燃料電池ワールド (2004/07/28 16:10)

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□燃料電池ワールド
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■Vol.150 2004/07/28発行

                   ◆燃料電池NPO法人PEM−DREAM

                        ◇http://www.pem-dream.com/

■お知らせ
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☆8月の燃料電池市民講座
『水素立国を目指すアイスランド――2004年6月の現地報告』
ゲスト=番場健司氏(グリーン・エナジー・アドベンチャー代表)

 1999年、アイスランド共和国は化石燃料を排し、水素エネルギー社会への転換を目指すことを宣言した。その実施計画がECTOS(Ecological City TransportSystem、環境保全都市交通システム)プロジェクトである。第1段階の「水素燃料電池バスの導入」は、首都レイキャビクのシェルガソリンスタンドに水素ステーションが併設され、ダイムラークライスラーの燃料電池バス「シターロ」が3台導入されて、実証試験が始められている。

 来年、同国へ「サステイナブル・エネルギー」を計画している番場健司氏が、このほど事前調査に行ってきた。ECTOSプロジェクトを進めている「アイスランデック・ニュー・ エナジー社」の正式な協賛を得て、ツアー計画も一歩前進した。

 市民講座再開第1弾は、番場氏をお迎えして、北辺の島国アイスランドの魅力とECTOSプロジェクトの最新の現状、そして「サステイナ ブル・エネルギー」について語っていただきます。

○日 時 8月28日(土)午後2時から
○場 所 岩谷産業株式会社本社会議室(新橋駅から徒歩約10分、地図をお送りします)
○参加費 2000円(PEM−DREAM会員は無料)
○申し込み方法 メールまたはFAXにて、「9月の燃料電池市民講座」と明記の上、氏名、連絡先、電話番号をご記入の上、お送り下さい。
 メール info@pem-dream.com 

☆『燃料電池パワー』Vol.50の内容
【今週の燃料電池関連画像】著作権フリー/添付ファイル 
◇「第15回世界水素エネルギー会議」その5
インテリジェント・エナジー社の展示
1.ブース全景(右)
2.100W PEMスタック
3.100W パーソナルパワーユニット
4.2.5kW PEMスタック
5.50kW PEMスタック
6.FC飛行機(写真)
【沼崎英夫/技術レポート】              
◇NEDOがFC・H2技術開発成果報告会
◇FC視点のマガジン・ウォッチング
★「原子力水素」製造に現実味、900℃で水を熱化学的に分解
「日経エコロジー」8月号
★燃料電池は小型機器からー東芝とNokiaが相次ぎ発表、パッシブ型で100%のメタノール
「日経エレクトロニクス」7月19日号
★携帯電話機に燃料電池ー米MTI社が量産へ、年内に無線タグ・リーダーから製品化
「日経エレクトロニクス」7月5日号
◇[訂正]
※このメールマガジンは、より専門的な情報をPEM−DREAM会員に提供しています。サンプルは、http://www.pem-dream.com/conts.html

■燃料電池関連イベント
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●SSKセミナー
☆「キャップ経済に備えた排出量管理手法とGHG取引市場のビジネスチャンス」
◇講師等:
<1>企業内におけるCO2排出量管理制度の構築
大塚 俊和氏((株)NTTデータ経営研究所環境戦略コンサルティング本部チーフコンサルタント)
<2>GHG排出権取引市場とJACO CDMの事業展開
村上 亘氏((株)JACO−CDM業務部主席)
◇日 時:8月4日(水) 午後2時〜5時
◇会 場:明治記念館(東京都港区元赤坂2−2−23)
◇受講料:29,800円(消費税込)

☆「新エネルギー産業の重点施策とバイオマス実用化の採算性と技術」
◇講師等:
<1>自立した持続可能な新エネルギー産業の発展に向けて
高橋 和也氏(経済産業省資源エネルギー庁省エネルギー新エネルギー部新エネルギー対策課係長)
<2>これからのバイオマスガス化技術と実用化への展開
坂井 正康氏(長崎総合科学大学人間環境学部教授 工学博士)
<3>山口県における実証試験事業を踏まえたバイオマス技術開発動向山口 英男氏(中外炉工業(株)バイオマス発電プロジェクト営業担当課長)
◇日 時:8月27日(金) 午後1時〜5時
◇会 場:明治記念館(東京都港区元赤坂2−2−23)
◇受講料:29,800円(消費税込)

