燃料電池ワールド (2003/11/05 16:10)

水素チャンネル Home

□燃料電池ワールド
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■Vol.117 2003/11/05発行

                   ◆燃料電池NPO法人PEM−DREAM

                        ◇http://www.pem-dream.com/

■お知らせ
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☆秋のイベント(再掲)

 11月8(土)〜9日(日)   長野県飯田市「生活と環境まつり2003」

 12月11(木)〜13日(土) エコプロダクツ2003(東京ビッグサイト)

☆荏原バラード社がホームページを開設(再掲)

 燃料電池メーカーとして世界のトップを走るバラード社が、日本における拠点として荏原製作所と合弁で設立した荏原バラード株式会社のホームページが開設されました。このホームページでは、荏原バラードの会社概要、燃料電池に関する基礎知識や家庭用・業務用の燃料電池製品の紹介をしています。ぜひ一見を。
URL: http://www.ebc.ebara.com/

☆燃料電池バスに乗りましょう!(再掲)

 東京都は8月28日から、路線バスとして燃料電池バスを走らせています。このバスには、1乗車200円を払えば誰でも乗れます。このバスに多くの人が乗ることで、燃料電池バスに対する関心が高いことを示せます。それは、都市の大気汚染を早く解決して欲しいという世論の表れともなるでしょう。首都圏に住んでおられる方も、出張で東京に来られた方も、時間をやりくりして乗ってみませんか。路線や時刻の詳しい情報は以下のホームページで知ることができます。
http://www.kotsu.metro.tokyo.jp/community/news/new/topics01-287.htm

☆『燃料電池パワー』Vol.17の内容
【今週の燃料電池関連画像】 
・東京モーターショーより/ホンダ燃料電池コンセプトカー「極」とFCVのカットモデル。「極」はガードが堅くてなかなか接近できなかった。そのため前からと後から、内部の様子を遠景から映した。計4枚。
【沼崎英夫/技術レポート】
◇全調査・第37回東京モーターショーの燃料電池技術(追補)/モーターショーの燃料電池関係のシンポジウム/低公害車の試乗会
※このメールマガジンは、より専門的な情報をPEM−DREAM会員に提供しています。サンプルは、http://www.pem-dream.com/conts.html

☆「遊んで作る燃料電池100円実験キット」と材料提供(再掲)

 日本中、どこでも誰でも、手軽に、安全に、安上がりに燃料電池の原理を実験できる「遊んで作る燃料電池100円実験キット」。このキットの材料と製作ストーリーを書いた資料をメールで無料で差し上げています。ご希望の方は、
info@pem-dream.com までお申し込み下さい。

 また、すでに資料を請求された方から、材料として使うLEDと電線が入手しにくいので対応できないかとの相談がありました。そこで、私たちが常備している中から、希望する方に提供することにしました。

 内容は、LED3個と電線20cmくらいを2本です。ご希望の方は、切手200円分(郵送料含む)を事務局までお送り下さい。折り返し郵送します。
・宛先 〒198−0032 東京都青梅市野上町4−3−4ベルドール河辺201
    燃料電池NPO法人PEM−DREAM

■燃料電池関連イベント
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☆比較住宅政策研究会
◇日 時 :2003年11月14日(金)午後7時00分〜9時00分
◇テーマ:実用化目前の家庭用燃料電池
◇報告者:坂本一郎氏(燃料電池NPO法人PEM−DREAM事務局長)
◇会 場: 新宿アイランドタワー19階 都市公団東京支社1902会議室(地図はホームページ

 http://map.yahoo.co.jp/pl?la=1&sc=3&nl=35.41.23.970&el=139.41.48.118&CE.x=333&CE.y=273  参照)新宿駅西口から徒歩10分、丸の内線西新宿駅地下道で接続、徒歩3分
◇参加費:500円(参加費は、研究会終了後の講師を含めた飲み会の費用や研究会の運営経費として利用します。)
◇要 旨:環境・エネルギー問題への関心の高まりを受けて、燃料電池の開発が急速に進められています。1kW(家庭用電力の半分を供給可)の燃料電池が100万円で来年度末までには発売される予定で、補助金が半分程度つけば、ランニングコストが通常の電力より安いために普及するものと思われます。分散型電源とコージェネシステムが住宅に設置される社会は、住宅と都市のあり方を大きく変える可能性を持っています。燃料電池の基礎知識と住宅用途の開発状況について報告いただき、議論します。
◇参加希望者は、資料及び会議室の準備の都合がありますので、あらかじめEメールでご連絡下さい。なお、ご連絡がなく出席の場合は、座席や資料等が用意できないことがあります。申し込み後に欠席等する場合も、お手数ですがメールでご連絡下さい。*これまでの研究会のテーマや配付資料等は下記の私のホームページに掲載されています。
◇事務局:海老塚良吉 E:mail ryou.ebizuka@nifty.ne.jp
個人のホームページ http://homepage1.nifty.com/ebizuka

