□燃料電池ワールド
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■Vol.070 2002/11/13発行
◆燃料電池NPO法人PEM−DREAM
■お知らせ
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◇「燃料電池+ミニカー」組み立てセットを新発売(再掲)
これまで取り扱ってきた大同メタル製の「燃料電池組み立てキット」が新しくなりました。基本部品の3セルPEM型燃料電池と水素ガス缶、LEDは同じですが、さらにスケルトンのミニカーがセットになりました。
自分で組み立てた燃料電池をミニカーにセットして、水素を供給して走らせることができます。直線で20メートルくらい走ります。燃料電池はそのために部材を軽くし、ミニカーに載せやすい形に改善されました。楽しみをプラスした燃料電池セットは、NPO特別価格15000円(税、送料込み。PEM−DREAM会員は1割引))です。
ご注文はメール info@pem-dream.com でどうぞ。また、写真は
http://www.pem-dream.com/kit.html でご覧ください。
◇11月の燃料電池市民講座――大同メタル工業株式会社の燃料電池事業〜技術と背景(再掲)
2000年11月15日、大同メタル工業株式会社は、米国の燃料電池ベンチャー企業 Enable 社の親会社であるDCH社( DCH Technology )と折半出資の合弁企業ニューウェーブ社を設立した。燃料電池とは畑違いの大同メタル工業は、なぜこうした事業展開を選んだのか。また、Enable 社のPEM型燃料電池は、セパレーターを使わないセル構造を持つ「パッシブ型」と呼ばれる燃料電池である。PEM−DREAMが販売している組み立てキットは、このミニ版であるが、この技術はどういうものか等々、さまざまな話題を大同メタル工業様にお話ししていただきます。
なお、今回から会場が株式会社守谷商会様に変わります。これまで会場を提供して下さった岩谷産業株式会社様に、この場を借りて御礼申し上げます。
○日 時 11月30日(土)午後2時から
○場 所 株式会社守谷商会(東京駅八重洲口から3分、地図をお送りします)
○参加費 会員は無料。非会員は2000円。
○申し込み方法 メールまたはFAXにて、「11月の燃料電池市民講座」と明記の上、氏名、連絡先、電話番号をご記入の上、お送り下さい。
メール info@pem-dream.com FAX 03-5408-3252
◇「遊んで作る燃料電池100円実験キット」と材料提供(再掲)
日本中、どこでも誰でも、手軽に、安全に、安上がりに燃料電池の原理を実験できる「遊んで作る燃料電池100円実験キット」。このキットの材料と製作ストーリーを書いた資料をメールで無料で差し上げています。ご希望の方は、
info@pem-dream.com までお申し込み下さい。
また、すでに資料を請求された方から、材料として使うLEDと電線が入手しにくいので対応できないかとの相談がありました。そこで、私たちが常備している中から、希望する方に提供することにしました。
内容は、LED3個と電線20cmくらいを2本です。ご希望の方は、切手200円分(郵送料含む)を事務局までお送り下さい。折り返し郵送します。
・宛先 〒105−0004 東京都港区新橋4ー28ー3 新正堂ビル2階
燃料電池NPO法人PEM−DREAM
■PEM−DREAMニュース
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○「国連大学ゼロエミッションシンポジウム2002」報告
10月31日、11月1日の2日間にわたる国連大学ゼロエミッションシンポジウム2002「クリーンエネルギー社会とゼロエミッション――持続可能な未来へ向けての水素エネルギー利用の現状と可能性」は、水素をキーワードに、討議が行われた。その全体プログラムを以下に示す。
・10月31日(木)