◇主 催:株式会社 新社会システム総合研究所
http://www.ssk21.co.jp/seminar/S_C6_search1.html
◇問い合わせ・申し込み:
株式会社 新社会システム総合研究所
TEL 03−5532−8850
申込受付FAX 03−5532−8851
E-mail  info@ssk21.co.jp
または、上記HPから申し込みができます。

●燃料電池・水素エネルギー技術展 in 九州
西日本地域では初めての燃料電池及び水素技術に関する見本市
◇日 時 10月27日(水)〜29日(金)10時〜17時
◇会 場 西日本総合展示場本館
     (北九州市小倉北区浅野3丁目8-1) 
      tel.093-511-6848 fax.093-521-8845
◇主 催 経済産業省九州経済産業局/NEDO/九州大学/九州燃料電池研究会/財団法人西日本産業貿易見本市協会
◇主要参加団体 九州大学/NEDO/JHFC/JARI/NEF/エンジニアリング振興協会/トヨタ/ホンダ/日産/GM/ダイムラークライスラー/岩谷/日立/出光興産/東陽テクニカ/コフロック/マイクロパワーエナジー/カナダ/新日本製鐵/MHI/IHI/富士電機/インフラテック/等 約50社  
◇問い合わせ 財団法人西日本産業貿易見本市協会(担当:有田・古賀) 

        北九州市小倉北区浅野3−8−1 tel.093-511-6848
◇詳細は、http://www.eco-t.net/douji/fuel_cell/fuel_cell.htm

■PEM−DREAMニュース
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◇「NEDO燃料電池・水素技術開発成果報告会」報告

 7月22日、23日に東京・JAホールで、「NEDO燃料電池・水素技術開発成果報告会」が行われた。前日の21日にも「NEDO燃料電池・水素シンポジウム」が行われ、計3日間のイベントだったが、21日の申し込みは見逃したため、参加できなかった。

 成果報告会は両日とも、午前9時過ぎから午後5時過ぎまでびっしり行われた。22日は「燃料電池技術開発」で、オーラル発表が16件、ポスター発表は28件、23日の「水素安全利用等基盤技術開発」はオーラル発表が19件、ポスター発表は33件あった。「燃料電池技術開発」は、今年度がミレニアム・プロジェクトの最終年度となるので具体的な成果報告が多く、燃料電池の開発が着実に進んできていることを伺わせた。「水素安全利用等基盤技術開発」では、水素の安全技術と実用化技術の2分野を昨年度(2003年度)から5年間の期間をかけて実施する予定なので、成果というよりも課題と方向性が見えだしてきた、という段階であろう。

 固体高分子型燃料電池はすでに自動車用が実用化され、家庭用も来年早々にリース販売が開始される。商品化の最初なので、基本性能を満たしているかどうかが注目され、それに関する情報がこれまで多く伝えられてきた。しかし、この日の発表は次のステップでの技術開発に関するもので、最先端ではそれを乗り越えるメドをつけつつある、という印象を持たされた。

 一例として、セパレータは、燃料電池の製造コストで大きなウエイトを占めているといわれ、性能の向上とともにコストの低減が至上命題だった。コストの低減は量産化技術の開発でもある。

 三菱電機は「カーボン樹脂モールドセパレータの開発」と題する発表を行った。同社は材料メーカーと共同開発を行い、性能評価をした。カーボンメーカーが作ったセパレータを蜘蛛の巣状のグラフで評価して、各社を番号化した評価一覧を作り、「御社は何番」と示して相対評価を行った。評価項目は、貫通抵抗率(電気特性)、コスト、厚み精度(成形性)、溶出(安定性)、重量保持率(安定性)、強度保持率(安定性)、曲げひずみ(機械特性)の8項目。この評価が全て一番外側の八角形になるように、弱点を一つひとつ克服する技術開発を材料メーカーに再委託して全体のレベルアップを図った。当初、カーボンメーカーは自身で燃料電池スタックを運転することがあまりなく、品質にバラツキがあったが、この数年間の努力で今一歩のところまで数社が到達した。200円/枚のコストも、何社かはできる見通しを得ているそうだ。また、量産化に向けた試作方法の開発にも着手しているという。200円/枚のコストは燃料電池実用化戦略研究会が掲げた目標値であり、2001年ごろは4000円〜数万円/枚していたものである。

