燃料電池ワールド (2002/10/02 17:00)

水素チャンネル Home

□燃料電池ワールド
■□□□□□□□□□
■Vol.065 2002/10/02発行

                   ◆燃料電池NPO法人PEM−DREAM

                        ◇http://www.pem-dream.com/

■お知らせ
□□□

◇10月の燃料電池市民講座――鶴見の水素ステーション見学

 燃料電池自動車のインフラとなる水素ステーションは、大阪と高松、関東地方では鶴見に完成しています。さらに、今年首都圏5カ所で建設が進み、燃料電池自動車が私たちの日常の世界で走り出す条件が作られています。燃料電池自動車については多くの情報が伝えられていますが、水素ステーションについてはまだまだ少ないのが実情です。そこで、寒くならないうちに水素ステーションの現場を見学して、設備や機能などについて知ってみたいと思います。建設された岩谷産業株式会社様が案内して下さいます。
○日 時 10月19日(土)午後2時ごろ集合
○場 所 JR鶴見駅(詳しい時間と地図をお送りします)
○参加費 会員は無料。非会員は2000円。
○申し込み方法 メールまたはFAXにて、「10月の燃料電池市民講座」と明記の上、氏名、連絡先、電話番号をご記入の上、お送り下さい。
  メール info@pem-dream.com  FAX 03-5408-3252

◇「遊んで作る燃料電池100円実験キット」と材料提供(再掲)

 日本中、どこでも誰でも、手軽に、安全に、安上がりに燃料電池の原理を実験できる「遊んで作る燃料電池100円実験キット」。このキットの材料と製作ストーリーを書いた資料をメールで無料で差し上げています。ご希望の方は、
info@pem-dream.com までお申し込み下さい。

 また、すでに資料を請求された方から、材料として使うLEDと電線が入手しにくいので対応できないかとの相談がありました。そこで、私たちが常備している中から、希望する方に提供することにしました。

 内容は、LED3個と電線20cmくらいを2本です。ご希望の方は、切手200円分(郵送料含む)を事務局までお送り下さい。折り返し郵送します。
・宛先 〒105−0004 東京都港区新橋4ー28ー3 新正堂ビル2階
    燃料電池NPO法人PEM−DREAM

◇燃料電池バスのナンバー取得についてのプレスリリース

 燃料電池バスをめぐる国土交通省とトヨタ、日野自動車のプレスリリースを掲載します。
------------------------------------------------------------------------平成14年9月27日
国土交通省
------------------------------------------------------------------------
○燃料電池バスを利用した実証試験が開始されます
 −燃料電池バスに初の国土交通大臣認定−

 国土交通省は、9月27日、トヨタ自動車(株)及び日野自動車(株)から連名で申請のあった水素を燃料とする燃料電池バス(4台)について、道路運送車両の保安基準第56条第4項に基づく試験自動車として国土交通大臣認定を行い、これにより燃料電池バスの公道走行が可能となりました。燃料電池バスの認定及び公道走行は国内で初めてのことです。

 国土交通省は、認定を行った燃料電池バスについて、トヨタ自動車(株)及び日野自動車(株)、東京都、関係省庁等と連携しつつ公道走行試験を実施し、一般へ燃料電池バスの有益性等の周知に努めることとしています。

 また、燃料電池バスの早期実用化を図るため、公道走行により取得した燃料電池バスの燃料消費率、耐久性等の各種デ−タを利用し、独立行政法人交通安全環境研究所を中核的研究機関とした「次世代低公害車開発促進プロジェクト※」において、燃料電池バスの安全・環境に係わる技術基準等の整備を図ることとしています。

 なお、水素を燃料とする燃料電池バスは、窒素酸化物や二酸化炭素などの排出ガスが全く排出されないという特徴を持つため、次世代の公共交通を担うクリ−ンな低公害バスとして有力視されており、昨年12月に策定された環境自動車開発・普及総合戦略会議の報告書や本年5月に策定された副大臣会議燃料電池プロジェクトチ−ムの報告書においても、燃料電池バスの実用化促進の必要性について述べられています。

※次世代低公害車開発促進プロジェクト

 大型ディ−ゼル車に代替可能な次世代低公害車の開発促進を目的とした事業。独立行政法人交通安全環境研究所を中核的研究機関として、平成14年度から3カ年で実施することとしており、DME自動車、次世代ハイブリッド自動車、ス−パ−クリ−ンディ−ゼル車、CNG自動車及び燃料電池バスが開発促進の対象車種となっている。

