燃料電池ワールド (2003/05/28 17:00)

水素チャンネル Home

□燃料電池ワールド
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■Vol.095 2003/05/28発行

                   ◆燃料電池NPO法人PEM−DREAM

                        ◇http://www.pem-dream.com/

■お知らせ
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☆6月14日(土)「中野区環境行動の日」イベントのボランティア募集

 6月は環境月間です。各地で環境にまつわるイベントが行われますが、PEM−DREAMは東京都中野区のイベントに参加します。14日(土)午前10時〜午後5時まで、大潟村で走った燃料電池自転車の試乗体験や展示を行いますが、会場が2か所に分かれるために要員が不足してしまいました。

 そこで、来場者に展示物の簡単な説明を行うボランティアを募集します。説明内容は打ち合わせを行いますので、どなたでもできます。当日、中野区環境リサイクルプラザ(中野駅から徒歩10分)に来れる方で、ボランティアを願える方がいらっしゃいましたら、事務局までご連絡ください。メールアドレスは、info@pem-dream.comです。

☆PEM−DREAM会員とメルマガ読者の違いについて
 先週号で、以下の記事を載せたました。
「PEM−DREAM会員の皆さまへ新サービスを始めます

 年間10回近く行っている燃料電池市民講座の生録CDと配付資料を、会員の皆さまに提供するサービスを今月の市民講座分から始めます。それに先立ち、お使いのパソコンの種類(Windows か Mac か)を把握する調査を行いますが、この案内をご覧になり、自主的にご連絡いただければ助かります。メールでご連絡ください。」

 この記事に関して、読者の方から「会員と読者は同じですか」と問い合わせがありました。よく混同されることなので、説明させていただきます。

 PEM−DREAM会員は、会費を払い、PEM−DREAMの活動を支援してくださる方のことです。NPO法上の正会員(総会での議決権があります。年会費3万円)と、議決権のない情報会員(年会費1万円)の2種類があります。PEM−DREAMはどこからも財政的な支援を受けておりませんので、会費と事業収入、寄付金だけで運営しております。会員の義務は会費を払うだけですので、会員へのインセンティブとして会員サービスを強化しようとしています。市民講座の生録CDはその一環です。

 メルマガは当初、会員へのニュース・ペーパー的なものとして企画していましたが、開かれたNPOを目指すということから開放し、無料で提供しております。紙媒体は手間とコストがかかるため、会員への連絡もメルマガを利用しており、そのことが混乱の原因ともなっていると思います。

 PEM−DREAMの活動目的から、活動への参加は会員・非会員の別なく、誰でも自由に参加することができます。しかし、市民講座のように地域的物理的に参加が不可能な活動もあり、その成果をお返しする方法を模索していました。このたび、生録CDの技術を使えるようになったことから手間とコストの問題が解決され、会費に少しでも見合うサービスを提供しようということで、会員サービスとして行うことになりました。

 以上のような趣旨ですので、生録CDサービスをお受けいただくにはPEM−DREAM会員になっていただかなくてはなりません。会員は上記年会費をお支払いいただき、お名前、郵便物の送付先、連絡用の電話番号を登録するだけです。読者の皆さまもぜひ会員になられて、PEM−DREAMの活動を支援してください。

☆「遊んで作る燃料電池100円実験キット」と材料提供(再掲)

 日本中、どこでも誰でも、手軽に、安全に、安上がりに燃料電池の原理を実験できる「遊んで作る燃料電池100円実験キット」。このキットの材料と製作ストーリーを書いた資料をメールで無料で差し上げています。ご希望の方は、
info@pem-dream.com までお申し込み下さい。

 また、すでに資料を請求された方から、材料として使うLEDと電線が入手しにくいので対応できないかとの相談がありました。そこで、私たちが常備している中から、希望する方に提供することにしました。

 内容は、LED3個と電線20cmくらいを2本です。ご希望の方は、切手200円分(郵送料含む)を事務局までお送り下さい。折り返し郵送します。
・宛先 〒198−0032 東京都野上町4−3−4ベルドール河辺201
    燃料電池NPO法人PEM−DREAM

■燃料電池関連イベント
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☆世界ガス会議で有明水素ステーションの見学(再掲)

 6月2日〜5日の日程で、世界ガス会議が開催される。会場の東京・ビックサイトの近くにはJHFC有明水素ステーションが設置されていて、その見学会が行われる。東京ビッグサイトと有明水素ステーション間は当日先着順に燃料電池バスでの試乗送迎も予定されており、展示会に登録すれば誰でも参加できる。

