GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』
現代語化
「不在だ。まあ、入れ」
「おはようございます」
「誰もいないから火鉢は出せない。こっちに来てくれ」
「どうだ。例の件は……」
「面目ない話で、この間の晩はドジを踏んじゃって……」
「でも親分。ほとんどのところは見当が付きましたよ。お尋ね者の亀は『お近』と名前を変えて、音羽の佐藤孫四郎って旗本屋敷に潜伏してるんです」
「佐藤孫四郎……。小旗本だな」
「とはいえ、400石取りで……。3年ほど長崎で役目についてて、去年の秋に帰ってきたんです。お近はその後でついてきて、その屋敷に入ったらしい」
「誰から聞いたんだ?」
「屋敷の中間に根回しして聞いたんです。何か後ろ暗いことがあるんでしょうが、中間には時々小遣いをくれるみたいなので、評判は悪くないようです」
「そこまではわかったが、そこから先がまだよくわからん。お近には内緒の男がいる。それが音羽のご賄屋敷の黒沼って家に、最近婿入りした幸之助って若い奴らしいんだけど」
「幸之助の実家は?」
「白魚河岸の吉田って御納屋の舎弟です」
「それで、お近や幸之助と、例の蝶々って、何か関係があるのか?」
「それが難しくて」
「俺の本来の目的は蝶々の件で、お近や幸之助は枝葉末節みたいなもんだが、急にこんな発見をすると、ついついそっちが面白くなっちゃって……。今んとこ、あの2人と蝶々の件がつながってるような、離れてるような……。親分はどう思いますか?」
「俺にもまだわからん」
「あと、火の番の藤助はどうした?これも帰ってきてないか?」
「帰ってきてない。こいつは確か蝶々に関係してると思ってるんだけど……。とにかく謎めいてやがるんで」
「ま、探索物ってのが謎めいてるもんだ。だから落ち着いて考えなきゃいけねぇ」
原文 (会話文抽出)
「親分。内ですかえ」
「留じゃあねえか。まあ、あがれ」
「お早ようございます」
「誰もいねえから火鉢は出せねえ。ずっとこっちへ来てくれ」
「どうだ。例の件は……」
「面目がありません、このあいだの晩はどじを組んでしまって……」
「だが、親分。もう大抵のところは見当が付きましたよ。お尋ね者のお亀はお近と名を変えて、音羽の佐藤孫四郎という旗本屋敷に巣を作っているんです」
「佐藤孫四郎……。小ッ旗本だろうな」
「と云っても、四百石取りで……。三年ばかり長崎へお役に出ていて、去年の秋に帰って来たんです。お亀のお近はそのあとから付いて来て、その屋敷へはいり込んだと云うことです」
「だれから訊いた」
「屋敷の中間にかまをかけて聞き出したんです。自分にうしろ暗いことがあるからでしょうが、中間なんぞには時々に小遣いぐらい呉れるらしいので、みんなの評判は悪くないようです」
「そこまでは判っているんだが、それから先きがまだどうも判らねえ。お近には内証の男がある。それが音羽の御賄屋敷の黒沼という家へ、このごろ婿に来た幸之助という若い奴らしいんですがね」
「幸之助の実家はどこだ」
「白魚河岸の吉田という御納屋の舎です」
「そこで、そのお近や幸之助と、例の蝶々と、なにか係り合があると云うのか」
「さあ、そこが難題でね」
「わっしの本役は蝶々の一件で、お近や幸之助の方はまあ枝葉のような物なんですが、不意にこんな掘出し物をすると、ついそっちが面白くなって……。今のところじゃあ、あのふたりと蝶々の一件とが結び付いているような、離れているような……。親分はどう鑑定しますね」
「おれにもまだ判断が付かねえ」
「それから火の番の藤助というのはどうした。これも帰らねえか」
「帰って来ません。こいつは確かに蝶々に係り合いがあると睨んでいるんですが……。なにしろ忌にこぐらかっているんでね」
「どうで探索物はこぐらかっているに決まっているから、まあ落ちついて考えて見なけりゃあいけねえ」