☆日本計画研究所セミナー
第 7580 回
「NEDO
燃料電池・水素エネルギーの実用化へ
国家目標の達成に向けて克服すべき技術課題と対応
〜燃料電池自動車、定置用燃料電池、携帯用燃料電池の技術開発 〜」
http://www.jpi.co.jp/index.jsp?mf_init=7&bf_para=7580__1
◇講  師:名久井 恒司 氏
(新エネルギー・産業技術総合開発機構 燃料電池・水素技術開発部 部長)
◇日 時:11月14日(金)午前10時〜12時
◇会 場:JPIカンファレンススクエア(千代田区有楽町)
◇受講料:19,780円
◇主 催:株式会社 日本計画研究所

第 7544 回
「岩谷産業株式会社
水素ステーション技術の現状と残された課題
〜鶴見ステーション・有明ステーション・JHFCプロジェクト〜」
http://www.jpi.co.jp/index.jsp?mf_init=7&bf_para=7544__1
◇講 師:神山 直彦 氏
(岩谷産業(株) 産業ガス・溶剤本部 ガス技術部 副長) 
◇日 時:11月7日(金) 午前10時〜12時
◇会 場:JPIカンファレンススクエア(千代田区有楽町)
◇受講料:24,430円(資料代・消費税込)
◇主 催:株式会社 日本計画研究所

◇問い合わせ・申し込み:
株式会社 日本計画研究所
http://www.jpi.co.jp
TEL 03−3508−9070  
申込受付FAX 03−3556−4101
E-mail  biz-forum@jpi.co.jp
または、上記HPから申し込みができます。

☆SSKセミナー
 「 経済産業省の新エネルギー重点施策と
  RPS法施行後の事業環境の変化」
◇講師等:<1>経済産業省における新エネルギー関連政策の重点     
       荒木 由季子 氏

    (経済産業省 資源エネルギー庁 新エネルギー対策課 課長)
     <2>自然エネルギー促進 第2ステージへ
     飯田 哲也 氏

    (NPO法人 環境エネルギー政策研究所 所長[(株)日本総合研究所 主任研究員])
◇日 時:11月21日(金) 午後2時〜5時
◇会 場:明治記念館(東京都港区元赤坂2−2−23)
◇受講料:29,800円(消費税込)
◇主 催:株式会社 新社会システム総合研究所
http://www.ssk21.co.jp/seminar/S_03312.html
◇問い合わせ・申し込み:
株式会社 新社会システム総合研究所
TEL 03−5532−8850
申込受付FAX 03−5532−8851
E-mail  info@ssk21.co.jp
または、上記HPから申し込みができます。

■PEM−DREAMニュース
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☆第37回東京モーターショー・燃料電池車ハイライト(GM,トヨタ、ホンダ、ヤマハ)

 コンセプトモデルを含めると10台を超えた燃料電池車が展示されるまでになった今回の「第37回東京モーターショー」の燃料電池関係のハイライトは、GM,トヨタ自動車、本田技研工業、ヤマハ発動機の4社である。
 
◇Hydrogen by Wire→Hy−Wire

 コンピューター・ネットワークのハシリのころ、アメリカに「Wired」という先導的な雑誌があった。 wire は有線、無線を問わず通信網のシンボルである。送電網をgrid というのと同工異曲である。