 また、展示会では家庭用燃料電池の実演デモを始め、多くの最新情報が準備されており、こちらも見学できる。
◇日 時 6月3日、4日 15時〜17時
◇登録方法 https://raijou.tokyoinfo.or.jp/jp/regist.html にアクセスして入力、送信。
◇展示会の来場者登録に関する問い合わせ先
WGE2003登録事務局 TEL:03-5530-1120
E-Mail:office-wge2003@regist.tokyoinfo.or.jp
◇世界ガス会議の公式サイト http://www.wgc2003.com/jp/

☆水素・燃料電池会議と展示会(カナダ・バンクーバー)6月8日〜11日(再掲)

 2003年6月8日から11日までの4日間、カナダBC州のバンクーバー市で「水素・燃料電池会議と展示会」が開催される。会期中は基調講演、本セッション、分科セッション、ポスターセッション、そして企業視察や展示会などが予定されており、この中で日本からの参加者による報告もある(外務省、(社)日本ガス協会、横浜国立大学、東京工業大学、Uchiyama Thermostat Co.,LTD等)。イベントの詳細は以下のページをご覧ください。
◇公式ページ(英語)
Hydrogen and Fuel Cells Coference and Trade Show
http://www.hydrogenfuelcells2003.com/en/welcome.htm
◇水素・燃料電池会議と展示会(日本語)
http://www.r21.ca/info/fuelcell.html
◇参加代行とレポート作成サービス
スイモン・カナダではイベントに参加できない方のために参加代行、レポート作成サービスを提供している。お問い合わせ、お申し込みはこちらまで。Suimon Engineering Canada Ltd.(スイモン・カナダ)
URL: http://www.suimon.com
URL: http://www.r21.ca (レインボウ21)
Mail: info@suimon.com

☆講演会「燃料電池における材料技術の現状と課題」(再掲)
◇日 時 7月10日(木)9:30〜18:30
◇場 所 大阪市立工業研究所講堂
◇主 催 (社)大阪工研協会
◇参加費 当協会員 17,000円、協賛団体 22,000円、一般 27,000円
◇プログラム
〈基調講演〉
1.固体高分子形燃料電池の開発の現状及び今後の課題  

   三菱電機(株)先端技術総合研究所エネルギー変換技術部主席研究員 光田憲朗氏
2.クリーンエネルギー自動車の現状と将来展望−燃料電池車を中心に−
  ?本田技術研究所栃木研究所主任研究員 佐藤 登氏
〈要素技術実用化のポイント〉
1.高強度カーボンモールドセパレータの開発と応用事例

   日清紡?開発事業本部燃料電池事業部開発課・営業課長 斉藤一夫氏2.固体高分子形燃料電池セパレータ用ステンレス材料開発の現状     
   住友金属工業?総合技術研究所部長研究員 樽谷芳男氏
3.マイクロDMFC

   (株)日立製作所日立研究所環境・パワ―センタ燃料電池部技術主幹 加茂友一氏
4.固体高分子形燃料電池(PEFC)用電極触媒の開発現況と課題

   田中貴金属工業(株)技術部プロジェクトリーダー 多田智之氏 〈ミキサー〉講師の先生方を囲んでの、また、参加された方々同士の情報交換
◇申し込み・問い合わせ
(社)大阪工研協会 http://www008.upp.so-net.ne.jp/oira/

    電話 06−6962−5307、FAX 06−6963−2414
E-メール oira@fa3.so-net.ne.jp

■PEM−DREAMイベント
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☆6月の燃料電池市民講座
「固体高分子型燃料電池の手作りモニター教室」
ゲスト=佐藤昌史氏(東京都立墨田工業高校自動車科教師)

 「遊んで作る燃料電池100円実験キット」を考案された佐藤さんが、今度は固定高分子型燃料電池の手作りキットを開発しました。固体高分子型燃料電池は自動車や家庭用の燃料電池に使われているタイプで、燃料電池のリーダーです。このキットはスケルトンタイプで、その構造を、高分子膜、電極(白金も使っています)、セパレータのバラバラな部品から自分で組み立てることによって理解できます。今回は、その開発のお話を伺い、キットを組み立ててみようと思います。キットは近く限定販売(材料が限られているため)の予定ですが、市民講座の参加者にはその価格(予価6500円)よりも安く提供しますので、ぜひご参加ください。
○日 時 6月21日(土)午後2時から
○場 所 岩谷産業株式会社本社会議室(新橋駅から徒歩約10分、地図をお送りします)
○参加費 5000円(今回は参加者全員に負担願います)
○申し込み方法 メールまたはFAXにて、「6月の燃料電池市民講座」と明記の上、氏名、連絡先、電話番号をご記入の上、お送り下さい。
 メール info@pem-dream.com 

