燃料電池ワールド (2003/05/21 20:10)

水素チャンネル Home

□燃料電池ワールド
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■Vol.094 2003/05/21発行

                   ◆燃料電池NPO法人PEM−DREAM

                        ◇http://www.pem-dream.com/

■お知らせ
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☆PEM−DREAM会員の皆さまへ新サービスを始めます

 年間10回近く行っている燃料電池市民講座の生録CDと配付資料を、会員の皆さまに提供するサービスを今月の市民講座分から始めます。それに先立ち、お使いのパソコンの種類(Windows か Mac か)を把握する調査を行いますが、この案内をご覧になり、自主的にご連絡いただければ助かります。メールでご連絡ください。

☆「遊んで作る燃料電池100円実験キット」と材料提供(再掲)

 日本中、どこでも誰でも、手軽に、安全に、安上がりに燃料電池の原理を実験できる「遊んで作る燃料電池100円実験キット」。このキットの材料と製作ストーリーを書いた資料をメールで無料で差し上げています。ご希望の方は、
info@pem-dream.com までお申し込み下さい。

 また、すでに資料を請求された方から、材料として使うLEDと電線が入手しにくいので対応できないかとの相談がありました。そこで、私たちが常備している中から、希望する方に提供することにしました。

 内容は、LED3個と電線20cmくらいを2本です。ご希望の方は、切手200円分(郵送料含む)を事務局までお送り下さい。折り返し郵送します。
・宛先 〒198−0032 東京都野上町4−3−4ベルドール河辺201
    燃料電池NPO法人PEM−DREAM

■燃料電池関連イベント
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☆世界ガス会議で有明水素ステーションの見学

 6月2日〜5日の日程で、世界ガス会議が開催される。会場の東京・ビックサイトの近くにはJHFC有明水素ステーションが設置されていて、その見学会が行われる。東京ビッグサイトと有明水素ステーション間は当日先着順に燃料電池バスでの試乗送迎も予定されており、展示会に登録すれば誰でも参加できる。

 また、展示会では家庭用燃料電池の実演デモを始め、多くの最新情報が準備されており、こちらも見学できる。
◇日 時 6月3日、4日 15時〜17時
◇登録方法 https://raijou.tokyoinfo.or.jp/jp/regist.html にアクセスして入力、送信。
◇展示会の来場者登録に関する問い合わせ先
WGE2003登録事務局 TEL:03-5530-1120
E-Mail:office-wge2003@regist.tokyoinfo.or.jp
◇世界ガス会議の公式サイト http://www.wgc2003.com/jp/

☆水素・燃料電池会議と展示会(カナダ・バンクーバー)6月8日〜11日

 2003年6月8日から11日までの4日間、カナダBC州のバンクーバー市で「水素・燃料電池会議と展示会」が開催される。会期中は基調講演、本セッション、分科セッション、ポスターセッション、そして企業視察や展示会などが予定されており、この中で日本からの参加者による報告もある(外務省、(社)日本ガス協会、横浜国立大学、東京工業大学、Uchiyama Thermostat Co.,LTD等)。イベントの詳細は以下のページをご覧ください。
◇公式ページ(英語)
Hydrogen and Fuel Cells Coference and Trade Show
http://www.hydrogenfuelcells2003.com/en/welcome.htm
◇水素・燃料電池会議と展示会(日本語)
http://www.r21.ca/info/fuelcell.html
◇参加代行とレポート作成サービス
スイモン・カナダではイベントに参加できない方のために参加代行、レポート作成サービスを提供している。お問い合わせ、お申し込みはこちらまで。Suimon Engineering Canada Ltd.(スイモン・カナダ)
URL: http://www.suimon.com
URL: http://www.r21.ca (レインボウ21)
Mail: info@suimon.com

☆講演会「燃料電池における材料技術の現状と課題」
◇日 時 7月10日(木)9:30〜18:30
◇場 所 大阪市立工業研究所講堂
◇主 催 (社)大阪工研協会
◇参加費 当協会員 17,000円、協賛団体 22,000円、一般 27,000円
◇プログラム
〈基調講演〉
1.固体高分子形燃料電池の開発の現状及び今後の課題  

