は50kW、10Nm3/時の水電解水素発生装置と200bar、2000Nm3の水素貯蔵タンクを備え、余剰電力で水素を製造して貯蔵、風況による年間1000〜2000時間と推測される風力発電停止時に発電容量10kWの固体高分子型燃料電池で電力供給を行う独立電源。
(4)Working the futures:Preliminary Results from the Nordic H2 EnergyForesight(Matthias Altmann et al、第15回世界水素エネルギー会議、論文HYDROGEN2004.30H-02)

 ノルディック5か国の水素社会移行への諸条件の検討と水素市場の将来予測のプロジェクトで、03年末で16企業がパートナーとなり、デンマークの著名な研究機関であるRISOなど4か国の研究機関が参加している。9つのシナリオに基づく2030年までの圏内水素需要予測など予備的な検討事項のレポート。
(5)Hydrogen Energy Potential of The Black Sea(I.Engin Ture,Golden HornUniv.第15回世界水素エネルギー会議、論文HYDROGEN2004.P02-01)
Hydrogen from H2S in The Black Sea(Sema Z.Baykara,Yildiz TechnicalUniv. et al、第15回世界水素エネルギー会議、論文HYDROGEN2004.30G-07)

 黒海の天産の硫化水素から水素を製造する技術に関してトルコの2つの大学から発表があった。周辺諸国の五大河川が流入し、浅海のボスフォロス海峡を通じて地中海につながっている準内陸海である黒海は、その特殊な海洋条件によって表層のフレッシュウォーターと深部の塩分と硫化水素の多い海水の間の垂直回流が消滅して成層状態になり、水深100m以下では溶融酸素がなくかり、硫化水素は急増している。水深1750mで380マイクロモル/Lにも上る高濃度の硫化水素分の多い深層水をくみ上げて、高温太陽熱によるクラウス・プロセスなどの方法で水素と硫黄を分離して、水素資源の活用と海水浄化を図る構想。硫化水素由来の水素資源の活用に関して共通しているアイスランドと対照的なケーススタディー。
(沼崎英夫)

◇第2回「高効率高温水素分離膜の開発プロジェクト」(中間評価)分科会の報告

 8月20日、東京・品川で標記の会議が開かれた。東海道新幹線が品川駅にも停車するようになり、再開発で建設された品川インターシティホール棟の地下会議室だった。一般傍聴者は10数名だが、会議の関係者は40名近くいた。

 このプロジェクトは、地球温暖化防止新技術プログラムの一つであり、新エネルギー
・産業技術総合開発機構(NEDO)ではナノテクノロジー・材料技術開発部が担当している。経済産業省では製造産業局ファイン・セラミックス室が担当原課として、2002年度から2006年度までの5年間で総予算額24億円(2004年度までに14億4200万円)をつけている。プロジェクトリーダーは中尾真一氏(東京大学工学系研究科化学システム工学専攻、教授)で、委託先は(財)ファインセラミックスセンター、(独)産業技術総合研究所となっている。このほど3年目が経過したので、中間評価が行われることになり、その会議だった。

 高効率高温水素分離膜とはどのようなものか、と思って出かけていったが、その説明はなく、もっぱら中間評価報告書としてまとめる評価結果(案)の文章に対して統一見解を作るものだった。資料をよく見れば、会議の主催者はNEDOナノテクノロジー・材料技術開発部ではなく、研究評価部である。9月に予定されている研究評価委員会でこのプロジェクトの評価報告書を確定するために、6月に第1回会合を開いてこの分科会を設置した。「当該事業の推進部署及び研究実施者からのヒアリングと、それを踏まえた分科会委員による評価コメント作成、評点法による評価及び実施者側等との議論等により」進められた評価作業で出来上がった評価結果(案)に対して、この日は計18カ所の実施者側からの修正案を審議して文言を確定していった。

 こうした評価の仕組みは、元をたどれば1995年の閣議決定「審議会等の透明化、見直し等について」で、審議会等の公開が決められたことに発している。その後、総合科学技術会議で取りまとめられた「国の研究開発評価に関する大綱的指針」(2001年内閣総理大臣決定)、「経済産業省技術評価指針」(2002年経済産業省告示)の2つがガイドラインとして定められた。NEDOでは、2001年に「技術評価実施要領」を定めて技術評価が開始され、2003年には「技術評価実施規程」として制定された。