■燃料電池GOODS
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【ご注文はメール info@pem-dream.com でどうぞ】
☆パソコンで聞く生録CD『カナダ燃料電池2003』を発売(再掲)

 PEM−DREAMが3月に行ったカナダ燃料電池業界視察の記録をCD−ROMで発売します。訪問先のプレゼンテーションと質疑応答の生録音をデータにして、日本語テキストと、撮影を許可された写真をそれぞれ収録しています。燃料電池と水素技術のトップを行くカナダの最新情報を、生の音声で知ることができるでしょう。

 収録した訪問先(録音時間)は以下の5カ所です。
・フュエルセル・カナダ(約105分):企業、研究機関、行政が集まっている国立の非営利団体。カナダの戦略を練っている。フュエルセル・カナダの活動内容や具体的な計画が語られ、カナダの全般的な状況を知ることができる。
・パワーテック・ラボ社(約70分):BC州水力発電公社の高圧ガスシステム研究機関として、電力と天然ガス、水素の研究開発を行っている。天然ガスと水素をブレンドする話や日本との協力、水素ステーション計画などを知ることができる。
・マグパワー・システムズ社(約130分):水素を使わない「マグネシウム/空気燃料電池」と水素インヒビター技術について、詳細な説明がなされた。それらの適応分野や日本企業との関係なども、質疑の中で語られた。
・パルキャン社(約80分):プレゼンはなく、質疑応答のみ。水素吸蔵合金と燃料電池を駆使して商品化を進めるベンチャー企業の息吹が伝わる。自転車や車椅子、それらの中国での生産計画など、カナダ発燃料電池製品のひとつのモデルである。
・グリーンライト社(約110分):ハイドロジェニックス社と合併直後の同社は、燃料電池試験装置製造会社として燃料電池の評価事業に特化している。日本にはない評価サービスについて、なぜ事業として成立するのかという話など、日本と違うカナダの業界を理解する一助となる。

○価格 それぞれ1カ所につきCD−ROM3枚組 8000円(税・送料込み。PEM−DREAM会員は5000円)
○付録として、バラード社の本社・工場の外観と燃料電池バス「シターロ」の写真、視察旅行に参加された沼崎英夫氏の視察レポートを添付します。全ての写真は著作権フリーです。
○ご注文の際は、ご希望の企業・団体名、およびお使いのパソコンの種類(Windows/Mac)をご記入ください。

☆『水素経済革命』(山本寛著、新泉社)(再掲)

 定価1400円(税、送料別)のところ、税、送料込みで1500円(PEM−DREAM会員は1割引))で提供します。ご注文は、郵送先と冊数をお書きの上お申し込みください。

☆「燃料電池+ミニカー」組み立てセット〔再掲)

 資源エネルギー庁のエネルギー教育用教材キットに取り上げられたセットです。自分で組み立てた燃料電池をミニカーにセットして、水素を供給して走らせることができ、直線で20メートルくらい走ります。燃料電池単独でも使えます。NPO特別価格15000円(税、送料込み。PEM−DREAM会員は1割引))です。写真は
http://www.pem-dream.com/kit.html でご覧ください。
※激走―そして激突!? 燃料電池ミニカーの23秒ビデオ 鳥取県の信原一郎さんが、ミニカーの激走ぶりをビデオで撮影してくださいました。
http://www.pem-dream.com/move.html

☆「ソーラー+燃料電池」学習キット(再掲)

 太陽光発電、水素の製造、燃料電池について、中学から高校生程度の物理と化学の基礎知識を学びながら、30種類の実験を進めるキットです。再生可能な循環型エネルギーの仕組みを理解するのに最適です。

 100頁の英文テキストと和訳テキストつき。販売価格24000円(税、送料別)のところ、NPO特別価格23000円(税、送料込み。PEM−DREAM会員は1割引)で提供します。写真は http://www.pem-dream.com/kit02.html でご覧ください。

■PEM−DREAM NEWS
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☆5月燃料電池市民講座「大潟村燃料電池カーレース体験談ーー結果はビリでも完走」の報告

 会場が半年ぶりに岩谷産業株式会社に戻った。半年前に比べると同社は業務が活発化しているようで、人の出入りも格段に多かった。そういう中で私たちに会議室を提供してくださっていることに感謝します。