   三菱電機(株)先端技術総合研究所エネルギー変換技術部主席研究員 光田憲朗氏
2.クリーンエネルギー自動車の現状と将来展望−燃料電池車を中心に−
  ?本田技術研究所栃木研究所主任研究員 佐藤 登氏
〈要素技術実用化のポイント〉
1.高強度カーボンモールドセパレータの開発と応用事例

   日清紡?開発事業本部燃料電池事業部開発課・営業課長 斉藤一夫氏2.固体高分子形燃料電池セパレータ用ステンレス材料開発の現状     
   住友金属工業?総合技術研究所部長研究員 樽谷芳男氏
3.マイクロDMFC

   (株)日立製作所日立研究所環境・パワ―センタ燃料電池部技術主幹 加茂友一氏
4.固体高分子形燃料電池(PEFC)用電極触媒の開発現況と課題

   田中貴金属工業(株)技術部プロジェクトリーダー 多田智之氏 〈ミキサー〉講師の先生方を囲んでの、また、参加された方々同士の情報交換
◇申し込み・問い合わせ
(社)大阪工研協会 http://www008.upp.so-net.ne.jp/oira/

    電話 06−6962−5307、FAX 06−6963−2414
E-メール oira@fa3.so-net.ne.jp

■PEM−DREAMイベント
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☆5月の燃料電池市民講座(再掲)
「大潟村燃料電池カーレース体験談ーー結果はビリでも完走」
ゲスト=「pem-dream02」チームのメンバー

 5月3、4日に秋田県大潟村で開催されたWEM燃料電池カーレースは、pem-dream02チームが挑戦して、結果ビリだが2時間完走し、7700mを走った。その取り組みはPEM−DREAMニュースで毎号お伝えしている。世界初のこの試みは、いったいどんなインパクトをもたらすのだろうか。また、燃料電池カーを製作し、走る中で知った燃料電池の実体は、如何なるものだったのか。我々の実体験と、現地での他チームへの取材を通して、燃料電池の新しいイメージをお伝えしようと思う。pem-dream02号にも乗っていただけるように準備中です。

 なお、今回から会場が岩谷産業株式会社に変更になります。半年間お世話になりました株式会社守谷商会様に厚く御礼申し上げます。
○日 時 5月24日(土)午後2時から
○場 所 岩谷産業株式会社本社会議室(新橋駅から徒歩約10分、地図をお送りします)
○参加費 PEM−DREAM会員は無料。非会員は2000円。
○申し込み方法 メールまたはFAXにて、「5月の燃料電池市民講座」と明記の上、氏名、連絡先、電話番号をご記入の上、お送り下さい。
 メール info@pem-dream.com

☆6月の燃料電池市民講座
「固体高分子型燃料電池の手作りモニター教室」
ゲスト=佐藤昌史氏(東京都立墨田工業高校自動車科教師)

 「遊んで作る燃料電池100円実験キット」を考案された佐藤さんが、今度は固定高分子型燃料電池の手作りキットを開発しました。固体高分子型燃料電池は自動車や家庭用の燃料電池に使われているタイプで、燃料電池のリーダーです。このキットはスケルトンタイプで、その構造を、高分子膜、電極(白金も使っています)、セパレータのバラバラな部品から自分で組み立てることによって理解できます。今回は、その開発のお話を伺い、キットを組み立ててみようと思います。キットは近く限定販売(材料が限られているため)の予定ですが、市民講座の参加者にはその価格(予価6500円)よりも安く提供しますので、ぜひご参加ください。
○日 時 6月21日(土)午後2時から
○場 所 岩谷産業株式会社本社会議室(新橋駅から徒歩約10分、地図をお送りします)
○参加費 5000円(今回は参加者全員に負担願います)
○申し込み方法 メールまたはFAXにて、「6月の燃料電池市民講座」と明記の上、氏名、連絡先、電話番号をご記入の上、お送り下さい。
 メール info@pem-dream.com 