 メカニカル・リンクではなく、データ伝送によってアクチュエーターを作動させて制御を行うシステムが by wire である。高度の統合制御が求められ、かつ軽量化が求められ、それらのためには高コストも受容する航空機で fly by wire が進んだ。80年代に自動車で安全性、排気対策/省燃費、快適性が求められて、端末の増大でフィジカルな車内組電線ワイヤーハーネスの肥大化が空間、重量、信頼性、生産性、コストの面で耐えられなくなり、高級車から多重通信が導入され、現在のCANのプロトコルができあっがった。GMはこの面でも先導的な役割を果たした。

 内燃機関を構成する補機はエンジンの周辺に一体化されねばならず、駆動系もエンジンと機械的に連結されるが、燃料電池はコンポーネントが分散配置しやすい。電源と駆動系はケーブルで結ばれる。行き着くところはフラットボディーである。

 GMのいう「スケートボード型シャシー」、トヨタの厚さ130mmの燃料電池スタック収納ケースに合わせた補機類の配置によって実現したFineーNの低床シャシー、安全対策上と電気自動車への適用を考慮した結果ゆきついたメルセデス・ベンツ「Aクラス」のサンドイッチ構造フロアに燃料電池ユニットを収納したダイムラークライスラーの「F−Cell」、HONDA KIWAMI、MITSUBISHI FCV のフラットフロアも軌を一にした燃料電池車の必然的な技術である。

 GMはカナダの Hydorogenics 社、General Hydrogen 社などと技術提携しているが、基本的には燃料電池を自社開発している。去る6月9日にGMの燃料電池部門の担当役員である Timothy E Vail 氏がバンクーバーで開かれた Hydrogen & FuelCells 2003で発表したところによると、97年から01年までの5年間にGMは毎年、新型の自動車用の燃料電池を開発し、その性能の向上には目を見張るものがある。即ち

  出力  容積比出力  重量比出力  セル枚数 最大出力
1997 GM/LANL 37kW  0.26kW/? 0.16kW/kg   220枚   
 41kW
1998 GM Gen4   23 0.77 0.31 10640
1999 GM Hydrogen1 Vehicle 80 1.19 0.47200 120
2000 GM Stack 2000   94 1.60 0.94
200 129 無加湿
2001 GM "Pure Cell"  102 1.75 1.25640 129  無加湿 

 しかも2000バージョン以降は、電池内に生じる水の使用で電解質の湿度条件が満たされ、無加湿を実現したとは驚異的といってよい。難しい燃料電池の水管理を不要にすることは重要な課題であるからだ。「Stack 2000」は今回展示された「Hy-Wire」と「HydroGen 3」とスズキの「MRワゴン-FCV」に搭載されている。軽自動車「MRワゴン-FCV」は「スズキMRワゴン」をベースとしたGMとの共同開発車で、スズキは燃料電池の出力や性能を明らかにしていないが、「Stack 2000」のセル枚数を少なくしてアレンジしている。

 「HydroGen3」は01年の「東京モーターショー」で展示された「オペル・ザフィーラ」ベースの燃料電池車の改良型で、展示車は7月に液体水素を搭載した燃料電池車として初めて営業車ナンバーを取得し、GMとフェデラル・エクスプレスが共同でフリートテストを行っている。首都圏での配送業務に使われている。

 動力システムは全体で、15個の主要コンポーネント(75×70×55cm)で構成、電気駆動システム、燃料電池スタック、エアコンプレッサー、その他のユニットで構成され、「PDU(Propulsion Dress-up)モジュール」と呼ばれるコンパクトな完成ユニットとして従来のエンジン同様、組み立てラインでの組み付けができる量産製造技術を前提に開発されている。ユニットの重量は約300kgで、2次電池は廃止され、約100kg減となった。0→100km/h加速は約16秒、最高速度は160km/h。液体水素はマイナス253℃で保持され、4.6kgで航続距離は約400km、高圧水素は70Mpaで保持されて、同容量で約270kmという。GMは液体水素、高圧水素、ハイブリッド(2次電池併用)、ピュア(非ハイブリッド)構成の選択は、重量、コスト、パッケージング、運転サイクル、動力効率のどれを重視するかにより決定されるものと考えており、そのために柔軟性のあるシステムを開発しているという。

 「Stack 2000」のサイズは472×251×496mmで、圧力1.5〜2.7ミリバールで作動し、比出力は1.60kW/?、0.94kW/kg、目標値は2.0kW/?、2.0kW/kgである。