 今回のメーンイベントは、燃料電池自転車の試乗である。参加者全員にこもごも乗っていただき、感想などを話し合った。その前段として、カーレースのチーム・メンバーである坂本、佐藤、柏原氏からレクチャーがあった。坂本氏は、自転車の改造と現地の写真を映しながら全体の流れを説明した。佐藤氏は自転車改造のコンセプトと体験を、柏原氏は改造の技術的問題について説明した。

 カーレースについてはこれまでメルマガで報告してきているので、今回の報告は、資料として配付した沼崎氏のレポートをもって最終報告に代えたいと思う。ワールド・エコノ・ムーブ(WEM)と当日のレースの全体像、PEM−DREAMチームの位置づけなどについてまとめてあり、市民講座で話題となったことについても触れているのでお読みください。長文のため、「燃料電池毎・レポート」コーナーに3回に分けて掲載します。

 なお、市民講座の生録CDと配付資料は、今回からPEM−DREAM会員に提供することになりましたので、ご希望の方はぜひご入会ください。

■燃料電池マイ・レポート
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☆「世界初の燃料電池自動車レース――PEM-DREAMチーム・pas2号も2時間で7.7kmを走破 第1回」(季刊『ソーラーシステム』沼崎英夫)
○燃料電池部門に12台が出場

 5月3日、4日の両日、秋田県南秋田郡大潟村で世界初の燃料電池車の2時間のエコノミーラン大会が行われた。

 この大会は、1995年以来、毎年同所で行われてきた大会支給の鉛電池を電源とする電動カートのエコラン大会である。「エコノ・ムーブ」に今年、燃料電池のカテゴリーが新設されたもので、燃料電池部門は、ジュニア・クラス(高校)、オープン・クラス各7チームがエントリーし、各6チームが出場した。鉛電池部門はジュニア・クラスに34チーム、オープン・クラスに44チームが出場した。燃料電池部門は出場チームが少なかったので、カテゴリー全体の順位となった。

 競技車両は鉛電池、燃料電池部門共通の全長3.0m、全幅1.2m、全高1.6m以内で、モーターの制限はない。

 車体重量は、出場12台とも燃料電池、水素ボンベを搭載した状態で20 kg 後半に収まっていた。

 車体の重量制限はないが、体重が70kg 未満のドライバーは差分相当のバラストを作って搭載する。乗車時にオフィシャルが一と目で判るように、最初の車検時にバラスト重量を記載したリングを手首に付け、競技終了まで外せない。pas のライダーは2人とも70 kg 超過であった。

 水素の供給源は、今回は安全上の観点から水素吸蔵合金ボンベを使うことになり、当初大同メタル工業製の水素吸蔵合金ボンベ60 Nl 入り1本を、公式練習(予選、5月3日、2時間)と競技(決勝、4日、2時間)に各1本を支給する予定であったが、同社の実験の結果、水素吸蔵合金の水素排出の温度依存性(高温では排出が容易で、低温では滞る。排出に伴って吸熱し、貯蔵体の温度が下がる)を考慮して、前例のない今回は各2本を支給することになった。

 実際はガス圧0.9 Mpa 、30℃の水素を55 Nl 吸蔵したボンベ2本が支給された。

○50Wが7台、75Wが5台

 今回使用された燃料電池は、全て大同メタル工業製で、他社製品と自作はなかった。

 使用された大同メタル工業製品は、固体高分子型のHFC−1250とHFC−1275の2種類で、前者は定格で約60Wを発電、その中、約10Wを送風ファンに消費し、約50Wを供給する。後者は約75Wを供給する。前者は前後・左右・上下に合計10個の送風ファン(DC12V、1W)が設けられているが、後発の後者は合計7個のファンで部品点数を少なくしている。

 前者は、長野工業高校、栃木県立宇都宮工高、秋田工高、東海大学翔洋高校、育英高専、チームDDW(本田技術研究所東朝霞研究所)、PEM-DREAM02の7チームが使用し、PEM-DREAM は2台搭載した。

 後者は、ミツバ、早稲田大学永田研究室、チーム・アンリミテッド、岐阜県立高山工業高校、チーム・アシダの5チームが使用し、アシダは2台搭載した。

○ソーラーカーレース用の専用コース

 5月3日午前7時、受付開始、コース開放が行われ、任意の試走であるフリー走行が始まった。
 7時半、公式水素ボンベの支給が始まった。

 8時、ジュニアクラスを対象としたドライバーズ・ブリーフィングが行われた。これは自動車運転免許取得以前の18歳未満の高校生を対象とした運転上の注意事項の指示である。競技が行われる「大潟村ソーラースポーツライン」は、94年に完成し、同年の第2回「ワールド・ソーラーカー・ラリー・イン秋田」(WSR)から使用されている多目的スポーツ施設で、道路でないから動力車の運転には運転免許は不要であるが、事故防止のため最低限必要な指導がなされる。