■燃料電池GOODS
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☆パソコンで聞く生録CD『カナダ燃料電池2003』を発売(再掲)

 PEM−DREAMが3月に行ったカナダ燃料電池業界視察の記録をCD−ROMで発売します。訪問先のプレゼンテーションと質疑応答の生録音をデータにして、日本語テキストと、撮影を許可された写真をそれぞれ収録しています。燃料電池と水素技術のトップを行くカナダの最新情報を、生の音声で知ることができるでしょう。

 収録した訪問先(録音時間)は以下の5カ所です。
・フュエルセル・カナダ(約105分):企業、研究機関、行政が集まっている国立の非営利団体。カナダの戦略を練っている。フュエルセル・カナダの活動内容や具体的な計画が語られ、カナダの全般的な状況を知ることができる。
・パワーテック・ラボ社(約70分):BC州水力発電公社の高圧ガスシステム研究機関として、電力と天然ガス、水素の研究開発を行っている。天然ガスと水素をブレンドする話や日本との協力、水素ステーション計画などを知ることができる。
・マグパワー・システムズ社(約130分):水素を使わない「マグネシウム/空気燃料電池」と水素インヒビター技術について、詳細な説明がなされた。それらの適応分野や日本企業との関係なども、質疑の中で語られた。
・パルキャン社(約80分):プレゼンはなく、質疑応答のみ。水素吸蔵合金と燃料電池を駆使して商品化を進めるベンチャー企業の息吹が伝わる。自転車や車椅子、それらの中国での生産計画など、カナダ発燃料電池製品のひとつのモデルである。
・グリーンライト社(約110分):ハイドロジェニックス社と合併直後の同社は、燃料電池試験装置製造会社として燃料電池の評価事業に特化している。日本にはない評価サービスについて、なぜ事業として成立するのかという話など、日本と違うカナダの業界を理解する一助となる。

○価格 それぞれ1カ所につきCD−ROM3枚組 8000円(税・送料込み。PEM−DREAM会員は5000円)
○付録として、バラード社の本社・工場の外観と燃料電池バス「シターロ」の写真、視察旅行に参加された沼崎英夫氏の視察レポートを添付します。全ての写真は著作権フリーです。
○ご注文は、ご希望の企業・団体名、およびお使いのパソコンの種類(Windows/Mac)をご記入の上、メール info@pem-dream.com でどうぞ。

☆グッズ第3弾 『水素経済革命』(山本寛著、新泉社)(再掲)

 昨年9月の燃料電池市民講座で「燃料電池と水素エネルギー」のお話をしていただいた山本寛氏が、標題の新しい著作を出版されました。世界はなぜ「水素経済」を目指し始めたのか、現在その状況はどうなっているのか、日本にとってどういう意味があるのか等々、最新の情報に基づいて全体像が分かりやすく書かれています。

 定価1400円(税、送料別)のところ、NPO特別価格として税、送料込みで1500円(PEM−DREAM会員は1割引))で提供します。ご注文はメールinfo@pem-dream.com で、郵送先と冊数をお書きの上お申し込みください。

☆「燃料電池+ミニカー」組み立てセットの普及が加速〔再掲)

 資源エネルギー庁がエネルギー教育用教材キットに取り上げてから、この注文が増えました。基本部品の3セルPEM型燃料電池と水素ガス缶、LEDに、スケルトンのミニカーがセットです。

 自分で組み立てた燃料電池をミニカーにセットして、水素を供給して走らせることができます。直線で20メートルくらい走ります。燃料電池単独でも使えます。楽しみをプラスした燃料電池セットは、NPO特別価格15000円(税、送料込み。PEM−DREAM会員は1割引))です。
 ご注文はメール info@pem-dream.com でどうぞ。また、写真は
http://www.pem-dream.com/kit.html でご覧ください。
※激走―そして激突!? 燃料電池ミニカーの23秒ビデオ 鳥取県の信原一郎さんが、ミニカーの激走ぶりをビデオで撮影してくださいました。チョロQのようなユーモラスな走りっ振りに大笑い。どうぞ、ご覧ください。(データが少し重いです)
http://www.pem-dream.com/move.html

