燃料電池ワールド (2002/01/30 14:10)

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□燃料電池ワールド
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■Vol.034 2002/01/30発行

                   ◆燃料電池NPO法人PEM−DREAM

                        ◇http://www.pem-dream.com/

■お知らせ
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◇シンポジウム「燃料電池などマイクロパワーは日本経済・地域経済再生の起爆剤となるか」報告

 今年に入って燃料電池関連のイベントはあちこちで行われているだろうが、聴講者1000人の大規模なシンポジウムが1月29日、幕張メッセで開催された。日本工業新聞社と産経新聞社が主催し、全国町村会共催の『活力自治体フェア2002』の開催記念として標記のテーマで行われた。
 テーマも魅力的だったが、パネラーの顔ぶれはもっと魅力的だ。

 第1部 シンクタンクバトル「マイクロパワーとコミュニティソリューション」
  コーディネーター 金谷年展(青森県立保健大学助教授)

  パネリスト    金田武司((株)三菱総合研究所主任研究員)

           福地 学((株)野村総合研究所上級コンサルタント)

           岩崎友彦((株)日本総合研究所主任研究員)

           奥沢 篤((株)富士総合研究所主任研究員)

 第2部 討論会「マイクロパワーは日本経済再生の切り札となるか」
  コーディネーター 田原総一郎
  パネリスト    柏木孝夫(東京農工大教授)
           金谷年展(青森県立保健大学助教授)
           古屋圭司(経済産業副大臣)
           風間 昶(環境副大臣)

 この方々が、3時間にわたって討論した。その基調となっているのは『マイクロパワー革命』(TBSブリタニカ)という本である。この本は柏木、金谷両氏らが中心となり、第1部のパネリストも執筆していて、詳しくはこの本をお読みいただきたい。ここでは、このシンポジウムで話されたポイントを絞って報告する。また、マイクロパワーという言葉は、その代表格である燃料電池と置き換えて理解しても良いだろう。

 第1部では、分散型エネルギーが持つインパクトについて語られた。あるパネリストからは「自治体様」という言葉が発せられたことからも分かるように、地方自治体はシンクタンクの大切なお客様であり、このイベントの参加者には自治体関係者が多かった。そういう前提で討論が展開されたが、分散型エネルギーは、行政区割りである地方自治体の区域とは限らないが、ある一定の地域社会の規模で展開するのに適していることが強調された。

 エネルギー政策は国や偉い人がやるものだというこれまでの在り方から、エネルギーを使う人が主体的に自分が使うエネルギーについて考え、選択し、管理していく時代に転換することが必要で、その武器となるものが燃料電池である。エネルギー、つまり電気と熱だが、マイクロパワーはそのエネルギーを、使う人が使いたい時に使う分だけ使う場所で供給することができる。設備の導入もできるところから徐々にやっていける。さらに地域で、個々のエネルギー源をネットワーク化することで、効率化、安定化が図れる。

 地方自治体は、電力の大口消費者であり、エネルギー資源の生産者(例えばごみなど)でもあり、地域のリーダーでもある。土地を売ったら終わりという産業振興ではなく、地域産業が新しい技術開発をして収益をあげるような取り組みができる。地域の特徴にあわせた構想を作るために、自分たちのエネルギーの資源、生産、供給、管理について、現状がどうなっているのかの調査が求められている。エネルギー課というような担当部署を作って、国がやるべきことと自治体としてやれることを整理するべきだ。

 さらに大切なことは、自分が使うエネルギーに責任を負うという意識を育てることだ。日本では停電は起きないが、それは法律で電力会社に電力の安定供給を義務づけているからなので、分散型発電で電力の質が多様化してくると、停電が起きるような電力も出てくる。それでもCO2を出さない電力だからそれを使うというようなリスクも受け入れる(もちろん、現在の生活の質を落とさなければならないということではなく、それを維持し向上させるための議論なのだが)自己責任の意識が必要になってくる。そのための国民的な議論、お茶の間の向こうにあるエネルギーについて消費者としての議論をしていかないと、マイクロパワーはゆがんでしまう。