 ソーラースポーツラインは海抜マイナス・メートル地帯である大潟村の水没を防ぐために海面の水位に水をくみ上げて排水する南北2か所の排水機場の間の不耕地に2億円余りを投じて建設した往復4車線のコンクリート舗装路で、村道と立体交差する3か所に橋脚を迂回して橋脚を潜るアンダーカットのS字状の下りと上り、両端の折り返しのカーブと傾斜以外は平坦で、全体に三日月状の緩いカーブを描くが視野が開けた直線に近い。かつての湖底を干拓して造成した土地のため、不等沈下で路面のひび割れが生じることもあり、補修して競技場を維持している。

 往復31 km 余り、両端で降雨と快晴ということも珍しくない。遮蔽物がない電波にとって好条件でも通常の出力のトランシーバーでは届かず、当初は陸上自衛隊の通信の支援を受けたが、主催者側は自治体の防災無線の整備で本部ーコースマーシャル間の、参加者側は携帯電話の普及でピットードライバー間の連絡が容易になった。

 一部区間の西側に並木がある以外は立木はなく、世界に類のない絶好のソーラーカーの競技場である。今年で11回を数えるWSR、10回を数えるWSBR(ワールド・ソーラー・バイシクル・レース・イン秋田)のほか、自転車ロードレース、ローラー・スキーなどの大会が行われ、日本陸上競技連盟など関係スポーツ統括団体の公認コースになっている。

 100 km マラソンや陸上自衛隊の耐久歩行競技が行われたこともある。毎年5月にはエコノ・ムーブが行われてきた。

○予選ラウンド

 エコランであるエコノ・ムーブの競技車はエネルギー効率の高い最小限度の推進力しかないので、上り勾配を避けて南の橋以南の往復6 km の区間をコースにしている。また転がり抵抗を極小に造るのが先決であるから、競技開始前にスイーパーを2往復させて路面のクリーニングを行った上で、さらに人手で念入りに清掃と点検を行う。

 8時半、車検。10時半コース閉鎖、村民と参加チームのメンバーが応募したボランティアの役割分担ごとの業務上のブリーフィング、11時参加者ブリーフィングに次いで燃料電池部門競技車(FC車)のグリッド・イン。オフィシャルによるキャパシターのゼロ電位(無充電)確認が終わると、燃料電池を立ち上げてスタートまでの間、キャパシターへのプリチャージ(先行充電)ができる。

 プリチャージは、負荷の大きい始動を円滑に素早くし、その後の燃料電池の補助エネルギー源にもなるもので、極めて重要。キャパシターのない車は手をこまねいてスタートを待つしかない。

 11時半、FC車の公式練習(予選)開始。この2時間の走行距離順に決勝のグリッド(配列順)が決まる。予選不参加は決勝に参加できない。

 午後1時半、公式練習終了。この時点の到達地点がコースの路側の100m置きの定点の距離ポストからメジャーで計測され、周回数と端数距離によって走行距離が決まる。定刻の合図はコースの随所に配置されたコース・マーシャルが携帯電話の通報に基づいて旗で行う。この時点で電源スイッチを切って惰力走行して停止した競技車両の先端位置が到達地点である。フィニッシュした車のドライバーは携行したチョークで車の先端位置の路面にマーキングする。定刻後も推進走行した車は、定刻に通過した位置まで戻される。定刻前に走行を止めた車は、その位置で同様の計測が行われる。

 各車のラップごとの所要時間は、今回初めて「トランスポンダ」で自動計測された。

 「トランスポンダ」は70×38×18 mm の錠前型の函体に封入された発信機で、計測ライン(スタート/ゴール地点)を通過した時点で、ライン側からの信号に呼応して車両を特定する信号を発する。これを受信してコンピューター・システムで小数点以下3桁の秒単位までのラップを計測する。

 競技を終了した車には、距離計測と車両検査のための2人のオフィシャルがコンタクトする。後者は燃料電池の電源を切ったか、水素ボンベのバルブを閉めたか、ガス漏れがないかをチェックし、問題がなければ貸与したガスボンベ2本を回収し、ガス貯蔵庫に転送する。貯蔵庫では公式サプライヤーの大同メタル工業の担当者が精密秤でボンベ封体ぐるみの重量を計測し、支給時の重量との差分から換算して水素の消費量を小数点以下2桁まで算出する。これは簡便で最も精度のよい検量法であるという。ガソリン車のエコランではガソリンの残量をタンクから抜き取ってシリンジで読みとって消費量を算出し、ガソリン1リットル換算の走行距離を算出する。
 バッテリーの場合は残量の算出は容易ではない。