☆「ソーラー+燃料電池」学習キットも高校を中心に広がる(再掲)

 太陽光発電、水素の製造、燃料電池について、中学から高校生程度の物理と化学の基礎知識を学びながら実験を進めるこのキットは、高校の先生からの問い合わせが増えています。特に関心を持たれているのが、再生可能な循環型エネルギーの仕組みが分かりやすいことで、環境教育のテーマになっているようです。

 株式会社のもとが Thames&Kosmos から輸入している燃料電池学習キットは、100頁の英文テキストと和訳テキストで、30種類の実験のやり方とテーマの内容について詳しく解説しています。販売価格24000円(税、送料別)のところ、NPO特別価格23000円(税、送料込み。PEM−DREAM会員は1割引)で提供します。
 ご注文はメール info@pem-dream.com でどうぞ。また、写真は
http://www.pem-dream.com/kit02.html でご覧ください。

■PEM−DREAM NEWS
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☆「第10回燃料電池シンポジウム」と「国連大学ゼロエミッションフォーラム」

 燃料電池開発情報センターが開催する「第10回燃料電池シンポジウム」が5月13、14日の2日間、東京・池之端文化センターで行われた。質量ともに日本最大の燃料電池シンポジウムである。

 今年の発表は全部で57本。ポスターセッションと展示会が設けられた分だけ、昨年より数は減った。2つの会場で並行して発表が行われるので、参加者がプログラムを見ながらあわただしく移動する光景は例年どおりである。その上、参加者が昨年よりも増えてきているので(100人以上増えたと聞いた)、会場が狭く感じられた。若い30代前後の人がかなりのウエイトを占めていた。このことは燃料電池の研究開発に携わる層が広がり、新しい燃料電池技術者が育ってきていることを物語っているのではないだろうか。

 合計57本の種類別内訳は以下の通りである。
・固体高分子型燃料電池    30本(52.7%)
・溶融炭酸塩型燃料電池     9本(15.8%)
・りん酸型燃料電池       2本(3.5%)
・固体酸化物型燃料電池     8本(14.0%)
・ダイレクトメタノール燃料電池 6本(10.5%)
・その他            2本(3.5%)

 筆者は固体高分子型燃料電池を主に半分ほどの講演を聴いたが、ほとんど難しくて理解不能だった。燃料電池に取り組みたいといって大学院に進んだ人と久しぶりに再会したが、彼は「あまり専門的(学術的?)ではなく、企業の発表の場ですね」といっていた。予稿集に彼の名前が載っていたので、どんな研究をしているのかと思って聞きに行ったが、言葉が頭の中を素通りしただけだった。ちなみに予稿集のその部分を少し引用してみよう。演題は「薄膜SOFC用アノードの低温作製」である。

 「当研究室でもこれまで、LSM基板上にYSZ薄膜を電子ビーム蒸着法により作製し、低温作動型SOFCの研究を行ってきた。次に、これをセルにするためには、燃料極をYSZ薄膜上に作製する必要がある。これまで、一般的に燃料極に使われているNi−YSZ燃料極をYSZ蒸着膜上に作製できていない。原因は、YSZとNiの熱膨張の差が大きいためNiの剥離が起る点と、NiとYSZの高い密着性を得るために、高温(1300℃)の熱処理温度を必要とする点である。このため、低温で熱膨張を低減することのできるNi−YSZ燃料極の作製法が必要である。

 本研究では、電子ビーム蒸着法により薄膜のYSZとNiOの積層膜を作製し、それを還元することで多孔質なNiとYSZからなる燃料極を低温で作製することを目的とした。」

 この後、どういう材料と装置を使って、どういう方法でどんなことをしたか、また、そのことで得られたデータと何が確認できたか、ということが述べられている。文章の意味は分からないが、電子顕微鏡で見た膜断面の写真は面白い。2μmのサイズで積層している様子が分かる。