 「Hy-Wire」は02年1月にデトロイトで開催された北米国際自動車ショーとジュネーブ・モーターショーに出品されたコンセプトカー「オートノミー」に初搭載された将来技術を継承している。その後、パリ自動車ショーで「Hy-Wire」として展示されて注目された。今年6月のバンクーバーの「Hydrogen & Fuel Cells 2003」には展示の予定が取り止めとなり、今回日本で初公開された。

 GMは「Hy-Wire」を「グローバル開発の成果」と呼んでいる。即ち、米国GMのデザイナーとエンジニアは、シャシー、ボディーデザインおよび電気システムの統合化を担当し、ドイツのマインツ・カステルにあるGMの研究所のエンジニアは燃料電池駆動システムの統合化を担当した。このシステムは「ザフィーラ」をベースにした「HydroGen 3」コンセプトに使用されたものと同様である。イタリアのカロツェリアのスティーレ・ベルトーネは米国のデザイナーと緊密に連携し、ボディーの製作を担当した。スウェーデンに本社のあるSKFグループは、オランダとイタリアで bywire 技術の開発を行った。

 燃料電池と by wire 技術を組み合わせることで、新しいパッケージを創出した。「Hy Wire」のシャシー・アーキテクチャーにより、デザインの自由度が大きくなり、さまざまなボディースタイルを数多く創り出すことができるようになった。展示されたモデルでは、フロントからリアまでフラットな「スケートボードシャシー」を見せるために、フロント及びリアのパネルをシースルーにしたが、実際、エンジンフードまで取り除くことによってドライバーの運転視界を路面にまで広げることができる。ドライバーや乗員のレッグルームは非常に広く、開放感のみならず室内空間の利用度は高くなる。オール・アルミ製ボディーとファイバーグラス製ボディーの機械的結合は10か所で、電気系統の接続は、単一のドッキングポートで行われる。

 by wire 技術により、ドライバー・コントロール・ユニットは航空機パイロットのように一対のハンドグリップを握り、ステアリング、アクセル、制動を手動で行える。ユニットは車幅いっぱいに伸びる水平なレール上にあり、左右に移動させることができる。

 主要諸元は次のとおり

 車両:前輪駆動(前軸中央に駆動モーター1台結合)・ラグジュアリーセダン
 定員:5名

 燃料貯蔵システム:炭素繊維複合材料製3シリンダー高圧タンクをスケートボードシャシー中央部に搭載、長さ1161mm、直径241mm、総容量2kg(充填圧35Mpa)、タンク総重量75kg。

 燃料電池スタック:200単セル直列125ー200V、472×251×496mm

 モーター:パワーエレクトロトニクス、遊星歯車一体化3相非同期式モーター、最大回転数:12000/分、ギヤ比:8.67:1、作動電圧:250ー380V,定格出力:60kW,最大トルク:215Nm、総重量:92kg
 車体寸法・重量:全長5m、ホイールベース:3114mm、1900kg

◇70Mpaを実現したトヨタ Fine-N

 トヨタが今回展示した燃料電池車コンセプトモデル「Fine-N」の燃料電池システムは、70Mpaの高圧タンクを搭載した。70Mpaタンクの搭載を発表したのは世界初であろう。他社はコンセプトモデルも試作車も35Mpaである。

 車載用高圧タンクのメーカーであるカナダのダイナテック社はトヨタ、日産、フォード、プジョーなどとマルチクライアント契約を結び、04年初めまでに70Mpaのタンクの技術を提供するプロジェクトを進めている.

 乗用車系は特にデザイン上の制約を受ける上に、安全対策、居住性、快適性の要求、補機類など装備品の増加、パワー系、制御系の配線の増加で空き空間の切り分けはきわめてタイトで、積載量増加の要求の強い燃料タンクの場所取りに苦慮している。常温・常圧で流動性のある石油燃料では複雑形状のタンクを容易にデザイン、成形できるが高圧タンクでは、シリンダー形状の制約を受ける。サイズの異なるタンクを併設して空き空間の有効利用を図らざるを得ない。Fine-N ではリヤ・アクスル前方で一部が後輪に挟まれた空間に大小3本のシリンダーを搭載した。70Mpa技術は水素積載量を増やし、デザインの自由度を確保する上で望まれる技術である。安全上と供給インフラの両面から実用上70Mpaが上限とされる。