 今回、FC車の水素の使用量は今後の大会の運営上のデータとして計測し、出場チームにも参考として提供された。これを元に車両の調整、決勝時のエネルギー・マネージメントと作戦に活用したチームが多かったようだ。

 予選でチーム・アシダは12台中、最大の100リットル余りを消費したが、燃料電池の排熱以外によるボンベの加温は禁止されているので全量を取り出すことは難しく、水素吸蔵合金から90%の水素の排出が限度といわれる。

 2時間完走した車でもかなり使い残しがみられたのは、ほとんど未経験の分野であったことが大きかった。

 40周して1位となったミツバの水素消費量は75リットル足らずであった。

 出場車ごとのラップタイムが公表されたが、設計、製作、調整による好・不調が一目瞭然であった。

 FC車のエコノ・ムーブは、鉛電池車よりもさらに周回距離を縮めた周回1.1kmのショートコースで行われた。

 好調な車は、周回2分台の後半か3分台の前半で、ほとんどムラのない走りを記録していた。トラブルが少なく、ロスタイムが少ないことが距離稼ぎに肝要である。

○燃料電池の過熱対策を重視

 ほとんどの出場車は、水素吸蔵合金ボンベの冷え過ぎよりも、燃料電池のオーバーヒートを警戒して工夫を凝らしていた。

 その一環として、主催者側もオフィシャル・サイトなどで推奨していたボンベと電池の外部に温度計を付けていた。

 予選の体験から、持参した温度計と電流計を設置して決勝に臨んだチームもあった。

 大同メタルの燃料電池は空気供給用の電動ファンが付いているが、冷却用のファンを付加したチームが多かった。吹き込み型、吸い出し型と工夫を凝らしていた。

 1月の東京での講習会で、大同メタル工業は、換気孔を開けた透明樹脂製函の下段に燃料電池、上段にボンベ2本を横置きに並べて、反応熱をボンベの加温に利用するセットを提案した。今回、基本的にこれを踏襲した出場車が多かったほか、独自の工夫をしたチームも多かった。

 大同メタル工業製の50Wクラスの燃料電池と容量60 Nl の水素吸蔵合金ボンベ2本を搭載した場合、燃料電池の外壁温度が50℃以下、出力電流が3Aを超えないことが目安となるようである。これ以上は電池過熱の恐れと水素過放出による過冷却(ボンベ外壁温度15℃以下)による水素放出の低下、さらにはバルブの凍結による放出不能に繋がる恐れがある。

 温度計2個と電流計の3点セットで、ドライバーはエネルギー系の健全な状態のモニターを行い、走行状態と併せてエネルギー消費状態、水素残量を推定する。これには体験走行が必要である。ピットはドライバーのデータ読み上げ(ハンドフリーの携帯電話、PHSの使用可)でノートパソコンでシュミレートして音声でドライバーに状態を知らせ、指示を出す。

 キャパシター装着車は、スタート時は燃料電池出力とプリチャージのキャパシター蓄電で電力が潤沢であるが、そこで飛ばしすぎると、程なくキャパシター電力が底をつき、過負荷で燃料電池の「熱ダレ」、ボンベの水素放出低下の悪循環を招くことがある。

 燃料電池は2次電池よりも明快な反応過程を持っているが、使い手にとってはまだブラックボックスであり、固体高分子膜の働きが不明の部分が多い。乾きすぎて発電が落ちた場合、外部からの加湿で蘇生可能ともいわれるが、今回の出場者からは確たる情報は得られなかった。
(以下次号)

■WEB LINK NEWS
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03/05/21 小型車販売7万台目指す スズキ(中日新聞)

 津田社長 ハイブリッド車や燃料電池車の開発について研究開発費は公表できないが、燃料電池車はGMと一緒に開発している。エコカーは独自に取り組んでおり、低燃費車の開発は重要なポイントだ。計画通り、高額な研究開発費を投じて次世代技術の開発に努めている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030521-00000012-cnc-l22

03/05/21 トヨタ、燃料電池乗用車を自主回収 記念式典も愛称も…計画練り直し /愛知(毎日新聞)

 県大気環境課や市交通公害対策課によると、トヨタから19日、「国に納入した車に重大なトラブルがあり、納入を延期したい」と電話連絡が入った。

 両自治体は燃料電池車を30カ月間リースする契約で、今年度はそれぞれ約1300万円を予算計上。29日午前、県庁前で納車式を行った後、午後はオアシス21(東区)で市民に披露する記念セレモニーを計画していた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030521-00000001-mai-l23