<別紙> 水素を燃料とする燃料電池自動車の概要
<主要諸元>
製作者  トヨタ自動車株式会社
     日野自動車株式会社
用途     乗合
乗車定員   60人
長さ     10.515メ−トル
幅      2.490 メ−トル
高さ     3.360 メ−トル
燃料     高圧水素ガス
最高出力   80キロワット×2個(109馬力×2)
最高速度   80km/h
大臣認定日 平成14年9月27日

* 試験自動車の大臣認定制度について

 燃料電池自動車等の安全上及び公害防止上の基準が定められていない試験的に製作された自動車は、通常、公道を走行することはできません。このような試験自動車については、基準の策定・改善を目的として公道走行による試験ができるよう、必要な条件を付し試験自動車の大臣認定を行っています。これまでにも、液化天然ガス(LNG)自動車、メタノ−ルを燃料とする燃料電池自動車等が認定を受けました。

 なお、大臣認定を受けた自動車には一般の自動車と同様にナンバ−プレ−トが付けられます。
------------------------------------------------------------------------2002年9月27日
日野自動車株式会社
トヨタ自動車株式会社
------------------------------------------------------------------------
○トヨタと日野、燃料電池ハイブリッド大型バス「FCHV-BUS2」の 国土交通大臣認定を取得
 

 トヨタ自動車(株)(以下トヨタ)と日野自動車(株)(以下日野)は、このほど、共同で開発した高圧水素ガスを燃料とする燃料電池ハイブリッドシステム搭載のノンステップ大型路線バス「FCHV-BUS2」に対する国土交通省の大臣認定を?燃料電池バスとしては初めて取得した。

 今後、近々にナンバープレートの交付を受け、公道走行試験を開始する予定である。

 トヨタは、燃料電池ハイブリッド車の開発を積極的に進めており、乗用車については、本年末を目処に、日本および米国での限定販売を予定している。

 一方、公共交通機関としてのバスについては、両社ともに、かねてより、大都市の大気環境や自動車騒音の改善、人流・物流の効率化など、道路交通環境の改善に積極的に取り組んでおり、その一環として、昨年6月には日野製ノンステップ大型路線バスをベースとした燃料電池ハイブリッド大型バス「FCHV-BUS1」を開発している。そして、今回これを改良した60人乗り仕様をはじめとする合計4台の「FCHV-BUS2」が公道走行に必要な大臣認定を取得したものである。

 「FCHV-BUS2」は、高圧水素タンクをルーフに装備し、トヨタが開発した高性能燃料電池「トヨタFCスタック」を「FCHV-BUS1」の1基から2基に増設することによりスタックの出力を90kW×2に向上させるとともに、モーターは最高出力80kW×2、最大トルク260N・m×2とし、高性能を追求している。

 また、燃料電池に加え2次電池を搭載し、制動時のエネルギー回生を可能とするとともに、車両の運転状況に応じモーターへの電力供給を精密に制御するハイブリッドシステムを踏襲し、高効率な運転を可能としている。

 今後の公道走行試験は、国等の推進する関連プロジェクトと連携して実施する。

 両社では、独自の燃料電池の優れた性能を実証するとともに、路線バスとしての要件を想定した各種走行データを収集し、実用化に向け開発をさらに進展させる計画である。
 * FCHV : Fuel Cell Hybrid Vehicle

【FCHV−BUS2 主要諸元】
車 両  ベース車両  ブルーリボンシティ
 (日野ノンステップ大型路線バス)
 HU2PMEE
 全 長/全 幅/全 高  10,515/2,490/3,360mm
 最高速度       80km/h
 乗車定員       60人仕様
燃料電池
スタック  種 類     固体高分子形
 出 力         90kW×2
モーター  種 類   交流同期電動機
 最高出力       80kW×2
 最大トルク      260N・m×2
燃 料  種 類      純水素
 貯蔵方式       高圧水素タンク
 最高充填圧力     35MPa(350気圧)
2次電池  形 式    ニッケル水素電池

■PEM−DREAMニュース
□□□

◇9月の燃料電池市民講座「燃料電池と水素エネルギー」報告
 「燃料電池の経済性が実用化を推進する」とゲストの山本寛氏は語った。山本氏は、ヤマハ発動機(株)のエンジニアとして、4ストロークエンジンのV−Maxなどを開発された後、品質管理の仕事に携わって来られた。現在は定年退職され、「有り余る」時間を使って燃料電池や水素、常温核融合についてのウオッチングを続けている。