 同車も by wire 技術を採用しているのは当然であるが、個別制御のできるイン・ホイール・モーター4WDを採用している。GMはトランスアクスル方式である。GMの燃料電池技術、Hy-Wire 技術の供与を受けて共同開発中のスズキのパッケージング・コンセプトモデル「モバイルテラス」もインホイールモーター4WDである。HONDA KIWAMIも4輪協調制御4WDである。

 展示車はラジエーターと燃料電池システムの結合はしていなかったが、システム全体の放熱用とみられる。出力の表示はなかったが、リース販売されているFCHVと同等のスタックといわれ、90kWとみられる。新開発の HONDA FC Stack の出力はほぼ同等の86kWであるが、そのラジエーターと比べて放熱面積は大幅に小さかった。反応温度、熱効率、排熱量の違いによるものかどうか不明である。
 
◇ HONDA FC Stack

 会期中に住友金属工業が開発したステンレス鋼板製のプレス製品がセパレーターに使われていることが報道された(10月29日付日経)。住金が開発した導電性金属析出物をステンレスに混ぜてプレス加工しているという。グラファイトやカーボン製に比べて薄厚で成形加工が容易で量産性があり、耐蝕性、導電性が高く、金メッキ処理も不要で材料コストも低減し、安定した熱伝導で氷点下でも短時間で始動可能という。環境温度−20℃〜+95℃での発電を可能にし、耐久性も大幅に向上した電解質は日立製作所が開発した炭化水素系電解質を使っているようである。

 今回の部品展示では東洋ラジエーターがメイン・ラジエーターを、ケイヒンがHonda FCX の水素系、エア系、加温系の熱交換器を製作していることを明らかにした。燃料電池の漏電を引き起こす冷却水へのアルミ・イオンの溶出の防止に東洋ラジエーターは「LIRAD」(Low Ion Radiator)という商標の塗装処理を行っている。  

◇DMFCの車社会への適用

 モバイル(携帯IT機器)市場向けにDMFC(ダイレクト・メタノール燃料電池)の実用化が迫り、10月に開かれた「CEATEC」と「日経ナノテクフェア」ではパソコン組み込みの試作品が数社から展示されたが、ついに車用が登場した。

 90年代初めに日本自動車研究所(JARI)がDMFCを研究していたが、自動車用燃料電池の大勢がPEM型に向かったので中止して、自動車産業の公的試験・研究機関として燃料電池の試験・評価業務に特化している。 

 燃料電池を動力とする二輪バイクは6月にバンクーバーで開かれた「Hydrogen &Fuel Cells」でも企業や大学のベンチャーから展示やポスター発表が数件あったが、いずれも水素ベースのPEM型で、途上国、特に中国、東南アジア向けを主眼に開発中のものであった。代表的なものは Palcan Fuel Cells 社で、水素吸蔵合金に水素を貯蔵したもので、中国の大学と水素吸蔵合金、イタリア、台湾のスクーター・メーカーと提携して、自転車から自動車に移行する過渡期にスクーターの潜在需要が顕在化して大衆市場が形成されると予測、環境・資源の要因から電動スクーターの商機を狙っている。

 ヤマハの開発は、電動スクーター「Passol」で培った都市型のパーソナル交通に適したエレクトリック・コミューターの機能拡大にある。非充電・長距離化と電装装備品の増加に対応できる電力の供給である。

 高圧タンクや水素吸蔵合金による水素燃料方式やメタノール改質方式は貯臓器や改質器の重量・容積が二輪車には制約が大きいので、現状では変換効率が水素燃料方式に劣るが出力1kW以下の二輪車では、これらとセルスタックの冷却系が不要で小型機に応用した場合、水素型のシステムよりもコンパクト設計ができる、屋外露出の二輪車でも凍結しにくいという搭載性と燃料補給の簡易さからDMFCが選ばれた。今回出展された「FC06」は500WクラスのDMFCを原付1種サイズに具体化した。余剰電力でGPSナビゲーションやカメラによる後方確認機能も備えた。300WのACアウトレットも備え、アウトドアや災害時の電源供給にも対応している。

