燃料電池ワールド (2001/12/19 09:30)

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□燃料電池ワールド
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■Vol.029 2001/12/19発行

                   ◆燃料電池NPO法人PEM−DREAM

                        ◇http://www.pem-dream.com/

──────────────────────────────────────PEM−DREAMへのご連絡は、電話03−3229−0062か、FAX03-3382-3388をご利用ください。
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■報告
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☆初めて経験した人の波! 体力勝負で挑んだ『エコプロダクツ2001』

 『エコプロダクツ2001』(会場=東京ビックサイト)は、12月13日〜15日までの3日間で88,604人が来場して終わった。昨年より3割増の来場者数だ。「エコ」に対する世論がより確かなものになってきている証左だが、燃料電池についても同様だと感じた。

 PEM−DREAMは初めて出展した。NPOは出展料が無料だったこともあり、従来のイベント経験から気楽に参加したのだが、それはお気楽すぎた。代々木公園でのアースデイなどのイベントでは、宣伝用のチラシは50部前後しかはけなかったので、3日間で300もあれば足りるだろうと高をくくっていた。ケタが違った。初日に用意できた300部は午後3時頃にはなくなってしまい、それ以降も人の波が続いたのである。「これが本格的な展示会だ」とうれしさ半分とまどい半分で初日を過ごし、その夜から翌日分のチラシ準備に追われ、寝る間もないこととなった。チラシは合計1100部ほどさばけ、来場者の1.2%強が持っていったことになる。体力勝負のうれしい結果である。

 ブースは、「燃料電池発電体験」「燃料電池バス」と染め抜いたのぼり旗をメインに、パネルを使って飾った。机にはソーラー発電で水を電気分解して燃料電池で発電する教材キットを置き、傍らで「燃料電池CD−ROM」の販売を行った。チラシスタンドを横に置き、「ご自由にお持ち下さい」と書いた紙を貼り付けておいた。一人で全てに対応する構成だ。この準備は12日に1時間ほどで終わった。

 初日(13日)、燃料電池キットで模型のトンボを動かそうとしたら動かない。太陽光なら動くのだが、室内なので300Wの電球を光源にしたため、力が弱いようだ。それならと、トンボの方にはケーブルに乾電池をくくりつけて客寄せにした。これが失敗だった。お客に説明するたびに「こちらの方はこれこれしかじかでインチキをやってます」とお断りする羽目となった。教材キットをじーっと見ていて、トンボの方を見ると少しけげんな表情になるからだ。大半は笑ってすませてくれたが、冷や汗ものだった。この教材キットは8名の方から欲しいと言われ、販売先を連絡することになった。

 説明した人の数を今回も把握しようと、正の字を書いていたが、そのうちに書くことすらできなくなった。ひと組に話が終わると、すぐに次の人が来てしまう。こちらは口を動かしっ放しでしゃべりまくる。3日間ともその連続だった。立ちっぱなし、しゃべりっぱなしでさすがに疲れたが、気分はハイになりっぱなし。多分400人を超える人たちに説明しただろう。

 とにかく燃料電池そのものを見るのが初めてなのである。上から横から下から、なめるように観察する人もいれば、腕組みをして無言でじーっと見つめる人もいる。ブースの前を通る人が少し関心あり気に歩く速度がゆるんだら、「これが燃料電池です」と顔を見ながら本体を指さすと、ほとんどの人が話を聞いてくれた。キットを使って燃料電池の発電の仕組みと、水と太陽光で発電する循環プロセスの説明を身振り手振りでしていると、他の人も立ち止まる。話はやがて現実の問題となり、パネルを取り出して抱えながら説明する。日本および世界の開発状況と見通し、それぞれの企業の考え方や商品の説明、どんな問題があるのか、果ては、効率は、今の出力はなどと、燃料電池の百科事典のような質問の連続だ。何とかかんとか話し終えると、「ところで、この団体はなーに?」と最後の質問。切腹のマネをして「自腹を切ってやっている市民活動です」と答える。ほとんどの人は納得してくれたが、中には「本当の狙いは何なの?」としつこい人もいた。やはり、お金の問題と企業との関係についてチェックを入れられているな、と感じた。

 PEM−DREAMは今、大赤字で運営しているので、会計報告もどう書いていいのか分からないまま過ごしてきている。財政構造と組織運営の透明性をきちんと表現するのは来年の大きな課題だと教えられた。

 だが、何人もの人から「この展示会に来て一番の収穫だったよ」と言われ、「頑張って下さい」と励まされ、ファイトが湧く。途中で『BayFM78』の取材を受けた。16日の午後11時から「THE FILNTSTONE」という番組で放送するという。CD−ROMも20セット持っていったが、めでたく完売して予約もいただいた。その他、「勉強会の講師を紹介して欲しい」とか「こういうキットを作りましょう」とか、今後の展開につながるたくさんの約束や示唆をいただいた。メルマガの読者も来てくれた。大学生からは就職の進路相談をされた。また、住宅用燃料電池の話を建築士の方と話したいと以前から考えていたが、高校の同級生がやってきて「おまえがこんな事をしているなんて……」と声を掛けられた。彼は1級建築士で、燃料電池の情報が欲しかったのだという偶然のおまけまで付いた。