 第2部では、田原氏の絶妙な司会で時に会場は爆笑につつまれた。田原氏が燃料電池に初めて出会ったのは1999年のこと。大阪ガスのエネルギー問題のシンポジウムに出席したときに、大阪ガスの若い社員から「これからは燃料電池ですよ」と聞かされた。その後、通産省(当時)の友人に聞いたが知らなかったし、経済同友会の牛尾治郎氏にも言ったが、彼も知らなかった。省庁で一番早く注目したのは環境庁(当時)だった。風間氏は「通産省と議論が始まったが、理論では勝てても実用化、具体化の部分で負けてしまった?と語った。

 この間のことを田原氏は、「エネルギー問題無視の原発計画 陰ではばかばかしい省庁間戦争」というタイトルで週刊朝日に書いている。2000年3月10日号の「田原総一郎のギロン堂」というコラム欄だ。

 だが、「当時と今では相当に情勢が違う」と古屋氏は言う。経済と環境の両立という理念が温暖化防止京都会議で確立され、国もCO2削減に取り組まなければならなくなったからだ。そうした状況の上でさらに政治と行政に求められることや、燃料電池の現状と見通しなど、学者と政治家を相手に突っ込みを交えながらの討論が続けられた。

 柏木氏は「燃料電池は弱電メーカーの死活問題」という点を指摘した。田原氏は「燃料電池のJAPANスタンダードは作れるか」と問題提起をし、金谷氏は「燃料電池の優れたところは、小さくても発電効率が落ちない高分子膜ができたことと、量産化したときのコストポテンシャルがとても高いこと」と説明した。

 会場からの質問では、「家庭用燃料電池の耐用時間が3000時間だと聞いているが、それではダメだと思う」という意見に対し、商品化されたときは7〜8年になるという答えがあって、「7〜8年ではダメですか?」と返すと「それならOKです」と質問者が答えて大笑いになるという一幕もあった。

 このシンポジウムをきっかけに、自治体間でエネルギーをテーマにした取り組みが始まることを期待したい。
    
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■世界のニュース〈1月〉
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<輸送>
●NASAが再利用可能ランチ輸送設備に関する2つの燃料電池計画に賞与

 エレクトロ・ケム社とテレダイン・エナジー・システムズ社は、NASAの再利用可能なランチ輸送設備の為の固体高分子膜(PEM)型燃料電池パワープラントの開発に関する契約を取りつけた。NASAはこれらのシステムを独自に検査・立証した後に、1社のみと開発続行の契約をする予定である。

<定置型電源>
●Hパワーとガズ・ド・フランスが住宅向け燃料電池を設置

 Hパワー社とヨーロッパの主要エネルギー会社のガズ・ド・フランス社は、パリ近郊のガズ・ド・フランス施設にベータ・レジデンシャル・コージェネレーション・ユニット(RCU's)の6基のうちの1基を設置した。残りの5基は2002年上半期に輸送予定である。

<燃料・改質器・貯蔵>
●新人研究者が水素の研究で受賞

 サンディア・ナショナル・ラボラトリーのカール・グロス氏は、水素貯蔵用の軽量水素酸化物の開発・研究に対し、エネルギー省パワーテクノロジー部門から新人研究者賞を送られた。この賞は最新のエネルギー省計画に向けて努力する研究者の中でも特に優れた才能があると認められる者に送られる。

<燃料電池コンポーネント>
●水素センサーが軍事利用の認証を受ける

 ナショナル・テクニカル・システムズは、DCHテクノロジー社のH2SCAN水素センサー装置が世界的軍事システムヘの利用価値があると認証した。この装置は、MIL−STD−810Cの明細事項のうち、重要項目の振動、機械的な衝撃、温度差による衝撃、温度周期、過度の湿度といった必須テストに合格している。

<提案要求>
●エネルギー省国家エネルギープログラム

 米国エネルギープログラムのために、450万ドルもの奨励金がエネルギー部署に用意されている。この資金は、インフラの整備、最適な市場、戦略上の協調を通じて、新しい燃料とそれを利用する自動車を支える特別なプロジェクトを推進するために使われる。この奨励金への申請は、3月15日までにエネルギー省の各地域事務所で受け付けている。

<その他>
●イタリアの燃料電池企業が事業を開始

 アンサルド・リッケルケ社から分離設立されたアンサイド・フュエル・セルS.p.A(AFCo)は、2001年12月1日から事実上業務を開始した。AFCoの任務は、工業用品の製造と燃料電池、特に鋳造した中間幅のカーボネイト燃料電池パワープラントの宣伝である。

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