基調講演「加速する水素エネルギー社会」 エイモリ・B・ロビンス(ロッキーマウンテン研究所所長)
招待講演「水素エネルギー社会の課題と展望」槌屋治紀(情報システム技術研究所所長)
セッション1:水素エネルギー利用のフィージビリティーについて
「再生可能エネルギーとその利用にみる水素エネルギーの役割」藤井石根(明治大学理工学部教授)
「燃料電池車の技術開発の現状と課題」川口祐治(本田技研研究所和光基礎技術研究センター上席研究員)
「水素自動車―開発から市販化への過程」マルクス・バウアー(BMWジャパン エンジニアリング・グループ ディレクター)
「従来エンジンと燃料電池システムとの比較―性能、環境特性、競争力について」大聖泰弘(早稲田大学理工学部教授)
セッション2:水素エネルギー利用に関する技術開発と経済性
「バイオマスと水素転換のためのバイオマスリファイナリー」竹林征雄((株)荏原製作所営業本部理事総合事業担当)
「経済性のあるCO2ゼロエミッション型水素製造」玉浦裕(東京工業大学炭素循環エネルギー研究センター教授)
「水素貯蔵・運搬技術」藤井博信(広島大学総合科学部教授)
・11月1日(金)
基調講演「アイスランドにおける非化石燃料経済の創造」ブライエ・アルナソン(アイスランド大学インスティチュート オブ サイエンス教授)
特別講演「水素エネルギーに関する将来展望」ガブリエル・F・デ・スヘイマーカー(シェル・ハイドロジェンB。V。副社長)
招待講演「日本における燃料電池研究開発及び利用の動向」本間琢也(燃料電池開発情報センター理事)
セッション3:水素エネルギーシステム開発のイニシアチブ
「ドイツにおけるソーラー・ハイドロジェン・プロジェクト」鈴木研夫(ユネスコ科学局企画専門官・東京工業大学客員教授)
「固体高分子型燃料電池/水素エネルギー利用プログラムについて」吉田裕(新エネルギー・産業技術総合開発機構理事)
パネルディスカッション「水素エネルギー社会への展望と課題」
コーディネーター 三橋規宏(千葉商科大学政策情報学部教授)
パネリスト ガブリエル・F・デ・スヘイマーカー(シェル・ハイドロジェンB。V。副社長)
谷口正次(屋久島電工(株)代表取締役社長)
大聖泰弘(早稲田大学理工学部教授)
オッド・イーブン・ブスネスト(ロッキーマウンテン研究所コンサルタント)
これらの内容について詳細を報告することは難しい。サマリーは厚さ15ミリもあり、話された全ての内容が載っているわけではない。さらに、筆者の理解不足という大きな問題もある。そこで、主観的だが、メルマガ読者のみなさんに「これはぜひ知らせなければ」と考えたことを中心に報告する。
まず、何よりもビッグニュースであり、このシンポジウムの精神を具体化しているものとして、最後のパネルディスカッションで報告された「屋久島クリーンエネルギーパートナーズ構想」から始めたい。
「屋久島クリーンエネルギーパートナーズ構想」(Y−CEP構想)は、世界自然遺産に登録されている屋久島に水素社会を創生しようというもので、この構想を提唱しているのは、屋久島電工株式会社である。シンポジウムに参加された屋久島電工の社長、谷口正次氏は、「屋久島は100人が100人知っているが、屋久島電工は100人のうち1人も知らない会社です」と自己紹介。その会社が屋久島を水素社会に変えてしまおうとして出した挑戦状がY−CEP構想だ。
屋久島電工はちょうど50年前の1952年に設立された、屋久島島内に電気を供給する電力会社だ。年間4000〜1万ミリ降る雨を利用し、現在6万キロワットの水力発電を行っている。全島の電力需要はその20%でまかなえており、残りの80%の余剰電力を使って、自社でセラミックスの原料となる炭化珪素の生産を行っている。開発可能な水資源は30万キロワットと推定され、さらに風力、太陽光、バイオマス、波力などの再生可能な自然エネルギーもふんだんにある。