 住友金属は「固体高分子形燃料電池セパレータ量産化技術開発」の発表を行った。こちらは金属セパレータである。同社は2003年10月に「高性能ステンレス薄鋼板を、世界に先駆けて開発し、量産化の見通しを得」たと発表している。今回はその量産化技術開発についての報告だった。水素と酸素の流路部分面積14cm2のプレス金型を用いて、10万ショットの金型耐久性評価を行った。10万ショットを終了した段階でも金型の損傷は全く認められなかった。これには30トンのステンレスを使った。1秒で1枚のセパレータが落ちてくるそうで、燃料電池自動車1万台分までは設備投資なしでできるといっていた。しかし、2030年の期待台数1500万台ともなると、プレス機400台が24時間稼働するという膨大な量になるそうで、更なる技術開発が要求されるという。同社は金属セパレータを用いた燃料電池の運転も開始した。

 今週のウェブリンクニュースに「<トヨタ自動車>米国でプリウス人気 最大半年の納車待ちも」という記事がある。これによると、プリウスの中核部品が原則内部生産のために、技術的にこれ以上の量産ができず、注文に追いつかないとのことだ。住友金属の話とダブってきそうなニュースだ。

 水素については、今年度中を目標にしている規制の再点検のための安全性試験が多数実施されていた。国家戦略として位置づけられたことで、規制見直しが進められていると思っていたら、この日のNEDOの説明では、他の事情もあるようだ。

 OECDの下部組織である国際エネルギー機関(IEA)では、水素エネルギー研究開発活動の一環として、「水素の製造及び利用に関する研究開発実施協定」に基づく多国間協力が進められている。NEDOの報告では、水素実施協定によって日本の水素の規制見直しは今年度(2004)中の必須事項となっている、と説明があった。この実施協定はWE−NETからの関わりがあり、NEDOは1998年からこの協定の締約者となっている。それは「日本政府の脱退」(WE−NET平成9年度報告書概要)が原因だった。後から遅れてきた者にとっては初耳のことで、どのような事情があったのかは分からないが気になる話ではある。

 報告会に話を戻すと、水素の実用化技術は35Mpaをめぐって一斉に行われている。材料や要素技術の基礎的な研究も多く、圧縮水素容器の開発を行っているメーカーは、「世界的に、燃料電池自動車と充てんのインターフェイスは考えないでいこうとなっている」と報告していた。自分のことで手一杯という印象で、燃料電池の開発より遅れた分だけ急いでいるようだ。自分というのはこのメーカーを指しているのではなく、水素自身のことだ。いろいろな本でいわれている水素の一般的な利点や欠点について、この報告会ではそれをもう一度確かめたり、乗り越えるアイディアを持ち出したりして、水素を使えるエネルギーにするための努力と見通しが交々語られたと思う。70Mpaも視野に入れて沸騰しつつあるということだろう。

 燃料電池や水素もいわばゼロからのスタートにもかかわらず、期待もスケールも大きく、近未来のディティールが具体的につかみにくい。マスコミに表れる情報は、このNEDO事業の流れの中で成果となったものが単体でぽつりぽつりと出てきているものが多いように感じた。全体像を感じるためには、この成果報告会はとても有意義だと思う。

 最後に一つ、興味を引かれた研究があった。「水素シナリオの研究」と題した産業総合研究所のもので、「既存の市場で経済価値として評価されていない水素エネルギーシステム特有の便益及びコストに係る要素を摘出して、それらを経済価値として定量的に評価し、水素エネルギーシステムの外部性として評価することを最終目的とする」研究である。2003年度の成果として、「FCV(燃料電池自動車)の導入による人体への健康影響リスクの回避に係る便益を評価し、大気排出物の削減に伴う外部便益の値が、現在想定されている水素供給コストと比較して有意な値(数十%)を取る可能性のあることを明らかにした」と報告された。

 水素エネルギーと化石燃料エネルギーの経済性の比較はよく話題にされている。単位質量あたりのエネルギーなどの科学的数値で比較したり、現状の経済コストを加えて比較したりして、どちらが経済的かと論じているが、外部不経済(環境被害、資源の枯渇、現状を確保するための軍事的費用、健康被害など目に見えない外部コスト)の問題を取り上げているものは少ない。産総研の研究は、この一つをテーマにしていると理解した。エネルギー総合工学研究所も同じ題で、燃料電池車導入・普及に関する水素インフラ整備シナリオについて報告した。

