石原 莞爾「最終戦争論」

     

評価・状態: 得られるものが秀逸・多量な本★★★



購入: 2007/ 4/21
読了: 2007/ 4/30

1940年の講演がもととなっている本書であるが、戦前の日本人が将来をどのように予想していたか(どこまで予想できていたか)がわかる有益な書である。

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この本からの引用、または非常に関連する記事

全 6 件

軍事・経済そして知

記事ページ 発行: 2012年01月03日

論語 顔淵第十二 295

子貢問政。子曰、足食、足兵、民信之矣 [民 之を 信にす]。

子貢が政治の要道を問うた。孔子は、「食糧を満たし、軍備を充実し、人民に信義を持たせることだ」と答えた。


ここで、「○○を国民参加のもとで実施し、この効用を国民に供する」という戦略を考える。

司馬遼太郎「坂の上の雲」に描かれた明治は、徴兵制。即ち、国民(臣民)の軍事への参加であった。

広告代理店は、ブームをつくり、国民の購買意欲を煽った。それは、国民の経済への参加であった。

次は、国民の知への参加である。
関連:
石原莞爾 : 最終戦争論 (中公文庫, 2001) pp.35-36.

 しからばその決戦戦争はどういう形を取るかを想像して見ます。戦争には老若男女全部、参加する。... しかし女や子供まで全部が満州国やシベリヤ、または南洋に行って戦争をやるのではありません。... 最も弱い人々、最も大事な国家の施設が攻撃目標となります。


 

情報技術は最終戦争を可能にするかも

記事ページ 発行: 2007年05月01日

石原莞爾 : 最終戦争論 (中公文庫, 2001) p.99.

>更に空中戦に於ては、防禦は全く成立しない。

> 空軍に対する国土の防衛は、ますます困難となるであろう。成層圏を自由自在に駆ける驚異的航空機、それに搭載して敵国の中枢部を破壊する革命的兵器は、あらゆる防禦手段を無効にして、決戦戦争の徹底を来たし、最終戦争を可能ならしめる。

この文章は、1941年に書かれた。

注目すべきは、引用の最終文「あらゆる防禦手段を無効にして、決戦戦争の徹底を来たし、最終戦争を可能ならしめる。」である。

つまり、防ぐことのできない兵器の戦力化によって、最終戦争が可能となるということだ。

石原莞爾は、それが航空機だとした。確かに、先の大戦の終戦直前における米軍の戦略爆撃機は、ほぼ「防ぐことのできない」兵器であった。

しかし、冷戦時代に、戦略爆撃機は「防ぐことのできる」兵器となった。レーダーの発達によってである。当初、核兵器の運搬手段として戦略爆撃機を盛んに行っていた米ソであるが、そのうち核兵器の運搬手段はミサイルへと変わった。

レーダーを無力化すれば、ふたたび「防ぐことのできない」兵器が実現する。レーダーを無力化する技術、もちろんステルス技術があるが、電子回路への決定的な攻撃手段は同じく電子回路である。

即ち、高度な情報技術による電子防御兵器の無力化が、「あらゆる防禦手段を無効にして、決戦戦争の徹底を来たし、最終戦争を可能ならしめる」のだ。

関連:
石原 莞爾「最終戦争論」
http://star1ban.blog18.fc2.com/blog-entry-1208.html

 

地上と海上の戦略的性格の違い

記事ページ 発行: 2007年05月13日

地上は防御的性質を持ち、海上は攻撃的性質をもつ。

地上は、その確保領域が広ければ広いほど、防御側に有利にはたらく。

  石原莞爾 : 最終戦争論 (中公文庫, 2001) p.96.

>[ナポレオンの攻撃に対して] ロシヤを護った第一の力は、ロシヤの武力ではなく、その広大な国土であった。

一方、海上は、防禦・攻撃の双方にとって有利不利はなく、その確保領域が広ければ広いほど密度が薄くなる防御側には不利にはたらく。

  石原莞爾 : 最終戦争論 (中公文庫, 2001) p.99.

>水上では土地の如き利用物がなく、防禦戦闘は至難であり、防ぐ唯一の手段は攻めることである。



関連:  
石原 莞爾「最終戦争論」 
http://star1ban.blog18.fc2.com/blog-entry-1208.html

 

平時の決戦戦争状態において男女国民皆兵を国是として謀る

記事ページ 発行: 2007年06月14日

石原莞爾 : 最終戦争論 (中公文庫, 2001) pp.35-36.