 さて、高効率高温水素分離膜の開発であるが、この背景には1997年の京都議定書がある。開発は、ここで定められた2010年時点でのCO2の排出削減目標のうち、0.6%分に寄与することを短期目標として計画された「地球温暖化防止新技術プログラム」の革新的エネルギー消費削減技術35テーマの一つとして取りあげられた。研究開発の後、35テーマの技術の導入普及施策を通じて0.6%削減を達成しようというのであるから、この日の論議も、こうした生い立ちからくる現実的な実効性を担保したいとする誘惑と、基盤技術の研究開発というベーシックな方向性との相克が、「安全性」という言葉をめぐって展開された。

 この開発の全体目標は、「高効率高温水素分離機能を有する無機膜の開発」と「従来型に替わる高効率水素製造システムとして応用可能な高効率高温水素分離膜モジュールの設計・製造技術などの基盤技術の確立」である。

 そのための研究項目は3つある。燃料電池の普及と大量の水素需要に備えて、既存の水素製造法(水蒸気改質法、CO変成・除去触媒方式)を効率において凌ぎ、シンプルな構造で安価な改質器を作るための基盤技術開発である。「低温で使える膜は世界中にあるが、セラミックス膜として500℃以上で使えるものは現存していない」との指摘があった。中間評価では、「分離膜微細構造制御技術及び化学組成制御技術」の中間目標は「十分達成」された。分離膜の材料も7種類が検討されたが2つに絞られ、今後は次の目標である「膜モジュール化技術」と「小規模膜モジュールシステム実証研究」が予定されている。この終了年度が2006年度であり、その後は2010年に向けて実用化・普及を進めていくということになるのだろう。

 この技術が水素スタンドや家庭用燃料電池に応用され、国が掲げている燃料電池自動車と家庭用燃料電池の普及目標の達成及び産業での水素需要に応えるためには、行政側はプラン通りに進ませたい訳だが、研究開発を行っている側はあまり実用化とか年限で縛られたくはないのが本音であろう。縛られたくないというのは怠けるとかいうことではなく、基盤研究は長期的視野で行われるべきであるという在り方の問題としてである。この点は、論議の中でも評価委員の方々から、NEDOや文部科学省に対して言いたいこととして強調されていた。

 そして「安全性」である。評価結果(案)に対する18の修正部分のうち3カ所が係わった。いずれも今後に対する文案の箇所である。要素技術の開発とシステムとして組み上げていく技術の開発は全く別物であり、実用化技術も然りである。安全性というのは、どのように使われるかがはっきりしているところで決められるもので、このプロジェクトはそこまで行かない。開発実施側はそのようなことから、以下の文案を問題にした。

〔プロジェクト全体に関する評価結果〕
1.「総論」の「今後に対する提言」のうち、「またその際に燃料電池への活用を踏まえた安全性の研究にも重点を置くべきである」
2.「各論」の「実用化、事業化の見通しについて」のうち、「分離膜を使用しない通常の水素製造法に対する優位性を明確にし、耐久性のみならず、燃料多様性、負荷応答性、安全性を含めた課題と解決の方針を明確にすることが望まれる」〔個別テーマに関する評価結果〕
3.「小規模モジュールシステム実証研究」の「今後の研究開発に関する方向性等に関する提言」のうち、「膜モジュールシステムの実機イメージと安全性を含めた個別仕様を早期に固め、実用化可能なシステム開発に繋げるべきである」

 実施者側は、「膜反応器の大きな性能低下がないこと、さらには破壊に至らないという「耐久性」によって燃料電池システムの構成要素として十分な安全性が確保される」として、1と3の安全性の言葉を耐久性に修正する修正案を出した。2は削除する修正である。

 評価委員からは、安全性と耐久性とでは概念が全く違うので、置き換えるだけではおかしな文章になってしまう、という意見が出された。実施者側が安全性を無視して修正案を出しているのではないことを理解した上で交々意見を出し合う中から、実施者側が問題にしている内容が徐々にはっきりしてきた。

 このプロジェクトは当然、固体高分子形燃料電池/水素エネルギー利用プログラムで実施している他のプロジェクトと関連がある。しかし、それらは実用化との関係で安全性を取りあげており、ここで言う安全性も同レベルだとすれば手が届く問題ではないこと、文書化されれば一人歩きすることもありうること、などである。評価委員もそうした点は理解しており、では、どういう文言にするかで論議となり、以下のように確定した文章が出来上がった。