このY−CEP構想は、アイスランドで始まっている水素経済社会づくりに触発されたと思われる。筆者は2年前に初めて谷口氏にお会いしたことがある。その時谷口氏は太平洋セメント株式会社の取締役をされており、セメントを生産する炉でダイオキシンを燃やしてしまう事業を熱っぽく語っておられた。それから2年後、氏は立場を変えて現れ、今度は再生可能エネルギーと水素社会について語ったのである。
アイスランドは人口27万人、化石燃料自動車18万台が走っている。船も多い。水力、地熱が豊富だが、国内にはほとんどない化石燃料エネルギーの使用が多い。このエネルギー構造を今後20〜30年かけて、水素と燃料電池を使って、全て再生可能エネルギーによるものにしていこうとしている。その第1段階として来年、首都のレイキャビックで燃料電池バスが3台、実証走行に入る計画だ。これらの詳細は、この計画の推進者であるブライエ・アルナソン氏(アイスランド大学教授)が2日目の基調講演で話された。
屋久島は人口1万4000人、島内の自動車は9500台であり、アイルランドより規模が小さい。谷口氏は「9500台のガソリン自動車をすべて追い出し、燃料電池自動車、水素自動車に変えてしまいたい」と話した。目標は2020年頃と想定している。
Y−CEP構想の目標は、前日刷り上がったばかりのパンフレットにこう書いてある。
・島内の化石燃料車をすべて水素化し、世界自然遺産の島にふさわしい水素社会の実現を図ります。
・島外への水素供給基地となることを目指します。
・世界に先駆けた水素社会のモデルづくりの過程において、人材の育成、知的資産の形成を目的とする”体験・教育の場”を提供し、国際交流に寄与します。
・屋久島の自然遺産を活用する持続可能な観光振興〈エコツーリズム〉の普及を図ります。
屋久島電工はそのために、〈Yakusima Clean Energy Partners〉を会社組織として設立する。現在は「メッセージを出した上で、具体的なプロジェクトを投資家に提案」していく段階である。パネルディスカッションではY−CEP構想とともに、「収益を得られるプロジェクト」という視点が討論された。これは、水素の経済性をどうやって構築するのかというシンポジウム全体に共通した視点でもあった。
ロッキーマウンテン研究所のオッド・イーブン・ブストネス氏はマネージメント・コンサルタントの立場から、「水素エネルギーの実用化には利益を確保していかなければならない」と指摘し、「最初のユーザーは誰か、高いコストを払いたい人を捜すのが非常に大事で、鍵だ。このような小さいところからスタートするのがいい。ニッチを最初に生み出すもの」と評価した。
シェル・ハイドロジェンBVのガブリエル・F・デ・スヘイマーカー氏は、問題提起をした。
「今は移行期の過程がわからないというところにあり、謎解きをしているのだ。水素へと向かうべきだと簡単に言うが、2つの大きな壁がある。ひとつは、誰が燃料電池自動車を買うのか、ということだ。今のガソリン車よりメリットがあり、信頼性がなければ買わない。
いまひとつは、インフラの整備だ。投資の見返りが問題だ。よりきれいな大気ができるというだけではだめだ」
ここでコーディネーターの三橋規宏氏は、谷口氏に「インフラはどう考えているか」と振った。谷口氏曰く、「42年間ビジネスマンをやってきたので、儲からないことはやらない」と前置きして、Y−CEP構想の詳細を語った。
Y−CEPは5つの事業を想定している。(パンフレットより)
1.クリーンエネルギーの開発(中小水力・風力・太陽光・波力・バイオマス)2.水素エネルギーの供給源として水素の製造、貯蔵、輸送、供給設備の建設運営3.燃料電池車・水素自動車の走行試験
4.エネルギー多消費・ゼロエミッション事業の誘致
5.水素貯蔵ナノ構造物質の実証試験
このうち、クリーンエネルギーの開発と水素インフラで燃料電池自動車、水素自動車を走らせるのは別のプロジェクトとなる。
クリーンエネルギーによる発電事業はY−CEPが行い、その電力を屋久島電工が買い取る。この時に、環境付加価値を買う日本自然エネルギー株式会社も参画する。「win-win の関係を作れるので、初年度から黒字は難しくない。しっかりした収益構造を作る」と谷口氏は断言した。