> しからばその決戦戦争はどういう形を取るかを想像して見ます。戦争には老若男女全部、参加する。... しかし女や子供まで全部が満州国やシベリヤ、または南洋に行って戦争をやるのではありません。... 最も弱い人々、最も大事な国家の施設が攻撃目標となります。

石原莞爾は、決戦戦争において、女性が攻撃目標として戦争に巻き込まれることを指摘した。

私は、兵隊として女性が戦争状態に参加することを予想する。戦争状態とは、なにもドンパチをさしているのではない。平時の戦争、即ち、経済戦争・権益戦争である。

現在の平時の戦争は、石原氏の言う「決戦戦争」の性質をもつ。グローバリゼーションにより、国境は盾ではなくなった。インターネットは、超音速爆撃機よりも即時的である。ただ「決戦戦争」は一瞬にして勝敗がつくが、現在の平時の戦争は終わりがない。

このような国難において、さらに悪いことに、近未来には我が国の人口は減少に転じる。我が国にとって、人口の半分を"さして"使わないという選択は不自然なのだ。

幸いにも、我が国の産業体勢は、人海戦術的なものから知的なものに変容済みである。

人海戦術的産業では、2倍の人手が2倍の効果を持つ。

対して、知的産業では、ネットワークの考え方に従い、互いにゆるく結合した参加者が2倍になると、4倍の効果をもつのだ。

我が国は、国是として、女性の活用を図る(謀る)べきである。

関連:
(工科系の女子比率の低さがもたらす町工場の倒産増)
http://mkynet.hp.infoseek.co.jp/webcic/lib/inw2/inw_0311152.html#5

石原 莞爾「最終戦争論」
http://star1ban.blog18.fc2.com/blog-entry-1208.html

 

日本外交を整理する

記事ページ 発行: 2009年11月12日

「東アジア共同体」という言葉が取り上げられていることを機会に、これまでの日本外交を整理してみたい。

日本外交における主な登場"民族"は、アングロ・サクソン、スラブ、漢民族である。

● アングロ・サクソン

 中心国: アメリカ合衆国
 中心国の人口: 3億人
 世界覇権: 19世紀以来、覇権を保有している(ベルサイユ前は英国、ベルサイユ以降は米国)
 主導する国家連合: 北大西洋条約機構
 日本との近さ: 文明的に近い (梅棹 忠夫「文明の生態史観」 )

● スラブ

 中心国: ロシア連邦
 中心国の人口: 1億4千万人
 世界覇権: 冷戦期に覇権保有経験がある。
 主導する国家連合: 独立国家共同体集団安全保障条約機構
 日本との近さ: シベリアを通じ、地理的に近い。

● 漢民族

 中心国: 中華人民共和国
 中心国の人口: 14億人
 世界覇権: 歴史的に覇権保有経験がある。覇権志向は強い。
 主導する国家連合: 上海協力機構
 日本との近さ: 地理的に近い。


次に、外交政策について記す。なお[]内は参考文献である。

● 日韓併合・中国東北部権益

 対ロシア(スラブ)=「朝鮮半島における敵対勢力の阻止は近代日本の「国是」」[新脱亜論, p.282]
 [2009/11/14追記] 日英同盟(アングロ・サクソン)の後ろ盾

● 満州国

 資源 [最終戦争論, p.106]
 対ソ連(スラブ+共産主義)
 空白域
 農地(人口の再配分)
 モデルケース

● 大東亜共栄圏

 資源
 東亜の欧米からの独立(対アングロ・サクソン)――「近代の超克」:欧米の帝国主義による世界秩序の打破 [近代の超克, p.136])
 支那事変(別称: 日華事変、日中戦争)(進展する日本による帝国主義の現実)を東亜解放(八紘一宇の理想)の一貫だと再定義する[近代の超克, p.133]
 経度方向の世界分割――日本中心の汎アジア(ハウスフォーファーのパン・リージョン理論) [戦争学概論 p.44]

● 開発外交(東南アジアとの外交)

 資源
 「経済的地平の拡大」[海洋国家, p.178]
 「脱植民地化によって生じた空白」[海洋国家, p.93]
 米(アングロ・サクソン)による日中引きはがし(資源を中共に頼らないように)。後に東南アジアの中共による共産化の防止。[海洋国家, p.59, 178]

● 自由と繁栄の弧

 リムランド
 冷戦期の「危機の弧」地域 [とてつもない日本, p.161] (冷戦後の空白域?)

■ 文献

本文では略称([]内に示す)を記した。

[新脱亜論]
渡辺 利夫 : 新脱亜論 (文春新書, 2008)

[最終戦争論]
石原 莞爾 : 最終戦争論 (中公文庫, 2001)

[近代の超克]
子安 宣邦 : 「近代の超克」とは何か (青土社, 2008)

[戦争学概論]
黒野 耐 : 「戦争学」概論 (講談社現代新書, 2005)

[海洋国家]
宮城 大蔵 : 「海洋国家」日本の戦後史 (ちくま新書, 2008)

[とてつもない日本]
麻生 太郎 : とてつもない日本 (新潮新書, 2007)

関連:
アングロ・サクソンかスラブか
http://star1ban.blog18.fc2.com/blog-entry-2789.html

中国は「東亜リムランド」における覇権を狙っているのではないか
http://www.h5.dion.ne.jp/~wing-x/ezhtml/inw3/inw_0710210.html#4

 

国民皆兵の継続的な「決戦戦争」

記事ページ

 

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