1.またその際に燃料電池への活用を踏まえ、他の安全性に関するプロジェクトとの連携にも重点を置くべきである。
2.分離膜を使用しない通常の水素製造法に対する優位性を明確にし、耐久性のみならず、燃料多様性、負荷応答性を含めた課題と解決の方針を明確にし、実用化、事業化には安全性を考慮することが望まれる。
3.膜モジュールシステムの実機イメージと個別仕様を早期に固め、安全性を含めた実用化可能なシステム開発に繋げるべきである。

 私たちはいろいろな報告者を見て、背景にこうした議論があることは想像できても、具体的なところは知ることがない。好奇心の違いといわれればそれまでだが、この日の会議は勉強になった。産学官の連携を充実させるには、行政も実施者もそれぞれの立場を抱えているので、こうした論議は十分にされることが必要だと思う。

 燃料電池自動車や家庭用燃料電池などの実用化のニュースが出てきて、何となく燃料電池はもう手中の技術というような雰囲気が社会の中に起きかけている気がするが、実際はまだまだわからないことだらけで、基礎的な研究をしっかりやらないといけない、という意見を聞くことがある。この日も最後に評価委員から、「材料研究として途切れないプロジェクトにして欲しい」「膜で実用化まで行っている技術は高分子膜だが、無機膜にはないので頑張って欲しい」とエールが送られていた。

■WEB LINK NEWS
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04/08/11 [原発・収支決算]福井発 第6部 中間貯蔵/4止 地元の経済効果 /福井(毎日新聞)
◇誘致で交付金、固定資産税に期待−−結び付かない地域振興

 今回の美浜原発の事故でも下請けの作業員が犠牲になった。自動車や家電などの製造と比較して、部品の地元発注などが少なく、産業として長期的に地元企業にもたらす経済効果が低いと言われる原発だが、メンテナンスが必要な電気の製造工場である限り、元請け、下請けと連なる一定の雇用効果はある。

 中間貯蔵施設をみると、建設費は約1000億円で、うち使用済み核燃料を入れる金属キャスク製造費が8割ほどと推定される。雇用効果は極めて低い。単純に言えば、金属キャスクに入れて建屋内で冷却保管するだけの静的な施設のため、雇用は警備も含めて30人程度と予想されている。

 自治体が中間貯蔵施設の誘致で最も期待しているのは国からの電源3法交付金と事業者が納める固定資産税だ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040811-00000231-mailo-l18

04/08/13 地球温暖化対策条例 市民・事業者の意見募集 案づくりに生かす−−京都市 /京都(毎日新聞)

 二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出量削減に向け全国の自治体で初となる「地球温暖化対策条例(仮称)」の大綱を明らかにした京都市は12日、市民と事業者から条例の内容についての意見募集を始めた。今月から9月にかけて5回の説明・意見発表会「地球温暖化対策を考える市民会議」も開き、条例案づくりに生かす。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040813-00000198-mailo-l26

04/08/15 <資源エネ庁>マイクロ水力発電、初の全国立地調査(毎日新聞)

 経済産業省・資源エネルギー庁は14日、今年度から、上水道や農業用水、工業用水などでの水流落差を使ったマイクロ水力発電(小水力発電)が可能な発電地点やその地点の発電能力についての全国調査を初めて、実施することを明らかにした。08年度まで5年間をかける大がかりな調査になる。同庁は、小規模な水力発電が温暖化防止のための有力な新エネルギーになると見て、今回の調査を突破口にして普及に全力を挙げる構えだ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040815-00000015-mai-bus_all

04/08/17 露政権、エネルギー業界再編 「石油」国家統制へ ユコス吸収し新国営企業(産経新聞)

 【モスクワ=内藤泰朗】ロシアのプーチン政権は、同国の戦略産業の石油業界全体を統括する強力な国営石油企業の新設に向けて動き出した。巨額追徴課税で破綻(はたん)寸前の同国の石油最大手ユコス社の解体を手がかりに、新興財閥主導の石油部門を国家統制下に置くための布石だ。旧ソ連国家保安委員会(KGB)色が強いプーチン流の強権的な支配術が浮き彫りになっている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040817-00000007-san-int

04/08/17 風力発電協、さらなる普及へ4委員会設置(日刊工業新聞)

 日本風力発電協会(東京都千代田区、03・5297・5577)は日本での風力発電のさらなる普及を目指して、系統連系、新エネルギー等の利用に関する特別措置法(RPS法)、規制緩和に関する検討・提言と05年度から中間法人となるための準備委員会の合計4委員会を設置した。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040817-00000021-nkn-ind