そして、水素インフラのプロジェクトは「熟成するまで我慢しながらやる。屋久島のキーワードは、環境、観光、エネルギーの3つだ。これでいろいろなソフトの事業ができ、付加が生まれる。このキーワードで尾瀬や白神山地などにも広げられるだろう」と展望した。
これに対し、大聖泰弘早稲田大学教授は、「屋久島の場合は、世界に対する情報発信効果が大変大きい」と期待する発言をした。同教授はまた、日本人が水素を危険視するイメージを強く持っていることに関する論議の中で水素の安全性に触れて、「中学の理科教育に原因があるのではないか。水の分解をして、火をつけるバクゲキがそのイメージを作っている。水素の拡散速度はとても速いことも一緒に教えるべきだ」とも発言した。
他の講演についても述べよう。ロッキーマウテン研究所のエイモリ・B・ロビンス氏の話は、「どのようにして水素社会への課題を加速できるのか」という語り出しで始まったが、ロビンス氏が早口で、また1枚のスライドにたくさんのことが詰まって書かれていて、おまけに同時通訳の人も苦労していたようで、あまり理解できなかったので省略する。ロビンス氏の考え方は、日本経済新聞社から『自然資本の経済―「成長の限界」を突破する新産業革命』という本が出されていると紹介があったので、関心のある方はそれをお読みください。
システム技術研究所所長の槌屋治紀氏はエネルギー分析の専門家であるが、氏の話も「人類はひとり10人の奴隷を持っている」という話から始まった。そのロジックを引用してみよう。「生物として人間は1日1kgのCO2を呼吸で排出している。60億の人類は呼吸により年間20億トン、化石燃料消費により年間210億トンのCO2を排出している。地球上では人類ひとりは10人の便利な奴隷をもっている。日本人は25人、米国人は55人の奴隷を持っている」
槌屋氏はまた、ドイツの飛行船ヒンデンブルグ号の事故について、次のような指摘を行った。「水素の安全性議論の発端になったのがヒンデンブルグ号だ。事故は水素の危険性の象徴となったが、1997年アメリカのアディソン・ベインが、事故は水素が原因ではなかったという主張を唱えた。アディソン・ベインはNASAの学者で、1997年は燃料電池が出てきた時期なので、どう評価したらいいのか」と。何となくなるほどというわけだが、おもしろかった話をこんな調子で書いていたら、一つ目小僧のろくろっ首みたいに長くなってしまう。そこで、いきなり槌屋氏の水素エネルギー社会についての結論。
1.水素エネルギーを利用する燃料電池は、エレガントな技術であり、効率が高く、CO2の排出を削減する?2.移行期には天然ガス、長期的には自然エネルギーからクリーンな水素を供給可能。3.自然エネルギー社会は、効率の高い低エネルギー社会を目標にして、浪費型社会の変革が必要。
4.ハイブリッドカーは無視できない競合技術である。
5.水素の安全性と経済性の問題を解決する必要あり。
6.水素インフラ建設の段階的計画の検討が必要。
7.自動車の持つ社会的な問題は未解決のまま残る。
次に、太陽エネルギーの専門家である明治大学教授の藤井石根氏は、バイオマス→メタノール→燃料電池の可能性が資源量としても頼りになると話された。結論「我が国の(再生可能エネルギーの利用拡大の)対応は(ヨーロッパの国々に較べて)すこぶる遅く、エネルギー政策にしてもどちらかと言えば保守的である」と述べられ、「長期的な時間軸で見れば再生可能エネルギーほど、安定的に手にできるエネルギー源は他になく、種々の再生可能エネルギー源を動員して、互いに足らざるを補いあうこと、また、技術面からはメタノールと水素が重要な役割を担うであろう。しかし、それにしてもこれからは従来のような無頓着なエネルギーの利用はありえないことだけは確かであろう」と警鐘を鳴らした。
