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知的ネット空間「アテネの学堂」 5つのリスト

2010年 8月31日

この文章では、知的ネット空間「アテネの学堂」を形成する上で重要な事項について、要素をリスト表示(箇条書き)にすることによって、「アテネの学堂」の形成という茫漠な課題を簡単化します。


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リスト一覧 

知的ネット社会を形成するための三思想
  • ネットの使い道のひとつは、問題を解決することである。
  • 言論・表現の自由を尊重する。
  • 知的ネット社会は多様性を強みにもち、リアル社会に多様な思想を提供する。
「アテネの学堂」の第一機能
  • 1. 知的生産をする
  • 1-a. 知的生産行為を高く評価する
  • 2. 高度化する
  • 2-a. 正しく議論する
  • 2-b. 結合点
「アテネの学堂」三省
  • 褒めたか
  • 書いたか
  • 公開したか
一般の人々にもたれることを希望するイメージ
  • 確かな存在
  • 容易な観測
  • 容易な参加
整備項目
  • 共有される短い表現(キャッチコピー・スローガン)
  • 知的技術知識
  • 広報セット
  • 観測方法説明
  • 参加方法説明
  • 補助システム

「アテネの学堂」の内外要素の関係図 

クリックで拡大

赤囲み(内側、だいだい色・黄色・赤斜線)が「アテネの学堂」の機能を表わします。

矢印は、問題を解決する過程の流れの方向を示します。赤矢印→が「アテネの学堂」における過程青矢印→がリアル社会における過程を表わします。

詳細は本文を読んでください。

ただし、左上の大型緑色矢印「図書館、……」に関しては、本文において言及していないので、ここに書きます。図書館と「アテネの学堂」は親和性が高い、と私は考えます。なぜならば、ネットの強みに「多様性」がある(後述)のに対して、筑波大学が2007年に今後の「大学像」の在り方のなかで「図書館の使命を知の多様性を支援するサービス機関であると位置づけ」たからです。

基本事項 

定義  

「アテネの学堂」の定義は、「主にインターネットを介して知的で生産的な行為をする人々と、そのような行為を支援する仕組みなどの集合体」である、と私は考えます。

目的  

私が考えるに、「アテネの学堂」の目的は、社会が問題を適切に解決する仕組みの一端を担うことです。

「アテネの学堂」の成立によって、社会が問題を適切に解決する仕組みが改良されます。

余談ですが、そのような改良行為がもつ性質は「善」である、と私は考えます。

理念 

 知的ネット社会を形成するための三思想 

(1)に示す「問題解決」が「アテネの学堂」の機能です。(2)は前提、(3)は役割を示します。

機能 : ネットの使い道のひとつは、問題を解決することである  

「アテネの学堂」の機能は、問題を解決することである、と私は考えます (無論、その他の事物の活動を伴った上で、この機能は発現します)。

これは、ネット上の検索エンジン(代表的にはGoogle)で検索し、その結果から解答を得て問題を解決するという意味ではありません。

問題が多数のネットユーザーに共有され、それに対して多数の知識が組み合わされた多数の解決策が提案され、またネットユーザの目による選別も行われ、一定水準以上の解決策が顕示される。

そのような「問題を解決する」という使い道です。

解答を導き出し問題を解決する過程を、私は以下の6つの過程に分割しました

暗黙知・情報→知識(形式知)→論→戦略→戦術→行動

第一機能 : 知的生産と高度化   

この6つの過程のうち、「アテネの学堂」は、

暗黙知・情報→知識(形式知)→論
の過程について知的活動ができる能力をまず持つべき(第一機能)だと考えました。

そして、この過程における機能群を、以下のように分類しました

 「アテネの学堂」の第一機能 

詳細に書くと、以下になります。

2-bの「結合点」に関しては、「強みと役割」において後述します。

第二機能 : リアル社会の助力・目付   

「アテネの学堂」は、リアル社会における問題解決の

知識(形式知)→論→戦略→戦術→行動
に対して、常時の助力・目付機能をもちえます。なお、理性に基づく機能発現を担保する仕組みが必要です。

前提となる思想 : 言論・表現の自由を尊重する  

前提となる思想は、歴史的な位置づけ、即ち 系統樹における位置を決定し、他の事柄との関係を示します。

「アテネの学堂」における前提思想として、日本国憲法第21条(1946年公布)と「図書館の自由に関する宣言」(日本図書館協会 1979年)の2つの文章を挙げることを、私は提案します

2文章から特に取り上げたい主旨を抜き出すと、以下になります。

日本国憲法第21条
1. 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

(上記条文の説明および関わる行動を記載した文章として)

図書館の自由に関する宣言

1. 日本国憲法は主権が国民に存するとの原理にもとづいており、この国民主権の原理を維持し発展させるためには、国民ひとりひとりが思想・意見を自由に発表し交換すること、すなわち表現の自由の保障が不可欠である

