岡本綺堂 『半七捕物帳』 「実はここの火の番の藤助という者の行くえを…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「実はここの火の番の藤助って奴の居場所を探してると、今夜お宅の門前でその姿を見つけて、捕まえて縄で縛ったんですけど、またどこかに逃げられちゃって。それで探して墓場の方に歩いてたら、暗くてつまづいて石塔にぶつかって……」
「そうでしたか。火の番の藤助は私も知っていますが、あなた方の縄にかかったのに逃げ出すなんて、見た目によらず大胆な奴ですね。ところで、藤助に何か調べる理由があるんですか?」
「藤助は先月から行方不明なんです」
「それは私も聞いていますが……。となると、藤助は何かやましいことがあって姿を隠してるんでしょうね」
「やましいことがあるかどうかは、調べてみないとわかりませんが、いずれにせよ、家出人は一応調べなければいけませんので……。ましてや世間には家出を装って、自分の家の近くにうろついているってのは、無実の人間がやることじゃないと思うんです。それで捕まえようとしたところ、予想以上に抵抗されたので、やむを得ず縄で縛ったんです」
「ごもっともです……。それで、その藤助がこちらの墓場に逃げ込んだとおっしゃってるんですか?」
「さっきも言った通り、暗くてはっきりとはわかりませんでしたが、もしかしたらと思いまして……」
「ということは、確かにこの寺の中に逃げ込んだと確信があるわけではないわけですね」
「とても申し訳ないですが、実は2、3日前から風邪で寝込んでまして、私はこれで失礼します。ゆっくり休んでください……」
「病気のところへお邪魔して申し訳ありません。遠慮なくお休みください」

原文 (会話文抽出)

「実はここの火の番の藤助という者の行くえを探して居りますと、今夜こちらの御門前でその姿を見付けましたので、取り押さえて一旦は縄をかけたのですが、又どこへか逃がしてしまいましたので、それを探しにお墓場の方へまいります途中、なにぶんにも暗いので、足許に倒れている石塔につまずきまして……」
「左様でござりましたか。火の番の藤助はわたくしも識って居りますが、あなた方のお縄にかかりながら又それを抜けて逃げるとは、見掛けによらない大胆者でござるな。して、藤助に何か御詮議の筋があるのでござりますか」
「藤助は先月以来、行くえが知れないのでございます」
「それはわたくしも聴いて居りますが……。では、藤助は何かうしろ暗いことでもあって、すがたを隠しているのでござりますな」
「うしろ暗いことがあるか無いか、それは調べてみなければ判りませんが、いずれにしても駈落者は一応の詮議を致さなければなりませんので……。まして世間へは駈け落ちと見せかけて、我が家の近所にうろ付いているなぞは、潔白な人間のおこないでは無いように思われますので、ともかくも取り押さえようと致しますと、案外に手向いを致しますので、よんどころなくお縄をかけたのでございます」
「ごもっともで……。そこで、その藤助がこの寺の墓地へ逃げ隠れたと仰しゃるのですか」
「今も申す通り、なにぶん暗いので確かなことは判りませんが、もしやと思いまして……」
「では、確かにこの寺内へ逃げ込んだというお見込みが付いたわけでも無いのですな」
「甚だ勝手でござりますが、実は二、三日前から風邪で引き籠って居りますので、わたくしはこれで御免を蒙ります。どうぞゆるゆると御休息を……」
「御病ちゅう御迷惑をかけて恐れ入ります、御遠慮なくお休みください」


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