1.経緯
人間の根本に関わる能力に欠けるある人間は、普通の人間とは異なる特殊な面で、 身を立てようと思う。 三島 由紀夫 : 金閣寺 (新潮文庫, 2003) p.8. http://star1ban.blog18.fc2.com/blog-entry-1720.html >何か拭いがたい引け目をもった少年が、自分はひそかに選ばれた者だ、 >と考えるのは、当然ではあるまいか。 そのために特殊な環境に身を置く。その特殊な環境には特殊な人間が集まっており、 その中で身を立てようと、さらに特殊になろうとする。 さらに特殊になるにはどうすればよいか。自らが人間の根本に関わる能力に欠ける ことを知っている彼は、「努力」をその解決法とする。 そして、努力し、より特殊な環境へと進む。また、努力する。 しかし、特殊への思いが「人間の根本に関わる能力に欠ける」ことに起因する ことから、内実では普通でありたいという思いも存在し、「特殊でありたいという思い」 と「普通でありたいという思い」の間を行ったり来たりしている。 2.事件 そのうちに、彼は、特殊な地位(一流の目的 *)を得たいと考えるようになる。しかし、 彼は、以下の理由から、自らの二流以下の才能 * を悟り、特殊な地位をめぐる争いから 逃げ、普通でありたいと思う。 * 一流の目的と二流の才能 http://www.h5.dion.ne.jp/~wing-x/ezhtml/inw3/za_0702150.html#1 −移転→ http://takagi1.net/g-sys/inw3/1_za_0702150.html −移転→ https://takagi1.net/ezhtml/inw3/za_0702150.html#1 特殊な地位に関わる条件を、彼は形式的に満たしている。彼はそれが 形式的であることを理解している。 特殊な環境のための努力とは、禁欲である。人間ならば当然したいことを せず(あるいは行動を押さえ込む以前に、感情を抑え込み、さらに不感とし)、 特殊なことにひたすら時間をかける。それは、一言で表せば単純化である。 (例:勉強のために努力する人間は、家・学校・学習機関の行き来しかしない。) これでは、特殊な地位に関わる条件を本質的に満たしているとは言い難い。 関連: 「がさつ」で良かったのだろう http://www.h5.dion.ne.jp/~wing-x/ezhtml/inw3/za_0709080.html#5 −移転→ http://takagi1.net/g-sys/inw3/5_za_0709080.html −移転→ https://takagi1.net/ezhtml/inw3/za_0709080.html#5 http://star1ban.blog18.fc2.com/blog-entry-1089.html 道義欲は私欲なのだ (努力という道義欲は、本質を生む公欲ではない) http://star1ban.blog18.fc2.com/blog-entry-1441.html (2)自分は本当に弛まぬ努力をしてきたのか 特殊な地位をめぐる争いにおいて、競合するのは、彼と同レベルに特殊であり、 且つ人間の根本に関わる能力を有している人間である。 特殊な地位に関わる環境では、努力ではなく成果が評価される。 努力そのものではなく、複合的な結果である成果が評価される環境において、 彼が、その人間よりも自分が優れていると認識するためには、努力への絶対の 自信がなければならない。 しかし、彼は以前に努力をしなかったことがあることを思い出す。(嘘をついた ことがない人間がいないのと同じく、努力をしなかったことがある人間がいない のにも関わらず、にである。) いままで、彼を支えてきた次のような言葉が、逆説的に働くのだ。 ・努力できるということも実力の内 http://mkynet.hp.infoseek.co.jp/webcic/lib/inw2/za_0405092.html#6 −移転→ http://takagi1.net/g-sys/inw2/6_za_0405092.html −移転→ https://takagi1.net/webcic/lib/inw2/za_0405092.html#6 http://mkynet.hp.infoseek.co.jp/webcic/lib/inw2/za_0405040.html#5 −移転→ http://takagi1.net/g-sys/inw2/5_za_0405040.html −移転→ https://takagi1.net/webcic/lib/inw2/za_0405040.html#5 彼は、普通の人間の世界の中で、特殊であることで、身を立てようと思う。 この巧妙な手を、彼は社会に適合した方法として、高く評価する。 しかし、これは、矛盾をはらみ、彼が自信を失った証である。 社会は、彼を見透す。 関連: そなた、子どもの頃は、魔法使いに不可能なことなどないと思っておったろうな。... (いつの間に私はこんなに弱くなったのだろう) http://mkynet.hp.infoseek.co.jp/webcic/lib/inw2/za_0405300.html#7 −移転→ http://takagi1.net/g-sys/inw2/7_za_0405300.html −移転→ https://takagi1.net/webcic/lib/inw2/za_0405300.html#7