 サーバーのダウンというきつい一発を経験した2001年だが、締めくくりは皆さんの温かい心に包まれた『エコプロダクツ2001』となった。2002年まであと10数日、ホームページを立ち上げなければ新年が来ないPEM−DREAMだ。

☆「2002年からのPEM−DREAM」
・現在、サーバーがダウン中、2002年1月から再開の予定です。

 ホームページの復旧を急いでおりますが、年内はかかる見込みです。ホームページの再開は2002年1月9日(水)を予定しています。URLはこれまでと同じです。
http://www.pem-dream.com
・事務所が移転し、新住所となります。

 PEM−DREAMの事務所が移転します。2002年1月1日(火)からの新住所は以下のとおりです。
  〒105-0004 東京都港区新橋4-28-3 新正堂ビル2階
・電話とFAX番号が変わります。

 PEM−DREAMの事務所移転に伴い、電話番号とFAX番号も変わります。2002年1月7日(月)からの新番号は以下のとおりです。
  TEL 03-5408-3251  FAX 03-5408-3252
    
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■世界のニュース〈12月〉
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<輸送>
●ボーイングの商業用燃料電池飛行機への探求
ボーイング・コマーシャル・エアプレーンズ社は、燃料電池によって従来のプロペラを電気モーターで回転させる単一エンジン飛行機の開発テストを行う。これは、将来の自社製品への燃料電池利用評価のためである。商業輸送分野において、補助動力装置をガスタービンから燃料電池に変換するための開発が同社の究極的な関心事である。

●スズキが東京モーターショーで2人乗りの燃料電池自動車を発表
スズキ自動車が、Covie2人乗り燃料電池自動車を2001年東京モーターショーで発表した。これは、ゼネラル・モータース社の燃料電池スタックを登載し、天然ガスを燃料としている。

●ダイハツがムーブFCV−K−11を発表
ダイハツ自動車は、4人乗りの小型自動車「ムーヴFCV−K−11」を発表した。高圧水素貯蔵タンクシステムを利用し、トヨタ製の30kW燃料電池スタックを後部座席下に搭載している。

●マンハッタン・サイエンティフィックスが賞を獲得、燃料電池スクーターを披露マンハッタン・サイエンティフィックス社の燃料電池自転車は、イタリアのバイクメーカー、アプリリアS.p.A社のデザインで、マンハッタン・サイエンティフィックスのNovArsユニットからなる燃料電池を使用している。この自転車がタイム誌の『2001年の発明オブ・ザ・イヤー』に選ばれた。
この自転車は、フレームの中に2リットル缶入り圧縮水素を蓄え、電動バイクの2倍の50マイルを走行可能で、最高時速は20マイルである。価格はおよそ2300ドルで、2003年の販売を見越している。
また、マンハッタン・サイエンティフィックス社は最近、自社の3kW級燃料電池を動力源とした環境に優しい電気スクーターの最初の実験を終了した。水素燃料電池は、自動車なら1回の補給で合計120マイルの走行が可能で、スクーターなら最高時速35マイルで動かすことができる。

<定置型電源>
●ロングアイランドに燃料電池を設置
ロングアイランド・パワー・オーソリティー社(LIPA)は、プラグパワー社製の燃料電池55基の設置を順調に進めている。現在、55基のうち18基が完全に取りつけられ、LIPAの配電網に電力を供給している。

●DCHテクノロジーが軍事部隊に燃料電池を供給
DCHテクノロジー社は、主要燃料電池サービス会社の一つであるローガンエナジー社が、米国陸軍エネルギー構築調査研究技術部隊(CERL)と契約したと発表した。その契約とは、サウスキャロライナ州のジャクソン陸軍部隊に設置する3kW級のDHC社製Enable燃料電池を1基供給するというものだ。
DHCはまた、テキサス州サン・アントニオにあるブルックス空軍基地に3基の3kW級DHC社製Enable燃料電池ユニットを供給する。この燃料電池は2002年10月には引き渡され、サウスウエスト調査研究所がサポート・サービスを提供する予定だ。

<燃料電池コンポーネント>
●Hパワーがサットコンに変換ユニットを発注
Hパワー社はサットコン・テクノロジー・コーポレーションに、住宅向け熱電併給ユニット用に23のパワーゲート動力変換ユニットを発注した。両社は長年にわたって業務提携をしている。

●イノーバ・システムズがフォードに部品を提供
イノーバ・システムズ社は、フォード社が近く公開する燃料電池自動車用の高出力高電圧モジュール(HEC)の開発・製造のために、戦略上重要な関係をフォード社と築いた。そのHECモジュールとは、燃料電池の高圧電力をより低い電圧に変換するものである。