ホンダの川口祐冶氏の話では、「燃料電池自動車開発のかなりの部分はシステム構築だ」ということ。そして、「従来の自動車の大量生産では存在しない部品があり、それを大量生産するには時間がまだかかる。燃料電池は自動車の技術としては発展途上であり、基本的構造がまだ欠陥を持っている」そうである。それにもかかわらず、「実用化販売された燃料電池自動車FXCは、ゼロ発信の加速はホンダの車の中でトップレベル」だそうだ。
BMWのマルクス・バウアー氏の話を伺って理解できたのは、BMWが何故燃料電池自動車ではなく水素自動車にこだわり続けているのかということだ。BMWは現在、商用車としての第6世代の水素自動車の開発をしている。今は水素とガソリンのバイフュエル仕様だが、2025年には25%が水素のモノフュエルになっていると予測している。ドイツの高速道路では時速200kmは普通のことで、この速度は燃料電池では達成できない。だから、ガソリンから水素への移行期は水素を燃やす水素エンジンで顧客のニーズに応えるということだ。将来は水素のターボエンジンも考えていると言っていた。
もう一つ、BMWは水素を液体水素タンクで搭載するが、その理由として経済性を挙げていた。輸送コストが大きく違い、スペースも小さくてすむということだ。だが、次の講演を行った大聖氏は「液体水素は日本の現状からすると厳しい」と言う。
これは一例だが、こうしたシンポジウムを聞いていると講師によって一見対立するような意見が出されることもあり、それがどうしてなのかを理解するにはまだ勉強不足である。バイオマスやメタノールにしても、日本ではなんとなく外側におかれている雰囲気を感じているが、話を聞けば聞くほど重要な位置にあると思えてくる。単純な疑問だが、いろいろ出される数字も皆同じ数字を使っているのだろうか。槌屋氏は「予測は大きくなったり小さくなったりする」と言っていた。
元に戻ろう。荏原製作所の竹林征雄氏は、荏原製作所がポンプ屋から環境産業へと変身した経緯を同社の焼却炉開発を例にして説明された。技術的な話が主だったので、ふ〜ん、そうなのか、と聞いているしかなかったが、「社会の仕組み、制度のソフトを変えていかなければならない」と主張が入った話になると圧倒的な迫力を感じた。荏原製作所が達成した技術を使うともっと現在の環境問題を具体的に解決していくことができる
が、法の規制や縦割り行政の弊害のせいでそれができない、ということをいくつもの実例を挙げて話された。
東京工業大学の玉浦裕氏の話からは、工業的なソーラーH2生産が普段目にしているソーラー発電とは全く違った規模で考えられていること、そして、集光太陽エネルギーを用いた2段階水分解反応とか、太陽電池/電解よりも太陽熱発電/電解の方が期待できるというようなことが紹介されたが、専門的すぎて、最先端ではいろいろなことが研究されていることを知っただけである。
水素貯蔵・運搬技術については、広島大学教授の藤井博信氏が講演した。最近の状況を概観し、新しく研究されている技術についても説明されたが、これも消化不良。ただ、「圧縮水素ガスは700bar 位になると水素分子間が近くなって、それほど効果が上がらない」という話には、こういう理解も成り立つのかと思った。ホンダもトヨタも燃料電池自動車には圧縮水素ガスを積んでいる。そのタンクの圧力は250bar と350bar となっているが、それでは走行距離が伸びないので、いずれ700bar のタンクになるらしい。しかし、それ以上は効果がないとしたら、その次は圧縮水素ガスではないものになるということだろうか。シェルのガブリエル氏は「人々は700bar の車に乗りたいだろうか」と言っていた。
同じくガブリエル氏の話から。
・この業界ほど、政府の規制、方針に影響を受けるものはない。
・政府は3つの問題を抱えている。気候変動と局地的な大気汚染、それとエネルギー供給の安全保障だ。人々は都市に集中し、エネルギー安保は産業としては大事だが、一般の人の関心は向けられなかった。
・燃料電池には、ドットコム企業ではなく現実性が必要で、過大評価は禁物だ。
・社会はチャンスがあればテクノロジーを導入する。2040年頃には水素燃料電池の産業が確立するだろう。