 私がSOFCについて知っていることといえば、SOFCは固体酸化物型燃料電池の略であること、1000℃くらいの高温で作動すること、そのため改質が不要であることといろいろな燃料が使えること、発電効率は燃料電池の中でも一番高いこと、構成材料が全て固体であるので作りやすいこと、まだ実用化されていないこと、というような燃料電池の種類を説明する表に載っていることくらいである。講演を聴いていると、作動温度を下げようとしていることは分かる。800℃といっていた。

 かと思うと、大阪ガスの講演のように現実的なものもある。このときは会場全体が強い興味を持っていることが感じられた。大阪ガスは「メーカーでなく、ユーザーとしての商品化を検討」してきた経緯を発表した。2005年の発売に向けて仕様や市場規模の考え方を聞いていると、生々しさはもちろんのこと、理念的な燃料電池待望論とは違った論理があることを教えられる。

 家庭用PEFC(固体高分子型燃料電池)がマスマーケットで展開するためには、「顧客のイニシャルコスト負担増が光熱費削減メリットにより3〜5年で回収できることが必要である」という。イニシャルコスト負担増とは、PEFCコージェネシステムの価格−既存システムの価格のこと、先行投資分だ。大阪ガスの供給戸数約630万戸のうち、設置場所が確保できる戸建て住宅を初期導入段階での対象顧客とすると110万戸になり、さらに細かい条件を加えて「有意な省エネルギー性が確保でき、なおかつ、メンテ費1万円/年を控除してもイニシャルコスト増が5年以内に回収できる顧客数」をはじき出したところ、それは約80万戸となった。「家庭用商品の潜在市場規模として全世帯の10%強というのは、マーケットとして最小レベル」という。

 その前提には、大阪ガスの家庭用燃料電池製品の目標仕様がある。その一覧表も開示されたが、それは「市場規模からみても最低限満たされるべき仕様である」として、現状の技術レベルを勘案してシステム構成を行っている。その象徴と思われるのが燃料電池の運転方法で、東京ガスが連続運転を採用したのに対し、大阪ガスはDSS運転(昼間運転、夜間停止)を選択した。

 こうして「現状の技術レベルから見るとハードルは高い」にもかかわらず、2005年に目標価格110〜120万円で発売しようとするのは、トヨタとホンダが燃料電池自動車を発売したことが強く影響している。「PEFC自動車が発売され、家庭用PEFCについても、もはや夢を語る段階は過ぎ、現実を直視して実現可能な技術に集中し、一日も早く現実のものとすることが要求される時期に来ている」との認識である。

 価格については少し説明がいる。目標価格110〜120万円には国による導入補助2分の1が予定されており、エンドユーザーの負担額は設置費込みで1kW機で60万円、500W機で55万円を見込んでいる。比較する手掛かりとしてネットでガス給湯器を拾ってみると、4〜5人家族向けのノーリツGT-2427SAWX-BL(24号)定価(リモコン付) 283,300円が128,000円で販売されている。これに工事費48,000円が加わるから176,000円となり、単純比較でPEFC1kW機の3分の1以下である。

 この産業界の厳しい現実を考えると、どうしても必要になってくるのが、コストだけでなく環境やエネルギーの視点を価値観として併せ持つ消費者の存在だろう。PEM−DREAMもそういう消費者を増やすために活動しているのだが、読者の皆さまにもぜひご一考願いたいテーマである。

 「燃料電池シンポジウム」ではたくさんのこうした企業や研究団体の成果が報告されたが、割愛して、同じ週に開かれた(5月16日)もうひとつの、国連大学ゼロエミッションフォーラム総会記念講演会「ゼロエミッション社会の構築を目指して」に移ろう。

