佐々木 俊尚「ウェブ国産力 日の丸ITが世界を制す」

     

評価・状態: 得られるものがあった本★★☆


購入: 2008/ 2/ 5
読了: 2008/ 2/ 9

404 Blog Not Found:タイトルは孔明の罠 - 書評 - ウェブ国産力

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「国産」という言葉にノスタルジーを覚える

記事ページ 発行: 2008年02月09日

ウェブ国産力」という本を買った。

まだ読みはじめてもいないのだが、背表紙の「国産」という言葉が妙に気になるのである。

国産

私は、この言葉にノスタルジー(懐古)を覚えるのだ。

ノスタルジーを覚える以上、「国産」という言葉は、私の過去の一時期に私を捉えた言葉であり、また現在の私を捉えている言葉である。

過去の一時期とは、1990年代半ばである。純国産の「H-II ロケット」に魅せられた。純国産ロケットの開発は、米国製のロケット・コンポーネントを使ってロケットをつくっていた日本のロケット技術者の悲願であったことは事実であろう。

しかし、「H-II ロケット」の次の世代のロケットである「H-IIA ロケット」は、純国産ではなくなった。純国産ではコストがかかりすぎたのである。ロケットに限らず、産業界は海外生産を押し進めた。

現在、工業製品が国産であることは、特に明るい話題とは考えられない。つまり、工業製品が国産であることは大きな意味をもたない。

対照的に、現在、国産であることが意味をもつのは、知的生産物に関してである。

私は、ブログエントリー「国力を決めるもの」において、社会が成熟するにつれて、国力の決定要因は、人口から機械の生産に、機械の生産から知の生産に移行すると書いた。成熟していない社会において、人口を決定する要因は農業(第1次産業)の生産量である。通常、社会が成熟するにつれて、産業の中心は、農業(第1次産業)から製造業(第2次産業)、製造業(第2次産業)からサービス業(第3次産業)に移行するといわれる。第○次産業という考え方と、「国力を決めるもの」という考え方は、観点が異なるものの、同じ考えを指している。

そして、この考えが、国産であることが意味をもつ対象の遷移を説明する。

では、人が国産であることが意味をもつ時代とはいつのことであろうか。

私は、それをお雇い外国人がいなくなった時代ではないかと考える。業界を限れば、ごく近い過去がその時代であった業界(例えば、プロサッカー世界)もあり、実感しやすい。

 

「ウェブ国産力」の誤字

記事ページ 発行: 2008年02月09日

佐々木 俊尚「ウェブ国産力 日の丸ITが世界を制す」(2008年 1月25日発行の初版本)だが、誤字が目立つ。

p.222
[誤]> 自動車の田の部分もハンドルと同様、

[正] 自動車の他の部分もハンドルと同様、

この部分は、他書からの引用部分なので、単なる誤字だというだけはすまされない。引用元も誤字である可能性はあるが、それならば"ママ"という表記が付されて然るべきだ。

p.228
[誤]>さまざまあなベンチャーが

[正]さまざまなベンチャーが

他にも、もう一つ誤字が、前半にあったと記憶している。

アスキーさん、ちゃんと頼みますよ。

関連:
佐々木 俊尚「ウェブ国産力 日の丸ITが世界を制す」
http://star1ban.blog18.fc2.com/blog-entry-1705.html

 

失敗学と「ヒューマンエラーを防ぐ知恵」、その関係

記事ページ 発行: 2008年02月17日

要約:
ヒューマンエラーを防ぐ知恵」は、失敗学ではあまり触れられてこなかった人間系の過失に触れ、それに対する解決策立案について論じている。

失敗学に対して、厳密には階層下に位置するが、実質的には並列関係にあるといえる。



404 Blog Not Found:失敗防止学の教科書 - 書評 - ヒューマンエラーを防ぐ知恵において、

>本書は失敗学ともかなり重なるが、違いもある。「失敗は予測できる」をはじめとする「失敗学本」は、まず「失敗から学ぶ」ということで、実際におきた失敗を重視しているが、本書の場合、それを防ぐにはどうしたらよいかというのが焦点。失敗学を「科学」とすると、本書のそれは「工学」ということになる。

と書いてあるので、失敗学の延長のつもりで読んだら、違和感が生じた。いままでに読んだ失敗学の本との知識のリンクがとれないのだ。

それもそのはずで、題名に"失敗"の文字はない。3ページある「まえがき」にも"失敗"の文字はない。目次(つまり各章各節の見出し)にも"失敗"の文字はない。

そこで、「ヒューマンエラーを防ぐ知恵」と、いままで呼んだ"失敗学"の本を比較した。

■ 前置き

失敗・事故が発生する「現場」は、機械系(システム系)と人間系から構成される。人間系は、過失と故意の違反(いけないことはわかっているけれどもコスト削減・手抜きのためにやった。「だまし運転」など)からなる。

つまり、
  • 機械系
  • 人間系
    • 過失
    • 故意の違反

■ 「ヒューマンエラーを防ぐ知恵」

範囲: 人間系の過失
重点: 解決策の立案


概要:

今までうやむやにされることが多かったヒューマンエラー(人間系の過失)を対象にしている。

直感的に得られる対策である「人間への指導」という手段をよらない解決策を導こうとしている。

原理がわかなくても解決策を立案できることが重要視される工学的領域にある。

もうすこし詳細:

問題のとらえ方として、以下の6通りの捉え方をするように推奨されている。

中田 亨 : ヒューマンエラーを防ぐ知恵 (化学同人 DOJIN選書, 2007) pp.60-63.

>前提条件の問題だ
>やり方の問題だ
>道具と装置の問題だ
>やり直せればよい
>致命的でなければよい
>認識の問題だ

この捉え方と「なぜを五回繰り返す」を表現したような「ミス対策検討用紙」(p.147)がある。

また、機械系と人間系との接点であり、情報伝達に齟齬が生じる可能性があるインターフェイスは、ヒューマンエラーが発生する大きな源であるため、インターフェイス論が大きく取り上げられている。


■ 失敗学

範囲: 機械系・故意の違反・過失
重点: 失敗情報の利用促進

概要:

すべての失敗・事故を対象にする。しかし、ヒューマンエラーに関しては扱われることは「少なかった」/(その蓄積として)「少ない」。反して、機械系の失敗および人間による故意の違反を原因とするものに関しては、情報が蓄積されている。この情報空間から得られる結論は、未知の事故原因が生じることをあまり考えなくてよい、である。

よって、これまでの失敗情報の利用促進に重点が置かれている。

失敗学が期待している行動は、失敗知識の伝承と、アナロジー(類推)による失敗予測である。

データベースの作成手法の考案*・データベースの公開、そして41原因への整理(体系化の一歩)**はその目的のためである。

科学領域にあり、また教育体系が語られる段階にある。

* 関連引用: 畑村 洋太郎 : 失敗学のすすめ (講談社, 2000) p.109.

>事象、経過、原因、対処、総括に知識化を加えた六項目の記述は、後に役立つ失敗情報を正しく伝える上で最も適したスタイルです。

また、航空業界におけるデータマイニングによる事故要因の可視化(参考: 佐々木 俊尚「ウェブ国産力 日の丸ITが世界を制す」第四章)が例としてあげられる。

** 中尾 政之「失敗百選 41の原因から未来の失敗を予測する」

 

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