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2010年 1月30日
知的なインターネット空間「アテネの学堂」の成立を目指して、TAKAGI-1 が「アテネの学堂」およびその整備に関する自分の考えを文章化しました。
インターネットの知的利用に関する "思考の材料" (Food for thought)になれば幸いです。
※ご意見・ご感想は、ブログまたは Twitter: @takagi1 へお願いします。
「アテネの学堂」の定義は、「主にインターネットを介して知的で生産的な行為をする人々と、そのような行為を支援する仕組みなどの集合体」であると、私は考えます。
私が考えるに、「アテネの学堂」の目的は、社会が適切な解答を導き出す仕組みの一端を担うことです。
「アテネの学堂」の成立によって、社会が適切な解答を導き出す仕組みは改良されます。
「アテネの学堂」の材料として、以下の既存の資源を使用できると、私は考えます。
インターネットを介して知的で生産的な行為をする人々。
人々の知的で生産的な行為を支援する仕組み。
私が考えるに、「アテネの学堂」は、道路網に例えることができます。
この道路網全体には、帰省のUターンラッシュ時のように流れの方向性があります。流れの方向は、より高位の情報処理に向いており、その先には「行動」があります。
方向性に注目し、方向性を矢印(赤色↑)で表わしたのが、下図です。赤矢印によって結ばれている赤囲みが「アテネの学堂」のブレイクダウンされた役割を表わします。
ブレイクダウンされた役割を書き出すと以下のようになります。
「アテネの学堂」を、
「アテネの学堂」の整備において、重きを占めるのは、構成する知の整備であると、私は考えます。
即ち、
1. 「アテネの学堂」が、自らが持つべき知を利用可能な状態で持っている状態にするための
インターネットを「アテネの学堂」として支障なく使うための知識の整備と共有
2. 「アテネの学堂」の外部が、「アテネの学堂」について持っているべき知を持っている状態にするための
「アテネの学堂」の存在の普及 (PR)
具体的な内容として、以下があげられます。
WebやWebサービスの使い方に関する情報を整備・流布する。
(制限速度やフォグランプ点灯やスリップ注意に関する道路標識を整備する。)
Webサービスの存在や用途を紹介する。
(難所を楽に超えることができる道路や、道路の組み合わせを紹介する。)
「アテネの学堂」の外部の人は、「アテネの学堂」の存在を信じてはじめて、「アテネの学堂」に参加してみようという気になります。(遠出しようと思うのは高規格道路の存在を信じているからです。)
「アテネの学堂」の存在の最終的な普及目標は『ネット接続人口の8割以上が「アテネの学堂」の存在と利用・参加について以下にあげる認識をもっている状態の実現』に設定されるべきだと、私は考えます。
認識1: ネット世界に、知的かつ生産的で、問題解決を担える部分、「アテネの学堂」が存在すること。
認識2: ネットに接続できれば、「アテネの学堂」を観測することができるということ。
認識3: ネットに接続できれば、知的かつ生産的な行為によって、「アテネの学堂」に参加することができるということ。
「アテネの学堂」参加者の量的・質的な向上は、前述の構成知群の整備によって実現できると、私は考えます。
「アテネの学堂」参加者は、以下の3つの動作の実践を習慣付けている(:癖にしている)べきだと、私は考えます。
ほめる:知的な行為を高く評価し、多様な考えの存在を受け入れる。
書く:考える。知的である。
公開する:生み出したものが、広く使われることに喜びをもつ。なお、「話す」を含む。
「アテネの学堂」を構成するシステムの整備 (道路網に例えると、難所を楽に超えることができる道路の整備) は「アテネの学堂」そのものの整備と切り離して考えることができると、私は考えます。
「アテネの学堂(がくどう)」は、一言で言えば「知的ネット空間」を意味します。定義は本文にも書いたように、「主にインターネットを介して知的で生産的な行為をする人々と、そのような行為を支援する仕組みなどの集合体」であると、私は考えます。反対の概念は、中川 淳一郎 氏が著書のタイトルに表した「バカと暇人のもの」です。
「アテネの学堂」という言葉を「知的ネット空間」という意味ではじめて使ったのは、海部 美知 氏であり、2009年 6月 3日のことでした。
発端は、ITmedia の岡田 有花 記者による梅田 望夫 氏へのインタビュー記事 「日本のWebは「残念」 梅田望夫さんに聞く(前編)(2009/ 6/ 1)、(後編)(2009/ 6/ 2)」です。これを受けて、海部 美知 氏が書いたブログ記事(下記)に「アテネの学堂」という表現が表われました。
梅田氏と「アテネの学堂」 - Tech Mom from Silicon Valley
梅田さんが「好き」であって、日本でもその登場を期待したネットの世界とは、「バーチャル・アテネの学堂」だったんじゃないかと思う。...
...「チープに手軽に、地理的制約もなく、自らの考えを公表したり議論したりすることができる」という特徴を使って、知的な議論が交わされ、シリコンバレーでよく使われる用語を使って大げさに言えば「世界をよりよくするため(to make the world a better place)の知識」が形成され、それが多くの人の手によって実行に移されていくことが「すごいこと」なんだと思う。
なお、「アテネの学堂」という言葉の由来は、ラファエロによる壁画「アテナイの学堂 (:アテネの学堂)」です。
この文章を書いた TAKAGI-1 は、以下のような人です。
1981年、大阪府生まれ。2006年、修士(工学)。同年より、大型機械メーカーの設計部門で開発業務に従事する。
2006年から2007年にかけて、自らが保有する知識の有効活用を図りたいという意志と梅田 望夫 氏の「学習の高速道路」論から、社会的における情報ストックの強化に関心をもち、特に2007年後半には、電子図書館分野を中心に図書館情報学の書籍を8冊読む。
2008年に堀 栄三 氏著の「大本営参謀の情報戦記―情報なき国家の悲劇」を読み、以後、集団における情報フローと人間による情報処理の強化に関心をもつ。
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2010 TAKAGI-1