●モディーンがエクセルシスとの契約に合意
モディーン・マニファクチュアリング・カンパニーは、エクセルシス社との新規契約に合意した。それは、水素を原動力とした自動車向け部品を含む両社の協力関係を拡大するというものだ。過去数年にわたってモディーン社は、熱変換部品の開発と供給のためにエクセルシス社と共同研究してきた。

<報告・市場調査>
●DOE OTTが燃料電池自動車の研究開発による排出物と雇用に関する潜在的影響を例証
米国エネルギー省(DOE)運輸技術局(OTT)の新規報告書によると、OTTプログラムの燃料電池と関連資材の研究開発(R&D)によって、2020年には炭素を430万トン減少させ、さらに2030年には1690万トンまで減少すると予想している。
この「2002年度クオリティ・メトリックス・レポート」はまた、OTTの燃料電池研究開発によって、2020年には1万5224人分の、さらに2030年には5万9244人分の新規雇用を生み出すだろうと見込んでいる。

●ABIが最新の燃料電池報告書を発表
アライド・ビジネス・インテリジェンス社は、『燃料電池産業における競争分析:燃料電池産業プレイヤーの戦略』を発表した。この研究は、燃料電池が総合的な産業として、それぞれ主要な市場を形づくりながら活発となり、2011年まで地球規模にまで発展するだろう、と分析している。

<携帯電源>
●ハイドロジェニックスが米陸軍との契約に合意
軍用自動車の予備動力展開のため、自家発電して再生する燃料電池システムの設計、製造を委任するという契約に、米国陸軍とハイドロジェニックス社が合意した。このシステムは軍事輸送において、平均的積載量のときは3kWで、最大出力のときは5kWで10時間まで利用できるよう設計される。主導権は終始、米陸軍のTACOM(自走戦車装備司令部)にある。

●MTI、ATKが軍用燃料電池を開発
メカニカル・テクノロジー社のMTIマイクロ・フュエルセルズとアライアント・テクシステムズ社のATK統一指示会社は、米陸軍の個人用戦闘兵器プログラムに基づいて、ダイレクトメタノール型小型燃料電池の軍事利用を研究するための協定合意書に調印した。

<燃料/改質器/貯蔵>
●プロトン社がコネチカット基金から150万ドル受け取る。高圧水素発生器を発表。プロトン・エナジー・システムズ社は、UNIGENR燃料電池生産組合の商業展開を加速させるため、コネチカット・クリーン・エネルギー基金(CCEF)との文書に調印して150万ドルを受け取った。この資金は、プロトン社の最新の水素発生技術を使って、エネルギー貯蔵製品の商品化と市場開発のために使われる。プロトン社は、原寸大で高圧の小型水素発生装置の設置を終え、社内での実験を開始した。このユニットは、超高純度水素ガスを1時間に20立方フィート製造する。また、そのガスはシステム内部に、コンプレッサー無しで常に出力圧2000psiに制御されている。

●ダイネテックが日本のパートナーとMOUを締結
ダイネテック・インダストリーズ社は、NKK(日本鋼管株式会社)の子会社である鋼管ドラム株式会社との了解覚書(MOU)を締結した。このMOUに関連して鋼管ドラム(株)は、およそ220万カナダドル(140万アメリカドル)のダイネテック株を購入する。また、両社は、燃料貯蔵シリンダーの日本国内での製造工場に関する契約について更なる協議をしている。

<提案要求>
●宇宙空間用車両技術BAAを米国空軍が発表
米国空軍調査研究所の宇宙車両開発局は、宇宙工学における最先端の科学技術と科学的知識を促進する提案を興味深く受け入れている。技術部門では、宇宙基地の遠隔感知技術と最新の宇宙空間装置のアイデアと技術を募集している。これらの募集締め切りは、2002年10月30日である。

●PIERプログラム
カリフォルニア州エネルギー委員会が管理している公的利益エネルギー調査(PIER)プログラムは、公的利益の研究開発と実証(RD&D)努力を積み重ねている。その努力により、競争があり、なおかつ規制された市場では十分に提供されないエネルギー科学と技術が前進するだろう。

<その他>
●ウィスラーがアニュビューを獲得
ウィスラー社が、アニュビュー社の燃料電池部門を取得する合意文書に調印した。それには、大量生産用に設計されたカーボンX燃料電池の権利も含まれている。ウィスラー社は燃料電池製造能力の向上に焦点を当てている。

●アストリス・エナジーとチェコ科学アカデミーが最新の燃料電池技術に向け提携アストリス・エナジーの欧州子会社であるアストリスs.r.c.は、チェコ共和国の科学アカデミーに加盟し、アルカリ形燃料電池技術の向上に向けて共同研究することになった。共同作業は、電極材料と触媒の付着と固定化の分野での取り組みになる。

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