03/05/22 欧州の水素エネルギー開発に関する動向調査(2)(NEDO海外レポート NO.907)

 フランスは90年代半ばから産業省、研究省、環境/エネルギー管理庁ADEMEからの予算を基に、再生可能エネルギーと新エネルギーの研究開発計画を進めてきたが、特に1999年から燃料電池ネットワーク(PACo)を設置して、国の研究機関の連携を強化して、水素と燃料電池に関する研究開発を進めている。企業の方でも燃料電池ネットワーク(PACo)を通じた活動を中心に、Areva/Helion やAirLiquide/Axane など新しい協力体制を組織しながら、研究開発を行なっている。
http://www.nedo.go.jp/

03/05/22 【ニュースフラッシュ】米国(NEDO海外レポート NO.907)4/28:Abraham エネルギー省長官、国際的な水素研究開発パートナーシップを提案4/30:HydrogenSource 社、「ガソリン水素燃料改質装置」の実験に成功5/6:ロスアラモス国立研究所、水素燃料電池技術の先駆者としての再出発を切望5/9:GM社が化学会社に燃料電池、Millennium Cell 社は水上タクシーに水素燃料技術を提供
5/9:「グリーンシザーズ」が予算6億3400万$のFreedomCAR 計画を税金の無駄と批判
http://www.nedo.go.jp/

03/05/22 英国貿易産業省(DTI)が燃料電池会社らと共に報告書“英国の燃料電池ビジョン−第1段階”を発表(2003/05/13)(NEDO海外レポート NO.907)
http://www.nedo.go.jp/

03/05/22 燃料電池推進型の航空機が飛行テスト準備中(2003/05/12)(NEDO海外レポート NO.907)

 世界初、ボーイング社が一人乗りの燃料電池航空機のテスト飛行を2003年末までに行う予定。25kWの燃料電池2つで推進モーターを動かすが、離陸時の加速にはバッテリーが必要。
http://www.nedo.go.jp/

03/05/22 アブラハムDOE長官、水素自動車およびインフラの実証・検証プロジェクトに1億5千万ドルの資金拠出(2003/05/08)(NEDO海外レポート NO.907)

 DOEと産業界による共同出資の5年間のプロジェクトで、自動車製造会社・エネルギー会社・燃料電池会社・大学・地方自治体が参加し、大統領の水素燃料イニシアティブの実行を補助し、燃料電池車への国民の意識を喚起する。
http://www.nedo.go.jp/

03/05/22 米国6高校が“水素燃料電池車モデルカー大会”で勝利(2003/05/03)(NEDO海外レポート NO.907)

 DOEが毎年主催する大会に1800校13000人の生徒が参加、燃料電池モデルカーを設計・製造・テストし、速さや急勾配を上る能力を競う。小型ソーラーパネルを用いて水から水素燃料を得る。
http://www.nedo.go.jp/

03/05/22 原子力開発の米国立ロスアラモス研究所がクリーンエネルギー生産に着手(2003/05/01)(NEDO海外レポート NO.907)

 水素燃料電池技術を推進するブッシュ大統領のイニシアティブのもと、原子爆弾の発祥の地である同研究所も燃料電池分野における25 年の研究を実行に移す。上院議員は「汚染を起こさない最善の水素生産法は原子力を利用すること」。
http://www.nedo.go.jp/

03/05/22 水素経済は再生可能エネルギーなくしてはクリーンにはなり得ない(2003/04/24)(NEDO海外レポート NO.907)

 欧州風力エネルギー協会(EWEA)がEUの“水素および燃料電池技術に関する高レベル・グループ”に、政策方針を提出。現在98%の水素が化石燃料から生産されていることに言及し、「大規模な再生可能エネルギー生産を行い、水素生産技術を含む全体のサイクルを変えない限り“クリーン”とは言えない」と主張。
http://www.nedo.go.jp/

03/05/22 石播、バイオマス・コジェネシステム事業を強化(日刊工業新聞)

 新エネルギー導入を促進するするRPS法施行も背景に、バイオマスのエネルギー化が、廃棄物から動き出している中、水熱反応装置とICリアクター、溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)といった技術をシステム化して食品排水系の処理や高濃度汚水処理などで受注を強化していく。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030522-00000005-nkn-ind

03/05/22 開発進む微生物利用のバイオ燃料電池(上)(WIRED)