・市民・消費者によってエネルギーが選択されるときは、環境にやさしい方法となる。重要なのは市民の関心であり、知らなければ既存のものが続く。
・燃料開発には安全性問題は常について回る。環境についても同じことが言える。信じたいから信じるというのではだめだ。
・選択肢は経済で規制されている。
・革新は思いも寄らないところから出てくる。未来は予測しにくい。シェルは水素を信頼しているので投資している。
ユネスコの水素エネルギー・再生可能エネルギー担当の鈴木研夫氏からは、ドイツで1985年に計画され、1999年に終了したプロジェクト――ソーラー・ハイドロジェン・プロジェクトの詳細が報告された。太陽光発電で水素を作り、燃料電池で使用するワンセットのプロジェクトがすでに行われていたのだ。
2日間のシンポジウムについてほとんどはしょってしまったが、実にたくさんのことが話し合われた。最後に総括として千葉商科大学教授の三橋規宏氏は、バック・キャスティングの考え方というのを話した。対語はフォア・キャスティング、現在の状態から未来を見ること。普通の時代はそれでいいのだが、激動の時代にはバック・キャスティング、未来のあるべき姿から現在を見て、そのための好ましい対策を取ることが特に日本の行政には必要だと鋭く語った。
PEM−DREAMは、始めは燃料電池を知ることで精一杯だった。1年経って水素も知らなければならないと思った。そして、再生可能エネルギーと水素、燃料電池をつなぐシステムを知りたいと思いだした。こうした変化は私たちだけでなく、とても広い範囲で起き始めている気がする。それは1本の糸でつながっている事柄だからだろう。国連大学のシンポジウムはまさにドンピシャのタイミングだったと思う。
■イベント紹介
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☆第22回水素エネルギー協会大会「水素エネルギーシンポジウム」(新規)
○日 時 12月11日(水)12日(木)午前9時15分〜午後5時30分
○会 場 東京工業大学ディジタル多目的ホール
東京都目黒区大岡山2-12-1
○内 容 基調講演
1.経済性のあるCO2ゼロエミッション型水素製造
玉浦裕氏(東京工業大学炭素循環エネルギーセンター教授)
2.米国に置ける水素社会構築の戦略と展望
Dr. Venki Raman (米国の水素業界のリーダー)
3.PEFC用材料開発の現状
Dr. Oumarou Savadogo (カナダのPEFC開発研究の第一人者)4.日産自動車に置ける燃料電池自動車開発の現状と課題
三枝省五氏(日産自動車株式会社環境・安全技術部主管)
その他に、Aセッション(水素製造、水素インフラ、水素利用技術)20講演Bセッション(燃料電池技術、水素の安全性、水素貯蔵技術)20講演19のポスターセッション、を予定しています。
○会 費 参加費 会員8000円 非会員1万円 学生3000円
懇親会 4000円 学生1000円
○申込締切 11月20日(先着400名まで)
○申し込みと問い合わせ
申し込みは、FAXによる申込用紙が必要ですので、下記にメールでお申し込みください。
横浜国立大学教育人間学部 谷生研究室内
水素エネルギー協会大会実行委員会
E-mail: secretary@hess.jp
☆PEM−DREAMが参加するイベント(再掲)
・11月16日(土)
ファミパラ
主催:品川区小関ブロック自動センター合同
場所:品川区立御殿山小学校
ご近所の方、お出かけしませんか。
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○燃料電池市民講座 http://www.pem-dream.com/citizen.html
○EVENT INFORMATION http://www.pem-dream.com/event.html
○燃料電池マイ・レポート http://pem-dream.com/report.html
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■世界のニュース〈11月)