 この成果報告会の水素技術についての詳しいレポートは『燃料電池パワー』で沼崎英夫氏が行っている。

■WEB LINK NEWS
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04/07/21 <トヨタ自動車>米国でプリウス人気 最大半年の納車待ちも(毎日新聞)

 ガソリンエンジンと電気モーターを併用して走るトヨタ自動車のハイブリッド車「プリウス」が、米国販売の好調で生産が追いつかない状態が続いている。4月に生産能力を増強したが、いまだに数カ月分の受注残があり、納期遅れの解消には時間がかかりそうだ。ハイブリッド車は「特許の固まり」(トヨタ幹部)と言われるように特殊な部品を多数使っているため、受注が増えても部品調達が間に合わない悩ましい状態だ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040722-00000055-mai-bus_all

04/07/22 「長時間駆動も実現、残るハードルはコスト」――モバイル向け燃料電池の登場は近いか(ITmediaライフスタイル)

 7月22日・23日に行われる日立ITコンベンションでは、同社が以前から取り組みを進めているモバイル機器向け燃料電池が展示されている。同社によると、長時間の駆動を実現するなど術的な問題はほぼクリアされ、後はコストダウンが問題となっているようだ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040722-00000003-zdn_lp-sci

04/07/22 2世紀にわたって海洋に吸収されてきた二酸化炭素の影響(WIRED)

 ワシントン発――この2世紀にわたって人類の活動によって大気中に放出された二酸化炭素の半分近くが、海水に吸収されていたことが、最新の調査結果によって明らかになった。この調査に付随する研究報告では、この吸収プロセスがこのまま続いた場合、多くの海洋生物の殻を形成する能力が損なわれてしまう危険性があると警告している。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040722-00000007-wir-sci

04/07/23 <三菱商事>08年3月期純利益1800億円 中期経営計画(毎日新聞)

 三菱商事は23日、05年3月期から4カ年の中期経営計画を発表。天然ガスや金属資源などの中核ビジネスの強化と、燃料電池やナノテクなどの成長分野への対応などで、04年3月期は1154億円だった連結最終利益を、計画最終年度までに1800億円まで伸ばす。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040724-00002089-mai-bus_all

■海外ニュース(7月―3)
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<輸送>
●ダイムラー・クライスラーがベルリンで燃料電池車を納車

 ダイムラー・クライスラーはF-Cell燃料電池車をDeutsche Telekom及びメルセデス・ベンツSalzufer販売店で車両用としてBEWAG/Vattenfall Europeに 納車した。
http://wwwsg.daimlerchrysler.com/SD7DEV/GMS/TEMPLATES/GMS_PRESS_RELEASE/0,2941,0-318-56501-1-1-text-1-0-Media-0-0-0-0-0,00.html

<ポータブル/バックアップ電源>
●RITがライフサイクル戦略を目的としたパートナーシップを開始.

 ロチェスター工科大学(RIT)の統合生産工学センター(CIMS)は米国燃料電池評議会及び環境省の支援を得て、新たな燃料電池産業パートナーシップの陣頭指揮を執ることになった。この新たな試みのゴールは、直接メタノール法燃料電池の開発に関し、携帯電子機器市場、特に、製品寿命末期の戦略について、物流、ガイダンス、情報の共有化について規定することにある。
http://www.rit.edu/~930www/webnews/viewstory.php3?id=1240

<燃料/改質器/貯蔵>
●DTEがHydrogen Technology Parkを着工

 DTE Energyは完全な多用途水素エネルギーシステムの原型を作るパイロットプロジェクトでとなる、Hydrogen Technology Parkを着工した。米国エネルギー省(DOE)が300万ドル資金の49%を出資する3年計画のプロジェクトで、小型オフィスもしくは約20戸の住宅の電力に相当する年間10万キロワットアワーの電力供給能力と日に3台の車両に圧縮水素を供給する能力になる予定。
http://www.dteenergy.com/pressRoom/pressReleases/hydrogenParkGroundBreaking.html?searchType=&searchValue=DTE+Energy

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 □編集・発行:燃料電池NPO法人PEM−DREAM 

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