 鮎の釣り人でもある山本氏は、釣り仲間で言われている「Fish Story」ーー小さな魚を釣っても大きな魚の話になってしまうことーーがあるかもしれないとおっしゃりながら、燃料電池がどういう理由で開発が進み、実用化が進んできているか、また、究極のエネルギーとして水素をどのようにして作るか、特に再生可能エネルギーからどうやって水素を作ることができるのか、さらに原発との関連や常温核融合の進み具合など、盛りだくさんの講演となった。たっぷり2時間はかかったのである。この講演の詳細については近日中に、使われたデータとともに冊子として頒布する予定なので、ぜひお読みいただきたい。

 燃料電池および水素に関する技術開発はめまぐるしく進んでいる。さまざまな情報が飛び交い、陳腐化も早い。専門的な知識の少ない私たちにとっては、「一体どうなっているの?」という状態にある。断片的な報道が多いからである。日本経済新聞の9月30日1面トップに、経済産業省と大阪ガスの新型燃料電池の記事が載った。後日、市民講座に参加された方が見えられ、「すごい開発なのに、大阪ガスの株価は2円しか上がらなかった。燃料電池が株価を押し上げた例はまだほとんどないですね」と話された。この記事は、現在、自動車や家庭用として開発されている燃料電池の技術がどんどん変化するだろうということを示している。効率やコストをめぐり、激しい競争が展開され、新しいものが投入されてくるということだ。まるでパソコンや携帯電話、家電製品のように。

 巷間話題となる燃料電池自動車の燃料について、山本氏は圧縮水素になると考えている。また、物理学者、数学者で、「2001年宇宙の旅」の原作者でもあるアーサー
・C・クラーク博士が、「ある国が2003年に、5年以内にエンジン廃止命令を出す」と予告したことにたびたび言及した。これは朝日新聞の2001年元旦に載った記事である。未来予測は、ある面では現実の中から新しい目標を探すことでもある。そのためには、現状からなくすものを明確にしなければならない。燃料電池はとりあえず化石燃料を燃やす動力源をなくそうとしている。燃料電池によって、再生可能エネルギーの利用価値が高まり、太陽光発電+燃料電池によるエネルギーの自給が可能になる。

 だが、山本氏は、品質管理的に見た日本経済の問題点として、日本経済不振の真の原因が把握されていないこと、新しい目標が設定されていないことを指摘し、水素エネルギー社会を構築するには痛みが伴い、その痛みを先送りすれば、韓国、台湾、中国の後塵を拝することになる、と警告した。

 参加者には、山本氏の1冊目の著作「さようならエンジン 燃料電池こんにちは」を読んで初めて燃料電池に関心を持ったという方も何人かおられた。講演後の懇談会では、エンジンとモーターの違いや技術的可能性について質疑が交わされたが、山本氏ご自身がエンジン開発に携わった経験からの話や、参加者に詳しい方もおられて、電気モーターで走る燃料電池自動車は従来の自動車に比べて遜色なく、相当なものだろうという結論に落ち着いた。F1への参戦も当然ありうるという予測も飛び出し、早く乗ってみたいという期待が会場を包んだのである。

■イベント紹介
□□□

☆燃料電池発電を想定したエコエネルーギーステーションのプレゼン

 コンビニエンスストアなどのチェーンストア建築デザイン、アイデンティティー企画開発を行っている(株)ケノスは、「IPEC21〜健康な環境II インテリアからの発信」(インテリアのプロと企業をつなぐ国際展示会とセミナー)で、建築デザインから考えた燃料電池ステーションの展示を行う。関心のある方は、小林清泰さんをお訪ねください。
○会 期 10月9日(水)〜11日(金)
○会 場 東京ビッグサイト ゾーンF−437ブース
○主 催 JIPA日本インテリアプランナー協会協議会
○入場料 一般1000円

 尚、御希望の方には招待券をお送りいたしますので、下記メールアドレスまで送付先と必要枚数を御記入の上お申し込み下さい。日にちが迫っておりますので、早めにお申し込み下さい。
eメール:kenos@kenos.co.jp

☆PEM−DREAMが参加するイベント(再掲)
・10月19日(土)20日(日)
 環境博覧会すぎなみ2002
  会場:高井戸地域区民センターおよびセンター前広場
  参加自由です。もうすぐ、杉並区のHPに案内が載ります。

・10月24日(木)
 都市基盤整備公団総合研究所技術センター特別公開
  場所:東京都八王子市石川町2683−1
  参加自由です。詳しくは下記のHPで。
  http://www.udc.go.jp/research/