 知る自由は、表現の送り手に対して保障されるべき自由と表裏一体をなすものであり、知る自由の保障があってこそ表現の自由は成立する。

 知る自由は、また、思想・良心の自由をはじめとして、いっさいの基本的人権と密接にかかわり、それらの保障を実現するための基礎的な要件である。それは、憲法が示すように、国民の不断の努力によって保持されなければならない。

強みと役割 : 知的ネット社会は多様性に強みをもち、リアル社会に多様な思想を提供する  

ネットの強みに、その分散構造と表現技法に対する制限の少なさから生ずる「多様性」があります。

しかし、強みを役割につなげなければ、その強みは評価されません。「やれること」(強み)かつ「やらなければならないこと」(役割)が「仕事」であり、「仕事」の結果によって評価されるのです。

ネットを使ってすべてのことができるわけではないので、役割を果たすためにはリアルな事物との結合点(交通の結び目)が重要です。結合点を通じて、「アテネの学堂」の成果をリアル社会の問題解決体系に提供し、リアル社会において役立たせるのです。

まとめると、

「アテネの学堂」の産物は多様な思想であり、結合点を通じてそれをリアル社会に提供する。
さらに、
この貿易を通じて、「アテネの学堂」は役割を果たすものとして評価され、存在価値を高め、主体性を高める
のだ、と私は考えます。

三省 : 「アテネの学堂」参加者がもつべき性質 

「アテネの学堂」参加者は、以下の3つの動作の実践を習慣付けている(:癖にしている)べきだと、私は考えます。

これを「海軍五省」に倣い、「アテネの学堂」参加者がその日の行いを反省するために自らに問いかける『「アテネの学堂」三省』という形に表現しました。

 「アテネの学堂」三省 

一般の人々にもたれることを希望するイメージ 

「アテネの学堂」に関し、一般の人々にもたれることを希望するイメージは以下のとおりです。

 一般の人々にもたれることを希望するイメージ 

一般の人々に対する「アテネの学堂」の最終的な普及目標は『ネット接続人口の8割以上が「アテネの学堂」の存在と利用・参加について前述した認識をもっている状態の実現』に設定されるべきだと、私は考えます。

整備項目 

以上を踏まえて、「アテネの学堂」整備の具体的対象を以下に列挙します。

 整備項目 

 


ご参考 

アテネの学堂

「アテネの学堂(がくどう)」は、一言で言えば「知的ネット空間」を意味します。定義は本文にも書いたように、「主にインターネットを介して知的で生産的な行為をする人々と、そのような行為を支援する仕組みなどの集合体」であると、私は考えます。反対の概念は、中川 淳一郎 氏が著書のタイトルに表した「バカと暇人のもの」です。

「アテネの学堂」という言葉を「知的ネット空間」という意味ではじめて使ったのは、海部 美知 氏であり、2009年 6月 3日のことでした。

発端は、ITmedia の岡田 有花 記者による梅田 望夫 氏へのインタビュー記事 「日本のWebは「残念」 梅田望夫さんに聞く(前編)(2009/ 6/ 1)(後編)(2009/ 6/ 2)」です。これを受けて、海部 美知 氏が書いたブログ記事(下記)に「アテネの学堂」という表現が表われました。

梅田氏と「アテネの学堂」 - Tech Mom from Silicon Valley

梅田さんが「好き」であって、日本でもその登場を期待したネットの世界とは、「バーチャル・アテネの学堂」だったんじゃないかと思う。...

...「チープに手軽に、地理的制約もなく、自らの考えを公表したり議論したりすることができる」という特徴を使って、知的な議論が交わされ、シリコンバレーでよく使われる用語を使って大げさに言えば「世界をよりよくするため(to make the world a better place)の知識」が形成され、それが多くの人の手によって実行に移されていくことが「すごいこと」なんだと思う。

なお、「アテネの学堂」という言葉の由来は、ラファエロによる壁画「アテナイの学堂 (:アテネの学堂)」です。

この文章を書いた人 : TAKAGI-1

この文章を書いた TAKAGI-1 は、以下のような人です。

本名: 高木 一 (たかぎ・ひとし)。1981年、大阪府生まれ。2006年、京都大学大学院工学研究科修士課程修了。修士(工学)。同年より、大型機械メーカーの設計部門で開発業務に従事する。2級機械・プラント製図技能士。

2006年から2007年にかけて、自らが保有する知識の有効活用を図りたいという意志と梅田 望夫 氏の「学習の高速道路」論から、社会的における情報ストックの強化に関心をもち、特に2007年後半には、電子図書館分野を中心に図書館情報学の書籍を8冊読む。

2008年に堀 栄三 氏著の「大本営参謀の情報戦記―情報なき国家の悲劇」を読み、以後、集団における情報フローと人間による情報処理の強化に関心をもつ。

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2010 TAKAGI-1