鉄道 TAKAGI-1 みくすと 土曜版

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もともと鉄道車両には蛇行動と呼ばれる特有の左右動かあり、一方軌道には通称蛇行曲がりといわれる通り狂いが存在することは周知の事実であった。そのいずれが原因で、いずれが結果であるかが議論の分かれるところで、この場合、筆者は車両の蛇行動が原因であると主張したのに対し、古くからの人達は軌道の蛇行曲がり原因説をとなえて譲らなかった。もちろんこの議論は両方ともに一理があって、簡単に甲乙つけがたいが、筆者には当時の鉄道技術者に自励振動の概念が殆どないように見えたのが意外であった。

当時車両の蛇行動問題は、上記の事故は別にしても、客車や電車では旅客の乗りごこちの見地から、2軸貨車では脱線に対する安全上から最もやっかい視されているにもかかわらず、その性質や防止法について殆ど明らかにされていなかった。そこで筆者の最重点研究課題は、最初からこの蛇行動の研究に向けられたのである。


 最初にまず蛇行動現象をよく観察することが必要であるので、飛行機の場合の模型フラッタ試験から連想して、模型車両転走試験装置なるものを作った。これはレールに相当する支持輪の上に模型車両の車輪を乗せ、模型は前後方向には連結棒で拘束し、左右方向には自由に運動できるようにして、支持輪をモータで回転させて、車両を相対的に走行状態にするものである。

 この装置を使うと蛇行動の挙動が非常によくわかる。2軸車を例にとって一般的にいうと、まずごく低速のところでは、もちろん車両は安定状態にある。次第に速度を上げて行くと、ある速度で突然車体が大きく左右にふれ始める(これを車体蛇行動という)。さらに増速して行くと、この振動はしばらく持続するが、ある速度で急に消滅し、再び安定した走行状態にもどるが、もっと高速になると、今度は車体はあまり振れないで、車輪が激しく左右に振動する形のものが現れる(これを車輪蛇行動という)。この形の蛇行動はこれ以上増速しても消えない。
1/5模型の車両転走試験装置。この装置で車体が左右に振れる蛇行動の現象を解明し、その対策を講じることで安全で乗り心地の良い新幹線が開発された。
 この実験は素人目にもおもしろいので数多くの人に見せ、蛇行動とは何かを啓蒙するにこの上なく役立った。この装置ができて以来、国鉄内で蛇行動はレールが曲がっていなければ起こらないという頑固な説は影を消したのである。



- 松平精の零戦から新幹線まで

[ Posted Wed, 03 Jan 2018 15:07:40 ]

 

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