04/08/17 三菱、寄棟屋根に“ぴったり”の太陽光発電システム(ITmediaライフスタイル)

 従来はモジュールを小型化することで寄棟屋根での設置効率を上げようとしていたが、今回の新製品で三菱は全く逆のアプローチを採用。モジュール形状のラインアップを増やすとともに、各モジュールを大型化した。「日本の寄棟屋根を分析した結果、その多くで昔ながらの寸や尺といった単位が用いられていることがわかった。そこで、形状やサイズを考慮し、大型化した発電モジュールを開発した」(同社)。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040817-00000005-zdn_lp-sci

04/08/18 エネ庁、来年度から家庭用1kW燃料電池400台のモニター開始(日刊工業新聞)

 家庭用FCは新エネルギー財団が計45台を全国に設置して実証している2カ年のフィールド事業が04年度で終了する。これを踏まえエネ庁は05年度から実用フェーズに移行、最も安い価格を提示してきた企業へ1台600万円の補助を提示、計400台を全国に大規模モニター事業として設置する。このための予算25億円を要求する方針。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040818-00000022-nkn-ind

04/08/18 <愛知万博>新交通システムの試験走行始まる 長久手会場(毎日新聞)

 愛・地球博(愛知万博)の長久手会場内を走る次世代交通システム「IMTS」の試験走行が18日、同会場で始まった。 IMTS(インテリジェント・マルチモード・トランジット・システム)は高圧水素ガスを燃料とした新交通システム。会期中、無人による自動運転で3両の隊列走行を行う予定。この日は運転手を乗せて約50メートルを試走した。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040818-00000017-maip-soci

04/08/19 新エネ財団、FCの実証で東京と大分に純水素使い住宅で試験(日刊工業新聞)

 新エネルギー財団は、固体高分子形燃料電池(FC)のフィールド実証で、純水素を初めて使った1キロワット級のFC2台を、今月末に東京都内と大分市内の住宅に設置して運転を始める。改質機なしのFCを導入することで負荷の平準化を図る。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040819-00000021-nkn-ind

04/08/19 Jパワー、部品を40%削減したSOFC25kw級を来春から実証(日刊工業新聞)

 Jパワー(電源開発)は発電セルの構造を簡略化し、部品点数を40%削減した固体酸化物形燃料電池(SOFC)の実用化に向け、25キロワットの内部改質型を初めてフルシステムで05年春から技術開発センター(神奈川県茅ヶ崎市)で連続運転に入る。セルは三菱重工業から供給を受け、システムに組み上げ運転するのは同社独自で行う。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040819-00000020-nkn-ind

04/08/19 京大が市民講座 エネルギー、環境テーマに−−28日、秋田 /秋田(毎日新聞)

 同大の「環境調和型エネルギーの研究教育拠点」グループは、太陽、水素、バイオエネルギーに関する基礎研究や、エネルギー少消費型社会の形成を図る提言を行っている。エネルギー、環境問題を分かり易く説明し、エネルギーの削減や環境保全に多くの人が取り組んでもらえることを講座の目的に掲げる。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040819-00000145-mailo-l05

04/08/20 ヒートアイランド現象で光化学スモッグ増加…都が分析(読売新聞)

 検討会が出した結論は、都会のこうしたヒートアイランド現象が上空の気温を押し上げることで、NOxとNMHCの化学反応を促進させ、酸化物質を大量に作り出している、というもの。暑い日は光化学スモッグが発生しやすい、と従来から指摘されていたが、統計学的に初めて裏付けられた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040820-00000501-yom-soci

04/08/20 科学を通じて自然環境を学ぶ  城陽市で児童参加の体験学習(京都新聞)

 ウーロン茶と鉛筆のしんを使った燃料電池や、レモンやダイコンなどに銅板と亜鉛板を刺した果物電池など、身近な材料を使った電池も作り、自然が秘めた力に興味津々だった。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040820-00000033-kyt-l26

04/08/23 電気作り、わかった…小中学生300人体験−−熊山町・あかいわエコメッセ /岡山(毎日新聞)

 会場内では、微生物による生ごみ分解の様子を1カ月にわたって観察した「段ボールコンポスト」や、「戦争と環境破壊」と題して劣化ウラン弾の被害に苦しむイラク人の写真パネルの展示があった。燃料電池の展示コーナーでは、水素と酸素を反応させて電気を発生させ、小型のタービンを回す装置を紹介。子どもたちは、実行委のメンバーから説明を受けながら食い入るように装置を見つめていた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040823-00000235-mailo-l33