 水素燃料電池のための水素ガスを生成・圧縮するには、大量のエネルギーが必要だ。こうした問題を克服するため、科学者たちは、普通の酵母菌から海底に生息する謎に包まれた細菌にいたるまで、あらゆる微生物の生物学的能力を研究し、バイオ燃料電池の開発につなげようとしている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030522-00000001-wir-sci

03/05/22 <東レ>携帯電話にも利用できる小型燃料電池を開発(毎日新聞)

 独自開発した高分子電解質膜を採用し、従来のフッ素系電解質膜の燃料電池に比べ、電池の出力と使用時間を3倍にすることが可能になった。同社は05年の実用化を目指し、電池メーカーや携帯電話メーカーとの提携を検討していく。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030523-00002078-mai-bus_all

03/05/23 環境・成長両立へ科学技術活用=G8が研究開発を推進−サミット(時事通信)

 6月1日からフランス・エビアンで開かれる主要国首脳会議(サミット)で主要8カ国(G8)が、経済成長と環境保全の両立に向け、再生可能エネルギーや燃料電池車などの環境に優しい新たな科学技術の研究開発・実用化を積極的に推進する方針を打ち出すことが、22日明らかになった。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030522-00000986-jij-int

03/05/23 開発進む微生物利用のバイオ燃料電池(下)(WIRED)

 ライマーズ教授とテンダー氏は、これまで浅瀬で試作品のテストを行なってきた。今後は、大洋の深部で地球の活動により化学物質が湧き出ている場所に向かい、そこに生息する細菌から発生する密集した燃料源を探査する計画だ。この計画では、カリフォルニア中部、モンテレー湾沖の水深1000メートルの海底に、テスト用燃料電池を設置することを予定している。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030523-00000007-wir-sci

03/05/26 DJ-バラード・パワー、UBSウォーバーグが格下げ(ダウ・ジョーンズ)
ニューヨーク(ダウ・ジョーンズ)燃料電池システムを開発するカナダのバラード・パワー・システムズ(Nasdaq:BLDP)は、UBSウォーバーグが投資格付けを「バイ」から「ニュートラル」に引き下げた。同社の株価が、妥当な水準に達したことを理由としている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030526-00000017-dwj-biz

03/05/27 燃料電池を05年にも家庭に 松下、100万円前後で発売(共同通信)

 松下電器産業は27日、燃料電池を使用した家庭用コージェネレーション(熱電併給)システムを2005年3月にも発売する、と発表した。価格は100万円前後になる見通し。

 松下のシステムは発電出力は1キロワット。一般的な4人家族の場合、年間約5万円の光熱費削減につながる、という。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030527-00000098-kyodo-soci

■海外ニュース(5月ー4)
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<定置用電源>
●アビスタ・ラボが陸軍工兵隊とデモを終了

 アビスタ・ラボ社は、ワシントン州スポーケンのガイガー・フィールドで、ワシントン州ナショナル航空警備隊施設に設置した「SR−72」3kW級燃料電池発電プラントの1年間にわたるデモンストレーションを終了した。デモンストレーションの目的は、90%以上の効率を達成して、1年間ベース負荷で燃料電池を作動させることにあった。この燃料電池システムは93.24%の効率で目標を超えた。
http://www.avistalabs.com/news_over.asp#828

<燃料・改質器・貯蔵>
●ハイドロジェンソースが搭載用燃料処理装置をデモ

 ハイドロジェンソース社は、最初の燃料電池自動車用ガソリン改質水素燃料処理装置のテストを終了した。この78リッターの装置は、燃料電池自動車のシャーシの下に収まるように設計されている。これは、50kWのPEM型燃料電池を作動させるのに十分で、かつ燃料電池品質の水素を常温で4分以内に生産する。
http://biz.yahoo.com/prnews/030402/new021_1.html

<報告・市場調査>
●燃料電池ハンドブック

 ウイリー社は、『燃料電池ハンドブック:基礎、技術と適用』を出版した。この4巻セットは、燃料電池の基礎と原理、そして最先端の技術を集めている。この出版物は、この分野においてますます増大する重要性とクリーンな代替エネルギー源としての急速な成長について記している。
http://www.wiley.com/WileyCDA/WileyTitle/productCd-0471499269.html

<その他>
●テレダインがNASAに5kW級PEM型燃料電池試作品を納入

 テレダイン・エナジー・システムズ社は、次世代技術開発計画にためにNASAへ5kW級PEM型燃料電池システムの試作品を納入した。この試作ユニットは、NASAのジョンソン宇宙センターの施設でテストされる。テストでは、さまざまに想定された飛行状態におけるシステムの基本性能と可能性について分析されるだろう。
http://www.teledyne.com/news/5kpem.asp
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