 昨年の国連大学ゼロエミッションフォーラムについては、「屋久島クリーンエネルギーパートナーズ構想」(Y−CEP構想)について報告した(2002年11月12日号、No.70)。もう1年経ったのかなと思ったら、今回は総会記念の講演会だった。こちらは「燃料電池シンポジウム」とは雰囲気が違って、ゆったりと整った会場のせいなのかもしれないが現場というよりも少し管理職っぽい落ち着きがある。

 この日、5月31日に発行される『ゼロエミッション マニュアル』をいただいた。1994年に国連大学がゼロエミッションという概念を提唱して、プロジェクトを発足させた。2000年4月からはフォーラムを設立して、その日は第4回目の総会だった。三橋規宏氏(千葉商科大学政策情報学部教授)が「第二段階に入ったゼロエミッション活動」と題して講演し、パネル・ディスカッション「ゼロエミッション社会の構築を目指して」が続いて行われた。

 この講演会を聞きたいと思ったのは、ゼロエミッションへの関心や無料であったこととともに、パネルディスカッションのメンバーに谷口正次氏(屋久島電工(株)代表取締役社長)がおられたことによる。昨年の屋久島構想の続きが聞けるかもしれないと考えたのだが、単純すぎた。だが参加してみて、それ以上の収穫を得られたと思う。

 三橋氏は、94〜03年までの活動を「理念の啓蒙と普及の時代」と位置づけ、その実践を普及させるために『ゼロエミッション マニュアル』が作られたと語った。ゼロエミッションは廃棄物をゼロにするというだけの考えではなく、新しいタイプの工業化社会を構築することを目指していること、既存の経済学は「無限で劣化しない地球を前提に構築された体系」であり、地球の限界に直面した今、相当部分を修正せざるを得なくなっている、また、企業の基本戦略は労働生産性を高めることにあるが、20世紀は資源多消費によって行われてきたが、21世紀は資源生産性を基に行われていくことなどを話した。

 パネルディスカッションではその実践例を中心に討論がなされ、山梨県国母工業団地、徳島県「とくしまエコタウンプラン」、青森県「あおもりエコタウンプラン」「環境・エネルギー産業創造特区構想」の関係者、そして谷口氏は産業界の立場から参加した。ゼロエミッションを実現するには、一つの企業や産業、地域の枠を外して他との連携が必要であることや、その苦労についても交々語られた。

 印象的だったのは、希少金属の採掘現場の写真を示して、「我々の生活はこれらの恩恵を受けているが、その源流が地球環境に与えているインパクトについての認識が全くない」(谷口氏)と語られたことだった。青森県の方からは、最近パソコンのモニターやテレビが液晶パネルにどんどん変わっているが、この液晶パネルには白金パラジウムがたくさん使われており、しかも液晶パネルの構造がネジで止めるのではなく糊付けしてあるために再生利用が全くできないという話もあり、目先のメリットの背後にある大きな問題について考えさせられた。

 白金というと燃料電池と条件反射してしまうようになっている自分は、もっと広い知識を持ちたいと思うと同時に、多くの企業がゼロエミッションを理解して、生産工程で工夫を重ねることが必要だと考えた。そして、地域社会のゼロエミッション化では燃料電池が重要な技術として位置づけられていることも確認できた。

 時代の潮流は分散化、というおぼろげな考えが少しまとまりかけた勉強漬けの1週間だった。

■WEB LINK NEWS
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03/05/13 燃料電池車6台を新たに販売=新日石、東ガスなどに納入―トヨタ*トヨタ自動車は13日、昨年12月からリース方式で市販を始めた燃料電池車「FCHV」を、新たに新日本石油、東京ガスなど民間企業4社と愛知県、名古屋市に各一台ずつの計6台販売すると発表した。 (時事通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030513-00000280-jij-biz

03/05/14 日立金属が米社からアモルファス金属材料事業を買収(ラジオたんぱ)

 燃料電池自動車のノイズフィルターなどへの需要を見込んでいる。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030514-00000108-rtp-biz

03/05/14 環境産業の国家戦略検討へ 経済との両立目指し環境省(共同通信)