 セルスタックからは、反応により生じたCO2の気泡を含む水溶液が熱交換器を通って二次タンクに還流され、タンク内で気液分離される。メタノール濃度センサーとコントローラーの指示により、常に最適濃度のメタノールを供給する。水蒸気を含む排気は、熱交換器により水分を凝縮・回収した後、排出する。

 メリットはバッテリー方式よりも十分な航続距離が確保できる、充填時間が短い(専用容器から即時注入)、水素に比べて常温・常圧の液体燃料なので取り扱いが容易、燃料入手が容易(リサイクル可能な密閉容器でコンビに、キヨスク等での流通を想定)、排気対策が不要である。
(沼崎英夫)

■WEB LINK NEWS
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03/10/28 金メッキ使わない燃料電池部品を開発=ホンダが採用―住友金属(時事通信)
*住友金属工業は28日、燃料電池の最重要部品の1つであるセパレータ用の高性能ステンレス薄鋼板を、世界で初めて開発したと発表した。ホンダが最近発表した次世代型の燃料電池に採用された。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031028-00000582-jij-biz

03/10/30 DJ-カナダのバラード・パワー、7−9月期は赤字縮小(ダウ・ジョーンズ)

 純損益は3110万ドルの赤字(前年同期は4020万ドルの赤字)、1株損益は26セントの赤字(同38セントの赤字)となった。リストラ費は、7−9月期は1株当り2セント、前年同期は1株当り3セントにのぼった。調査会社トムソン・ファースト・コールが集計したアナリスト平均予想の1株損益は29セントの赤字。売り上げは2820万ドル(同2800万ドル)だった。製品収入は69%増となり、技術サービスおよびその他収入の減少分を相殺した。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031030-00000015-dwj-biz

03/10/30 NEC、パソコン事業は営業利益率3%が目標(時事通信)

 金杉社長は、シェアは国内の個人向け出荷台数ベースで「30%でいい」とし、水冷式や燃料電池搭載型など付加価値の高いパソコン事業を進める考えを示した。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031030-00000184-jij-biz

03/11/04 IEA、2030年までに石油消費が50%以上増加と予想=新聞(ロイター)

 インターナショナル・ヘラルド・トリビューン(IHT)紙が、IEAが4日1400GMT(日本時間午後11時)に発表する世界エネルギー投資見通しの内容として伝えた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031104-00000485-reu-bus_all

■海外ニュース(10月ー5)
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<定置用電源>
●プラグ・パワーはATP資金を受領した(2003/09/15)

 プラグ・パワー社は、定置用燃料電池の研究開発のために米国工業技術院(NIST)の先端技術プログラム(ATP)から390万米ドルを授与された。プラグ・パワー社は2年間の間、経費分担計画でNISTから1年当たりの純資金をおよそ180万米ドル受け取ることを期待している。
http://www.plugpower.com/is/

<ポータブル/バックアップ電源>
●NECは最近のプロトタイプを改善した

 NECは、2カ月前に発表したノートパソコンのための燃料電池プロトタイプの容量を削減した。最新のプロトタイプは、1平方センチメートル当たり50mWの出力を達成した。それはNECが6月に示したプロトタイプより20%アップしている。120立方インチの燃料タンク(濃度10%のメタノール)を使って、セルはノートパソコンを5時間動作させるのに十分な電力を提供できる。
http://story.news.yahoo.com/news?tmpl=story&u=/pcworld/20030917/tc_pcworld/112533

<燃料電池コンポーネント>
●サットコンは石油化学プラントに燃料電池の電力を供給する(2003/09/18)

 サットコン・テクノロジー社は、石油化学プラントに適用する75kW燃料電池発電ユニットのための2つの電力調整装置(PCS)の1番目を納入した。サットコン社のPCSユニットは、燃料電池からの電力を使用可能な交流電力に変換する。2つのシステムはこの秋にテストされる。
http://www.satcon.com/news/091803.html

<報告・市場調査>
●産業分析(2003/09/03)

 アライド・ビジネス・インテリジェンス社の最新レポート『燃料電池産業の競争力分析:主要なプレーヤー、グローバル市場と技術のアセスメント』は、重要な燃料電池プレーヤーの現在の努力を詳述して燃料電池技術と市場の概観を提供している。この研究は、ドルとユニット出荷の両方の潜在的総額で2013年までの市場の成長を予測している。
http://www.abiresearch.com/reports/FCIP.html

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