──────────────────────────────────────

○燃料電池市民講座 http://www.pem-dream.com/citizen.html

○EVENT INFORMATION http://www.pem-dream.com/event.html

○燃料電池マイ・レポート http://pem-dream.com/report.html

──────────────────────────────────────

■世界のニュース〈9月)
□□□

<輸送>
●日本政府がFCVの税制優遇措置

 日本の国土交通省は2003年度より、燃料電池自動車(FCV)所有者の2種類の税金を免除する計画を発表した。今回の税免除は、今年末にも市場に参入が見込まれている燃料電池自動車の購入促進を狙ったものである。自動車税の免除は自動車購入資金の5%と同等であり、1500〜2000CCのガソリンエンジン車を対象としている3万9500円(約300ドル)の自動車税と同じであると国交省は提案している。
注)原文を訳せば上記の通りとなるが、正式の発表は以下の通りである。

 国土交通省の発表では、「自動車税のグリーン化及び自動車取得税軽減措置の延長等 」の施策に燃料電池自動車等が追加、拡充された。その内容は、自動車税、自動車取得税は、実証実験に用いられる燃料電池自動車は非課税とすることである。

<定置型電源>
●プラグパワーが100万kWhを発電しているFCシステム9基を海軍に納入

 プラグパワー社は、カリフォルニア州のチャイナ・レイクにある海軍軍備ステーション内の海軍再生利用可能エネルギー部門と契約を結んでいるジョンソン・コントロールズ社に、9基の「 GenSys(TM)5C」システム――5kW級、熱併給発電(CHP)グリッド・パラレル、天然ガス燃料、陽子交換膜(PEM)型の燃料電池システム――の販売と納入を終えたと発表した。

 この9基のシステムは、カリフォルニア州内の海軍の施設3か所に設置されると見られる。プラグパワー社の5kW、グリッド・パラレル、天然ガス駆動燃料電池システムは、設置した場所で今年、100万kWh以上の電力を発電している。このFCシステムは、アメリカの7州と3カ国で20以上の顧客に対し設置済みであり、既に作動中である上、更に13システムが今年終わりには設置予定である。

●ハイドロジェニックスがバックアップシステムを設置

 ハイドロジェニックス社は、ネクステル・コミュニケーションズが北カリフォルニア州で提供する実験場で HyUPS(TM)という再生式バックアップ燃料電池発電機の導入に成功したと発表した。次の実験段階では、さまざまな操作状況で25kW HyUPS(TM)システムをテストするため、電源が故障した状況をシュミレーションする予定である。実験は夏の終わり頃まで続けられる。

<燃料電池コンポーネント>
●ハイドロジェニックスとダウが合意

 ハイドロジェニックス社とダウ・コーニング社は、両社が共同開発したPEM型燃料電池スタックと電気分解装置と陽子交換膜(MEA)をシーリングする革新的製造工程を共同で商品化するための契約を交わした。この燃料電池の「Seal-in-Place(TM)」(FCSIP)という技術は強固でコスト面でも優れていて、ダウ・コーニング社が独自に開発したシリコン材料を非密封で組み立てられたスタックに注入する自動密閉プロセスのことである。

<報告・市場調査>
●フュエル・セル特許報告

 メトリック・グループが、『テクニカル・インテリジェント・プロフィール(TIP):燃料電池』という新しい報告書を発表した。このTIPは、燃料電池分野での特許活動に関する大まかな概観と、同様に選ばれた業界大手や大学の特許についての全般的な競争の情報が載っている。

<その他>
●パルチラ、トプソーが燃料電池開発に参入

 ワルチラ社とホルダー・トプソー社は、分散型電源と海上でのアプリケーション向けに出力200kW以上の新しい燃料電池製品を共同で開発・販売する合意に達した。両社は、パルチラ社の分散型電源プラント製品と海洋工学での経験と、ホルダー・トプソー社の石油産業での触媒開発と固体電解質型燃料電池(SOFC)技術開発における経験とを組み合わせて開発にあたる予定だ。

──────────────────────────────────────

■燃料電池ワールド
 □毎週水曜日発行
 □編集・発行:燃料電池NPO法人PEM−DREAM 

 □解除:「まぐまぐ」と「melma!」から直接ご購読の方が解除される場合は、「まぐまぐ」か「melma!」から直接解除の手続きを行ってください。PEM−DREAMでの代行はできません。
 まぐまぐ http://www.kaijo.com/  
 melma! http://www.melma.com/taikai/
 □連絡先: info@pem-dream.com
 □マガジンID:0000065319(まぐまぐ) m00039824(melma!)


**H2**

<前の号 次の号>

TAKAGI-1