 環境保全と経済発展の両立を目指す鈴木俊一環境相の私的懇談会は14日、燃料電池や土壌浄化など環境ビジネスの育成を柱にした「国家総合戦略」の策定を求める提言案をまとめた。同省は6月にまとまる提言を受け、戦略策定の検討に入る。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030514-00000129-kyodo-soci

03/05/15 岐阜シネクラブが17日に映画祭(中日新聞)

 “空飛ぶ自動車”の開発を進める県工業会の「ミラクルビークル(MV)」調査開発特別研究会の三橋清通会長(67)=愛知県犬山市=は、これまでの取り組みをダイジェストで紹介する「夢に挑戦」を発表する。

 MVの目標性能は長さ四・五メートル、幅六メートル、重量四百五十キロ。プロペラを燃料電池で回し、時速二百キロで巡航する。主翼を折り畳むと幅二メートルの乗用車になり、左右の主脚に内蔵されたモーターを燃料電池で回し、時速五十キロで走る。五年後の完成を目指している。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030515-00000007-cnc-l21

03/05/15 自動車政策対話を新設 日EU、ITSなど討議へ(共同通信)

 同ダイアログは次官級官僚が出席。欧州側が自動車対話の新設を提言し、日本側が了承した。同対話では(1)高度道路交通システム(ITS)(2)燃料電池車(3)中国など新興市場問題(4)関税問題−の4分野について協議が行われる。燃料電池車の規格統一などについても討議される見込み。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030515-00000123-kyodo-bus_all

03/05/16 750度の蒸気を安定発生 ガス販売業者が装置開発(中日新聞)

 五百度の装置は食品の加熱加工や殺菌などに使われているが、七百五十度以上になると廃棄物の分解処理、燃料電池用の水素製造などでの活用が見込まれるという。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030516-00000015-cnc-l23

03/05/19 自動車研と電動車両協、FC車の水素純度国際標準化へ日本案(日刊工業新聞)

 FC車の水素は長時間使っていると濃縮され、FCに影響が出る濃度まで高まることが指摘されていることから、水素をパージして放出するかどうかといった問題や、水素の純度をどうするかといった問題で早急な対応が求められてきている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030519-00000010-nkn-ind

03/05/19 太陽光発電の研究開発など紹介 大阪 京セラ稲盛名誉会長(京都新聞)

 稲盛名誉会長は、オイルショックを機に太陽光発電の研究開発や普及拡大に務めてきた経緯を紹介。世界の太陽電池生産について「現在日本が半分を占めるが、世界の市場規模は約36億ドルにとどまり産業面ではまだ発展途上」と指摘。「生き物すべてが共生できる社会を目指せば、地球に優しい再生可能な太陽電池の普及も飛躍的に進む」と述べ、燃料電池と組み合わせたシステムの普及などを提案した。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030519-00000065-kyt-kin

03/05/20 トヨタの燃料電池自動車、水素漏れの不具合…自主回収(読売新聞)

 同社によると、15日に環境省の車の高圧水素タンクに燃料の水素を充てん中に、注入口からの水素漏れが見つかった。漏れている量は少量とみられ、仮に走行しても危険性はないというが、燃料の水素が減少することなどから、この車のほか、内閣官房や経済産業省、国土交通省に納入した3台も即日回収した。米国の大学に納入した2台も近く回収する。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030520-00000105-yom-bus_all

03/05/20 燃料電池の仕組みを解説 四日市でセミナー(中日新聞)

 燃料電池は、高効率でクリーンな次世代エネルギーとして注目を集めている。四日市市は、四月に、国に認定された構造改革特区の中で、四日市コンビナートを燃料電池の研究開発拠点にする構想を描いている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030520-00000006-cnc-l24

■海外ニュース(5月ー3)
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<輸送>
●ミレニアム・セルがシーウォージィ・システムズ、ダフィー・エレクトリック・ボートと水上タクシーでチーム