04/08/24 露の拡張主義 旧ソ連圏再支配着々と 高騰するエネルギー資源を武器に(産経新聞)

 【モスクワ=内藤泰朗】エネルギーを武器とした旧ソ連圏に対するロシアの拡張主義が顕著になっている。米国や中国の進出が著しい中央アジアのウズベキスタンの天然ガスがロシアの影響下に入ったほか、ウクライナでも長期エネルギー協力が実現。欧米の影響が強いアゼルバイジャンへの攻勢も強まっている。世界で高騰する戦略資源のエネルギーによる旧ソ連圏再支配をもくろむプーチン政権の戦略が浮き彫りになっている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040824-00000010-san-int

04/08/24 英イネオス、燃料電池金属セパレーター被覆技術で日本進出(日刊工業新聞)

 国際化学大手の英国イネオスグループのイネオスクローエンタープライズは、固体高分子形燃料電池(PEFC)の電極を構成する金属セパレーターの寿命を大幅に伸ばせるコーティング技術で日本市場へ進出、イネオスケミカル(東京都品川区、03・5462・8682)を通じて事業活動を開始した。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040824-00000021-nkn-ind

04/08/24 燃料電池オートバイを開発=四輪車のシステムを小型・軽量化―ホンダ(時事通信)

 *ホンダの福井威夫社長は24日、栃木県芳賀町で記者会見し、水素から電気を取り出す燃料電池を使用したオートバイを開発した、と発表した。氷点下でも始動できる四輪車用の燃料電池を小型・軽量化し、搭載した。燃料電池バイクの開発はヤマハ発動機に続き2社目。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040824-00000833-jij-biz

■海外ニュース(8月―2)
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<輸送>
●バラードとダイムラークライスラーが北京市に3台の燃料電池バスを提供

 バラード・パワー・システムズは、中国科学技術省、地球環境ファシリティー及び国連開発プログラムによる支援プロジェクトに提供されるメルセデス・ベンツCitaroバスに搭載される3台の大型燃料電池エンジンをダイムラー・クライスラーに供給する。3台のバスは、2005年から207年まで続く2ヵ年実証プログラムの一部として、北京市内で運行される。
http://www.ballard.com/pdfs/22 China Bus.PDF

<定置用電源>
●Plug Powerが国防省から受注

 Plug Power Incが米国国防省と180万ドル(約2億円)の共通コア電源プログラムを落札した。プログラムでは、基幹施設支援システムに統合する為の要求事項の整備と検証を行う為、全部で15基のGenCoreィ システムをフィールド実証プログラム及び実験室テストプログラム用に設置する。
http://www.plugpower.com/news/press.cfm

●BuderusがRWEとIdaTechのプログラムに合流

 Buderus Heiztechnik GmbHは、 IdaTechと共同で5キロワット級熱電併給(CHP)燃料電池システムの開発プログラムを進めているRWE Fuel Cellsに合流した。今年前半、IdaTechは、出力50キロワットまでの集合住宅及び小規模店舗用CHP燃料電池システムの開発、商業化の為のRWE Fuel Cellsとの共同プログラムを発表している。
http://www.idatech.com/media/news.html?article=62

<ポータブル/バックアップ電源>
●HydrogenicsがRatheonに電源システムを供給

 Hydrogenics CorporationがRatheon Companyの部門の一つである、RatheonIntegrated Defence System(Ratheon統合防衛システム)から補助電源システムの供給契約を落札した。システムは、軍事行動で使用されているバッテリー及びディーゼル発電機の代替用としてテストされる。
http://www.hydrogenics.com/ir_newsdetail.asp?RELEASEID=140603

<燃料電池コンポーネント>
●SatConがPCUsを受注

 カナダのSatCon Technology CorporationのPower Systems部門は、今月、同社の燃料電池電源コンディショニングユニット(PCUs)について、総額100万ドル(約1億1000万円)を超す新規受注をした。 本年中に納入される予定。
http://www.satcon.com/news/071404.html

<報告書/市場調査>
●Energy Info Sourceによる報告書

 Energy Info Sourceは「Towards A Hydrogen Economy(水素経済に向けて)」と題したレポートを発行した。重要なエネルギー基材としての水素利用の動きに関する110ページの簡潔な調査報告書となっている。
http://www.energyinfosource.com/products/product.cfm?report_ID=41

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