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<輸送>
● ホンダ燃料電池自動車が2002年中に登場
ホンダ自動車は2002年末までに、政府機関や他の関連団体への燃料電池自動車「FCX」のリースを開始する。このFCXは157リットルの圧縮水素燃料タンクを搭載し、再補給なしでも335km(約220マイル)走行可能であり、最高で毎時150km(約93マイル)に達することができる。ロサンゼルス市はすでに、この自動車5台のリース契約に合意している。
● ダイムラークライスラーが2003年に自動車やバスを始動
ダイムラークライスラーは2003年、ヨーロッパの顧客向けに都市型燃料電池バス『シターロ』30台の運用を開始する。また、メルセデスベンツAクラス燃料電池カー『F−Cell』モデル60台も、2003年にはヨーロッパ、日本、シンガポール、アメリカに配備され、走行テストが始まる。
<定置型電源>
● ニュージャージー州クリーンエネルギー計画が初の燃料電池を設置
メルク・アンド・カンパニー社はニュージャージー州のローウェーにある自社研究施設に、UTCフュエル・セルズ社製の「PC25」燃料電池1基を設置した。この燃料電池は、ニュージャージー州公益事業委員会(BPU)による州全体を対象としたクリーン再生可能エネルギー技術推進計画のもとで設置された。
メルク社はニュージャージー州クリーンエネルギー計画のおかげで、200kW級燃料電池で71万ドルのリベートを受けとった。この計画は、代替技術を使って新しいエネルギー発生装置の設置を行うニュージャージー州内の企業を対象としている。また、連邦政府が主催する代替技術計画においてもアメリカ国防総省から20万ドルのリベートを受けとる。
<携帯・バックアップ電源>
● DOTが飛行機でのポリフュエル燃料電池の利用を認可
米国運輸省(DOT)は、ポリフュエル社製の新しい燃料電池の飛行機での利用を認可した。その理由は、低濃度のメタノール燃料を使っているというもの。この燃料電池は、ノート型パソコンのために標準的なラップトップ・バッテリーよりも連続して2−3倍長く利用できる。この燃料電池は2004年には市場に流通する予定だ。
● インテルがワーキング・グループを結成
インテル社は、デルや富士通、松下、NEC、東芝やその他の企業と、モバイルパソコン用バッテリーの連続利用時間を拡大するワーキング・グループを結成した。バッテリーや燃料電池、またそれに関わる技術開発を共同で行う。
<燃料・改質器・貯蔵>
● スチュワート・エナジーが燃料ステーションを披露
スチュワート・エナジー・システムズ社は、カリフォルニアにある最新のインテリジェント水素供給ステーションを披露した。ステーションは、カリフォルニア・フュエルセル・パートナーシップ(CaFCP)のメンバーであるACトランジットのリッチモンド事業地区で見ることができる。このステーションは、サクラメントにあるCaFCP本拠地にしばられずに燃料電池自動車の運転可能な範囲を拡大した。またCaFCPは、オンサイト(現場)で水素燃料を生産する初めての水電解をこのステーションで使う。
<燃料電池コンポーネント>
●FCSSがガス漏れ検出装置を公開
フュエルセル・セイフティ・システム社(ECSS)は、燃料電池用にデザインした可燃性ガスのガス漏れ検出装置の新しい生産ラインを公開した。ECSSは過去3年間、燃料電池の性能向上のために、水素やメタノール、プロパンのような可燃性ガスのガス漏れを確実に低コストで検出する方法について主要な燃料電池生産企業の数社と共同研究を行ってきた。
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■燃料電池ワールド
□毎週水曜日発行
□編集・発行:燃料電池NPO法人PEM−DREAM
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