 ミレニアム・セル社は、船舶と港湾設備における発電のための水素燃料の有用性を実証するために、商業輸送による展開技術センター(CCDoTT)プログラムのデモンストレーションでシーウォージィ・システムズ社、ダフィー・エレクトリック・ボート社とチームを組んだ。ミレニアム・セル社の「ハイドロジェン・オンデマンド」システムは、シーウォージィ・システムズ社の22人乗りの水上タクシーに設置される。この水上タクシーは毎日10〜12時間就航する。シーウォージィ社のシステムは、ミレニアム・セル社の技術とシステム統合し、工学技術を提供する。最初の船は、今年の秋に、カリフォルニア州のニューポートビーチ港で使われると期待されている。
http://biz.yahoo.com/bw/030416/165318_1.html

<定置用電源>
●フュエルセル・エナジーの燃料電池がアイビーリーグに進出

 フュエルセル・エナジー社はエール大学と、大学の環境学部棟に熱電併給するDFC300A 燃料電池発電プラントを設置してサービスを行う協定を結んだ。ユニットからの電気は、建物の電力需要のおよそ25%を供給し、熱は主として珍しい骨と工芸品が保管されている施設に厳格に管理された温度と湿度を維持するために使われる。2003年の夏には始められ、コネチカット・クリーン・エネルギー資金から資金を提供されたサービス協定は最初の5年を経過した後に更新されるだろう。
http://biz.yahoo.com/prnews/030403/nyth073_2.html

●プロトン・エナジーが米国海軍センターに出荷

 プロトン・エナジー・システムズ社は、1kW級 UNIGEN 再生型太陽/燃料電池システムをカリフォルニア州チャイナレイクの米国海軍センターに出荷した。ここでUNIGEN システムは、水素貯蔵タンク、太陽光パネルと電気系統を試験のために統合するだろう。6カ月の試験プログラムの間、システムの太陽光パネルは日射時間中電気を供給し、同時に太陽光発電の一部が水素を貯蔵タンクに貯めるだろう。夜間、システムは日光で作られてタンクに貯蔵された水素を UNIGEN のPEM型燃料電池へ投入して利用するだろう。
http://www.protonenergy.com

<燃料・改質器・貯蔵>
●カナダ政府がSHECプロジェクトに資金

 ソーラー・ハイドロジェン・エナジー・コーポレーション(SHEC)は、カナダ天然資源省(NRCan)のCANMETエナジー技術センターと貢献契約書に署名した。この契約でNRCanはSHEC研究所に、Thermocatalytic 水素生産プロセスのさらなる進展のための45万4000ドルのプロジェクトのうち20万ドルを提供する。残りの資金はSHEC研究所が提供する。SHEC研究所によって発展させられているこのプロセスは、エネルギー源として効率の良い太陽光を使っている。再生可能エネルギー源から生産された水素は劇的に排気を減らす可能性を持ち、究極的にゼロエミッションの水素を生産する能力を持っている。
http://www.shec-labs.com/press/releases/2003Apr21press.htm

<燃料電池コンポーネント>
●スクリブナー・テスト・システムズがCE認可を受ける

 スクリブナー・アソシエイツ社は、同社のモデル890C燃料電池評価システムが北米のTUVラインランド社によって成功裏に終了したテストの後、欧州適合(CE)認証を与えられたと発表した。そのテストは、安全性、高周波放出、干渉からの免除と他の要素の品質評価をしている。
http://www.scribner.com/news.html

<報告・市場調査>
●USFCCがポータブル電源研究を発表

 米国燃料電池委員会(USFCC)は、最初の市場研究成果である『ポータブル電源のための燃料電池ーー市場、製品そして価格』と題したレポートを、2003年5月7〜9日にニューオリンズで開かれる第5回年次スモール燃料電池2003会議で発表する。この研究は、USFCCのポータブル電源ワーキンググループの指導のもとにダニエル・グループが実施し、資金は米国エネルギー省から先端技術研究所を通じて提供された。委員会のウェブサイト www.usfcc.com. で、5月7日からダウンロードできる。
http://biz.yahoo.com/bw/030421/215451_1.html

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